徳川慶喜 (NHK大河ドラマ)

1998年のNHK大河ドラマ第37作
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徳川慶喜』(とくがわよしのぶ)は、NHKにおいて1998年1月4日から12月13日に放送された大河ドラマ第37作。原作は司馬遼太郎作の『最後の将軍 徳川慶喜』。脚本を田向正健が担当した。

徳川慶喜
ジャンル ドラマ
原作 司馬遼太郎最後の将軍 徳川慶喜
脚本 田向正健
演出 富沢正幸 他
出演者 本木雅弘
(以下五十音順)

池田成志
石田ひかり
石丸謙二郎
伊武雅刀
内野聖陽
江守徹
大原麗子
岡村喬生
岡本信人
小澤征悦
大和田伸也
勝野洋
岸田今日子
黒田アーサー
小橋めぐみ
堺正章
佐藤慶
柴俊夫
清水美砂
菅原文太
杉良太郎
鈴木瑞穂
宝田明
田辺誠一
鶴田真由
寺脇康文
中原丈雄
橋爪淳
花柳錦之輔
林隆三
坂東八十助
深津絵里
藤岡琢也
藤木直人
水野真紀
山口祐一郎
山下真司
若尾文子
渡辺徹
渡辺裕之
ナレーター 大原麗子
オープニング 湯浅譲二
製作
製作総指揮 高橋幸作
制作 日本放送協会
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1998年1月4日-12月13日
放送時間日曜20:00-20:45
放送枠大河ドラマ
放送分45分
回数全49
番組年表
前作毛利元就
次作元禄繚乱
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概要 編集

原作は司馬遼太郎が1960年代に執筆した長編小説『最後の将軍 徳川慶喜』(文春文庫ほか)。司馬の原作は文庫版で270頁ほどと彼の長編としてはやや短めであり、本作では他に、渋沢栄一らが編んだ基礎史料たる『徳川慶喜公伝』(平凡社東洋文庫[1] 全4巻)を参考に、随所で原作以上に用いた。

大河ドラマで幕末を題材にしたのは、同じ司馬遼太郎原作で1990年の『翔ぶが如く』以来の8年ぶり[2]。主演・本木雅弘は、1991年の『太平記』以来で、2度目の大河ドラマ出演で主役抜擢された。脚本は『武田信玄』(1988年)や『信長』(1992年)などを手がけた田向正健

江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜が主人公の視点から幕末の政治劇を描く。ナレーションを担当したのは大原麗子で、大原演じる新門辰五郎の妻れん(架空人物)が当時を回顧する体で物語を進めていた。江戸っ子のれんが江戸弁で砕けたナレーションを行なうという設定のため、慶喜を「ケイキさん」と呼んだり[3]「これは後から判ったことなんだけど」「ここだけの話なんだけど」「わっちら下々の者は知らなかったんだけど」といったフレーズがよく用いられた。

菅原文太若尾文子杉良太郎らベテラン勢の他、石田ひかり深津絵里ら若手女優を起用して人気確保に努め、また架空人物のエピソードや多面的表現を盛り込むなどしたが、幕末の対立構造の複雑さや、主人公の慶喜の動きの乏しさ、そして数多く登場する架空人物の存在意義の低さなどから、視聴率は伸び悩んだ。一方で、主演の本木雅弘は常にポーカーフェイスで通し、クールで聡明、策謀にも長けた慶喜を表現し、その演技に好評価を得た。また慶喜の家臣で、幕末の動乱に巻き込まれていくなど準主役格の活躍を見せる村田新三郎(架空の人物)を、当時はまだ無名に近かった藤木直人が演じている。

また、慶喜の77年間(満年齢では76年間)の生涯のうち、江戸開城以降の45年間はほぼカットされているが、後に一橋家以来の家臣である渋沢栄一を主人公として制作された『青天を衝け』が慶喜の一橋家相続から晩年までを描いていくのと比較すると対照的である(ただし渋沢栄一は本作には登場しない)。

慶喜の孫にあたる宣仁親王妃喜久子や、曾孫の徳川慶朝がロケの見学に訪れたことも話題になった。

本作放送以前の1995年12月17日放送の特別番組「さればでござる・全て見せます大河ドラマ」で、「徳川慶喜の生涯をドラマ化して欲しい」という視聴者の要望が伝えられていた。

また、大河ドラマの総集編は放送年の年末に放送されるのが恒例だったが、この作品に限っては翌年・1999年3月に放送された[4]。再放送は2010年11月から2011年2月にかけてCS時代劇専門チャンネルで行われたのが初めて。また、ソフト化は長らく実現していなかったが、2014年秋に完全版のDVDが発売された。なお、総集編はNHKアーカイブスで、本編はNHKオンデマンドの配信で視聴が可能となっている。

題字は主演の本木雅弘が書いたものもあるが、実際の放送では隷書体の題字を使用した。本木による題字は番組のガイドブックなどで見ることができる。手製の題字が使用されないのは極めて異例である。他には『山河燃ゆ』『北条時宗』の事例がある。

また、オープニングでは幕閣などの役名は全て「井伊掃部頭直弼」など、官名を入れて表示している。

平均視聴率は21.1%、最高視聴率は29.7%[5]

テーマ音楽、タイトル映像 編集

音楽に合わせ、農村地帯や下町の情景、庶民の暮らしぶりなどが当時そのままの姿で再現され、写真撮影されて収まるという映像。

一方で、ドラマの最後は、主人公・慶喜が家族と写真撮影をしたあと、その後に起こった出来事が明治維新の諸制度改革や西南戦争から平成大不況に至るまで、テーマ音楽に沿って資料写真や映像でフラッシュされるラストとなっている。ただし、この場面はNHKオンデマンドでは収録されていない。

あらすじ 編集

水戸藩主・徳川斉昭の七男として産まれた七郎麿(後の慶喜)は斉昭による徹底した英才教育を受けたくましく育ち、第12代将軍・家慶の要望を受け、11歳の時、御三卿一橋家を相続する。

黒船1853年に浦賀に来て日本中が騒然とする中、慶喜は幕閣の期待を一心に集め、第13代将軍・家定の後継として候補に上がる。しかしある一人の男の出現により、慶喜の人生は激変した。大老・井伊直弼である。井伊による安政の大獄において、慶喜は蟄居謹慎に処せられ、将軍後継者は徳川家茂に決定する。

しかし桜田門外の変において井伊が暗殺されると (島津久光の建策を考慮した)勅命を受け慶喜は家茂の後見職に就任。上洛後は宮廷工作に力を発揮し、尊皇攘夷の嵐が吹き荒れる混沌とした時代をその英知によって切り抜けていく。

そんな中、家茂が死去し、秘密裏に結ばれた薩長同盟を中核とする倒幕派が幕府を追い詰める中、慶喜は幕閣からの度重なる将軍就任要請と(孝明天皇から)将軍宣下を受け、遂に第15代将軍に就任。しかし、将軍就任直後に天皇が崩御。幕府そして日本の命運は慶喜の双肩にかかることになっていく。

登場人物 編集

徳川将軍家・水戸徳川家 編集

慶喜側近 編集

幕閣 編集

諸大名 編集

幕臣 編集

各藩藩士 編集

皇室・公家 編集

各国公使 編集

その他 編集

架空人物 編集

  • 村田新三郎:泉本央内野謙太藤木直人
    幼少期から慶喜に仕える側近。旗本・早川重吉を殺し、みよと駆け落ちする。辰五郎の元に身を寄せる。
    その後に天狗党の乱に加わり、敗走する途中に重吉の弟・良介と戦い相討ちする。
  • たみ:水野真紀
    新三郎の妻。出奔した夫を追い続ける。
    みよが新三郎との間にもうけた赤子を、略奪してしまう。新三郎死去ののち、みよが後を追おうとするのを阻止。
    上洛している慶喜を頼って京に来た後、みよと呑み屋を営むようになる。
  • みよ:一色紗英
    新三郎の恋人。新三郎とは、橋で佇んでいたところ知り合う。重吉の妾だったが、暴力を振るわれているところを新三郎に救われ、彼と運命を共にする。その後、新三郎の子を産むも、嫉妬にかられたたみにより赤子を奪われてしまう。
    新三郎が死亡すると後を追おうとするが、たみに阻止される。
    のちに、たみと呑み屋を営むようになる。
  • 松島:岸田今日子
    慶喜付きの老女。毒舌家で、しばしば直子や美賀に意地悪をする。
  • 永原帯刀:佐藤慶
    吉子の側近。水戸藩内の政争を嫌い、中立を保つ。実は人情本の売れっ子作家として名を馳せているが、周囲には伏せている。天狗党の乱で吉子が襲われた時に吉子をかばって負傷。その後本編から姿を消すが、最終回に登場する。
  • ガンツム:山下真司
    辰五郎の部下。およしに片想いしており、慶喜をあまり快く思っていない。
  • カンヌキ:肥後克広
  • 義経:寺門ジモン
  • 半次:上島竜兵
    辰五郎の部下。安政の大地震で義経が片足を失う重傷を負い、間もなく3人揃って暇乞いを出す。
  • 中山五郎左衛門:藤岡琢也
    辰五郎の親友。その日の生活にも困っているほど貧しい下級武士。なにかと慶喜に関わり続ける。
  • 中山太郎:橋本潤
  • 寺岡勘十郎:柴俊夫
  • 与兵衛:岡本信人
    れんの兄。生麦村の旅籠の主人。
  • 平山謙二郎:河原田ヤスケ
  • とき:三條美紀
  • 幸吉:沼田爆
    弘道館の下働き。
  • 猪吉:大川浩樹
  • さくら:小林美香[要曖昧さ回避]野村知沙池脇千鶴田中伸子
    幸吉の孫娘。慶喜の侍女で幼馴染同然に育ったが、言われたことを鵜呑みにしてしまう性格が最大の難点。さくらの存在を嫌う直子やその同調者の策略で使いに出され失踪する。後に京で芸者となり、慶喜と再会する。
  • 高部:園佳也子
  • 早川重吉:江藤潤
    旗本。妾・みよを虐待し、これを阻止した新三郎に殺される。
  • 早川良介:吉田朝
    重吉の弟。
  • 銀次:増田由紀夫
  • きな:小沼由美
  • ゆき:折笠富美子
    吉子の侍女
  • 杉山寅之介:芦田昌太郎
    一橋家用人
  • 若衆:金子貴俊
  • 護衛の侍:檀臣幸
  • 仲居:山崎和佳奈

スタッフ 編集

放送 編集

特記がない限りNHKクロニクルのNHK番組表ヒストリーで確認。

通常放送時間 編集

放送日程 編集

  • 第1回は15分延長。
放送回 放送日 演出
第1回 1月4日 母の不在 富沢正幸
第2回 1月11日 新しい母
第3回 1月18日 黒船が来た
第4回 1月25日 将軍候補 竹林淳
第5回 2月1日 日米和親条約
第6回 2月8日 安政の大地震 谷口卓敬
第7回 2月15日 公家の花嫁 富沢正幸
第8回 2月22日 新婚生活 竹林淳
第9回 3月1日 恋の闇路 富沢正幸
第10回 3月8日 抗争のはじまり
第11回 3月15日 台風の目 谷口卓敬
第12回 3月22日 日米通商条約 竹林淳
第13回 3月29日 幕府の権威
第14回 4月5日 押しかけ登城 富沢正幸
第15回 4月12日 密勅 谷口卓敬
第16回 4月19日 大獄のはじまり 富沢正幸
第17回 4月26日 安政の大獄 竹林淳
第18回 5月3日 桜田門外の変 富沢正幸
第19回 5月10日 父の死 谷口卓敬
第20回 5月17日 慶喜変身 富沢正幸
第21回 5月24日 兄と弟 竹林淳
第22回 5月31日 母と子 吉田雅夫
第23回 6月7日 和宮下向 富沢正幸
第24回 6月14日 久光上洛 竹林淳
第25回 6月21日 将軍後見職 吉田雅夫
第26回 6月28日 生麦事件 富沢正幸
第27回 7月5日 幕政改革 太田光俊
第28回 7月19日 上洛への道 富沢正幸
第29回 7月26日 将軍名代 吉田雅夫
第30回 8月2日 奇策 富沢正幸
第31回 8月9日 孝明天皇の立場 竹林淳
第32回 8月16日 慶喜の悪酔い 太田光俊
第33回 8月23日 池田屋騒動 富沢正幸
第34回 8月30日 御所突入
第35回 9月6日 母の苦悩
第36回 9月13日 仇討ち 吉田雅夫
第37回 9月20日 慶喜の頭痛 訓覇圭
第38回 9月27日 条約勅許 富沢正幸
第39回 10月4日 将軍急死 谷口卓敬
第40回 10月11日 徳川家相続 富沢正幸
第41回 10月18日 将軍慶喜
第42回 10月25日 孝明天皇の死 高橋練
第43回 11月1日 議題草案 富沢正幸
第44回 11月8日 倒幕
第45回 11月15日 大政奉還 篠原圭
第46回 11月22日 小御所会議 富沢正幸
第47回 11月29日 朝敵
第48回 12月6日 恭順謹慎
最終回 12月13日 無血開城
平均視聴率 21.1%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[5]

総集編 編集

  1. 黒船が来た 1999年3月22日22:00 - 22:59
  2. 安政の大獄 1999年3月24日22:00 - 22:59
  3. 蛤御門の変 1999年3月25日22:00 - 22:59
  4. 大政奉還  1999年3月26日22:00 - 22:59

ソフトウェア 編集

2014年秋、完全版DVDが発売された。2017年には総集編DVDも発売された。

脚注 編集

  1. ^ 同じ東洋文庫には『昔夢会筆記 徳川慶喜公回想談』(渋沢栄一編・大久保利謙校訂)がある。
  2. ^ 大河ドラマの『翔ぶが如く』では、原作となった同名の小説の他にも同じ司馬遼太郎執筆の小説が複数原作として用いられており、本作の原作でもある『最後の将軍』も『翔ぶが如く』第一部の「幕末編」に組み込まれていた。
  3. ^ 慶喜を「けいき」と読むのは当作品のオリジナルではなく歴史的に根拠がある。
  4. ^ 日本放送協会放送文化研究所 編集『NHK年鑑'99』日本放送出版協会、1999年、125頁。 
  5. ^ a b ビデオリサーチ NHK大河ドラマ 過去の視聴率データ
  6. ^ 総集編では篤君
  7. ^ a b 一部放送日時の変更あり

外部リンク 編集

NHK 大河ドラマ
前番組 番組名 次番組
徳川慶喜