怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス

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怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(かいじゅうだいふんせん ダイゴロウたいゴリアス)は、1972年12月17日に「東宝チャンピオンまつり」の一作として公開された東宝[2][6]円谷プロダクション[2]製作の特撮映画作品。企画時のタイトルは『怪獣大奮戦』[7]

怪獣大奮戦
ダイゴロウ対ゴリアス
Daigoro vs. Goliath
監督 飯島敏宏
脚本 千束北男
製作
出演者
音楽 冬木透
主題歌 「ダイゴロウ対ゴリアス」
子門真人
荒川少年少女合唱隊
撮影 稲垣涌三
編集 白江隆夫
製作会社
配給 東宝[2][注釈 1]
公開 1972年12月17日[出典 1]
上映時間 85分[出典 2]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 1億4,000万円[7]
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キャッチコピーは「みなしご怪獣ダイゴロウ。おなかがすいたら怪獣だって食べちゃうぞ!?」。

概要 編集

円谷プロダクション十周年記念作品[出典 3]。円谷プロの記念作品の第1弾[7]。円谷プロダクションとしては初の完全新作オリジナル怪獣劇場映画でもある[出典 4]。監督の飯島敏宏によるファンタジックな世界観が特徴の心優しい怪獣映画となって[11]おり、怪獣との共存や環境をテーマに[4][7]し、風刺のニュアンスのためリアルな社会の描写も重視[7]。ストーリーは「現代童話」が意図されている[7]

本作撮影当時、飯島は所属会社のTBSからの出向辞令により木下惠介プロダクションでプロデューサーとしてテレビドラマの製作を手掛けていた。同社社長で松竹出身の木下惠介は飯島が監督する本作が東宝系で配給されることに不快感を示したが、飯島から脚本を見せられた際に「君、怪獣映画なんか撮るんだ」と述べ、おおむね納得したという[13]

飯島は、本作品について「ゴジラには勝った」と自負していたが、同時上映であった『パンダコパンダ』には驚愕したという[13]

東宝・円谷プロダクションによる東宝チャンピオンまつり用映画としては、1970年に『ゴジラ・レッドムーン・エラブス・ハーフン 怪獣番外地』が企画され、金城哲夫満田かずほによるプロットが執筆されたが実現には至らなかった[14][注釈 2]

あらすじ 編集

東京湾に姿を現した怪獣が自衛隊によって退治され、その怪獣の子供が後に残された[4]。この子供怪獣はダイゴロウと名付けられ、国の管理下で飼育されることになった。しかし、ダイゴロウは驚くべき大食漢であり、国税ではエサ代をまかないきれなくなったため、成長抑制剤・アンチグロウを投与されそうになる[4]

それを知った子供たちと発明おじさんや熊五郎ら気のいい大人たちは立ち上がり、ダイゴロウのエサにもっと予算をつけてくれと要求するが、役人の鈴木は追加予算を認めようとしない。また、発明おじさんはダイゴロウに腹一杯食わせてやろうと、賞金狙いでさまざまな発明品を作り出すが、なかなか上手くいかない[4]。ところが、「瞬間雨降りミサイル」を披露した際には雪が降り始めて成功とみなされ、見事に賞金を獲得できたため、おじさんは釈然としない。「失敗したはずなのに、なぜ雪が降ったんだ?」

それは宇宙から隕石に乗って現われ、周囲の熱エネルギーを吸収する凶暴な怪獣ゴリアスの仕業だった[4]。ダイゴロウはゴリアスに勇敢に立ち向かうもあえなくダウンし、勢いに乗ったゴリアスはコンビナートに出現して大暴れする[4]。通常兵器ではゴリアスを倒せず、ついには核兵器の使用も検討され始めてしまう。

「このままでは海も死んでしまう」と子供たちは危惧する。息を吹き返したダイゴロウは母親同様に火炎を吐けるのではないかと気付いたおじさんたちと共に特訓を開始するが、そこにゴリアスが出現する。

登場怪獣 編集

ダイゴロウ 編集

諸元
ダイゴロウ
別名 ハラペコ怪獣[出典 5]
身長 35 m[5][3]
体重 8千 t[5][3]
年齢 6歳
出身地 日本[3]

日本に上陸して暴れた怪獣の子供。瓦礫の中から発見され、孤島に隔離される形で飼育されていた。人懐こく、聞き分けが良い。そのため、食欲による予算過多を理由に成長を薬品で止められる際には、それを理解したかのように従う。反面、野生を失ったわけではなく、遥か彼方に飛来したゴリアスに対し、ライオンのように怒りを露にした。ただし特訓したものの格闘能力は低く、母譲りの高熱火炎でゴリアスを退けた[4]。頭には小さな角があり口に猫のようなヒゲが生えている[注釈 3]

  • デザインは池谷仙克、造型は高山良策が担当[18][19]。別途で子供時代のものも描かれている[19]。造形物は着ぐるみがメインのものと赤ん坊時のものが1体ずつ、ほかに実物大の頭部と左手と左足の造形物が製作された。赤ん坊時の着ぐるみは2013年時点で現存している[20]。高山によるラテックス製の雛形は、一時期円谷プロダクションの社長室に飾られていた[21]

母怪獣(ダイゴロウの母) 編集

諸元
ダイゴロウの母
別名 原始母怪獣[11][7]
身長 40 m[3]
体重 2万 t[3]
出身地 東京湾[3]

6年前に原子力潜水艦の爆発が原因で蘇った怪獣で[4]、一対の角と鬣を有する。東京湾に上陸した後に市街地を蹂躙し、火を吐いて暴れるが、大型ミサイルによって絶命。後には彼女の子供が遺されていた。

  • 検討用デザインを担当した米谷佳晃は、デザインを担当した池谷仙克鬼子母神をイメージしていたと証言しており、乳房と怒髪天の頭髪を付けた母怪獣としてデザインしたとしている[22][19]

ゴリアス 編集

諸元
ゴリアス
別名
  • 凶暴大星獣[5]
  • 恐怖大星獣[7]
  • 恐怖星獣[23]
身長 45 m[5][3]
尻尾の長さ 50 m[要出典]
体重 3万 t[5][3]
出身地 宇宙[3]

宇宙から隕石に乗って地球に侵入した異星の生命体。熱エネルギーを吸収するため、周囲の海域は氷結、低温化する。武器は額の角から発する電撃光線[3]と巨大な拳。日本に上陸し、石油コンビナートを破壊。ゴリアス迎撃のため核兵器の使用までもが検討された。特訓したダイゴロウと対戦、発明おじさんたちによって電光を封じるための巨大な絶縁布を角に付けられるもそれを剥がし、終始優勢に戦いを進めるが、ダイゴロウの高熱火炎に角を破壊され敗北。最後はロケットで宇宙へ帰された[4]

  • 検討用デザインを担当した米谷佳晃は、脚本では単眼の岩塊を意図しており、完成デザインとは大きくイメージが異なるものであったことを証言している[22][19]。ダイゴロウ同様、悪意が排除されたデザインとなっており、怪力の暴れん坊というコンセプトでデザインされた[10]。パンチ力が強いという設定に基づき、手が大きく作られた[4]
  • 着ぐるみのほかに実物大の手や尾の造形物が製作された[4]

登場メカニック 編集

エアロバイク スカイラーク号
賞金200万円をダイゴロウの食糧代に充てようと、オジサンがBCB-TVのテレビ番組『ビックリ発明大ショック』に出場するために製作した飛行バイク。バイクプッシャ式エンジンや翼、カウリングや補助輪などを取り付けた一種の超軽量動力機であるが、長々と滑走した末に、僅かに飛行した後に爆発したに止まった。
大型ミサイル
自衛隊がダイゴロウの母に対して使用したミサイル。4基のエンジンをクラスター化したブースターと弾頭部の二段式となっており、装軌式牽引車に牽引された装軌式の単装ランチャーから発射される。港湾部や市街地を蹂躙するダイゴロウの母に対して自衛隊基地内から発射され、ダイゴロウの母の頭部に直撃し、一撃でダイゴロウの母を絶命させてしまった。
瞬間雨降りミサイル
『ビックリ発明大ショック』への再挑戦のためにオジサンが制作した発明品。雲の中の水蒸気を冷却する事により、打ち上げから3分以内に雨を降らせるという人工降雨装置だったが、打ち上げ直後にゴリアスの影響で雪が降り出したため、その性能の真偽は不明。

キャスト 編集

スタッフ 編集

ノンクレジット 編集

音楽 編集

主題歌
「ダイゴロウ対ゴリアス」
歌:子門真人荒川少年少女合唱隊
挿入歌
「ララバイ オブ ダイゴロウ」
歌:桜井妙子、スタジオ・シンガーズ
「ぼくのおじさん」
歌:子門真人
「そしてエピロオグ」
歌:子門真人

映像ソフト 編集

  • VHS 品番TG4339[8]
  • LD 品番 TLL2181[8]
  • DVD
    • 2005年9月30日、DVDが発売された。
    • 2015年8月19日、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。

同時上映 編集

ゴジラ電撃大作戦
脚本:馬淵薫本多猪四郎 / 特技監督:有川貞昌 / 監督:本多猪四郎 / 主演:久保明
1968年公開『怪獣総進撃』の改題短縮リバイバル版。
パンダコパンダ
原案・脚本・場面設定:宮崎駿 / 演出:高畑勲 / 主演(声):杉山佳寿子熊倉一雄/ 東京ムービー(現:トムス・エンタテインメント)作品

漫画版 編集

『怪獣ダイゴロウ』
小学館の学習雑誌に連載
ダイゴロウを擬人化した日常コメディ。作風としては「快獣ブースカ」のそれに近い。[12]
作画:林ひさお、構成:田口成光
作画:山根あおおに
作画:山根あおおに
1972年7月号-1973年3月号連載
作画:藤田茂
1974年4月号-6月号連載
作画:山根あおおに
  • 小学五年生 1972年4月号-1973年3月号連載
作画:しのだひでお
  • 小学六年生 1972年4月号-1973年3月号連載
作画:板井れんたろう、構成:藤川桂介

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ a b c d ノンクレジット
  2. ^ 資料によっては、本作品に続く第2弾と記述していたが[15][16]、満田は1970年にアメリカ統治下の沖縄を訪れて金城と執筆したと証言している[17]
  3. ^ 小さい頃は生えていなかった。
  4. ^ 本作のためのオリジナル曲ではなく、『恐怖劇場アンバランス』のBGM「M-16"」(同作では未使用)を流用[24]

出典 編集

  1. ^ a b MOOK vol.10 2020, pp. 35, 『ウルトラマンA』『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』 放送・スタッフリスト
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2020年4月23日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 動画王特別編集ゴジラ大図鑑 2000, p. 126, 「1970年代 怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 東宝写真集 2005, pp. 72–77, 「怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」
  5. ^ a b c d e f g ゴジラ画報 1999, p. 170, 「怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」
  6. ^ a b c d 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, pp. 48–49, 「1972冬期」
  7. ^ a b c d e f g h i j MOOK vol.10 2020, pp. 30–31, ウルトラ特別企画vol.10 円谷プロ作品新紀行 『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』
  8. ^ a b c 日本特撮映画図鑑 1999, p. 142, 「東宝特撮作品 ビデオLDラインナップ 特撮シリーズ」
  9. ^ 夢のかけら 円谷篇 2021, p. 126, 「解説」
  10. ^ a b 特撮全史 2016, p. 116, 「怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」
  11. ^ a b c d 円谷プロ全怪獣図鑑 2013, p. 87.
  12. ^ a b 円谷プロ画報 2013, p. 126.
  13. ^ a b 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 161, 「東宝チャンピオンコラム ゴジラ映画以外の新作映画」
  14. ^ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 128, 「未使用シナリオ全文掲載 『ゴジラ・レッドムーン・エラブス・ハーフン 怪獣番外地』」
  15. ^ ゴジラ画報 1999, p. 172, 「special column 幻の未撮影台本発掘シリーズ4 『ゴジラ・レッドムーン・エラブス・ハーフン 怪獣番外地』」
  16. ^ 大辞典 2014, p. 220, 「COLUMN14 幻のゴジラ映画3 『ゴジラ・レッドムーン・エラブス・ハーフン 怪獣番外地』」
  17. ^ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 129, 「満田かずほインタビュー」
  18. ^ 夢のかけら 円谷篇 2021, p. 76, 「ダイゴロウ」
  19. ^ a b c d 豪怪奔放 2021, p. 192, 「第2章 銀河連邦 1971-1973 検証:栄光の怪獣王国、狂乱のデザイン史―銀河連邦 編― 09 『ファイヤーマン』と『ジャンボーグA』の競闘/共闘が描く鮮明なコントラスト DESIGNER 米谷佳晃」
  20. ^ KKベストセラーズ発行『語れ!ウルトラマン 兄弟激闘編』105頁
  21. ^ 原口智生の夢のかけら 第33回 ダイゴロウ」『宇宙船』vol.158(AUTUMN 2017.秋)、ホビージャパン、2017年9月30日、pp.126-127、ISBN 978-4-7986-1548-6 
  22. ^ a b c 宇宙船162 2018, pp. 88–91, 取材・文 鶯谷五郎「70's円谷怪獣リスペクト検証 栄光の怪獣王国、狂乱のデザイン史 [第9回] 『ファイヤーマン』と『ジャンボーグA』の時代を巡る、米谷佳晃の追憶」
  23. ^ 円谷プロ画報 2013, p. 127.
  24. ^ 『恐怖劇場アンバランス オリジナルBGM集』(2006年、ウルトラ・ヴァイヴ)のライナーノーツより。

出典(リンク) 編集

参考文献 編集

外部リンク 編集