愛はさだめ、さだめは死

愛はさだめ、さだめは死』(Love Is the Plan the Plan Is Death)は、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア短編SF小説早川書房より翻訳出版された本作を含む短編集の表題作でもある。

短編「愛はさだめ、さだめは死」 編集

ヒト種族が登場しない一風変わった小説で、巨大な蜘蛛に似た生命体一人称で語られている。主人公はモッガディートという名の個体で、初めは種の本能に逆らおうと試みる。小説のタイトルに含まれる「さだめ(Plan)」とは、本能のことを意味する。この種族のライフサイクルは大変激しいもので、越冬の季節になると、種族の各個体は暖かい季節に持っていた理性を失い、本能の赴くまま活動する。

1973年4月にスティーブン・ゴールディンによって編まれたSFアンソロジー"The Alien Condition"に収録され、1973年のネビュラ賞短編部門を受賞し、1974年のヒューゴ賞ノヴェレット部門にノミネート、ローカス賞短編部門では第3席となる。1975年2月にハヤカワSF文庫版の原本となったティプトリー自身の短編集"Warm Worlds and Otherwise"に収録。その後もネビュラ賞受賞作を集めたアンソロジー"Nebula Award Stories Nine"や"The Best of the Nebulas"、ティプトリー名義の他の短編集にも度々収録された。

日本では1975年9月発行の「SFマガジン」に伊藤典夫訳で掲載されたのが初出である。その後、1987年8月にハヤカワSF文庫から出版された同名短編集に収録された。

短編集「愛はさだめ、さだめは死」 編集

1975年2月にバレンタインブックスより、ティプトリー自身の短編集"Warm Worlds and Otherwise"として出版。表紙はドン・R・スミスが担当した。1977年にジェイムズ・ティプトリー・Jr.が女性であることが明かされる以前の短編集であり、冒頭にロバート・シルヴァーバーグによるエッセイ「ティプトリーとはだれ、はたまた何者? 」が収録されている。1979年2月に同出版社より再版。表紙はマイケル・ヘリングに変更された。日本版の表題作以外に、サイバーパンクの先駆と言われるヒューゴ賞受賞作「接続された女」や、その他にもネビュラ賞やローカス賞ノミネート作品が含まれている。1970年代前半の作品が中心であり、1990年7月に出版された早川書房の『SFハンドブック』では、本書をティプトリーの入門書として最適と推している。

日本では1987年8月にハヤカワSF文庫より、収録作の名をとり、「愛はさだめ、さだめは死」として伊藤典夫浅倉久志の共訳で出版された。表紙は上原徹が担当した。巻末には解説として、大野万紀による「センス・オブ・ワンダーランドのアリス」が収録されている。サンリオSF文庫より出版された『老いたる霊長類の星への賛歌』に続き、日本で2冊目に出版されたティプトリーの著作である。

収録作品 編集

  • ティプトリーとはだれ、はたまた何者? ロバート・シルヴァーバーグによるエッセイ。浅倉久志訳
  • すべての種類のイエス 浅倉久志訳
  • 楽園の乳 浅倉久志訳
    • 1973年ローカス賞短編部門ノミネート
  • そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした 浅倉久志訳
  • エイン博士の最後の飛行 伊藤典夫訳
    • 1969年ネビュラ賞短編部門ノミネート
  • アンバージャック 浅倉久志訳
  • 乙女に映しておぼろげに 浅倉久志訳
  • 接続された女 浅倉久志訳
    • 1973年ネビュラ賞ノヴェレット部門ノミネート
    • 1974年ヒューゴ賞ノヴェラ部門受賞
    • 1974年ローカス賞短編部門ノミネート
  • 恐竜の鼻は夜ひらく 浅倉久志訳
  • 男たちの知らない女 伊藤典夫訳
    • 1974年ローカス賞短編部門ノミネート
  • 断層 浅倉久志訳
  • 愛はさだめ、さだめは死 伊藤典夫訳
    • 1973年ネビュラ賞短編部門受賞
    • 1974年ヒューゴ賞ノヴェレット部門ノミネート
    • 1974年ローカス賞短編部門ノミネート
  • 最後の午後に 浅倉久志訳

関連項目 編集

  • 愛はさだめ、さだめは死 (TRPGリプレイ) - TRPGナイトウィザードのリプレイで、同TRPGのリプレイにはSF小説や漫画からつけられたタイトルが多い。このリプレイでは、ティプトリーの小説の主人公モッガディートと同名の登場人物がいるが、その登場人物のモチーフとして本作の主人公を参考にした以外は内容的にはほとんど関係がない。
  • 12モンキーズ - 1995年公開のSF映画。「エイン博士の最後の飛行」とアイデアが同一であると、1997年1月のSFマガジンで伊藤典夫が指摘している。ただし、クレジットはされていない。
  • ジーンシャフト - 2001年にWOWOWで放送されたTVアニメ。シリーズ中のサブタイトルに、「男たちの知らない女」からつけられた「女たちの知らない男」がある。他のサブタイトルも全てSF小説に由来する。
  • 小谷真理 - 女性SF評論家。訳書にマーリーン・S・バーの『男たちの知らない女―フェミニストのためのサイエンス・フィクション』がある。
  • 20世紀SF - 河出文庫より出版されたSFアンソロジー。第4集は1970年代を代表するSF短編を収録しており、「接続された女」がサブタイトルになっている。

外部リンク 編集