撞着語法(どうちゃくごほう)、オクシモロン[1]英語: oxymoron)とは、修辞技法のひとつ。「賢明な愚者」「明るい闇」など、通常は互いに矛盾していると考えられる複数の表現を含む表現のことを指す[1]。形容詞や連体修飾語、句、節などが、修飾される名詞と矛盾することとしては、形容矛盾(けいようむじゅん)とも言う。論理的には、「Aであって、かつ、not A」であるということはありえない(矛盾律)のにもかかわらず、そうであるかのように語ることである。狭い見方をすればつじつまがあわず、単なる誤謬にすぎないように見えるが、複雑な内容を簡潔に表現する修辞法として用いられている場合もある。

撞着語法の例 編集

一目瞭然の撞着語法 編集

ひねった撞着語法 編集

基本的な撞着語法においては、前述のとおり論理的に矛盾した表現を指していう。一方、文化や偏見といった前提となる価値観の下でのみ成立する撞着語法に類した表現も可能となる。

  • 明るいオタク
オタクは暗い」という前提の下においてのみ、明るい“暗い人”という形容矛盾が成立する。
  • 美人女優
「映画の出演者は演技力よりも外見が重視される」「女優とは演技の巧い人であり外見に依らない」という前提においてのみ成立する。
悪魔とは優しくないものである」との前提。悪魔という語自体が表現的であるため、前提がないと成立しない。
  • 誠実な政治家
しばしばジョークに使われるが、「政治家は不誠実なものである」という前提がないと成立しない。
  • 冷たい情熱
「情熱とは熱いものである」という前提をあえて裏切る表現。「冷たい」と形容される情熱があるという前提を認めないと成立しない。
ネオコン(: Neoconservatism)はネオ(Neo=新たな)とコンサバティズム(conservatism=保守主義)が合成されたものであり、日本語では「新保守主義」と訳される言葉である。合成された2語はそれぞれ反対の意味を持つが、ネオコンは「元はリベラルな立場の者(アメリカならば民主党に属するなど)だがコンサバティブな言動をする者」であり「元からコンサバティブな立場の者(アメリカならば共和党に属するなど)がコンサバティブな言動をしてもネオコンとは呼ばない[注釈 1]」という2つの定義によって成立している言葉である。

人名・グループ名 編集

  • J・R・R・トールキン イギリスの作家。トールキンの先祖はドイツ系であり、苗字のTolkienは、ドイツ語のTollkiehnを英語化したものである。英訳すると、dull-keen(注:日本語では「鈍い・鋭い」)という意味を持つ
  • Nulbarich 日本の音楽バンドのグループ名。「何も無いけど満たされている」という意味からグループ名をつけた。

撞着語法の効果 編集

撞着語法を用いて、受け手に強い違和感を与えることで、言及している内容への興味を誘引したりすることができる。また、敢えて矛盾した語を以って対象を説明することにより、対象への皮肉としての効果をもつ場合がある。一方で、一見「深い意味含蓄のある」ように見えて、内容の伴わない単なる言葉遊びに終始してしまうおそれがあるため、注意が必要である。

文学では、シェイクスピアが『マクベス』のなかで「きれいは汚い、汚いはきれい・・・」という表現を用いたのが有名。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ネオコンと区別する場合はパレオコンサバティズム(PaleoConservatism=旧来の保守主義)と呼ぶ

出典 編集

  1. ^ a b 井門亮 2020, p. 2.

参考文献 編集

  • 井門亮「オクシモロンに関する一考察 ー関連性理論の観点からー」『群馬大学社会情報学部研究論集』第27巻、群馬大学社会情報学部、前橋、2020年、1-16頁、ISSN 13468812NAID 120006799546、AN10477040。 

関連項目 編集