日立造船

日本の大阪府大阪市にある機械・プラントメーカー

日立造船株式会社(ひたちぞうせん、: Hitachi Zosen Corporation)は、環境装置工場設備産業機械発電設備などを製造している日本の機械・プラントメーカーである。現在の主力事業は環境・プラント事業であり、造船事業からは撤退している。現在、日立製作所との資本関係はない。

日立造船株式会社
Hitachi Zosen Corporation
本社
種類 株式会社
機関設計 監査役会設置会社
市場情報
東証プライム 7004
1949年5月16日上場
略称 Hitz
本社所在地 日本の旗 日本
559-8559
大阪府大阪市住之江区南港北1-7-89
設立 1934年昭和9年)5月29日
(株式会社日本産業大阪鉄工所)
業種 機械
法人番号 3120001031541 ウィキデータを編集
事業内容 環境装置工場設備精密機械産業機械発電設備内燃機関圧力容器鉄骨構造物建設機械などの製造販売
代表者 谷所敬代表取締役会長
三野禎男(代表取締役社長CEO
資本金 454億4,236万円
(2020年3月31日時点)
売上高 連結:4,417億9,700万円
単独:2,210億8,700万円
(2022年3月期)
営業利益 連結:155億4,100万円
(2022年3月期)
経常利益 連結:117億8,300万円
単独:66億7,900万円
(2022年3月期)
純利益 連結:78億9,900万円
単独:17億2,100万円
(2022年3月期)
純資産 連結:1,329億2,600万円
単独:904億3,600万円
(2022年3月31日時点)
総資産 連結:4,611億6,100万円
単独:3,242億7,400万円
(2022年3月31日時点)
従業員数 連結:11,540人
単独:4,001人
(2022年3月31日時点)
決算期 3月31日
会計監査人 有限責任あずさ監査法人
主要株主 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.65%
日本カストディ銀行(信託口) 6.24%
三菱UFJ銀行 3.14%
STATE STREET LONDON CARE OF STATE STREET BANK AND TRUST, BOSTON SSBTC A/C UK LONDON BRANCH CLIENTS- UNITED KINGDOM 2.81%
DFA INTL SMALL CAP VALUE PORTFOLIO 1.99%
(2018年9月30日現在[1]
主要子会社 ニチゾウテック 100.0%
エイチアンドエフ 54.5%
アイメックス 100.0%
オーナミ 100.0%
地中空間開発 50.0%
(2022年3月31日時点)
関係する人物 E.H.ハンター(創業者)
範多龍太郎(設立者)
外部リンク https://www.hitachizosen.co.jp/
特記事項:1881年明治14年)4月1日、大阪鐵工所として創業。
マスタートラストなど所有の株式割合
日本カストディ銀行(株)(信託口) 9.24%
日本マスタートラスト信託銀行(株)(信託口) 6.71%
日本カストディ銀行(株)(信託口9) 1.84%
日本カストディ銀行(株)(年金信託口) 1.01%
(2016年3月31日時点)
テンプレートを表示

大阪市発祥の企業で、現在も大阪市に本社を置いているため関西財界で活動しており、日立造船首脳が関西経済連合会で副会長などの役職を務めることもある[2]東京証券取引所プライム市場に上場しており(証券コード:7004)、日経平均株価採用銘柄の1つである。

概要 編集

商号に「造船」の文字が含まれるが、2002年(平成14年)に日本鋼管(現・JFEエンジニアリング)との合弁で両社の船舶・海洋部門を切り離して統合した持分法適用会社ユニバーサル造船(現・ジャパン マリンユナイテッド、現在は持分法適用会社ではない)を設立したことで、本社から主要事業だった造船事業を手放した。ただし船舶用のディーゼルエンジンなどの製造は継続している。2006年(平成18年)に子会社の内海造船の株式を売却したことにより2007年(平成19年)度決算から連結決算においても造船事業が無くなった。

かつて日立製作所の傘下にあったため「日立」の名を冠した商号であるが、太平洋戦争後の財閥解体により、現在では日立グループからは離脱している[注 1]。両社とも旧日産コンツェルン春光グループ)の主要20社で組織する春光会[3]や、旧三和銀行(現・三菱UFJ銀行)の融資系列で組織する三水会とその後身社長会である水曜会およびみどり会三和グループ)の会員企業である[4] [5]。日立造船はみどり会の主要な構成企業であり、かつては帝人宇部興産とともに「三和御三家」と呼ばれていた。

造船不況の打開策として手掛けた事業多角化により、一時期はグループ内で杜仲茶の製造販売[6] や旅行予約ウェブサイト旅の窓口』の運営[7] なども行っていた。その後、杜仲茶は小林製薬[6]、旅の窓口は楽天[7](現・楽天トラベル)、それぞれ事業売却した。

また、子会社東証二部上場日立造船富岡機械があったが、今後の事業展開が見込めないとして2004年(平成16年)に通常清算した。通常解散とは経営破綻していない会社の資産を売却し、残余金を株主に分配し解散させることで、上場企業の通常清算は極めて珍しいケースである。他に上場企業では繊維商社「立川」、不動産会社「甲子園土地企業」[注 2]などが同様の通常解散を行っている。

後述の通り、戦後は日立グループから離脱していることや、造船業からも撤退していることなどから、実際の業務と社名の乖離が長期にわたり続いていたことを踏まえ、2024年10月1日付をもって「カナデビア株式会社」に社名を変更することになった。新社名は日本語の「奏でる」とラテン語で「道」を意味する「Via」を組み合わせたもの[8]

沿革 編集

大阪鐵工所時代 編集

 
創業者E.H.ハンター

日立造船に社名変更 編集

造船事業からの撤退 編集

カナデビアに社名変更 編集

  • 2024年(令和6年)10月1日 - カナデビア株式会社(Kanadevia Corporation.)に商号変更(予定)[14]。社名変更に際して、同社は「社名に“造船”とついていながらもすでに造船業から撤退していることと、日立グループからも離脱しているため、実際の事業と社名とでの乖離が続いていた」ためとしており、新社名は、「日本語の”奏でる”と、ラテン語の道を意味する”Via”を組み合わせた」としている[8]

歴代社長 編集

氏名 就任日 退任日 備考
大阪鐵工所
1 山岡順太郎 1914年3月18日 1915年1月29日 [15]
2 山口力 1915年 1918年 専務
3 中山説太郎 1918年 1921年 専務
4 津村秀松 1921年 1930年 専務
5 飯島幡司 1930年 1932年 専務
6 鮎川義介 1932年 1932年 会長
7 原田六郎 1932年 1934年
日本産業大阪鐵工所
7 原田六郎 1934年5月29日 1934年7月31日 社名改称[15]
大阪鐵工所
7 原田六郎 1934年8月1日 1936年2月9日 在職中に死去[15]
8 六角三郎 1936年2月29日 1943年3月10日 [15]
日立造船
8 六角三郎 1943年3月11日 1947年3月31日 [15]
9 出田孝行 1947年4月1日 1950年5月30日 [15]
10 松原與三松 1950年5月30日 1962年11月30日 [15]
11 永田敬生 1962年11月30日 1979年6月29日 [15]
12 木下昌雄 1979年6月29日[15] 1983年
13 村山利雄 1983年 1988年
14 藤井義弘 1988年 1995年
15 南維三 1995年 2001年
16 重藤毅直 2001年 2005年
17 古川実 2005年 2013年
18 谷所敬 2013年 2020年
19 三野禎男 2020年 現職

事業拠点 編集

閉鎖された生産拠点 編集

創業以来の拠点であった桜島工場は、現在の大阪市此花区桜島1丁目および同2丁目南部に所在した。1997年(平成9年)12月に閉鎖[10] された後、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン™の敷地として使用されている。

2016年(平成28年)に東京工場(松戸地区)は閉鎖され、東京工場(柏地区)は柏工場となった。

2020年(令和2年)に柏工場は閉鎖され[13][16]、築港工場へ移転した[13]

主要製品 編集

過去の製品 編集

造船部門 編集

戦前建造された主な艦艇・船舶 編集

  • 小艦艇を中心に受注した。
大阪鐵工所 桜島工場

戦後建造された主な艦艇・船舶 編集

護衛艦
練習艦
補給艦
輸送艦
海洋観測艦
掃海艇
掃海艦
掃海母艦
機雷敷設艦
特務艇
実験艇
巡視船
商船
水陸両用車

鉄軌道車両 編集

健康食品事業部 編集

  • 杜仲茶 - 2002年に小林製薬に譲渡。2003年経営権も小林製薬に譲渡し、健康食品事業から撤退した。

Hitz日立造船グループ 編集

環境事業グループ 編集

機械事業グループ 編集

社会インフラ事業グループ 編集

その他 編集

かつてのグループ会社 編集

代理店例 編集

  • HPCシステムズ[21]

不祥事  編集

日立造船の男性社員 (当時20代) が2021年、長期出張中のタイで自殺したのは、不慣れな業務や上司からの叱責などにより精神疾患を発症したのが原因として、大阪南労働基準監督署が2024年3月4日付で労災認定した[22]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 日立製作所公式サイト内「グループ会社一覧」(2021年1月28日閲覧)には、日立造船は含まれていない。
  2. ^ 甲子園競輪場(2002年廃止)の施設を保有していた。

出典 編集

  1. ^ 四半期報告書(第122期第2四半期)
  2. ^ 関経連歴代の正副会長 関西経済連合会(2015年5月25日)2018年11月12日閲覧。
  3. ^ 春光懇話会”. www.shunko.jp. 2023年6月2日閲覧。
  4. ^ 田中彰「六大企業集団の無機能化 : ポストバブル期における企業間ネットワークのオーガナイジング」『同志社商学』第64巻第5号、同志社大学商学会、2013年3月、330-351頁、CRID 1390290699890654464doi:10.14988/pa.2017.0000013201ISSN 0387-2858NAID 110009605659 
  5. ^ メンバー会社一覧”. みどり会. 株式会社みどり会. 2024年3月16日閲覧。
  6. ^ a b 杜仲事業の営業譲渡について(中期経営計画「Hitz‐Advance」における関係会社の再編を加速化”. 日立造船株式会社 (2002年12月9日). 2021年2月4日閲覧。
  7. ^ a b マイトリップ・ネット(株)の全株式を譲渡”. 日立造船株式会社 (2003年9月4日). 2021年2月4日閲覧。
  8. ^ a b 日本放送協会 (2023年9月28日). “日立造船 社名を「カナデビア」に変更へ 社名と事業のかい離で”. NHKニュース. 2023年9月28日閲覧。
  9. ^ a b c d 会社概要 - 企業情報”. Hitz 日立造船. 2021年1月28日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at 日立造船の歴史・創業ストーリー”. 経済メディア Strainer. 株式会社ストレイナー. 2021年1月29日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah 沿革|企業情報”. Hitz 日立造船. 2021年1月28日閲覧。
  12. ^ a b c ヒッツ川崎発電所 完成|新着情報”. Hitz 日立造船 (2003年5月7日). 2021年1月28日閲覧。
  13. ^ a b c d 当社 柏工場の閉鎖および機械事業本部 産業装置ビジネスユニットの築港工場への移転のお知らせ”. Hitz 日立造船. 2021年1月28日閲覧。
  14. ^ 2024 年 10 月 1 日付で社名を変更することを決定 新社名「カナデビア株式会社(Kanadevia Corporation)」”. 日立造船. 2023年9月27日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i 日立造船株式会社 1985, 761-805頁.
  16. ^ a b c d e f g h i j k l m 本社・事業所・生産拠点 - 企業情報”. Hitz 日立造船. 2021年1月28日閲覧。
  17. ^ 関係会社の本社および工場移転について”. Hitz 日立造船 (2008年4月8日). 2021年1月28日閲覧。
  18. ^ a b c d e f 本社・事業所・生産拠点 - 企業情報(2004年5月)”. Hitz 日立造船 (2004年5月). 2021年1月28日閲覧。
  19. ^ HITACHI ZOSEN VIETNAM CO., LTD.がハノイに支店を開設 日立造船(2018年10月1日)2018年11月12日閲覧。
  20. ^ 今治造船、舶用主機事業に参画。日立造船新会社に35%出資 - 日本海事新聞電子版(2022年9月27日)、2022年9月26日閲覧。
  21. ^ a b 「日立造船」の代理店9社 | メトリー”. metoree.com. 2022年8月25日閲覧。
  22. ^ 日立造船社員がタイ出張中死亡で労災認定 不慣れ業務で”. 日本経済新聞 (2024年3月25日). 2024年3月25日閲覧。

参考文献 編集

  • 日立造船株式会社 編『日立造船百年史』日立造船、1985年。 

関連項目 編集

外部リンク 編集