李洙勲

韓国の社会学者、大使

李 洙勲(イ・スフン、朝鮮語: 이수훈1954年12月13日 - )は、大韓民国の学者。現在は慶南大学校極東問題研究所の招聘碩座教授。これまでに2017年10月31日より2019年4月まで駐日大韓民国大使[1]、河南大学校の同大学の社会学科教授などを歴任した。

イ・スフン
李 洙勲
生誕 (1954-12-13) 1954年12月13日(69歳)
大韓民国の旗 韓国 慶尚南道昌原郡(現在の昌原市)
国籍 大韓民国の旗 韓国
職業 大学教授
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イ・スフン
各種表記
ハングル 이수훈
漢字 李洙勲
発音: イ・スフン
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来歴 編集

1954年12月13日、慶尚南道昌原郡(現在の昌原市)出身[2]本貫仁川李氏[3]。1977年に釜山大学校英文学科を卒業、1979年に同大学院の英文学修士課程を修了。1986年にはジョンズ・ホプキンス大学大学院社会学博士課程を終えた[2]

1987年に慶南大学校の極東問題研究所企画室長に就任したのを皮切りに同大学にてキャリアを積み、社会学科教授まで務めた[2]。1998年より2000年まで韓国における比較社会学会会長、2002年より2006年まで国際社会学会(ISA)の東アジア理事[2]

2005年に盧武鉉政権下にて大統領諮問機関「東北アジア時代委員会」の委員長に就任[2]、「韓国が主導して北東アジア共同体を形成することが、北朝鮮を含む朝鮮半島の未来生存戦略である」という「北東アジア共同体構想」を提唱した。また盧武鉉が韓国大統領として臨んだ2007年10月の南北首脳会談では特別随行員として北朝鮮を訪問した。

2009年には慶南大学校の極東問題研究所所長に就任。2015年に日本の慶應義塾大学に招聘教授として在籍[2]

2012年、文在寅陣営で南北経済連合委員として参加。以来、文在寅の政策ブレーンとして活動し、文の大統領当選時には政権引き継ぎを行った国政企画諮問委員会において外交・安全保障分野の委員長を務めている[4]

駐日大使としての活動 編集

2017年8月30日に文在寅政権下で駐日大韓民国大使に内定した[4]。10月25日、文在寅大統領より信任状を授与される[5]。10月31日、着任[6]。12月21日、皇居信任状を捧呈[7]

駐日大使在任中の2018年10月以降、韓国政府による和解・癒やし財団の解散決定に伴う慰安婦問題日韓合意の事実上の死文化、徴用工訴訟問題の再燃など日韓関係が冷え込む事案が次々に発生し、そのたびに日本政府より呼び出され抗議を受けることとなった[8][9]。同年12月にはソウルでの記者懇談会において、両国関係に困難が多いと認めるに至った[10]

日本側の政治家との接触や政策に係る根回しは、文在寅政権の意向を反映して極めて消極的であり、慰安婦財団をめぐり外務次官級会談が東京で開催された際にも地方出張を理由に出席しなかったこともある。しかしその後、徴用工訴訟問題、韓国海軍レーダー照射問題により日韓関係が一気に悪化すると、2018年12月には谷内正太郎国家安全保障局長と2019年1月には菅義偉官房長官と非公式の会談を設けるなどの動きを見せた[11]。2019年4月に駐日大使を離任。

駐日大使退任後 編集

駐日大使を退任後は慶南大学校の極東問題研究所に戻り、招聘碩座教授(寄附金により研究活動を行うよう大学が指定した教授)となった。2020年6月には、5カ月後のアメリカ合衆国大統領選挙の結果のいかんを問わず、在韓米軍は削減されることになると予言し、今から準備を進めておくべきと警告するなど発信を続けている[12]

発言 編集

李洙勲の駐日大韓民国大使内定発表後の2017年9月5日、韓国の国会で開催された外交統一委員会緊急懸案報告において韓国野党正しい政党の国会議員である鄭亮碩が李洙勲の過去の慰安婦問題日韓合意日韓秘密軍事情報保護協定などに関する発言を問題視した。鄭は「李洙勲を日本に派遣するのは(日本と)外交するつもりなのか、それとも(日本と)戦うつもりなのか。このようなメッセージを送りながら日本といかなる安保協力を築いていこうというのか」と批判した[13]

慰安婦問題日韓合意 編集

2016年1月21日、ネットメディア「プレシアン」とのインタビューで、慰安婦問題日韓合意に関し、「米国ホワイトハウス国務省を中心に非常に執拗に動いた。日米韓3カ国の安保協力を強化し、これを通じて中国牽制戦線を構築するためだった」「今回の慰安婦合意の最終勝者は米国」と発言していた[13]

日韓秘密軍事情報保護協定 編集

2016年11月に外交・統一・安保専門家42人が「日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)締結手続きを中断して朴槿恵大統領はすべての外治から身を引け」という題名の時局声明を発表したが李洙勲はこの声明に署名していた。この事について韓国の外交関係者からは、北朝鮮の持続的な挑発で日本との安保協力が重要な状況で、李の過去発言が日本政府との関係設定に影響を与えるのではないかという懸念の声が上がっていると中央日報は報じた[13]

北朝鮮の核実験について 編集

2016年1月6日に行われた北朝鮮の4回目の核実験直後のインタビューにおいて李洙勲は「米国の『戦略的忍耐』のような対応では核問題の解決は難しい。ところが日米韓は依然として制裁を強く加えれば良いと考えているようだ」「このような状態で進めば結局最終的には北朝鮮が事実上の核保有国になる」と発言した[13]

出典 編集

  1. ^ 韓国の新駐日大使が着任「歴史問題足かせにせず」 文在寅大統領の外交ブレーン - 産経ニュース
  2. ^ a b c d e f 이수훈”. NAVER人物検索. 2017年9月3日閲覧。
  3. ^ (108)인천 이씨(仁川李氏)-68,628명” (朝鮮語). 서울이코노미뉴스 (2014年10月19日). 2022年8月17日閲覧。
  4. ^ a b “駐日大使に李洙勲氏内定、「論功行賞」との批判も”. 朝鮮日報. (2017年8月31日). http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/08/31/2017083100864.html 2017年9月3日閲覧。 
  5. ^ 対日関係の発展期待=次期大使に信任状-韓国大統領 時事ドットコムニュース
  6. ^ 駐日韓国大使が着任朝日新聞デジタル 2017年11月1日
  7. ^ 駐日韓国大使の信任状捧呈 | 外務省
  8. ^ “日本反発「合意履行を」 外務次官、韓国大使に抗議”. 日本経済新聞. (2018年11月21日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38021500R21C18A1EAF000/ 2018年12月13日閲覧。 
  9. ^ “「断じて受け入れられない」官房長官 元徴用工判決”. 日本経済新聞. (2018年11月29日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38314880Z21C18A1MM0000/ 2018年12月13日閲覧。 
  10. ^ “駐日韓国大使「韓日関係は深刻な状況」”. 朝鮮日報. (2018年12月13日). オリジナルの2018年12月13日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2018-1213-1153-06/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/13/2018121380005.html 2018年12月13日閲覧。 
  11. ^ 日本官房長官-駐日韓国大使、1対1の昼食会…水面下チャネル稼動したが「時すでに遅し」”. 中央日報 (2019年1月28日). 2019年1月28日閲覧。
  12. ^ “文政権初代駐日大使を務めた李洙勲氏「米大統領選、誰が勝っても在韓米軍削減」”. 朝鮮日報. (2020年6月10日). オリジナルの2020年6月11日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2020-0611-1606-34/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/06/10/2020061080015.html 2020年6月11日閲覧。 
  13. ^ a b c d 中央日報 2017年9月6日
外交職
先代
李俊揆
  駐日大韓民国大使  
2017年10月31日 - 2019年4月
次代
南官杓