東海線

韓国鉄道公社の鉄道路線

東海線(トンヘせん、とうかいせん)は、大韓民国釜山広域市東区釜山鎮駅慶尚北道盈徳郡盈徳駅を結ぶ韓国鉄道公社(KORAIL)の鉄道路線。

東海線
釜田駅に停車中の381000系
釜田駅に停車中の381000系
基本情報
大韓民国の旗 韓国
所在地 釜山広域市
蔚山広域市
慶尚北道
種類 高速鉄道
起点 釜山鎮駅
終点 盈徳駅
駅数 37駅
開業 2015年4月2日(東海線として)
所有者 国家鉄道公団
運営者 韓国鉄道公社
路線諸元
路線距離 188.3km
軌間 1,435mm(標準軌
線路数 2(釜田 - 浦項間)
1(浦項 - 盈徳間)
複線区間 釜田 - 浦項間
電化方式 交流25,000V, 60Hz
保安装置 ATS
路線図
テンプレートを表示
東海線
各種表記
ハングル 동해선
漢字 東海線
発音 トンヘソン
日本語読み: とうかいせん
英語 Donghae Line
テンプレートを表示

元来は朝鮮総督府によって建設された釜山から元山までの路線であり、当路線および三陟線嶺東線の一部と京江線の末端部、東海北部線朝鮮民主主義人民共和国鉄道省金剛山青年線がその大部分に相当する。

概要 編集

KTX東海線 編集

韓国高速鉄道(KTX)の浦項乗り入れ計画にあわせ、韓国鉄道施設公団京釜高速線東海南部線を結ぶ連結線の建設と、複線電鉄化事業中の東海南部線の一部区間で先行して移設を行なった。2015年3月の暫定開業に合わせ、KORAILは京釜高速線との分岐点から東海南部線との合流点を経て浦項駅へ至る区間の名称を「東海線」と命名した。

広域電鉄東海線 編集

東海南部線釜田 - 太和江間65.7kmを首都圏電鉄のように広域電鉄化する事業である。首都圏以外では初の広域電鉄となり、当初は首都圏同様「大都市圏広域交通管理に関する特別法」(略称:大広法)によって整備されることになっていたが、蔚山広域市が財政難により負担を拒否し、全額国費による事業となった。

法的には広域電鉄ではなく一般鉄道路線であり、同時期に開業する首都圏電鉄京江線と異なり、全駅でホームドアの設置義務が適用されなかったため設置されていなかった[1]が、2018年7月26日の鉄道安全法の法改正により設置義務が適用されることとなった[2]。ただし、他社線やバス路線との乗継割引は適用され、都市鉄道路線の一部としての機能を果たすことになる。KORAILと釜山市の協議の結果、負担割合は首都圏の6対4ではなく、5対5になった。

既に開業している1-4号線が高頻度で運行しているため、釜山市側はそれぞれ10分、20分間隔以下での運行を要望していたが、KORAIL側は車両数と運転士確保にかかるコスト増加分の負担を市側に要求しており[3]、開業後はピーク時15分毎、通常時30分毎[4]に通勤型電車(381000系)が運行されることになり、同時に東海南部線も全区間が東海線に編入される。

周辺交通連携構築のため、当初釜田 - 日光間のみ2016年10月末開業予定だったが、釜山市が鉄道施設公団に11月12日開業を要請していた[5]。 結局鉄道労組のストライキの影響で、釜田 - 日光間の広域電鉄開業は無期限延期となり、12月30日に開業した。

日光 - 太和江間は2021年12月28日に広域電鉄の運行を開始した。

運賃は10kmまでが1400ウォン、10km以上が1,600ウォン(交通カード使用時は100ウォン割引)と釜山交通公社の路線と同水準となり、指定駅では乗継時の割引も適用される[6]2017年5月1日に100ウォン値上げされ現在の水準となった[7]

朝夕の出退勤時間帯は15分毎、その他は30分毎の運行になる[6]

また太和江 - 浦項間については、線路自体がより内陸部に移設され、新慶州駅を経由するルートへ変更された。これは既存路線の改良だけでは遺跡調査の費用負担や工期延長が懸念されたことと、新羅時代の遺跡を抱える慶州歴史地域世界遺産登録にあたり、ユネスコが線路の郊外移設を条件としたことが理由である[8]

歴史 編集

元々は釜山から慶州江陵襄陽を経由して元山へ至る鉄道路線として、日本統治時代朝鮮総督府鉄道が計画・建設したもので、朝鮮半島の東海岸沿いを通る路線である。1929年に最初の区間が部分開業、その後昭和恐慌や、日支事変から大東亜戦争への戦線拡大による建設遅延がありながら、終戦時点までに元山から襄陽までの東海北部線、釜山から慶州を経て浦項までの東海南部線、そして墨湖から北坪(現在の東海)を経て三陟までの区間(現在の墨湖港線三陟線に当たる)の開業をみた。

1945年日本の降伏後、朝鮮は北緯38度線を境としてアメリカ占領区域とソ連占領区域の南北に分断され(連合国占領時代の始まり)、東海線の線路も東海北部線がソ連、その他の路線がアメリカの管轄とされた。東海北部線は1948年朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へと引き継がれたが、1950年朝鮮戦争勃発により運行が中断された。

その後、1953年朝鮮戦争休戦協定軍事境界線が引かれると、東海北部線は途中で境界線を跨ぐことになった。朝鮮戦争によって損傷を受けた鉄道は、人口が少ない地域を通る上に、敵対する国家に向けて伸びる鉄道であり、路線としての重要性の低さ、安全保障上の懸念から南北いずれでも復旧されることなく荒廃するままに放置され、南側では1967年までに正式な廃線となった。一方、東海南部線と東海市一帯の路線は大韓民国に引き継がれ、朝鮮戦争の一時期を除いて、鉄道庁によって営業が続けられた。また、嶺東線建設に合わせ、東海線の一部区間になる予定であった東海 - 江陵間の未成区間が嶺東線の一部として1962年に新規開業した。だが、その他の区間については、建設の費用対効果が乏しいことから手が付けられないまま21世紀を迎えた。

このような状況は、1998年金大中政権が誕生して太陽政策を始めると大きく変わった。2000年南北首脳会談が開かれると、京義線と共に東海線を完成させることが南北会議で合議された(京義線・東海線鉄道および道路の連結事業参照)。アジア太平洋経済社会委員会 (ESCAP)が2001年に策定したアジア横断鉄道計画では、東海線が韓国・日本からロシアヨーロッパ貨物を運ぶ鉄道網の一角に組み込まれることとなり、戦前に日本が計画・実行した欧州への足がかりとしての東海線建設は、戦後半世紀を経て再び注目されるようになった。

既に北朝鮮側では東海北部線の元山 - 外金剛(後の金剛山青年駅)間が金剛山青年線として1996年に再開通していたため、軍事境界線を越える区間が優先的に建設された。その後、北朝鮮側の一方的な中断などがあって延期されていたものの、南北間交渉の進展によって両者は2007年5月17日に試運転を行うことで合意し、試運転は金剛山青年駅から軍事境界線を越えた先にある猪津駅までの間で正式に履行された。だが、それ以降は南北関係の冷却によって南北の連結事業が事実上中断となっており、2016年時点で軍事境界線を越える定期列車は運行されていない。

一方韓国国内では、韓国鉄道施設公団が日本海沿岸の浦項市三陟市を南北に繋ぐ路線の建設(東海中部線の延伸)を行い2018年に盈徳駅まで開業、2024年に東海駅へ開業予定である。さらに江陵から襄陽を経て猪津駅に至る区間(東海北部線の復旧および未成線)については2022年から工事が開始され、2027年に開通予定となっている[9]。これにより軍事境界線および北朝鮮側の復旧区間である金剛山青年線を含め、釜山から元山におよぶ日本統治時代から計画された東海線の全区間が開通することになる。

年表 編集

路線データ 編集

  • 路線距離:188.3km
  • 軌間:1435mm
  • 駅数:37駅(信号場含む)
  • 複線区間:釜山鎮駅 - 浦項駅(149.7km)
  • 電化区間:釜田駅 - 浦項駅(交流25kv、60Hz
  • 保安装置:ATS

駅一覧 編集

: 広域電鉄運行区間

  • 駅名欄の背景色がである駅(月浦駅 - 盈徳駅)は、車両不足および電化・延伸工事のため休止となっている区間の駅を示している(2023年12月18日現在)。
駅番号 駅名 駅間キロ
(km)
累計キロ
(km)
I
T
X







接続路線・備考 所在地
日本語 ハングル 英語
釜山鎮駅 부산진역 Busanjin 0.0 0.0     韓国鉄道公社京釜線牛岩線貨物線 釜山広域市 東区
凡一駅 범일역 Beomil 2.1 2.1 韓国鉄道公社:伽倻線 釜山鎮区
K110 釜田駅 부전역 Bujeon 2.5 4.6 韓国鉄道公社:釜田線
釜山交通公社1号線
K111 巨堤ヘマジ駅 거제해맞이역 Geojehaemaji 2.3 6.9 | |   蓮堤区
K112 巨堤駅 거제역 Geoje 1.0 7.9 | | 釜山交通公社:3号線
K113 教大駅 교대역 Busan Nat'l Univ. of Edu. 0.7 8.6 | | 釜山交通公社:1号線
K114 東萊駅 동래역 Dongnae 1.2 9.8 | |   東萊区
K115 安楽駅 안락역 Allak 0.9 10.7 | |  
K116 釜山院洞駅 부산원동역 Busanwondong 1.3 12.0 | |  
K117 栽松駅 재송역 Jaesong 1.0 13.0 | |   海雲台区
K118 センタム駅 센텀역 Centum 1.0 14.0 |  
K119 BEXCO駅 벡스코역 BEXCO 1.4 15.4 | | 釜山交通公社:2号線
K120 新海雲台駅 신해운대역 Sinhaeundae 4.5 19.9  
K121 松亭駅 송정역 Songjeong 2.9 22.8 未運行区間 |
K122 オシリア駅 오시리아역 OSIRIA 1.1 23.9 |   機張郡
K123 機張駅 기장역 Gijang 5.7 29.6  
K124 日光駅 일광역 Ilgwang 3.0 32.6 |  
K125 佐川駅 좌천역 Jwacheon 5.1 37.7 |  
K126 月内駅 월내역 Wollae 3.5 41.2 |  
K127 西生駅 서생역 Seosaeng 2.6 43.8 | 蔚山広域市 蔚州郡
K128 南倉駅 남창역 Namchang 8.4 52.2 韓国鉄道公社:温山線(貨物線)
K129 望陽駅 망양역 Mangyang 4.4 56.6 | 韓国鉄道公社:蔚山新港線(貨物線)
K130 徳下駅 덕하역 Deokha 4.5 61.1 |  
K131 開雲浦駅 개운포역 Gaeunpo 2.4 63.5 | 南区
K132 太和江駅 태화강역 Taehwagang 4.9 68.4 韓国鉄道公社:長生浦線蔚山港線(ともに貨物線)
北蔚山駅 북울산역 Bugulsan 9.7 78.1 北区
外東信号場 외동신호장 Oedong 11.7 89.8 | 慶尚北道 慶州市
慶州駅 경주역 Gyeongju 20.5 110.3  
牟梁駅 모량역 Moryang 4.4 114.7 | 韓国鉄道公社京釜高速線乾川連結線)・中央線
西慶州駅 서경주역 Seogyeongju 8.2 122.9
安康駅 안강역 Angang 10.8 133.7  
扶助駅 부조역 Bujo 5.8 139.5 | 韓国鉄道公社:槐東線(貨物線)
浦項駅 포항역 Pohang 10.2 149.7 韓国鉄道公社:迎日湾港線(貨物線) 浦項市
北区
月浦駅 월포역 Wolpo 15.3 165.0
長沙駅 장사역 Jangsa 9.1 174.1 盈徳郡
江口駅 강구역 Ganggu 7.6 181.7
盈徳駅 영덕역 Yeongdeok 6.6 188.3 韓国鉄道公社:東海中部線(建設中)

リンク 編集

脚注 編集

  1. ^ (朝鮮語)(東亜日報,2016年8月19日)기준없는 스크린도어… 부산 동해남부선엔 없고 경기 경강선엔 설치
  2. ^ [국회 본회의서 각종 법안 통과] 성범죄 등 강력범죄 전과자 '택배 일' 못 한다-釜山日報2018年7月27日
  3. ^ (朝鮮語)(CBS nocutnews,2016年8月29日)동해남부선 15·30분 배차, 도시철도 5호선 역할 '의문'
  4. ^ (朝鮮語)(国際新聞,2016年8月29日)[사설] 동해남부선 운행간격 운영의 묘 절실하다
  5. ^ (朝鮮語)(聯合ニュース,2016年8月29日)동해남부선 부전∼일광 구간 11월 11일 개통
  6. ^ a b c d (朝鮮語)동해남부선 부전~일광 30일 개통2016年12月19日,国際新聞
  7. ^ (朝鮮語)부산도시철도 요금 100원 인상 2017年5月2日 東亜日報
  8. ^ (朝鮮語)“[인터뷰]한국철도시설공단 권영철 영남본부장”. 中央日報. (2014年9月25日). http://news.joins.com/article/15917900 2017年12月18日閲覧。 
  9. ^ 동해북부선 강릉~제진 단절구간 112㎞ 55년 만에 복원 착수” (朝鮮語). www.hani.co.kr (2022年1月5日). 2023年5月23日閲覧。
  10. ^ a b (朝鮮語)国土交通部による路線距離告示(第2016-224号)官報第18750号2016年4月29日(金) Archived 2017年3月5日, at the Wayback Machine.
  11. ^ (朝鮮語)동해남부선 부전~일광 구간 10월 개통国民日報,2016年7月6日
  12. ^ (朝鮮語)동해선 광역전철, 무기한 개통연기2016年10月28日,インターネットレールニュース
  13. ^ (朝鮮語)철도공단, ‘동해선 포항~영덕’ 구간 영업시운전·연말 개통 2017.10.20, アジア経済
  14. ^ (朝鮮語)올 연말 개통에서 내년 초로 교각 선로 등 안전점검 후 개통 2017年12月18日 韓国日報
  15. ^ 国土交通部告示第2021-1234号(2021年11月17日)
  16. ^ (朝鮮語)전철화 지연, 포항∼영덕 열차 1년간 운행중단…대체버스 투입2023年12月4日 聯合ニュース

関連項目 編集