栄区

神奈川県横浜市の区

栄区(さかえく)は、横浜市を構成する18行政区のうちの一つである。

さかえく ウィキデータを編集
栄区
地球市民かながわプラザ 区庁舎位置
日本の旗 日本
地方 関東地方
都道府県 神奈川県
横浜市
市町村コード 14115-1
面積 18.52km2
総人口 120,707[編集]
推計人口、2024年3月1日)
人口密度 6,518人/km2
隣接自治体
隣接行政区
横浜市磯子区金沢区戸塚区港南区)、鎌倉市
区の花 キク
栄区役所
所在地 247-0005
神奈川県横浜市栄区桂町303-19(横浜市立本郷台小学校旧校舎跡地内)
北緯35度21分51.5秒 東経139度33分14.7秒 / 北緯35.364306度 東経139.554083度 / 35.364306; 139.554083座標: 北緯35度21分51.5秒 東経139度33分14.7秒 / 北緯35.364306度 東経139.554083度 / 35.364306; 139.554083
外部リンク 横浜市栄区役所
横浜市栄区位置図栄区位置図
ウィキプロジェクト

地理 編集

栄区は横浜市の南部に位置し、東西に長く(東西約7km、南北約6km)、東は金沢区磯子区、西は戸塚区、南は鎌倉市、北は港南区に接している。旧相模国鎌倉郡(一部が高座郡に属していたとする説もある)に属し古来より鎌倉とはゆかりの深い地域である。なお金沢区との区境は武相国境[注釈 1]である。

区の中央を、かつてしばしば氾濫した㹨川(いたちがわ、「いたち」の表記は㹨)が東西に流れ、また西側を柏尾川が南北に流れて低地を形成し、その東側・南側を三浦半島に連なる丘陵地がとり囲むように広がる。柏尾川西岸を中心とした低地には工場、また丘陵地を造成した団地が多く、また丘陵地は市民の森という森林公園にもなっている。本郷台駅を中心に、いたち川沿いに広がる本郷地区と、西部の柏尾川沿いの豊田地区からなる。

交通の面では、区の北西地域をJR根岸線京浜東北線)が横断し、また区の西部には柏尾川に沿って南北に東海道本線横須賀線が縦断し東京あるいは小田原横須賀方面と接続されている。区北部・南部に東西方向にそれぞれ環状3号道路と環状4号道路が通っている。

商業地は主に本郷台駅周辺と大船駅周辺。区役所や警察署など官公庁は本郷台駅周辺に集中している。南側の鎌倉市と接する部分にある大船の繁華街は横浜市栄区と鎌倉市の双方にまたがっており、大船駅のプラットフォームも横浜市栄区と鎌倉市の双方にまたがっている。

山林の面積は212haで、市域全体の約17.5%を占める。一方住宅地は市域の60.4%に過ぎず、横浜市全体と比較すると、宅地割合が少なく山林割合の多い地域である。

歴史 編集

栄区地域の歴史は、縄文時代にまでさかのぼることができ、公田ジョウロ塚遺跡や桂台遺跡などがある[1]古代には㹨川流域横穴墓群など、鎌倉型横穴墓をもつ横穴墓群の分布が特徴的であり、上郷深田遺跡では製鉄が行われた。鎌倉郡尺戸郷、荘園時代には山内荘が存在した。

いたち川は鎌倉時代には霊所とされ『吾妻鏡』に「㹨河」でお祓いをしたことが記述されている[2]。また小菅ヶ谷付近には宿場があり『徒然草』で知られる卜部兼好もこの付近に旅で来たらしく、『兼好家集』の中で「相模国いたち河という所にて、此の所の名を句の上にすえて旅の心を」と題して

  • かにして、ちにし日より、りのきて、風(ぜ)だに閨(ねや)を、らわざるらん

という和歌を詠んでいる[3]

相模国鎌倉郡であったため、特に、鎌倉時代には鎌倉幕府との結び付きが強く、流域の豊かな田園が食料生産を担い、古代から伝わる製鉄の技術とともに東北地方に対する軍事政策のうえで重要な役割を果たしていたと考えられており、笠間中央公園遺跡鎌倉道など数多くの史跡が残されている。本郷台駅前付近には、鎌倉幕府第3代執権北条泰時の娘「小菅ヶ谷殿」の居館小菅ヶ谷殿館があったと伝わる。

区内の長尾台町は長尾氏発祥の地で長尾城跡があり、越後戦国大名長尾景虎(後の上杉謙信)の父祖の地である。また、鎌倉が近いことから、中世の動乱期にたびたび戦場となっており、中村氏の一族、中村常宗が笠間に移り住み勢力を張った。金井には鎌倉氏の一派・金井氏が居住した。

戦前から戦後にかけて、小菅ヶ谷地区を中心に軍事施設の時代を経験する。1937年(昭和12年)には第一海軍燃料廠の建設が決定され、戦後の占領軍による接収は1967年(昭和42年)まで続いた。

明治時代から現代までの発展としては、1888年(明治21年)の大船駅の開業と翌年の横須賀線の開通による大船駅周辺の市街化と、1967年(昭和42年)の大船PX(占領軍物資倉庫群)返還以降の本郷台駅周辺の公共施設や高層住宅の建設、そして1960年代から1970年代(昭和40年代から50年代)にかけての丘陵地の大規模な住宅開発があげられる。その結果、現在の栄区域の人口は急増し、当時の戸塚区の人口も40万人を超えたため、住民サービスの低下を防ぐために戸塚区から栄区と泉区を分区した。栄区成立後は人口増加率が低下し、一時は人口減少状態となった、現在は再び増加基調に戻っている。

なお、1970年代半ばまでの本郷地区は、電話が横浜電話でなく鎌倉電話に含まれ、市外局番が他の市内と異なり市内へ掛けるのにも「045」をダイヤルしなければならなかった。

年表 編集

区名の由来 編集

栄区は典型的な瑞祥地名である。

区名は公募により選定し、本郷、豊田の両地区の共栄を期し、新しい区として未来に向けて、大きく栄えていくことを祈願し、明るく、華やかなイメージのある、簡潔で語調もよい区名を決定した[7]。(公募時に「戸塚A区」とされていたので「A」→「栄(えい)」とされたという説もある。)応募数の順位を下記に示す。

順位 区名
1位 本郷区
2位 南戸塚区
3位 湘南区
4位 栄区
5位 大船区
6位 根岸区
7位 光区
8位 戸塚南区
9位 上郷区
10位 桂区

人口 編集

  • 1990年 123,766
  • 1995年 122,904
  • 2000年 118,315
  • 2005年 123,802
  • 2010年 124,866
  • 2015年 122,171

町名 編集

栄区内では、一部の区域で住居表示に関する法律に基づく住居表示が実施されている。

栄区役所管内(54町丁)
町名 町名の読み 設置年月日 住居表示実施年月日 住居表示実施直前の町名 備考
上郷町 かみごうちょう 1939年4月1日 未実施
公田町 くでんちょう 1939年4月1日 未実施
中野町 なかのちょう 1939年4月1日 未実施
鍛冶ケ谷町 かじがやちょう 1939年4月1日 未実施
鍛冶ケ谷一丁目 かじがや 1996年10月21日 1996年10月21日 鍛冶ケ谷町、上郷町、中野町の各一部
鍛冶ケ谷二丁目 1996年10月21日 2001年10月22日 鍛冶ケ谷町、上郷町、中野町の各一部、鍛冶ケ谷町の一部
小菅ケ谷町 こすがやちょう 1939年4月1日 未実施
小菅ケ谷一丁目 こすがや 1994年9月26日 1994年9月26日 笠間町、桂町、公田町、飯島町、小菅ケ谷町、中野町の各一部
小菅ケ谷二丁目 1994年9月26日 1994年9月26日 笠間町、桂町、公田町、飯島町、小菅ケ谷町、中野町の各一部
小菅ケ谷三丁目 1995年10月16日 1995年10月16日 鍛冶ケ谷町、小菅ケ谷町の各一部
小菅ケ谷四丁目 1996年10月21日 1996年10月21日 小菅ケ谷町、小山台一丁目の各一部
桂町 かつらちょう 1939年4月1日 未実施
笠間町 かさまちょう 1939年4月1日 未実施
笠間一丁目 かさま 2000年10月23日 2000年10月23日 笠間町の一部
笠間二丁目 2000年10月23日 2000年10月23日 笠間町の一部
笠間三丁目 2000年10月23日 2000年10月23日 笠間町の一部
笠間四丁目 2000年10月23日 2000年10月23日 笠間町の一部
笠間五丁目 2000年10月23日 2000年10月23日 笠間町の一部
長尾台町 ながおだいちょう 1939年4月1日 未実施
田谷町 たやちょう 1939年4月1日 未実施
金井町 かないちょう 1939年4月1日 未実施
飯島町 いいじまちょう 1939年4月1日 未実施
長沼町 ながぬまちょう 1939年4月1日 未実施
本郷台一丁目 ほんごうだい 1989年8月21日 1989年8月21日 飯島町、上郷町、小菅ケ谷町の各一部
本郷台二丁目 1989年8月21日 1989年8月21日 飯島町、上郷町、小菅ケ谷町の各一部
本郷台三丁目 1989年8月21日 1989年8月21日 飯島町、上郷町、小菅ケ谷町の各一部
本郷台四丁目 1989年8月21日 1989年8月21日 飯島町、上郷町、小菅ケ谷町の各一部
本郷台五丁目 1989年8月21日 1989年8月21日 飯島町、上郷町、小菅ケ谷町の各一部
若竹町 わかたけちょう 1973年6月11日 1973年6月11日 中野町、上郷町の各一部
元大橋一丁目 もとおおはし 1973年6月11日 1973年6月11日 鍛冶ケ谷町、中野町、上郷町の各一部
元大橋二丁目 1973年6月11日 1973年6月11日 鍛冶ケ谷町、中野町、上郷町の各一部
庄戸一丁目 しょうど 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
庄戸二丁目 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
庄戸三丁目 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
庄戸四丁目 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
庄戸五丁目 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
長倉町 ながくらちょう 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
東上郷町 ひがしかみごうちょう 1982年7月19日 1982年7月19日 上郷町の一部
犬山町 いのやまちょう 1983年7月18日 1983年7月18日 上郷町の一部
尾月 おづき 1983年7月18日 1983年7月18日 上郷町の一部
上之町 かみのちょう 1983年7月18日 1983年7月18日 上郷町の一部
亀井町 かめいちょう 1984年7月23日 1984年7月23日 上郷町の一部
野七里一丁目 のしちり 1984年7月23日 1984年7月23日 上郷町の一部
野七里二丁目 1984年7月23日 1984年7月23日 上郷町の一部
小山台一丁目 こやまだい 1994年9月26日 1994年9月26日 小菅ケ谷町の一部
小山台二丁目 1994年9月26日 1994年9月26日 小菅ケ谷町の一部
柏陽 はくよう 1995年10月16日 1995年10月16日 鍛冶ケ谷町、桂町、上郷町、公田町、小菅ケ谷町、中野町の各一部
桂台北 かつらだいきた 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町、中野町の各一部
桂台中 かつらだいなか 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町の各一部
桂台西一丁目 かつらだいにし 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町、中野町の各一部
桂台西二丁目 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町、中野町の各一部
桂台東 かつらだいひがし 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町の一部
桂台南一丁目 かつらだいみなみ 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町の各一部
桂台南二丁目 1998年10月19日 1998年10月19日 上郷町、公田町の各一部

住宅 編集

大規模マンション 編集

団地 編集

  • UR 公田町団地(公田町、賃貸1160 1964年 現存 ストック活用)
  • UR 飯島団地(飯島町)
  • 県営みどり野ハイツ(飯島町)
  • 県営かいがら坂ハイツ(長沼町)
  • 国家公務員南小菅ケ谷住宅 (小菅ケ谷 解体済み)

行政 編集

  • 区長:冨士田学(2020年4月1日 - )
前区長:星崎雅代(2019年4月1日 - 2020年3月31日)

栄区役所庁舎本館は移転前の本郷台小学校の校舎を改築して使用している。体育館棟は栄スポーツセンターの新設とともに取り壊され、庁舎新館が建設された。

立法 編集

  • 栄区の横浜市議会議員定数: 3名
  • 栄区の神奈川県議会議員定数: 1名
  • 衆議院議員定数: 神奈川4区(栄区・鎌倉市・逗子市・葉山町)として1名

経済 編集

産業 編集

産業人口 編集

栄区の完全失業率は、18区中5番目に高く、1995年(平成7年)と比べ2000年(平成12年)度では0.6ポイント上昇している。第3次産業が、事業所数・従業者数ともに全体の約75%を占める。

産業 総数(人) 構成比(%)
第一次産業 330 200 130 0.57
第二次産業 14,120 11,273 2,847 24.48
第三次産業 42,241 23,944 18,297 73.23

主な産業 編集

  • 農林業
  • 工業

精密機械工業の大規模工場が多く、1事業所当たりの従業員数では市内1位、売上高では磯子区に次いでいる。

  • 商業

商店数、従業者数、年間商品販売額ともに市内18区中でもっとも少ない。また、2002年(平成14年)度調査によると、栄区内の商店数、従業者数、年間商品販売額はともに減少中。

商店総数 従業者数(人) 年間商品販売額(百万円)
横浜市全体 29,420 256,793 9,677,412
栄区 590 4,935 125,739

健康 編集

  • 平均年齢 46.08歳(2013年1月1日)
平均年齢は、横浜市18区中三番目に高い(横浜市の平均は44.13歳)。
  • 年齢別人口割合 0〜14歳:13.2%、15〜64歳: 60.1%、65歳以上: 26.5%(2013年1月1日)
65歳以上高齢化率は横浜市18区中一番高い(横浜市の平均は21.3%)。

医療 編集

教育 編集

高等学校 編集

中学校 編集

2015年4月に上郷中学校に横浜市立庄戸中学校が統合された[8]

小学校 編集

2006年3月末、上郷南小学校と野七里小学校が統合され庄戸小学校に、犬山小学校、矢沢小学校が統合され上郷小学校になった。

特別支援学校 編集

  • 横浜市立本郷特別支援学校

保育園 編集

幼稚園 編集

交通 編集

本郷台駅

鉄道 編集

東日本旅客鉄道(JR東日本)
  根岸線

バス 編集

一般路線バス

横浜市営バスは2006年3月26日をもって区内の138系統・139系統を神奈川中央交通に譲渡し、これにより区内の一般路線はなくなった。

コミュニティバス

道路 編集

人口 編集

総数(人) 1947年=1.00
1947年 11,659 1.00
1955年 13,852 1.19
1965年 30,304 2.60
1970年 50,170 4.30
1975年 75,862 6.51
1980年 104,192 8.94
1985年 118,029 10.12
1986年* 119,263 10.23
1990年 123,766 10.62
1995年 122,904 10.54
2000年 118,315 10.15
2005年 123,802 10.62
2010年 126,575 10.86

出典:栄区ホームページ 「データでみる栄区 2011」[1]
各年の人口は国勢調査による、9月30日時点の数字。ただし、1986年のみは分区時の11月3日の数字。

友好交流都市 編集

名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事 編集

主な施設 編集

名所 編集

遺跡・史跡 編集

寺社 編集

  • 皇女御前社(皇女神社)- 上臈塚伝説に因んで照玉姫を祀る神社[15]
  • 玉泉寺 - 1335年(建武2年)建立。誠拙和尚ゆかりの寺。
  • 長光寺 - 徳川家康にちなむ伝説あり。
  • 長慶寺 - 徳川家康にちなむ伝説あり。
  • 證菩提寺 - 源頼朝が、腹心の家来である佐奈田義忠の菩提を弔うために建立したと伝わり、創建当時は大規模な寺域で、幕府の前線基地でもあった。
  • 光明寺 - 7世紀建立と伝わる。
  • 定泉寺 - 田谷の洞窟がある。

自然 編集

出身者 編集

ゆかりのある有名人 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 武蔵国相模国国境(くにざかい)のこと。

出典 編集

  1. ^ a b 栄の歴史編集委員会(2013年)15ページ
  2. ^ 平凡社(1984年)196ページ
  3. ^ 栄の歴史編集委員会(2013年)30ページ
  4. ^ a b c d e 栄区のあゆみ 栄区総務部
  5. ^ 磯子区歴史年表 昭和21年~昭和45年 磯子区総務部
  6. ^ 磯子区歴史年表 昭和46年~平成10年 磯子区総務部
  7. ^ 栄区の町名とその由来”. www.city.yokohama.lg.jp. 2021年4月1日閲覧。
  8. ^ タウンニュース栄区版 2013年7月25日号
  9. ^ 横浜市指定文化財 旧小岩井家住宅主屋および長屋門(株式会社建文)
  10. ^ 栄区地域振興課(2015年)26ページ
  11. ^ 栄の歴史編集委員会(2013年)17-19ページ
  12. ^ 栄区地域振興課(2015年)32・34ページ
  13. ^ a b 栄区地域振興課(2015年)45ページ
  14. ^ 海への進出-縄文時代”. 神奈川県立歴史博物館. 2020年5月15日閲覧。
  15. ^ a b c 栄区地域振興課(2015年)46ページ
  16. ^ 栄区地域振興課(2015年)58ページ
  17. ^ 栄区地域振興課(2015年)59ページ
  18. ^ 栄区地域振興課(2015年)38ページ
  19. ^ 栄区地域振興課(2015年)22ページ
  20. ^ 栄区地域振興課(2015年)37ページ
  21. ^ 栄区地域振興課(2015年)20ページ

参考資料 編集

  • 平凡社日本歴史地名大系』第14巻「神奈川県の地名」1984年(昭和59年)
  • 栄の歴史編集委員会『栄の歴史』栄区地域振興課 2013年(平成25年)3月
  • 栄区地域振興課『栄区郷土史ハンドブック(第5刷)』横浜市 2015年(平成27年)3月

関連項目 編集

外部リンク 編集