灯籠

日本の伝統的な照明器具の一つ

灯籠(とうろう)は、東アジアの伝統的な照明器具の一種であり、日本中国朝鮮半島ベトナムなどの国々に広く分布している。

灯籠
中国語
中国語 燈籠
繁体字 燈籠
簡体字 灯笼
発音記号
朝鮮語
ハングル등롱
漢字燈籠
日本語
漢字 灯籠
ひらがな とうろう

名称 編集

「灯」の旧字体は「」で、「籠」の異体字(拡張新字体)は「」であることから、燈籠灯篭などの異体字による漢字表記も多く存在している。

本項では、固有名詞以外の漢字は全て常用漢字表の字体に従い、「灯籠」の表記に統一する。

概要 編集

元は文字通り、灯(あかり)籠(かご)であり、あかりのなどで消えないように木枠となどで囲いをしたものである。木枠で小型のものは神棚などで用いられる。また、寺院の庭園など屋外には堅牢な石灯籠金属灯籠(銅灯籠など)が設けられる。吊下型の吊下灯籠もある。

灯籠は仏教の伝来とともに渡来し、寺院建設が盛んになった奈良時代から多く作られるようになり[1]、多くは僧侶が用いたとされる。平安時代に至ると、神社の献灯としても用いられるようになる[2]。その後室内で用いるものは行灯(あんどん)、折りたたみ式で携帯も可能なものは提灯と分化した。灯籠と言った場合、神社寺院や旧街道などに多く存在する屋外の固定式を指すことが多い。また仏具としての室内用の灯籠(置灯籠・釣灯籠)や祭礼用などで移動可能なものもある(青森ねぶた祭り熊本山鹿灯籠など)。近代以前はに設置され灯台常夜灯)としても使用された。

光源としては、ろうそくが用いられた。現代では電気プロパンガスによるものもある。日本庭園における石灯籠のように実用ではなく装飾目的になっているものもある。

灯籠の役割 編集

寺院 編集

灯籠はもともと仏像に清浄な灯りを献じるために仏堂などの前面に配置された。古代寺院においては、伽藍の中軸線上に1基置かれるのが通例だった。そのため、左右非対称の伽藍には灯籠の遺構は見られず、中軸線が確認できる伽藍においてのみ確認されている。これは平安末から中世における浄土寺院においても同様である。[3]

神社 編集

神社では、神前の「みあかし」用、献灯用に灯籠が用いられる。また、庭上用、社頭装飾用等にも使用される。なお、神社での灯籠の種類は、木灯籠、金灯籠、石灯籠、釣灯籠、懸灯籠等に分類される。ところで、神葬祭や夜間の神事では、陰灯(かげとう)を使用する。これは陰灯籠(かげとうろう)とも言う。降神、昇神、遷座の儀など、灯火を消して行う浄暗中の神事に、明かりを隠して、かすかに一方だけを照らすためのもの。陰灯は檜薄板製で長方形の箱状で正面には長方形の小穴があり、明かり取りとし、中で蝋燭をともす。

日本庭園 編集

日本には飛鳥時代に仏教が伝来したのと同時に灯籠が伝来した。初期はその多くが「献灯」と呼ばれ、社寺に設置されていたが庭園文化の発達と共に園内に鑑賞目的で石灯籠が設置されるようになった。石質は花崗岩が主流で、その中でも御影石は石灯籠の中で最も多い。

石灯籠 編集

各部の名称 編集

上からの各部の名称

宝珠(擬宝珠
笠の頂上に載る玉ねぎ状のもの。
火袋の屋根になる部分。六角形や四角形が主流であるが雪見型の円形などもある。多角形の場合は宝珠の下部分から角部分に向かって線が伸び、突端にわらび手という装飾が施されることもある。
火袋
灯火が入る部分で灯籠の主役部分である。この部分だけは省略することができない。装飾目的の場合は火をともすことは無いが、実用性が求められる場合には電気等により明りがともされる。
中台
火袋を支える部分で最下部の基礎と対照的な形をとる。蓮弁や格狭間という装飾を施すことがある。
竿
もっとも長いの部分。雪見型に代表される背の低い灯籠ではよく省略される。円筒状が一般的であるが、四角形、六角形、八角形のものも見られる。節と呼ばれる装飾がよく用いられる。
基礎
最下部の足となる部分である。六角形や円形が主流。雪見型灯籠などでは3本や4本の足で構成される。

代表的な種類 編集

春日型
寺社で多く見られるもので実用性も高い。竿が長く火袋が高い位置にあるのが特徴である。園路沿いに設置するのが一般的。適切な固定措置をとらないと地震時には倒壊する危険性が高い。
雪見型
雪見とは「浮見」が変化した語である。竿と中台が無い為、高さが低い。主に水面を照らすために用いられるので笠の部分が大きく水際に設置することが多い。足は3本のものが主流。笠の丸い丸雪見と六角形の六角雪見がある。
岬型
雪見型から基礎部分(足)を取り除いたもの。州浜や護岸石組の突端に設置する。灯台を模したものである。
織部形灯籠
つくばいの鉢明りとして使用する、四角形の火袋を持つ活込み型の灯籠。その為、高さの調節が可能である。露地で使用される。奇抜な形から江戸時代茶人古田織部好みの灯籠ということで「織部」の名が着せられる。石竿に十字模様や聖人(実際は地蔵菩薩)のようにも見える石像が刻まれており、これをもってキリシタン灯籠と呼ばれることもある。ただし、織部灯籠をキリシタン遺物と結びつける説が現れたのは昭和初期からであり、否定的な学者も多い。[4]
遠州形灯籠

小堀遠州の意匠によるもので、笠が特徴的で、小堀家の家紋である七宝紋の彫りのあるものもある。

その他の種類

日本一高い石灯籠 編集

京都高瀬川二条苑にある吾妻屋風燈籠が、日本国内に現存する石灯籠で最も大きいとされる。高さは13メートル[5][6]

紙灯籠・竹灯籠 編集

紙灯籠 編集

紙製の灯籠に紙灯籠がある。和紙と糊だけで作られた灯籠に熊本県山鹿市の山鹿灯籠がある[7]

竹灯籠 編集

製の灯籠を竹灯籠という。ガーデニング、インテリア、イベントや街路のライトアップに用いられる[8]

ギャラリー 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 重要文化財「東照宮社殿」の附(つけたり)としての指定。

出典 編集

  1. ^ 小池康寿, 2015 & p15.
  2. ^ 小池, 2015 & p15.
  3. ^ 平澤麻衣子, 「平等院庭園における燈籠の配置に関する研究」『ランドスケープ研究』 日本造園学会 68巻 5号 2005年 p.365-368, doi:10.5632/jila.68.365
  4. ^ 井上章一『南蛮幻想』 文藝春秋、1998年、210頁、ISBN 978-4163543406
  5. ^ 現地案内板(2012年6月16日閲覧)
  6. ^ 「がんこ高瀬川二条苑 高瀬川源流庭園絵巻」(がんこフードサービス発行)(2012年9月1日閲覧)
  7. ^ 近代の山鹿の偉人たちシリーズ12 松本清記”. 山鹿市教育委員会. 2019年12月13日閲覧。
  8. ^ たけ灯籠”. 石川県. 2019年12月13日閲覧。

参考文献 編集

  • 小池康寿『日本人なら知っておきたい正しい家相の本』プレジデント社、2015年11月。ISBN 9784833421492 

関連項目 編集