特定都区市内

JRの運賃制度の一つ

特定都区市内(とくていとくしない)は、JR運賃計算の特例の一つである。

東京駅JR東日本)の駅名標。右上に付いている印「山」「区」が特定都区市内の表記で、この場合東京駅が東京山手線内・東京都区内に含まれることを意味する。

概要 編集

本特例はJRの旅客営業規則(旅規)第86条並びに第87条の規定に基づく。目的は大都市の駅での出札業務の簡素化である。

導入されたのは高度経済成長期の真っ直中だった時期であるが、背景として、その高度経済成長の進捗に伴ってビジネスや観光などを目的とする長距離移動需要が高まっていたことがあった。

当時、普通乗車券の発売には着駅毎に常備券を用意するか、あるいは手計算により運賃を算出した上で発着駅などを補充券に筆書し発行するかのいずれかによらなければならなかった[注 1]。前記の長距離移動需要の高まりを背景に、当時の国鉄は本制度を導入した。すなわち、当該特定都区市内の中心駅から片道の営業キロが一定以上であれば、特定都区市内駅にあるすべての駅を、いわば大きな一つの駅とみなして乗車券の発券処理をすることになるので、常備券整備や運賃計算の簡素化を図ることができる。 2022年現在は札幌仙台東京横浜名古屋京都大阪神戸広島北九州福岡、の計11都市(これらを「特定都区市内」と呼称)に各々所在する駅を対象に適用されている。「東京都区」内に限っては、片道営業キロによって適用される旅規条文及び対象範囲が異なる《詳細は後記参照》。

特例の内容 編集

旅客営業規則(旅規)より 編集

規定内容 編集

  • 特定都区市内に所在する駅と、当該特定都区市内の中心駅から片道の営業キロが200kmを超える駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点または終点とした営業キロまたは運賃計算キロによって計算する《旅規86条》。
  • 「東京都区内」の中で特に山手線内各駅および山手線の内側に所在する中央本線総武本線の各駅(これらを「東京山手線内」と呼称)については、東京山手線内の中心駅・東京駅からの片道営業キロが100km超200km以下(1km未満は切り上げ)の区間の駅との相互間の片道普通旅客運賃についても前記特定都区市内に所在する駅の場合と同様の計算法により取り扱われる《旅規87条》。
  • 以上旅規86条・87条による規定は、特定都区市内に所在する駅を発駅とする場合で一旦その特定都区市内の外を経たあと、再び発駅が属する特定都区市内を「通過」してから着駅に至る場合、あるいは特定都区市内に所在する駅を着駅とする場合で発駅より一旦着駅が属する特定都区市内を「通過」し外に出てから着駅に至る場合、適用対象外となる[注 2]
    • 「大阪市内」発着の乗車券については、特例として区域外の尼崎駅久宝寺駅を経由することができる。途中下車はできない[4]。本特例は尼崎駅・久宝寺駅を経由することを事実上「外を経て」いないものとみなすものであるが、旅客営業規則に規定がないため、原則通り経路指定単駅発着の乗車券を購入することで尼崎駅・久宝寺駅および経路上の大阪市内各駅で途中下車することも可能である。
    • なお、その他連絡運輸の範囲外や1度も当該市内を出ないで完結する[注 3]乗車券などでやむを得ない場合も市内制度は適用せず単駅指定となる。
  • 旅規86条・87条の規定により運賃計算される普通乗車券の有効期間は、その旅客運賃の計算に用いる中心駅から、または中心駅までの営業キロによる《旅規154条2項》。
  • 旅規86条・87条の規定により発売した乗車券を使用する場合は、当該乗車券の券面に表示された特定都区市内の各駅では途中下車できない《旅規156条》。
  • 特定都区市内の各駅で下車した場合には前途無効の扱いとなり当該乗車券は回収される《旅規165条》。ただし発駅と同一の特定都区市内の駅に下車した場合で実際の乗車駅と下車駅との区間に対する普通運賃を別途支払った場合、当該乗車券は旅行開始前または使用開始前のものと同一の効力を持つものとして取り扱われる《旅規166条》。

具体例 編集

杉本町は大阪市内、五日市は広島市内にそれぞれ所在する駅で、両駅とも特定都区市内に所在する駅でもある。そして、「大阪市内」の中心駅・大阪駅から「広島市内」の中心駅・広島駅までの営業キロは337.8kmであり、200kmを超えている。よって発券される普通乗車券は、券面表示が「大阪市内→広島市内」、有効期間は3日となる。
なお、この普通乗車券を使って新大阪・広島間で山陽新幹線を利用する場合、実際には大阪・新大阪間で重複乗車となってしまうが、これに関しては規程150条(後記)により大阪・新大阪間の運賃を別途支払う必要は無い。
目黒は「東京山手線内」に所在する駅で、その中心駅たる東京から上田までの営業キロは189.2kmとなり、100km超200km以下の範囲内に収まっていることから、発券される普通乗車券の券面表示は「東京山手線内⇒上田」となる。有効期間は2日。
杉本町は大阪市内に所在し、名古屋市内駅である大高は名古屋市内に所在する、いずれも特定都区市内に属する駅である。杉本町から大高までの営業キロは220.4kmであるが、杉本町の属する「大阪市内」の中心駅・大阪駅から大高の属する「名古屋市内」の中心駅・名古屋駅までの営業キロは190.4kmと200kmに満たない。
その一方で、杉本町・名古屋間は208.0km、大阪・大高間は202.8kmといずれも200km超となっていることから、発券される普通乗車券の券面表示は「杉本町(単駅)⇒名古屋市内」か「大阪市内⇒大高(単駅)」のいずれかとなる。有効期間はいずれの場合も2日。なお、このようなケースでは、乗客から特に求めがない限り、乗車後の予定変更に対応できるよう、着駅側についてのみ本特例が適用される。
  • 東京から新幹線と在来線を乗り継ぎ富士まで、そこから身延線甲府に抜けた後、中央本線・総武本線で千葉まで
具体的には、以下に示す経路を辿る
[東京]- (東海道新幹線) - 三島 - (東海道本線・静岡地区) - 富士 - (身延線) - 甲府 - (中央本線) - 御茶ノ水 - (総武本線) - [千葉]
この経路を辿って千葉に向かう場合、東京から千葉までの営業キロは404.8kmとなる。ただし、東京から東海道新幹線(東海道本線)に乗って一旦「東京都区内」を出たあと、甲府からの中央本線にて再度「東京都区内」に入り総武本線にて通過する経路であることから、本特例の適用対象とはならず、「東京都区内」発とはならない。そのため、この経路で発券される普通乗車券の券面表示は「東京(単駅) ⇒ 千葉〔経由:新幹線・東海道・身延・中央東・総武〕」となり、よって「東京都区内」に所在する駅も含め区間内の全ての駅で途中下車が可能となる。有効期間4日間。

旅客営業取扱基準規程(規程)より 編集

  • 中心駅からの営業キロによる本特例適用の有無を原因として、適用非対象駅までの運賃がそれより遠方にある適用対象駅までの運賃より高額になる場合は、適用非対象駅までの運賃を適用対象駅までの運賃と同額にすることができる《規程114条》。
実際の発駅(または着駅)と運賃計算上の起点駅(または終点駅)が異なり、中心駅から200km前後の場合にこうした矛盾が生じることがある。
【規定114条適用例】作並仙山線)から笈川(磐越西線)まで[注 7]
作並は「仙台市内」の駅ではあるが、中心となる仙台・笈川間の営業キロが200km以下(198.3km)なので本特例は適用されない。従って作並・笈川間の運賃は同区間の営業キロ227.0kmをそのまま適用して4070円となる。しかし笈川の一駅先の塩川までを考えた場合、中心駅・仙台と塩川の間の営業キロが200km超(200.2km)となることから本特例が適用されて3740円となり、「近い駅までの方が運賃が高くなる」という矛盾が生じる。その為、作並・笈川間の運賃は本特例の適用される仙台・塩川間の運賃に合わせ3740円とすることができる。乗車券の券面表示は「作並(単駅)→笈川」で、3日間有効。
  • 東京近郊区間内相互発着の場合に於いて、「特定都区市内」中心駅からの券面表示経路による営業キロが200km超であっても、中心駅からの営業キロが200km以下になる経路が存在する場合は、本特例を適用しないで運賃を計算することができる《規程115条1項》。
  • 東京近郊区間内相互発着の場合において、東京からの券面表示経路による営業キロが100km超であっても、東京からの営業キロが100km以下になる経路が存在する場合は、東京山手線内発着の特例を適用しないで運賃を計算することができる《規程115条2項》。
上記2本の規定は、2009年3月14日に制定された規程(新)115条によるものである。
【規程(新)115条適用例】小岩(総武本線)から植田常磐線)まで

東京都区内に所在する小岩から福島県内に所在する植田までの最短経路は「総武本線 - 武蔵野線 - 常磐線」で、営業キロは189.2km。当該経路のままで「東京都区内」の中心駅・東京から見た場合の営業キロが200km超(202.0km)となっていることから、距離の上では本特例が適用されて「東京都区内 ⇒ 植田〔経由:総武本線、武蔵野線、常磐線〕」という券面表示の普通乗車券(運賃3740円)が発券されるところである。しかし、乗車区間および中心駅・東京から着駅・植田までの区間がいずれも東京近郊区間内で完結していること、更に中心駅・東京から植田までの区間の最短経路である「[東京]- (東北本線) - 日暮里 - (常磐線) - [植田]」を辿った場合の営業キロが200km以下(193.6km)となることから、券面表示「小岩(単駅) ⇒ 植田〔経由:総武本線、武蔵野線、常磐線〕」の普通乗車券(運賃3410円)の発券を受けることができる。なお、東京近郊区間内で完結することから有効期間は1日(当日限り有効)〔旅規154条〕となり、かつ「途中下車不可」の扱い〔旅規156条2号〕となる。

  • 大阪市内発着の乗車券で大阪・北新地両駅相互の乗り継ぎ、神戸市内発着の乗車券で新神戸と「三ノ宮元町神戸新長田の各駅」間相互乗り継ぐための一時出場が認められている《規程145条2項》。
  • 特定都区市内発着となる普通乗車券を所持する旅客が、列車に乗り継ぐため同区間内の一部が複乗となる場合は、旅客運賃を収受しないで当該区間の乗車を認める《規程150条》。
【規程150条適用例】

「東京都区内 → 松本(経由:中央東・篠ノ井)」と券面表示された普通乗車券を使って西荻窪から乗車し、新宿特急列車(「あずさ」など)に乗り継いで折り返すことが出来る。

  • 大阪市内発着となる普通乗車券を所持する旅客は、別途運賃不要で以下の区間を区間外乗車することができる《規程150条2項》。
    • 塚本を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「加島 - 尼崎間」
    • 加島を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「塚本 - 尼崎間」
    • その他の駅を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「塚本 - 尼崎 - 加島間(この場合、尼崎では途中下車不可)」
      • 尼崎駅が大阪市内駅ではないものの、上記の乗車をする場合に限っては塚本 - 尼崎 - 加島間も大阪市内区間と同様の扱いを受けられるものである。
      • 同様の特例は、大阪市内駅ではない久宝寺駅を挟んだ「加美 - 久宝寺 - 新加美」間にも適用される[4]
  • 東京都区内に京葉線葛西臨海公園経由で出入りする場合でも、東京都区内発着の乗車券と総武本線・小岩発着の乗車券を併用することで乗車できる。同じく、横浜市内発着の乗車券と根岸線本郷台発着の乗車券を使って東海道本線または横須賀線戸塚経由で乗車することや、大阪市内発着の乗車券とJR東西線・加島発着の乗車券を使って東海道本線(JR神戸線)・塚本経由で乗車することもできる《規程155条[注 8]》。

設定区域一覧 編集

  • 現在本特例が適用されているのは、札幌市・仙台市・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市・広島市・北九州市・福岡市の計10都市と東京23区内。
  • 駅の設定は基本的に各市の市域内。ただし、(JRが定める)中心駅へJR線だけで行くために一旦市外に出なければならない駅の扱いは駅により異なる。神戸市に所在する道場や福岡市内の筑肥線各駅は除外されている[注 9]。一方で山陽新幹線新神戸と相鉄線直通列車羽沢横浜国大[注 10]は含まれている。また横浜市内の矢向や大阪市内の新加美、広島市内の矢野などから中心駅への経路には、特定都区市内に指定された市以外の市町を挟むが、便宜上他市町の駅も含める。この場合、乗車券の券面にこれら除外駅や含まれる駅を表記(横浜市内の場合は、「横浜市内・川崎・鶴見線内」、または「横浜市内・川崎」と表記)する場合がある(旅規187条3項)[注 11]
    • 当該都区市内での新線開業や新駅開業、市町村合併による市域拡大の場合は、当該の新駅が既存のJR線内に当該都区市内のみで接続する場合に限り、当該都区市内ゾーンへの組入れが行われている。
      • 1983年の筑肥線「博多 - 姪浜」間廃止までは、廃止区間の中間駅に加えて姪浜・今宿周船寺の各駅も福岡市内の駅に入っていたが、廃止に伴い3駅は除外された[注 12]
      • 京葉線新木場葛西臨海公園両駅の場合は、1988年の開業当初は都区内では「独立」したJR線のため東京都区内ゾーンに組み入れられなかったが、その後1990年に東京まで延伸開業した際に、同時に開業した八丁堀などの途中駅とともに東京都区内ゾーンに組み入れられた。
      • 1997年(平成9年)3月8日の片町線(学研都市線)「京橋 - 片町」間廃止に伴い、片町駅が除外された。また、同日のJR東西線開業に伴い、尼崎駅を除く同線の各駅を大阪市内駅に追加。
        • 上記の追加に伴い、市外乗車「塚本 - 尼崎 - 加島」間および大阪駅と北新地駅との乗り継ぎの特例が設定される。
      • 仙台市内に属する仙台を除く仙山線の駅は、設定当初は北仙台1駅のみだったが、市域拡大と新駅開業に伴い2022年現在では臨時駅を含めて下図の12駅と増加している。なお、臨時駅である西仙台ハイランド八ツ森両駅も2014年(平成26年)3月15日に廃止される[5]まで含まれていた[6]
      • 2003年(平成15年)12月1日の可部線可部 - 三段峡」間廃止に伴い、河戸から小河内までの各駅が除外された[注 13][注 14]
      • 2017年(平成29年)3月4日の可部線「可部 - あき亀山」間開業に伴い、河戸帆待川・あき亀山両駅を広島市内駅に追加[7][8]
      • 2019年(平成31年)3月16日におおさか東線「新大阪 - 放出」間開業に伴い、久宝寺駅を除く同線の各駅を大阪市内駅に追加[注 15][9]
        • 上記の追加に伴い、市外乗車「新加美 - 久宝寺 - 加美」間の特例が設定される[4]
      • 2019年(令和元年)11月30日に相鉄・JR直通線(神奈川東部方面線鶴見 - 羽沢横浜国大間開業に伴い、羽沢横浜国大駅を横浜市内駅に追加[10]
        • 上記の追加に伴い、市外乗車「鶴見 - 武蔵小杉」間の特例が設定される[11]
  • 各設定区域には、「鉄道・航路旅客運賃・料金算出表」において事務管理コードが設定されている。 
  • 本特例が適用されている都区市内に所在する各駅の駅名標の右上または左上には、それを示す記号(下表にて列挙する各カテゴリの先頭の四角マーク)が付いている。
記号 設定名称
(中心駅)
路線・区間 路線図
オレンジ色の線は新幹線を表す
  札幌市内
札幌駅
 
  仙台市内
仙台駅
 
  東京都区内
東京駅
 
(緑線の部分が東京山手線内)
  東京山手線内
(東京駅)[注 17]
  • 東海道本線
    • 東海道線・京浜東北線:東京 - 品川間
  • 東北本線
    • 宇都宮線:東京 - 上野間
    • 京浜東北線:東京 - 田端
  • 山手線:全線全駅
  • 中央本線(中央線快速中央・総武緩行線):神田 - 代々木間
  • 総武本線(中央・総武緩行線):秋葉原 - 御茶ノ水間
  横浜市内
横浜駅
便宜上、横浜市外である川崎[注 18]尻手[注 19]八丁畷[注 18]川崎新町[注 18]小田栄[注 18]浜川崎[注 18]武蔵白石[注 18]昭和[注 18]および扇町[注 18]を含む。
横浜市内と市外にまたがり所在地表記が横浜市外(鎌倉市)となる大船を除く。
市外乗車(鶴見 - 新川崎 - 武蔵小杉)の特例が存在する[11]
 
  名古屋市内
名古屋駅
 
  京都市内
京都駅
便宜上、京都市内と市外にまたがり所在地表記が京都市外(亀岡市)となる位置に移転した保津峡山陰本線)を含む。  
  大阪市内
大阪駅
便宜上、大阪市外である南吹田[注 20]高井田中央[注 21]JR河内永和[注 21]JR俊徳道[注 21]JR長瀬[注 21]および衣摺加美北[注 21](おおさか東線)を含む。
市外乗車(塚本 - 尼崎 - 加島間、加美 - 久宝寺 - 新加美間)[4]及び大阪駅と北新地駅との乗り継ぎの特例が存在する。
 
  神戸市内
神戸駅
神戸市北区にある道場福知山線)を除く。
新神戸駅と在来線との乗り継ぎの特例が存在する。
 
  広島市内
広島駅
便宜上、広島市外である海田市[注 22]および向洋[注 23](山陽本線)を含む。  
  北九州市内
小倉駅
 
  福岡市内
博多駅
福岡市西区にある姪浜下山門今宿九大学研都市および周船寺筑肥線)を除く。  

沿革 編集

  • 1939年10月15日 - 東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸から300kmを超える駅について、各都市中心駅までの運賃で当該市内各駅に有効とする六大都市制度を制定
  • 1942年4月1日 - 六大都市制度を151km以上に変更
  • 1944年4月1日 - 六大都市制度を廃止。二大都市制度を東京と大阪に適用。101km以上に変更。東京電車環状線内制度を東京駅から51km以上の駅に設定
  • 1957年4月1日 - 二大都市制度を151km以上に変更
  • 1961年4月6日 - 二大都市制度を201km以上に変更
  • 1969年5月10日 - 二大都市制度に横浜、名古屋、京都、神戸各市内を追加、特定都区市内制度に変更(旧六大都市制度の事実上の復活)
  • 1972年9月1日 - 特定都区市内制度に札幌、仙台、広島、北九州、福岡各市を追加。東京電車環状線内を「東京山手線内」に変更[12]

特別企画乗車券・IC乗車券での例外 編集

普通乗車券とは別の規定により発売される特別企画乗車券(トクトクきっぷ)の中には、過去あるいは現在時点で、本特例で規定されている条項にかかわらず発駅または着駅として特定都区市内エリアを設定したり、本特例の適用対象都市・都区以外の都市やエリアに対して本特例に準じた取扱を行われたりするものが散見される。IC乗車券(SF利用)・新幹線専用の企画乗車券(IC乗車券・紙の乗車券とも)の場合当制度が利用できない。

営業キロの例外 編集

新幹線回数券や“早特きっぷ”類などのトクトクきっぷは、利便性を考慮して、中心駅から200km以下の区間であっても100km超の中距離区間であれば、特定都区市内制度を適用している場合がある。

そのため、設定区間によっては通常の乗車券ではあり得ない券面表示になることもある。以下にその該当例を列挙する。

  • 「名古屋(市内)⇔新大阪(市内)」(名古屋・大阪間190.4km)
  • 「仙台(市内)⇔盛岡」(仙台・盛岡間183.5km)
  • 「新宿(都区内)⇔“甲府 - 竜王”」(東京・甲府間134.1km)
  • 「新横浜(市内)⇔“新富士 - 静岡”」(横浜・新富士間:経由新横浜125.3km)
  • 「東京(都区内)⇔安中榛名」(東京・安中榛名間123.5km)
  • 「東京(都区内)⇔宇都宮」(東京・宇都宮間109.5km)
  • 「東京(都区内)⇔“高崎 - 前橋”」(東京・高崎間105.0km)
  • 「上野(都区内)⇔“友部 - 勝田”」(東京・友部間104.6km)
  • 「東京(都区内)⇔“熱海 - 静岡”」(東京・熱海間104.6km)

新幹線専用の企画乗車券の例外 編集

東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の「エクスプレス予約のEX予約」「スマートEX」、東北新幹線上越新幹線北海道新幹線・北陸新幹線・山形新幹線秋田新幹線の「新幹線eチケットタッチでGo!新幹線」の商品は、乗車券部分と特急券部分が一体化しており、特定都区市内制度は利用できない。利用区間によっては乗車券と特急券を別に購入する方が安くなる場合がある[注 26]

また「ぷらっとこだま」は指定改札しか通過できない為特定都区市内制度は利用できない。

設定都市(エリア)の例外 編集

トクトクきっぷの中には、現在本特例にて規定されている11都市・都区部以外の都市・エリアに対し、本特例と同様の取扱方を行うものが存在する。

過去のケース 編集

『ミニ周遊券』・『ワイド周遊券』・『ニューワイド周遊券』といった「周遊券」類などのトクトクきっぷで、当時国鉄と提携していた日本交通公社(現・JTB)により「函館市」・「新潟市」・「千葉市」・「高松市」各エリアを発着とするものが、周遊券が廃止された1998年3月31日まで設定されていた。

また東海道新幹線区間の新幹線回数券で、「千葉市内」発着のものが設定されたことがある。

JR九州が企画・発売したトクトクきっぷのうち「熊本」発着が設定されている商品の中には、「熊本」のみの単駅指定とするのではなく「上熊本・『熊本〜水前寺』間」エリアを独自設定した上で“発着駅”として指定しているものが存在した。2021年3月まで発売されていた『九州新幹線2枚きっぷ』・『九州新幹線日帰り2枚きっぷ』、2020年3月まで発売されていた『ガチきっぷ』、2015年まで発売されていた九州新幹線「つばめ」で博多・熊本間を往復することに特化した『ビックリつばめ2枚きっぷ』が該当した。

またJR東日本が2009年の年末年始期(2009年→2010年)から2012年まで発売した『ふるさと行きの乗車券』は、着駅(エリア)として「秋田・青森エリア」・「岩手・三陸エリア」など、本特例で規定されている都市・都区内域とは異なるエリアが設定されている一方、発駅(エリア)については、初回発売分では本制度で規定されている「東京都区内」のほか、さいたま市内区間のうち大宮以南区間(「大宮 - 戸田公園」・「大宮 - 川口」の2区間)の2エリアが設定されていた[13]。2010年年末年始期(2010年→2011年)発売分以降は前記「東京都区内」およびさいたま市内大宮以南区間を包含する「東京電車特定区間」のみの設定となっている[14]

このうち着エリア側の取扱について、初回発売分には本特例で規定されている、「都市・都区内」着の乗車券による着域内での途中下車取扱方と同様の形態が採られており[13]、着エリア内(復路では発エリア内)での下車は前途無効の扱いとなっていた。また本トクトクきっぷでは発着各エリア間の各駅での下車も前途無効の扱いとなっていた。2010年年末年始期発売分以降は、初回発売分で”ゆき券”にあった着エリアの路線図が“かえり券”に表示されるようになったことに伴い、復路の着エリアからの乗車時に限り、着エリア内のJR線普通列車自由席に乗り降り自由という取扱方に変更されている[14]。なお、別途料金券類を購入することにより特急列車や新幹線にも乗車可能。

なお、これらの乗車券における途中下車に関しては、「特定都区市内駅乗車券」と同様に《旅規156条》、《旅規165条》、及び《旅規166条》の規定が適用された。

株主優待割引乗車券の例外 編集

概要 編集

東京・博多間を結ぶ東海道・山陽新幹線は、在来線でのJR旅客会社毎の管轄領域で見た場合、東日本東海西日本九州の4つのJR旅客会社に跨っている。

また、東海道・山陽新幹線自体も、新大阪を境に、新大阪以東の東海道新幹線間はJR東海、新大阪を除く新大阪以西の山陽新幹線区間はJR西日本、と、管轄するJR旅客会社が異なっている。

このため、特定都区市内に所在する東海道・山陽新幹線の駅のうち、以下に列挙する駅は新幹線のりばと在来線のりばとで管轄するJR旅客会社が異なっている。

  • 東海道新幹線区間(JR東海管轄)
    • 東京・品川・新横浜・・・在来線はJR東日本管轄
    • 京都・新大阪・・・在来線はJR西日本管轄
  • 山陽新幹線区間(JR西日本管轄)
    • 小倉・博多・・・在来線はJR九州管轄

一方、東海道・山陽新幹線を管轄するJR東海とJR西日本は、2022年現在、共に株式市場上場しており、各々の株主に対し、株主優待サービスの一環として、自社管轄内全線に係る乗車券類(除外条件有り)を割引購入出来る株主優待割引券を保有数等に応じて配布している[15][16]。この株主優待割引券を使って他社管轄に跨る乗車券類を購入する場合、自社管轄区間のみ割引対象となり、割引対象となる自社管轄区間分と割引対象とならない他社管轄区間分を分けて発売される[注 27]

JR東海とJR西日本が各々発行する株主優待割引券を使って、東海道新幹線(JR東海管轄)または山陽新幹線(JR西日本管轄)を利用することを前提に本特例適用の要件を満たす特定都区市内に属する新幹線駅発着の普通乗車券を購入する場合で、在来線のりばが「他社管轄」となっている前記列挙の駅を発着駅としている場合には、その前記列挙の駅の側では本特例は適用されず、単駅指定の形で発券される。

具体例 編集

  • 名古屋から東京まで東海道新幹線(JR東海管轄)を利用。JR東海の株主優待割引券を使って乗車券・特急券を購入
名古屋・東京間の片道営業キロは「366.0km」であり、距離の上では「名古屋市内⇒東京都区内」という券面表示の普通乗車券が発行できそうなところ、発駅の名古屋は在来線もJR東海の管轄であるのに対し着駅の東京では在来線がJR東日本の管轄となっていることから、着駅では本特例は適用されず、発券される普通乗車券の券面表示は「名古屋市内⇒東京(単駅)」となる。

JR線以外での適用 編集

都区内の常磐緩行線各駅にて乗降する場合 編集

東京都区内の駅のうち、JR線のみで乗り換えなしに直接山手線に乗り継ぐことのできない常磐緩行線金町亀有綾瀬の各駅の乗降客に対しては、東京地下鉄(東京メトロ)千代田線北千住西日暮里間を、同区間の運賃170円を支払うことで乗車できる。ただし綾瀬と西日暮里の間を乗車した場合の本来の運賃は、全区間東京地下鉄線扱いとなるため200円となる。

その他 編集

JRの長距離乗車券以外でも、他社私鉄や地下鉄などとの連絡普通乗車券、連絡定期乗車券の販売対象区間駅に、東京都区内や東京山手線内といった表現が使われている場合がある。この場合は“東京都区内や東京山手線内に所属する駅”という意味であって、長距離乗車券のような東京都区内や東京山手線内という区間ではない。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 近距離の普通乗車券に限って言えば、まず1956年に硬券収納方式の電動式自動券売機(単能機;乗車券1種類のみ発券可)が登場した。その後1960年1月マルスの運用が開始されると自動券売機を利用する発売が推し進められるようになった。その後、現在の自動券売機と同様の、乗車券用ロール紙を筐体内部で裁断・印刷して発券される方式が導入された。ロール紙は単能機では1965年から、多能機(複数の運賃に対応)では1966年から試験導入され、1968年10月1日から本格的に導入されている。しかし近距離以外の乗車券への対応は、新幹線岡山延伸開業の年・1972年に乗車券発券にも対応した「マルス105」からである[1][2][3]
  2. ^ 本但し書きは、2008年4月1日の旅規改正により、従前からの旅規86条・87条の各条文にそれぞれ追記された。旅規87条の場合は、但し書きの中の「特定都区市内」を全て「東京山手線内」に読み替える。この改正と引き換えに、本但し書きの中で示しているケースに該当する場合に、本特例適用の有無を旅客が選択出来ることを定めた規程(旧)115条は廃止されている。
  3. ^ 現行そのような自治体路線はない、今後の市町村合併では可能性あり。
  4. ^ 阪和線、大阪環状線、東海道本線(JR神戸線)、山陽本線広島地区含む)経由。
  5. ^ 東京まで山手線、東京からは北陸新幹線利用を想定。
  6. ^ 阪和線、大阪環状線、東海道本線(JR京都線琵琶湖線東海道線名古屋地区)経由。
  7. ^ 仙山線、東北本線、磐越西線経由。
  8. ^ 特定都区市内着発の乗車券と、その特定都区市内の出入口にあたる駅までの乗車券を併用することによる他経路乗車を認める特例を定めた条文で、他経路乗車中は途中下車不可。この特例が導入されているのは東京都区内発着・横浜市内発着両関連で2区間ずつと大阪市内発着関連1区間の計5区間で、標記以外では横須賀線南武線京浜東北線に関連して「東京都区内発着の乗車券と西大井発着(武蔵小杉以遠・武蔵中原方面)の乗車券の併用による“武蔵小杉・蒲田間”」・「横浜市内発着の乗車券と矢向発着(武蔵小杉以遠・武蔵中原方面)の乗車券の併用による“鶴見・武蔵小杉間”」で導入されている。
  9. ^ かつて存在した香月駅も北九州市内に位置しながら除外されていた。
  10. ^ 料金計算上の隣駅は同じ横浜市内の鶴見であるが、羽沢横浜国大を経由する列車はすべて鶴見を通過しているため、実際は一旦市外の武蔵小杉に出る必要がある。なお、川崎市内の一部の駅は横浜市内ゾーンに組み入れられているが武蔵小杉は対象外。
  11. ^ なお、東海道本線東京 - 戸塚間および東海道本線品鶴線品川 - 武蔵小杉 - 鶴見間およびこれに挟まれる南武線川崎 - 武蔵小杉間で「東京都区内」「横浜市内」いずれにも属さない駅は武蔵小杉駅・新川崎駅向河原駅平間駅鹿島田駅の5駅である。
  12. ^ なお、下山門九大学研都市は1983年以降の開業であり、福岡市内駅だった時期はない。
  13. ^ 現・広島市内域において水内駅が存在したが、所在していた湯来町が広島市に編入されたのは廃止後の2005年であり、広島市内駅だった時期はない。
  14. ^ また、設定当初は中島 - 小河内は除外されていた。
  15. ^ なお、2008年3月に開業した同線の区間のうち「高井田中央 - 新加美」間については、新加美駅が大阪市に所在している(平野区)が、開業当初は本特例が適用されなかった。
  16. ^ 陸前白沢・熊ケ根・奥新川駅はSuica未対応駅。
  17. ^ 山手線一周全線と中央線・総武線の神田・秋葉原 - 代々木間については、東京からの片道営業キロが100kmを超え200km以下にある駅に対して東京山手線内が適用される。
  18. ^ a b c d e f g h 川崎市川崎区に所在。
  19. ^ 川崎市幸区に所在。
  20. ^ 吹田市に所在。
  21. ^ a b c d e 東大阪市に所在。
  22. ^ 安芸郡海田町に所在。
  23. ^ 安芸郡府中町に所在。
  24. ^ 白木山・中三田・上三田・志和口・井原市駅はICOCA未対応駅。
  25. ^ 石田・志井公園・志井・石原町・呼野駅はSUGOCA未対応駅。
  26. ^ 例えばエクスプレス予約では、EX予約とe特急券+乗車券の金額を比較するEX予約運賃ナビを提供している。
  27. ^ このため乗車区間によっては株主優待割引券を使わずに乗車全区間分通しの乗車券類で購入する場合と比べて割高になるケースがあるとしてJR側は注意を呼びかけている。

出典 編集

  1. ^ 鉄道技術来し方行く末・第8回「出改札機」”. 『RRR』2012年11月号より. 鉄道総研. 2022年5月1日閲覧。
  2. ^ 鉄道における自動券売機の変遷~お客さまへの利便性向上に向けて”. 『JR East Technical Review』第4号・2003年夏. JR東日本. 2022年5月1日閲覧。
  3. ^ 旅客販売総合システム「MARS(マルス)」”. 鉄道情報システム. 2022年5月1日閲覧。
  4. ^ a b c d 「大阪市内」発着となる乗車券による市外乗車の特例”. JRおでかけネット. 西日本旅客鉄道. 2019年4月8日閲覧。
  5. ^ 仙山線 西仙台ハイランド駅及び八ツ森駅廃止について』(プレスリリース)東日本旅客鉄道仙台支社、2014年2月14日。 オリジナルの2014年2月22日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20140222024729/https://www.jr-sendai.com/wp-content/uploads/2014/02/ekihaishi.pdf2022年5月1日閲覧 
  6. ^ 旅客営業規則の一部改正(「スーパーこまち号」の「こまち号」統一等に伴う改正)』(プレスリリース)東海旅客鉄道、2014年2月15日https://railway.jr-central.co.jp/ticket-rule/carriage/history/_pdf/10.pdf#page=32022年5月1日閲覧 
  7. ^ 可部線延伸開業にかかる運賃認可申請について』(プレスリリース)JR東日本、2016年11月4日https://www.westjr.co.jp/press/article/2016/11/page_9483.html2022年5月1日閲覧 
  8. ^ 平成29年春ダイヤ改正について』(プレスリリース)JR東日本、2016年12月16日https://www.westjr.co.jp/press/article/2016/12/page_9685.html2022年5月1日閲覧 
  9. ^ おおさか東線開業に伴う運賃に関わる認可申請などについて』(プレスリリース)JR西日本、2018年12月27日https://www.westjr.co.jp/press/article/2018/12/page_13598.html2022年5月1日閲覧 
  10. ^ 相鉄・JR直通線に関わるJR線区間の運賃等について』(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2019年2月26日https://www.jreast.co.jp/press/2018/20190229.pdf2019年2月26日閲覧 
  11. ^ a b 運賃計算の特例:JR東日本”. JR東日本. 2022年5月1日閲覧。
  12. ^ 『国鉄監修 交通公社の時刻表』1972年10月号、巻頭「今月のお知らせ」、p.438「運賃の計算」。
  13. ^ a b JR東日本帰省応援キャンペーン(2009)~お正月は列車でふるさとへ』(プレスリリース)JR東日本、2009年11月4日https://www.jreast.co.jp/press/2009/20091103.pdf#page=32022年5月1日閲覧 
  14. ^ a b JR東日本帰省応援キャンペーン(2010)~お正月は列車でふるさとへ』(プレスリリース)JR東日本、2010年11月18日https://www.jreast.co.jp/press/2010/20101113.pdf#page=42022年5月1日閲覧 
  15. ^ 株主優待のご案内”. JR東海. 2022年5月1日閲覧。
  16. ^ 株主優待”. JR西日本. 2022年5月1日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集