算数障害(さんすうしょうがい、: dyscalculia[ˌdɪskælˈkjuːliə][1][2][3][4])は、学習障害の一つで算術の学習あるいは理解の困難を言う。例えば、の理解、数の扱い方の学習、数学的計算の実行、数学における事実の学習における困難などである。しばしば非正式に "math dyslexia"(直訳:数学-非識字)としても知られるが、これ(非識字)は(算数障害とは)異なる症状であり誤解を招くおそれがある。[5]

算数障害
発音 [ˌdɪskælˈkjuːliə]
概要
診療科 精神科
継続期間 生涯
分類および外部参照情報

算数障害は、全てのIQ範囲において、時間、計量および空間的推論英語版の困難とともに現れうる。[6][7]算数障害の有病率の見積もりは人口の3から6%の幅がある。[6][7]2015年、算数障害の子どもの11%がADHDを併発していることが確認された。[8]算数障害はまたターナー症候群二分脊椎症を持つ人々とも関係している。[9]

数学的障害はある種の脳損傷の結果として生じることもある。このようなケースには「失算症英語版」という適当な用語があり、生得的、遺伝性あるいは発達上の原因を持つ算数障害と区別される。

兆候と症状 編集

算数障害の最も初期の表れは、典型的には、一瞥して数えることなしに、いくつの物体がある小さな群に存在するかを知る能力(スービタイズ英語版)の欠如である。5歳程度の子どもは6つの物体(とくにサイコロを見て)をスービタイズできる。ところが、算数障害を持つ子どもは、より少ない個数の物体をスービタイズでき、かつ正答する場合も、その数を同定するのに、彼らと年齢の適合するピアよりも長い時間を要する。[10]算数障害はしばしば年齢によって違って見える。算数障害は子どもが年を経るにつれてよりはっきりと現れてくるが、症状は早ければ未就学児の段階で現れることがある。[11]算数障害に一般的な症状は、暗算、時間の分析とアナログ時計の解読に困難のあること、数を伴う系列反応課題(motor sequencing)に苦労することであり、また彼らはよく数を足し合わせる際に指で数える。[12]

一般的な症状 編集

算数障害は一般的な算数課題の困難によって特徴付けられる。これらの困難には次のものが含まれうる:

  • アナログ時計の解読の困難[13]
  • 二つの数字のどちらが大きいかを述べることの困難
  • 系列課題(Sequencing)の問題
  • 財務計画または予算編成(ときには基本的なレベルであっても)の理解、買い物かごの中の商品の費用の見積もり、あるいは小切手帳の帳尻合わせができない
  • 加減乗除の計算結果の一貫性の欠如

語源 編集

dyscalculia という語は少なくとも1949年まで遡る。[14][15]

Dyscalculia はギリシャ語およびラテン語に由来し、「数える」+「困難な」を意味する。接頭辞 "dys-" はギリシャ語 "δυσ-" に由来し、「困難」や「悪い」を意味する。"calculia" の語源はラテン語の "calculare" であり、これは「数を数える」を意味し、英語の "calculation"(計算)や "calculus"(微分積分学)とも関係する。

関連項目 編集

参照文献 編集

  1. ^ American Heritage Dictionary
  2. ^ Collins Dictionary
  3. ^ Oxford Dictionaries Online
  4. ^ Random House Dictionary
  5. ^ What Is Dyscalculia? What Should I Do if My Child Has It?”. WebMD. 2019年9月19日閲覧。
  6. ^ a b Butterworth, B (2010). “Foundational numerical capacities and the origins of dyscalculia”. Trends in Cognitive Sciences 14 (12): 534–541. doi:10.1016/j.tics.2010.09.007. PMID 20971676. 
  7. ^ a b Butterworth, B; Varma, S; Laurillard, D (2011). “Dyscalculia: From brain to education”. Science 332 (6033): 1049–1053. Bibcode2011Sci...332.1049B. doi:10.1126/science.1201536. PMID 21617068. 
  8. ^ Soares, Neelkamal; Patel, Dilip R. (2015). “Dyscalculia”. International Journal of Child and Adolescent Health 8 (1): 15–26. 
  9. ^ Klingberg, Torkel (2013), The Learning Brain: Memory and Brain Development in Children, Oxford University Press, p. 68, ISBN 9780199917105, https://books.google.com/books?id=SIqOLf3lnNYC&pg=PA68 
  10. ^ Fischer, B; Gebhardt, C; Hartnegg, K (2008). “Subitizing and visual counting in children with problems in acquiring basic arithmetic skills”. Optometry & Vision Development 39 (1): 24–9. http://www.lookingforlearning.com/abstracts/ovd39-1.pdf. 
  11. ^ Team, T. U. (n.d.). Understanding Dyscalculia. Retrieved September 02, 2017, from https://www.understood.org/en/learning-attention-issues/child-learning-disabilities/dyscalculia/understanding-dyscalculia
  12. ^ “What Does Dyscalculia Look Like in Adults?” (英語). ADDitude. (2017年2月15日). https://www.additudemag.com/dyscalculia-in-adults-symptoms-signs-and-statistics/ 2018年5月2日閲覧。 
  13. ^ Posner, Tamar (2008). Dyscalculia in the Making: Mathematical Sovereignty, Neurological Citizenship, and the Realities of the Dyscalculaic. ISBN 978-1-243-99265-9 
  14. ^ Trott, Clare (5 March 2009). “Dyscalculia”. In Pollak, David. Neurodiversity in Higher Education: Positive Responses to Specific Learning Differences. John Wiley and Sons. ISBN 978-0-470-99753-6. https://books.google.com/books?id=eVhQoqboi1UC&pg=PA125 
  15. ^ Kosc, Ladislav (1974). “Developmental dyscalculia”. Journal of Learning Disabilities 7 (3): 159–62. doi:10.1177/002221947400700309. 

参考文献 編集

外部リンク 編集

分類
外部リソース(外部リンクは英語)