精工舎

かつて日本の時計メーカー・服部時計店の製造・開発会社群が名乗っていた名称

精工舎(せいこうしゃ)は服部時計店(現・セイコーグループ株式会社)の製造・開発部門として設立された会社群が名乗っていた名前である。いずれも、セイコー本体または、創業家である服部家とその関連会社が大株主であった。

精工舎設立当時、服部時計店は企画・マーケティング・保守サービスを担当し、精工舎は、服部時計店からは独立した製造部門として、研究開発・設計・製造を行っていた。そのような「協業」によってSEIKOブランドの時計は、技術水準を高め、世界的に高い評価を得るに至った。

以下の通りいずれの会社も現在は「セイコー」を冠する社名に変更しており、1996年以降精工舎を称する企業は存在しない。セイコータイムクリエーション(掛時計・置時計・目ざまし時計)、盛岡セイコー工業(セイコーインスツルの元子会社で、現在はセイコーウオッチの子会社; 腕時計)、セイコーエプソン(腕時計)は、引き続きSEIKOブランドの時計を製造している。

一覧 編集

株式会社精工舎(せいこうしゃ) 編集

服部時計店の製造部門事業部である「精工舎」として1892年明治25年)創立[1]1937年昭和12年)にウオッチ部門を株式会社第二精工舎として分離独立した。 1970年(昭和45年)には精工舎も服部時計店から分離し、株式会社精工舎となった。

株式会社精工舎の名前で1980年代初頭、OSとしてiRMX/86を標準搭載したスーパー・パーソナルコンピューター SEIKO 9500(本体価格228万円)[2]、低価格のSEIKO 9100(本体118万円)[3]を開発・販売していた。SEIKO 9100は、主記憶容量896KByte(最大)、20MByte(最大)のハードデイスクを内蔵[3]

1996年平成8年)にセイコークロック株式会社とセイコープレシジョン株式会社に分割され、2社はセイコーホールディングス株式会社(現・セイコーグループ株式会社)の事業子会社となる。

セイコープレシジョン株式会社は、セイコータイムシステム株式会社、セイコーソリューションズ株式会社などに事業を移管し、2020年令和2年)2月に解散した。セイコークロック株式会社は、2021年(令和3年)4月にセイコータイムシステム株式会社と合併し、セイコータイムクリエーション株式会社となった。

株式会社第二精工舎(だいにせいこうしゃ) 編集

1937年(昭和12年)に精工舎のウオッチ部門が独立して創業[4]1939年(昭和14年)、亀戸に本社工場が竣工。

太平洋戦争中の1943年(昭和18年)、桐生富山仙台諏訪の各地に分散疎開。 亀戸工場は東京大空襲を含む日本本土空襲で壊滅。 終戦後の1949年(昭和24年)、疎開先の3工場を撤収し、諏訪に集約。

1983年(昭和58年)セイコー電子工業株式会社、1997年(平成9年)セイコーインスツルメンツ株式会社、2004年セイコーインスツル株式会社に社名変更。

創業来、服部家を主要株主とする非上場企業であったが、2009年(平成21年)10月1日付けで株式交換によってセイコーホールディングスの完全子会社となった。子会社の盛岡セイコー工業株式会社などを通じて、セイコーウオッチ株式会社(セイコーホールディングスの事業子会社)向けに腕時計の開発・製造を続けていたが、2020年(令和2年)4月に当該子会社などウオッチ製造拠点・調達関連業務をセイコーウオッチに移管した。

株式会社諏訪精工舎(すわせいこうしゃ) 編集

 
エプソンミュージアム諏訪 創業記念館(旧・有限会社大和工業事務棟、1945年竣工[5]
 
セイコーエプソン本社(2022年)

1942年(昭和17年)… 第二精工舎の協力会社として、有限会社大和工業を創立。

1943年(昭和18年)… 第二精工舎が工場を諏訪市ほかに分散疎開。大和工業の協力、地元の支援などもあり、第二精工舎諏訪工場は、終戦後も諏訪市でのウオッチ製造を続けた。

1959年(昭和34年)… 大和工業を母体に第二精工舎諏訪工場が吸収され、株式会社諏訪精工舎となる。

1961年(昭和36年)… 子会社として信州精器株式会社を設立。

1982年(昭和57年)… 信州精器がエプソン株式会社に商号変更。

1985年(昭和60年)… 諏訪精工舎が子会社のエプソンを吸収合併し、セイコーエプソン株式会社となる。

2003年(平成15年)… 東証1部上場。

現在もセイコーウオッチ向けに腕時計の開発・製造を行っているが、セイコーグループやセイコーウオッチ、セイコーインスツルからは独立した企業である(ただし、服部家の個人および関連会社が大株主として名を連ねている)。

「エプソン」のブランドが浸透しており、公式の企業名を記す場やウオッチ事業以外で「セイコー」の名を用いることは稀である。

脚注 編集

  1. ^ 「精工舎」の設立”. Seiko Design 140. セイコーウオッチ. 2022年9月17日閲覧。
  2. ^ ASCII 1983年2月号, p. 116.
  3. ^ a b ASCII 1983年12月号, p. 95.
  4. ^ 第二精工舎(亀戸)設立”. Seiko Design 140. セイコーウオッチ. 2022年9月17日閲覧。
  5. ^ セイコーエプソン創業80周年 これまでの歩みを紹介する『エプソンミュージアム諏訪』をオープン”. セイコーエプソン (2022年5月18日). 2022年10月29日閲覧。

参考文献 編集

  • 「ASCII 1983年2月号」第7巻第2号、株式会社アスキー出版、1983年2月1日。 
  • 「ASCII 1983年12月号」第7巻第12号、株式会社アスキー出版、1983年12月1日。 

外部リンク 編集