製材

丸太を板や角材などの木材に加工すること

製材(せいざい)は、第1義には、伐採したを角材や板材に加工すること[1][2][3][4][5][6][7][注 1](用例:製材工[3]、製材所[1]、製材業[2])。第2義には、丸太や原木を切削加工して寸法を調整した木材製品をいう[1][2][4][5][6][7]。また、原木や大型の木材から必要な寸法・品質の木材を製材することを、古来の日本語では、動詞で「木取/木取る(きどる)[注 2]」、名詞で「木取/木取り(きどり)[注 3]」という[8][9]。あるいはまた、伐採前の木や伐採した後の簡単な始末を施しただけの木材を指す「原木(げんぼく)」[10]対義語として、その後の工程として製材された木材を意味する言い回しとして「製材品( - ひん)」がある[注 4]

現代の大型機械による製材の様子。丸太から角材が切り出されようとしている。
ヨーロッパの古典的製材技術で加工された木材の表面/スウェーデンヘルシングランド地方にある Stråsjö kapellStråsjö 村のキリスト教会)は古来の技術で再建されたもので、外壁は全面的にこの技術が用いられている。

英語の場合、「製材」をイギリス英語で "sawing日本語音写例:サーイング、ソーイング[注 5])" といい[7][5][11][12]、主にアメリカ英語では "lumbering日本語音写例:ランバリング)" という[11]。「製材業」は主として "lumber industry" というが、米国カナダでは "lumbering" という。「製材業者」は "lumberman" という[11]。「製材品」は "plain-sawn timber"、"sawn timber"、"lumber" などという[7]

道具 編集

21世紀の日本においては、一般の製材所では、送材車と「本機」と呼ばれる大型機械の帯鋸盤(おびのこばん)[注 6]を使う。フォークリフトで台車装置のある「番台」と呼ばれる所へ丸太を運び、送材車に載せて帯鋸で板や角材に加工する。レールの上を前後する台車に材料を置くことで一定の厚みが決まり、精度の高い直線挽きを加工できる。

  • 1. 中世ヨーロッパにおける製材で多く用いられた、ヨーロッパ型の斫斧(はつりおの)/日本語でいうところの「ブロードアクス」、英語でいう broadaxe(ブローダクス)、ドイツ語でいう Breitbeil(ブライトバイル)、フランス語でいう doloire de charpentier(ドロワ・ドゥ・シャルパンティエ。意:大工の斧)。
  • 2. 古代ローマ水力式の木製鋸機械(のこぎり きかい)の再現模型/スロベニアのジェレズニキ博物館 (cf. en:Železniki) の展示物。タイプは帯鋸盤(おびのこばん)。
  • 3. 古代ローマ・水力式の木製鋸機械の図説/水車の回転動力をクランクへと伝え、クランクが帯鋸を前後に動かす、その力で木材を切断する。
  • 4. ヨーロッパ型の大鋸(仏語・英語:scieur de long)を使った製材/フランス中東部のフォレ英語版[注 7]にて、1900年撮影。
  • 5. 1880年代ドイツ製の鋸機械(のこぎり きかい。ドイツ語:Sägemaschinen〈日本語音写例:ゼーゲマシーネン〉)/タイプは丸鋸盤(まるのこばん)[注 8]
  • 6. 帯鋸盤の帯鋸のブレード
  • 7. 製材所関連での木材運搬用に特化したホイールローダー。車種はボルボ L90E。

製材所 編集

製材所(せいざいしょ、せいざいじょ)とは、製材する場所や工場をいう[13][注 9]。 英語の場合、イギリス英語では "sawmill" [11]といい、主にアメリカ英語では "lumbermill" [11]という。

20世紀以降の日本の場合、木材生産が盛んに行われていた時期、林野庁の主導により、国有林によって豊富に供給されていた頃は、全国の営林署と共に小規模な製材所がどこの都市にも見られたが、1970年代の輸入材の拡大やプレハブ工法の拡大により、年々加工量が減少しつつあることなどにより、年々減少しつつある。国産材の原木から製品まで一貫して製材を行うメーカー、輸入材の加工のみを行うメーカーなど、業態が細分化している。

  • 1. 日本の京都市北区北山「杉の里」の中川地区にある製材所(倉庫と作業場)。背後の山の斜面では北山杉が育成されている。
  • 2. ヒューズビーブローク (Huseby bruk) スウェーデンクロノベリ県アルヴェスタ市 (en) グリムスロヴ (en) 地区のヒューズビー (sv:Huseby) にある製材所(製材工場)で、観光名所になっている。

業者 編集

特筆性のある業者について記載する。

日本 編集

描かれた製材 編集

製材所に係る主な出来事 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 史料における用例:宮嶋資夫『金』(1926年刊)一七「製材(セイザイ)工は重さうなその木材を巧にさばいて」[3]
  2. ^ 史料における用例:松平家忠家忠日記』文祿2年(1593年)6月5日江戸にたて候こさしき木取候」[8]
  3. ^ 史料における用例:俳諧撰集『曠野』(1689年刊)二「月花の初めは琵琶の木どり哉 ──釣雪」[8]
  4. ^ 第2義として上述したように「製材」のままでその意味をもつが、添える「品」が限定詞的に働く。
  5. ^ 「サーイング」の外来語化は確認できない。「ソーイング」は日本語では「縫製」を意味する "sewing" が外来語として固定化しているため、「製材」の意味で用いられる可能性は低い。
  6. ^ 『デジタル大辞泉』、『大辞林』第3版. “帯鋸盤”. コトバンク. 2019年12月17日閲覧。
  7. ^ フォレ (Forez) はフランスの旧州であり,現代のロワール県の中央部、および、オート=ロワール県ピュイ=ド=ドーム県の一部に相当する地域。
  8. ^ 『精選版 日本国語大辞典』. “丸鋸盤”. コトバンク. 2019年12月17日閲覧。
  9. ^ 史料における用例:『中外商業新報』1906年(明治39年)8月31日「鉄道に三百五十万円、製材所設置費に百万円、其他の経費五十万円」[13]

出典 編集

  1. ^ a b c 小学館『デジタル大辞泉』. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  2. ^ a b c 三省堂大辞林』第3版. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  3. ^ a b c 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  4. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  5. ^ a b c 山岸清隆、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  6. ^ a b 平凡社百科事典マイペディア』. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  7. ^ a b c d 平凡社『世界大百科事典』第2版. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  8. ^ a b c 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “木取”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  9. ^ 木取り”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  10. ^ 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』、『デジタル大辞泉』、『精選版 日本国語大辞典』. “原木”. コトバンク. 2019年12月17日閲覧。
  11. ^ a b c d e 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第3版. “製材”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  12. ^ 平凡社『世界大百科事典』第2版. “sawing”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  13. ^ a b 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “製材所”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  14. ^ 加茂市教育委員会市史編纂室 (2000年10月). “『かも市史だより』平成12年10月号” (PDF). 公式ウェブサイト. 加茂市. 2019年12月17日閲覧。
  15. ^ 日外アソシエーツ編集部 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年9月27日、96頁。ISBN 9784816922749 

関連項目 編集

外部リンク 編集