足漕ぎボート(あしこぎぼーと)とは、外輪を用い、足でペダルをこぐことによって推進するボートの一種である。「サイクルボート」「ペダルボート」などとも呼ばれる。英国英語では「pedalo」、米国などでは「paddle boat」と呼ばれる。

アメリカ合衆国ミシガン州セントクレア湖にて。外輪方式。

概要 編集

一般的な足漕ぎボートは、ペダルを漕ぐことで側面ないし後方に取り付けられた円筒状の推進器(外輪、水車様の推進装置)を回転させ、これを推進力として前進する。ペダルの回転を動力に変える方式は外輪を直接回転させる方式が一般的だが、チェーンやギアを経由するもの、スクリューを回転させるものもある。方向転換にはハンドルによって操舵されるが使用され、ペダルを逆回転させることで後進することができるものも存在する。人力外輪による推進器はあまり強力ではなく、このため流れの速い河川などでは利用することは難しい外、浅く広い船底のために波やうねりのあるでの利用も困難である。しかし、足で漕ぎハンドルで操舵するという様式から、櫂(オール)を使ったボートよりも操作し易く、また底面が広いものが多く波の無い水面では安定性が良いことから、初心者でも扱い易い。

これらは観光レジャー用として公園観光地で利用されており、観光客や行楽客に有償で貸し出されている。20世紀後半よりFRP製のものが一般に見られ、屋根があるものと無いものがある。また、これらのうち白鳥を模した形状のものは特に「スワンボート」とも呼ばれる。

日本の「スワンボート」開発の背景 編集

日本の花見風景での「スワンボート」(2022年)

前述の公園や観光地の池・湖の遊覧用ボートにはかつて、手漕ぎボートとともに、無免許で操縦できたエンジン付きの円形ボートが使われていたが、事故が相次いだことから1974年(昭和49年)の法改正により動力付きボートの操縦には小型船舶操縦士の免許が必要になり、一般の人が気軽に利用できなくなった。群馬県のボートメーカ「スナガ」は非免許保持者でも操縦できるボートとして足漕ぎ駆動のボートを商品開発し、さらに同社は1978年(昭和53年)に白鳥を模したスワンボート1号機を開発した、とされる。2017年時点で、同社が国内のスワンボートの90%以上のシェアを持っているという。[1]

なお、1925年(大正14年)に滋賀県大津市に完成した瀬田橋遊園地には、スワンボート(外見、構造。製造元不明)が備えられたとの報道が見られる[2]

世界の「スワンボート」 編集

スワンボートは世界各国に存在しており、その発祥はアメリカのボストンで1877年に作られた、白鳥をテーマにした足漕ぎボート、とされている。日本では白鳥のイメージからか船体色は白が多いが、世界各国には多種多様な色彩のものがあり、色とりどりのレインボーカラーや、黒鳥になぞらえた黒色のものもある。そもそも白鳥モチーフではなく、フラミンゴドラゴンの意匠の場合もある。タイ王国など一部の国で「スワンボート」は、龍船(ドラゴンボート)ペーロンなどに似た「多人数で漕ぐ競技用ボート」を指す場合があるので注意したい。(スワンボート (タイのレース用)の項目参照。)

日本国内で足漕ぎボート・スワンボートに乗れる主な場所 編集

 
福岡県、大濠公園のスワンボート。
 
東京都練馬区石神井公園石神井池。文学や漫画、映像作品での登場が多い。
 
東京都、井の頭恩賜公園の足漕ぎボートおよびスワンボート。「カップルが乗ると破綻する」著名な伝承があるが、世の交際する男女が必ずしも婚姻に至るわけではない、即ち世のカップルの過半は別離れるものであるため、足漕ぎボートのせいではない。
 
長野県の白樺湖。左の小さい白鳥がスワンボート。右の大きな白鳥は遊覧船

以下の一覧はあくまで著名な例の一覧であり、この他にも多く存在する。

北海道 編集

東北 編集

関東 編集

東京 編集

東海・中部 編集

北陸 編集

近畿 編集

四国 編集

中国 編集

九州・沖縄 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

注釈 編集

  1. ^ 和風総本家 箱根を支える職人たち”. TVでた蔵 (2017年2月9日). 2020年7月25日閲覧。
  2. ^ 「瀬田橋遊園地が完成」『京都日出新聞』1925年8月8日滋賀付録(大正ニュース事典編纂委員会『大正ニュース事典第7巻 大正14年-大正15年』本編p.239 毎日コミュニケーションズ 1994年)