適用態(てきようたい)または充当態(じゅうとうたい、英語: applicative)とは、斜格動詞結合価に追加するである。形態論において、語の形態変化の結果としての語形適用形と呼ばれる。また、統語論において、適用態を表す構文を適用構文(てきようこうぶん、英語: applicative construction)と言う。

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アイヌ語 編集

アイヌ語には動詞の結合価を上昇させる充当態接頭辞e-具格、「~で」)、o-処格、「~で」)及びko-与格、「~に」)の存在が報告されている。[1]以下の例において、本来は1価しか持たない(主語のみで充足し、目的語を持てない)自動詞itakに、与格充当接頭辞のko-が付くと、2価を持つ(主語と目的語両方があって初めて充足する)他動詞koytakとなり、目的格人称接辞を取ることができるようになる。

ku=ytak.

1SG.NOM=話す.VI

ku=ytak.

1SG.NOM=話す.VI

「私は喋っている。」

hekaci ku=koytak.

hekaci

男の子

ku=∅=ko-ytak.

1SG.NOM=3SG.ACC=APL.DAT-話す.VT

hekaci ku=∅=ko-ytak.

男の子 1SG.NOM=3SG.ACC=APL.DAT-話す.VT

「私は男の子と喋っている。」

シエラ・ポポルカ語 編集

ミヘ・ソケ語族シエラ・ポポルカ語英語: Sierra Popolucaでは、以下のような構文が存在する。

teːñ

「立ち上がった」

teːñ

「立ち上がった」

「彼は立ち上がった」

i-tyeːñ-ka

目的語.3SG-「立ち上がった」-具格

i-tyeːñ-ka

目的語.3SG-「立ち上がった」-具格

「彼は立ち上がった」

脚注 編集

  1. ^ Bugaeva, Anna (31 December 2010). “Ainu applicatives in typological perspective”. Studies in Language 34: 749–801. doi:10.1075/sl.34.4.01bug. 

関連項目 編集

参考文献 編集

リンゼイ・J・ウェイリー(2006).言語類型論入門―言語の普遍性と多様性,岩波書店(原書は1996)