(のあ あずさ、1954年 -)は日本SF小説家であり、耽美小説作家でもある。本名等は、非公開[1][2]

プロフィール 編集

  • 福岡県福岡市出身[3]
  • 父は推理作家石沢英太郎(1916 - 1988)。
  • 1979年西南学院大学文学部を卒業[3]。同年、大学時代に書いた処女作『花狩人』で第5回ハヤカワ・SFコンテスト入選第1席を受賞[3] [4]
    • 同作品はパロディを多用し、現代史および人類の文化史全体への批判的参照を行いつつ、少女漫画的であると同時に硬質な幻想世界を構築している。流麗な文章と構成力が高く評価された。本作品に埋め込まれた現実を冷徹に見つめる政治思想[5]と耽美性は、後の長編の主題をすでに先取りして表現している。
  • 1980年、自費出版で『ガロ作品総目録』(はなのまり名義)を製作。編集者の長井勝一の自伝でも言及された[6]
  • 萩尾望都のファンであった。
  • すでに『花狩人』、『ハムレット行』などの初期短編で示されていたが、耽美的少年愛を描く側面があり、ここより、1991年に耽美小説家山藍紫姫子の知己となり、「やおい」についての論評等を行うようになった[3]。野阿は自身を耽美やおいSF作家とも称しているが、通常のやおい作家とは概念が異なる。
  • 日本SF作家クラブ所属。
  • 朝日新聞2008年3月2日に掲載された巽孝之による『伯林星列』の書評では「九州大学医学図書館司書」と記されている[7]
  • 飛浩隆は「自分にとっての日本SFオールタイムベスト」を問われた際に、『兇天使』と採ると『マインド・イーター[完全版]』(水見稜)の解説で記している[8]

著書 編集

その他 編集

  • 野阿の作品には通常、英語等による副題が付いている。代表的な作品に付いている副題は、ジェイムズ・ジョイスの作品タイトルのパロディが多い[10]
  • 「野阿梓」という名は、ラテン文字で書くと、Noah Adusa となる。これは作者自身のウェブサイトで、野阿を NOAH としているように「ノアの箱船(Noah's Ark)」に由来する。後半のほうは、五十音順で「あ」を A に……というようにして順に対応させると、ARK は「あつさ」になる[11]

脚注 編集

  1. ^ 当人の許諾なく流布されていた本名等の情報は、正確なものではなかった。この理由として、1990年代半ばに野阿が最初のウェブサイトを作成したときの状況を元に、誰かが野阿の本名等を憶測で判断し、この情報が流布されたと考えられる。野阿自身は個人情報を公開した事実はないと言明している。
  2. ^ 公式サイトでの言明。about Individual Information
  3. ^ a b c d 日本SF作家クラブ・ウェブ名簿。2009年10月20日閲覧。
  4. ^ 『花狩人』は最初、野阿自身の手でコミックで描かれ、これを元に小説が執筆された。これと同様に、コミックを先に書いた短編が別にあるが、このスタイルの創作は、以降行っていない。野阿は発表作品から明らかなように長編作家であって短編を不得手としている。
  5. ^ 野阿は現実を冷徹かつ無神論的に凝視める政治思想を持ち、米国のハードボイルド小説の影響を受けている。こう言った面については、公式サイトに掲載されている政治的な随想類を参照すれば一目瞭然である(なお、野阿について「無神論」を特に強調するのは、彼にとってクリスチャニティ(キリスト教)の超越的世界観がぬきさしならぬ何かとして存在しているからである。そのことは、例えば、初期の随想で、萩尾望都の『トーマの心臓』を評論して、何故トーマは自殺し得たのかという考察に表明されている。Pepe Le Moto参照)。
  6. ^ http://homepage3.nifty.com/Noah/enquete.htm#nagai
  7. ^ 巽孝之『想い出のブックカフェ 巽孝之書評集成』研究社、2009年。ISBN 9784327377243 
  8. ^ 飛浩隆「人と宇宙とフィクションを巡る「実験」」『マインド・イーター[完全版]』東京創元社、2011年。ISBN 9784488742010 
  9. ^ 90年代後半に流行。同じようなラバー衣装の洋画「 マトリックス」のトリニティーは1999年。
  10. ^ 例えば、『兇天使』の副題は英語で、Seraphim Hero とされているが、これはジョイスの Stephen Hero のパロディである。また、『銀河赤道祭』の副題は、Lucians Wake となっているが、これは Finnegans Wake のパロディであり、同じく『武装音楽祭』の副題 A Portrait of the Terrorist as a Young Man はA Portrait of the Artist as a Young Man のパロディである。
  11. ^ 野阿梓インタビュー1 2009年10月20日閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集