長与川

日本の長崎県長与町の川

長与川(ながよがわ)は、大村湾南岸の琴ノ尾岳西麓を流れ、長与浦に注ぐ二級河川である。流域は長崎県西彼杵郡長与町に属し、川に沿って住宅地や田畑が広がる。

長与川
長与川下流・長与町役場前
水系 二級水系 長与川
種別 二級河川
延長 8.72 km
平均流量 -- m³/s
流域面積 19.8 km²
水源 琴ノ尾岳南麓
水源の標高 451 m
河口・合流先 長与浦(大村湾)
流域 長崎県長与町
地図
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長与ダム(中央)と琴ノ尾岳(右上)。周辺はミカン畑と水田が広がる

地理 編集

大村湾南岸の琴ノ尾岳(標高451m)南側斜面を水源とする。源流部は丘陵地で、森林の間にミカン畑が広がる。源流は南へ流れ出すが、昭和60年(1985年)にはここに長与ダムが完成した。

長与ダムを出た水は本川内地区の谷間に入り、川は水田の中を南へ流れる。三根郷で東から流れてくる平木場川と合流した後は、田園地帯の中を大きく蛇行しながら西へ流れを変える。

吉無田郷・長与駅付近の谷を抜けると、川は北西へ向きを変え、両岸も田畑から住宅地に変わる。長与中心部の住宅地の中で右岸から南田川内川・左岸から高田川、右岸から丸田川の順に支流が合流する。また、この付近では複数のが作られており、川は緩やかに北西へ流れる。

河口近くの斉藤郷では、河川内は小型漁船の船溜まりとして利用される。右岸は住宅地だが、左岸は再び田畑が広がる。河口の両岸は長与港として利用され、埋立・浚渫が進んでいる。

支流 編集

平木場川
長崎市との境をなす長与町南東部の丘陵地から隠川内(かくしごうち)・平木場地区を流れ、三根郷で長与川に合流する。流域は水田やミカン畑が多い。灌漑用ため池の藤ノ棟堤がある。
高田川
百合野・高田郷を流れ、榎の鼻で長与川に合流する。流域は森林に囲まれた狭い谷で、田畑と住宅地が混在する。流路はほとんど三面護岸で固められている。
南田川内川・丸田川
ともに長与町中心部の丸田岳(標高333m)南西側斜面を水源とし、丘陵地を西へ流れ下って長与川下流域で合流する。流域は田畑と住宅地が混在する。

関連施設 編集

鉄道・道路
高田川および上流部は長崎本線長崎県道33号、平木場川から中・下流部は長崎県道45号、下流域は国道207号がそれぞれ並走する。
長与ダム
長与川上流部に、昭和60年に完成した多目的ダム。堤高36m・堤頂長171m・集水面積1.8km2・総貯水量60万m3の重力式コンクリートダムである。周辺は森林やミカン畑に囲まれるが、ダムの下からは水田になる。ダム管理事務所の横には地権者による記念碑が建つ。また、ダム両端に表示された「長崎県」「長与ダム」の文字は、長与小学校の児童が揮毫したものである。
長与港
長与川河口の港。漁船などの停泊地として利用される他、長崎空港行きの航路がある(平成25年2月1日より休止中)。さらに港周辺は長与北小学校・グラウンド・体育館・工場・満永バス発着所などもある。
江戸時代後期の漢学者・頼山陽は、長崎へ向かう途中に大村湾を船で渡り長与港に上陸した。長与港を詠んだ漢詩『自大村舟抵長與距長碕十里』の看板が長与北小学校近くの川辺にある。

自然 編集

長与川とその支流は、昭和57年(1982年)の長崎大水害で氾濫したこともあり、流域のほとんどで両岸が護岸で整備されている。特に下流部は川幅拡張・河床掘削も大規模に行われている。

平木場川上流の藤ノ棟堤周辺は自然がよく残り、堤はニホンヒキガエルの産卵場にもなっている。ただし堤の中はオオクチバスブルーギルが持ち込まれ繁殖している(堤での釣りは禁止されている)。

両岸に水田が広がる中流部では、護岸内の川原にジュズダマアキカサスゲネコヤナギなどの植物が自生し、水中にはカワムツオイカワギンブナドンコカワニナサワガニスジエビなどが見られる。ただし外来種としてオランダガラシ(クレソン)やスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)なども見られる。

下流部では、河床掘削により住宅地と川は高い護岸で隔てられる。それでも長与町役場前では川辺まで降りることができ、飛び石も作られている。ここでは放流された錦鯉ミシシッピアカミミガメがいるが、オイカワ・ドンコ・トウヨシノボリなどの在来魚もおり、サギハクセキレイなどの鳥類も見られる。

ただし下流域は複数の堰があり、海水の流入は斉藤郷・新浦橋付近の堰までに限られる。このため海から遡上する通し回遊性の水生動物は少ない。

参考文献 編集

  • 長与町発行『ながよ町の自然』2003年
  • 角川日本地名大辞典編纂委員会編『角川日本地名大辞典 42 長崎県』1987年 ISBN 9784040014203