阿仁鉱(あにこう、 Anilite)は、1969年に発表された日本産新鉱物で、大阪大学鉱物学者森本信男などにより、秋田県阿仁鉱山で発見された[1]化学組成はCu7S4で、斜方晶系。産出地の鉱山名にちなんで命名された。日本では、阿仁鉱山の他に山口県櫻郷鉱山[2]和歌山県紀の川市[3]で産出する。

青灰色の金属光沢をもつ板状もしくは柱状の結晶で、条痕は黒。劈開はなく、硬度は3。外見上、他の硫化銅鉱物との区別は困難であり、X線回折が必要となる。特にデュルレ鉱英語版(Cu31S16)とエピタキシャル成長したものが多い。

阿仁鉱は不安定で、70度の熱や衝撃で銅藍(CuS)と方輝銅鉱英語版(Cu9S5)へ分解してしまう。このため、分析のための粉砕や研磨でも分解してしまい、正確な分析には液体窒素で冷却しながら加工する必要がある[4]

発見者の森本は、阿仁鉱発見の功績により1981年櫻井賞を授与されている。

脚注 編集

  1. ^ Morimoto, N. et al. (1969): Anilite, Cu7S4, a new mineral. Amer. Mineral., 54, 1256-1268.
  2. ^ 【山口県産鉱物】 山口県櫻郷鉱山産デュルレ鉱(Cu31S16),方輝銅鉱(Cu9S5)および阿仁鉱(Cu7S4)について山口大学工学部学術資料展示館
  3. ^ 珍しい鉱物「阿仁鉱」発見 和歌山・紀の川市の河原 自然博物館で展示産経新聞、2017年6月1日、2018年12月15日閲覧
  4. ^ 日本から発見された新鉱物たち(一覧)→No.26 阿仁鉱、東京大学物性研究所・電子顕微鏡室、浜根大輔

関連項目 編集

外部リンク 編集