阿保 剛(あぼ たけし)は、日本ゲーム音楽作曲家スタークラフトKID5pb.(現株式会社MAGES.)という3つの会社の作品の音楽を手掛けたことで知られている。

経歴 編集

スタークラフト入社まで 編集

幼少期、学研の学習雑誌の付録としてついてきた様々な音に変化する電子機器をきっかけに、電子音に興味を持つ[1]。 小学生の頃は、ファミリーコンピュータに熱中したほか、友人の家にあったパソコンのゲームを楽しむこともあった[2]。 特に『テグザー』の音楽を気に入っており、それを口ずさむこともあった[2]。 また、電機店で偶然耳にした『ロマンシア』の音楽も彼にとっては衝撃的な存在であり、当時は作曲者が古代祐三であることは知らなかったものの、今となってはあの音楽の影響を受けていたのではないかと2015年の電撃オンラインとのインタビューの中で振り返っている[2] 加えて、彼はイエロー・マジック・オーケストラを好んでおり、彼らの音楽が電子音の組み合わせであることを知って以降は、自分もこのような音楽を作りたいと考え、家にあった小さな鍵盤でYMOごっこをすることもあった[1]

さらに、彼は電機店の店頭においてあるデモ用のパソコンに雑誌のサンプルプログラムを打ち込んで演奏することもあり、店員の手ほどきをうけながらプログラミングを学んだ[1]

シャープのX1Gというパソコンを親に買って貰った後は、シューティングゲームやツールなどを作成したが、ゲームに音楽が欲しいと考え、雑誌に掲載されていた他作品のBGMからフレーズを引用するなどの工夫を重ねた[1]。 さらにその後、彼はX68000を購入し、ゲーム作りに没頭する中、自作のゲームをゲーム会社に持ち込むことを思いつく[1]。そして、1992年、スタークラフトへ応募し、プログラマ兼サウンドとして採用される[1][3]

スタークラフト入社後 編集

阿保のスタークラフトでの初仕事はスーパーファミコン用ソフトのデバッグだった[1]。 使ったことのないPC-9801を会社から支給された阿保は、独学で環境を構築していき、自由に作曲ができるようになった[1]。 また、デバッグの傍ら、阿保はサウンドチップの説明書を読みながら、音色の作り方やサウンドドライバの使い方を学んでいった[1]。 ある日、阿保は、自身の作曲能力を知った人物からスーパーファミコン用ゲームの参加とサウンドへの専任を命じられる[1]。 そして、1993年、作曲家としてのデビューを果たす[3]

KIDへの移籍~5pb.時代 編集

1995年にKIDへ移籍し、同社が発売した多数の恋愛アドベンチャーゲームの音楽、効果音を担当した[4]。 その楽曲数は毎年100曲前後に上った。 2006年12月にKIDが倒産した後、株式会社5pb.(現株式会社MAGES.)に入社、同社の音楽関連の活動に携わる。

2020年10月から3か月にわたり、KID時代の作品のサウンドトラックを集めた「阿保剛KID作品集」が配信専用で販売された[5]。 「作品集」に収録されている作品群は、いずれも内蔵音源で構成されていることからハイレゾできないため、配信という形が取られた[4]

作風など 編集

  • ピアノの音色を多用するスタイルを取っている[1]。阿保はその理由として「ピアノはサントラに適した楽器で,どんなシーンにも合いますし,なんなら1つのゲームで使う曲をすべてピアノだけで作れるくらいの表現力があります。」と説明し、奥が深い楽器だとする一方、なんでもできてしまう分、最近は頼らないようにしていると箭本とのインタビューの中で語っている[1]
  • ゲームミュージックとしては珍しく、1曲あたりの演奏時間が比較的長め(3~4分)の作品が多い。
  • 海外のポップスやダンスミュージックの影響を色濃く受けていることを認めており、たとえば『Memories Off』の音楽はマッシヴ・アタックなどからインスピレーションを得ている[4]
  • 音楽制作には他の多くの作曲家と同じくMacintoshを愛用している。音楽制作ソフトはPropellerhead社のReason[6]およびヤマハのCubaseを愛用。近年のプレイステーション2作品では、Reasonで制作したものをストリーミングで演奏しているものがほとんどである。一方で、Memories Off 2ndの「With memories」は、携帯電話着信メロディ作成機能を用いてフレーズを書き留めた[3]
  • 阿保は様々なインタビューの中で、曲の作り方が作品によって異なると話しており、スタッフから具体的な指示を受けることもあれば、こちらから直接提案することもあるとしている[4][7]。また指定がなくても、日常風景やキャラクターのテーマやキーワードから連想して作ることもあったと振り返っている。一方で、楽器の演奏はしないため、アドリブには時間がかかるとしている[4]

人物 編集

  • ファンから貰った感想に積極的に返事をするなど、大変気さくな人物である。
  • 大変な自動車好きであり、しばしば一般参加の出来るカートレースに参加している。また、ホンダ・プレリュードの愛好家でもある[4]

参加作品 編集

ゲーム関連 編集

TVアニメ関連 編集

参加CD 編集

  • ファミソン8BIT(momo-iによるアニメソングカバーアルバム:7曲アレンジ参加)
  • ファミソン8BIT momo-i STAGE2(8曲アレンジ参加)
  • HUDSON Premium Audio Collection(4曲アレンジ参加)
  • 兄顔しずか~オンナノコのキモチ(1曲アレンジ参加)
  • クリミナルガールズ(エンディングテーマソング作編曲)
  • ファミソン・アイドルマスター(作編曲参加)
  • FMファミソン16BIT -ANIME STAGE-(3曲アレンジ参加)
  • ファミソン8BITスタジオ~邦楽編(2曲アレンジ参加)
  • ファミソン8BIT USA 洋楽編(2曲アレンジ参加)
  • さんさんな夏!
  • さんさんの冬。
  • あすか120% ~BURNING Remixes~(1曲アレンジ参加)
  • LIBRARIES
  • LIBRARIES II
  • LIBRARIES III -Takeshi Abo works with ANONYMOUS;CODE-
  • GATE OF STEINER 10th Anniversary
  • FM VERTEX I - CHAOS THEORY
  • ニューラル・ギア 33周年記念 X68000音楽篇 完全版(1曲アレンジ参加)

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 阿保剛(インタビュアー:箭本進一)「音色にこだわり,ゲームに寄り添う音楽を作り続ける。「阿保剛KID作品集」発売記念インタビュー」『www.4gamer.net,Aetas』、2020年11月24日https://www.4gamer.net/games/035/G003502/20201111048/2020年11月24日閲覧 
  2. ^ a b c 阿保剛(インタビュアー:ごえモン)「『カオスチャイルド』インタビューサウンド編。阿保剛さんがBGM40曲を解説!」『電撃オンライン』、2015年5月13日https://dengekionline.com/elem/000/001/043/1043113/2020年11月24日閲覧 
  3. ^ a b c (インタビュー)「『シュタゲ』『オカン』『メモオフ』の世界観を彩る、ゲームミュージックの知られざる世界を阿保剛が語る」『アニメイトタイムズ,アニメイト』、2017年11月9日https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=15101950402020年11月24日閲覧 
  4. ^ a b c d e f g h スペシャル座談会”. 阿保剛KID作品集シリーズ特設サイト. 5pb (2020年8月20日). 2020年9月26日閲覧。
  5. ^ KIDブランド9作品のサントラが“阿保剛KID作品集”として配信。特設サイトの公開も』(プレスリリース)5pb.、2020年9月26日https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20200925116/2020年9月26日閲覧 
  6. ^ (インタビュー)「『STEINS;GATE』などを手がけるゲームミュージッククリエイター・阿保 剛ハイレゾ作品集の魅力を本人に聞いた (2/3)」『Phile-web』、2016年2月26日http://www.phileweb.com/interview/article/201602/26/353_2.html2020年11月24日閲覧 
  7. ^ (インタビュー)「『STEINS;GATE』などを手がけるゲームミュージッククリエイター・阿保 剛ハイレゾ作品集の魅力を本人に聞いた (1/3)」『Phile-web』、2016年2月26日http://www.phileweb.com/interview/article/201602/26/353.html2020年11月24日閲覧 
  8. ^ PRODUCT”. シンスメモリーズ 星天の下で. 2021年5月21日閲覧。
  9. ^ モノクローム・ファクター : 作品情報”. アニメハック. 2020年9月5日閲覧。

外部リンク 編集