1989年カナダグランプリは、1989年F1世界選手権の第6戦として、1989年6月18日ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで開催された。

カナダの旗 1989年カナダグランプリ
レース詳細
日程 1989年シーズン第6戦
決勝開催日 6月18日
開催地 ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット
カナダ モントリオール
コース長 4.3902km
レース距離 69周(302.91km)
決勝日天候 曇/雨(ウェット)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'20.973
ファステストラップ
ドライバー イギリスの旗 ジョナサン・パーマー
タイム 1'31.925(Lap 11)
決勝順位
優勝
2位
3位

予選 編集

マクラーレンの2台が最前列を占めたのはこのシーズン5度目のことだったが、今回はアラン・プロストポールポジションを獲得した。

金曜日の予選でセナのマシンは3速にトラブルを抱え、予選タイヤでのアタックができなかった[1]。セナがレースタイヤで記録したタイムはプロストのタイムには僅かに届かず、プロスト、セナのオーダーで予選初日は終了した。

土曜日の予選は強風に見舞われ、向かい風となった直線のスピードは落ち、この風でコース上に砂が出たために路面のグリップも悪化した[2]。セナはこのセッションでプロストを1秒上回るタイムを記録したが、それでも前日のプロストのタイムを上回ることができなかった。

プロストは前年ポルトガルGP以来のポールポジションを獲得し、前年スペインGPから続いたセナの連続ポールポジション記録は8でストップした。

予選結果 編集

順位 No ドライバー コンストラクタ 1回目 2回目
1 2   アラン・プロスト マクラーレンホンダ 1'20.973 1'22.269
2 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 1'21.049 1'21.269
3 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 1'21.783 1'23.738
4 28   ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 1'21.946 1'22.305
5 27   ナイジェル・マンセル フェラーリ 1'22.165 1'22.751
6 5   ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 1'22.311 1'24.004
7 8   ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 1'22.612 1'23.599
8 21   アレックス・カフィ ダラーラフォード 1'22.901 1'24.957
9 22   アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 1'23.050 1'24.444
10 30   フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 1'23.059 -
11 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 1'23.252 1'25.195
12 9   デレック・ワーウィック アロウズフォード 1'23.348 1'23.833
13 19   アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 1'23.542 1'24.279
14 3   ジョナサン・パーマー ティレルフォード 1'23.665 1'23.876
15 17   ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 1'23.799 1'25.289
16 10   エディ・チーバー アロウズフォード 1'23.828 1'24.693
17 15   マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 1'23.863 1'24.734
18 36   ステファン・ヨハンソン オニクスフォード 1'23.979 1'24.918
19 11   ネルソン・ピケ ロータスジャッド 1'24.029 1'25.825
20 4   ミケーレ・アルボレート ティレルフォード 1'24.296 1'25.412
21 16   イヴァン・カペリ マーチジャッド 1'24.406 1'25.094
22 25   ルネ・アルヌー リジェフォード 1'24.558 1'25.394
23 38   クリスチャン・ダナー リアルフォード 1'25.298 1'24.727
24 24   ルイス・ペレス=サラ ミナルディフォード 1'24.786 1'25.570
25 40   ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 1'24.793 1'25.246
26 31   ロベルト・モレノ コローニフォード - 1'25.037
DNQ 12   中嶋悟 ロータスジャッド 1'25.051 1'26.358
DNQ 29   ヤニック・ダルマス ローラランボルギーニ 1'25.317 1'25.161
DNQ 20   ジョニー・ハーバート ベネトンフォード 1'25.335 1'25.282
DNQ 26   オリビエ・グルイヤール リジェフォード 1'25.382 1'25.289

決勝 編集

スタート時、フォーメーションラップ終了時にナイジェル・マンセルアレッサンドロ・ナニーニルイス・ペレス=サラの3名はピットに戻りドライタイヤに交換した。タイヤ交換を済ませてピットロード出口に向かったマンセルとナニーニは、ピット出口の信号が赤ではなく黄色点滅だったこと、またピット出口をクローズするオフィシャルが居なかったことから、既にスタートが切られていると思いコースに出た[2]。ところが実際にはまだレースはスタートしていなかった為、マンセルとナニーニはスタート手順に従わなかったことで失格となった。

プロストはスタートを決めたが、2周でピットに戻った。タイヤを交換してレースに戻ったが、間もなくサスペンション取り付け部がシャシーから剥離するトラブルによりリタイヤを喫した。

レース序盤はタイヤ選択の難しい局面が続いたが、雨が強くなったためタイヤを交換しなかったリカルド・パトレーゼの選択が正しく、首位を走行した。パトレーゼがタイヤ交換にピットインすると、デレック・ワーウィックがレースを引っ張った。しかしワーウィックは間もなく追い上げてきたセナに抜かれ、その直後にエンジントラブルでリタイヤした。

ブーツェンは序盤、ヘアピンを出た後の全開区間で大きくスピンしたが、うまくコース上にマシンをとどめて3位を走り続けた。

レース終盤、パトレーゼがアンダートレイのトラブルを抱えてタイムを落とすとブーツェンは残り6周の時点でこれを抜き2位に上がった。その3周後、今度はセナのエンジンがブローし、ホームストレートサイドにマシンを止めた。ブーツェンはトップに立ち、参戦95戦目にしてF1キャリア初優勝を飾った。これは、マンセルが持っていた初優勝までの最多参戦数記録(72戦)を更新するものだった。

決勝結果 編集

順位 No ドライバー マシン 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 5   ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 69 2:01'24.073 6 9
2 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 69 +30.007 3 6
3 22   アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 69 +1'36.649 9 4
4 11   ネルソン・ピケ ロータスジャッド 69 +1'41.484 19 3
5 25   ルネ・アルヌー リジェフォード 68 +1 Lap 22 2
6 21   アレックス・カフィ ダラーラフォード 67 +2 Laps 8 1
7 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 66 +3 Laps 2  
8 38   クリスチャン・ダナー リアルフォード 66 +3 Laps 23  
リタイヤ 31   ロベルト・モレノ コローニフォード 57 ディファレンシャル 26  
リタイヤ 9   デレック・ワーウィック アロウズフォード 40 エンジン 12  
リタイヤ 3   ジョナサン・パーマー ティレルフォード 35 スピンオフ 14  
リタイヤ 17   ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 33 電気系 15  
リタイヤ 16   イヴァン・カペリ マーチジャッド 28 スピンオフ 21  
リタイヤ 30   フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 26 スピンオフ 10  
失格 36   ステファン・ヨハンソン オニクスフォード 13 黒旗 18  
リタイヤ 24   ルイス・ペレス=サラ ミナルディフォード 11 スピンオフ 24  
リタイヤ 15   マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 11 電気系 17  
リタイヤ 28   ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 6 ギアボックス 4  
リタイヤ 40   ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 6 スピンオフ 25  
リタイヤ 10   エディ・チーバー アロウズフォード 3 スピンオフ 16  
リタイヤ 2   アラン・プロスト マクラーレンホンダ 2 サスペンション 1  
リタイヤ 8   ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 0 接触 7  
リタイヤ 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 0 接触 11  
リタイヤ 4   ミケーレ・アルボレート ティレルフォード 0 電気系 20  
失格 27   ナイジェル・マンセル フェラーリ 0 失格 5  
失格 19   アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 0 失格 13  
  • No.36 S.ヨハンソンはピット機材がリアウイングに引っかかったままピットアウトし走行していたため、レーススチュワードから黒旗が提示され失格となった[3]
  • 予選、決勝順位は、公式サイト[4]およびF1グランプリ年鑑[5]より。

記録 編集

  • 初優勝:ティエリー・ブーツェン
  • 初ファステストラップ:ジョナサン・パーマー
  • 最終ポイント獲得:ルネ・アルヌー

脚注 編集

  1. ^ アラン・ヘンリー 編『F1グランプリ年鑑 1989-90』バベル・インターナショナル・訳、CBSソニー出版、1990年、pp.96-ff頁。ISBN 4-7897-0502-1 
  2. ^ a b 『オートスポーツ 1989年8月15日号』三栄書房。 
  3. ^ カナダGPリザルト Racing On 武集書房 1989年8月15日発行
  4. ^ 1989 Canadian Grand Prix”. 2008年8月25日閲覧。
  5. ^ アラン・ヘンリー 編『F1グランプリ年鑑 1989-90』バベル・インターナショナル・訳、CBSソニー出版、1990年、pp.104-105頁。ISBN 4-7897-0502-1 

関連項目 編集

前戦
1989年アメリカグランプリ
FIA F1世界選手権
1989年シーズン
次戦
1989年フランスグランプリ
前回開催
1988年カナダグランプリ
  カナダグランプリ 次回開催
1990年カナダグランプリ