ATOMISWAVE(アトミスウェイブ)は、2003年にサミーが開発した業務用のシステム基板。ドリームキャストの描画チップと構造を基にしている。ソフトはROMカセットで供給する方式。

概要 編集

多くの機能はNAOMIに類似しているが、ネットワークは標準対応になっている。またVRAM容量に対してRAM容量がNAOMIより少なくなっており2D表示機能はNAOMIより若干劣る。

元々は、2001年7月にサミーがセガからドリームキャストの余剰部材を大量に購入したことがきっかけだった。次いで、サミーはセガからアーキテクチャ技術のライセンス供与を得て、「システムX」という名前で発表し、のちにATOMISWAVEという名前で発売した。[1]

当初NAOMIに取って代わり、加えてネオジオ時代のSNK(旧社)が発売した多くのシリーズ作品を受け継いだことからMVSの後継基板となることが予想され期待されていたが、前述の2D機能の弱さもあってヒット作に恵まれなかったサミーとセガ(後のセガグループ)との経営統合後は一部を除きアーケードゲーム事業をセガに一本化した関係上、本基板での開発は縮小傾向になり2006年の『メタルスラッグ6』の発売をもって開発終了となった(他に、元々NAOMI/Dreamcastの余剰部品をセガより譲り受けて作られたという経緯上、既に生産終了したチップを用いて製造していたことから、部品の在庫が尽きた時点で生産継続が出来なくなったという要因もある)。

またAW-NETによるネットワークサービス展開も成功したとは言い難く、更にセガのタイトルを標的とした競合ソフトが多かった(ネットセレクトシリーズなど)関係もあり、同サービスに対応したゲームは2005年の『ネオジオバトルコロシアム』を最後にAW-NET自体も2006年11月30日で終了、現在AW-NET対応ソフトはすべてオフライン稼動となっている。

なお、サミーはアトミスウエイブ用の汎用筐体にタイトーの「イーグレットIII」を採用しており、アトミスウエイブ用ソフトの開発終了後はサードパーティータイトーの「Taito Type X」に移行させている、その際セガとサミーのゲーム事業統合の際にセガがイーグレット筐体の在庫を大量に抱える原因となった。

2017年3月31日を以って修理サポートが終了[2]

それでも、ATOMISWAVE対応作品の中には、『ザ・ランブルフィッシュ2[3]のように人気を得、他プラットフォーム(またはATOMISWAVE以外の基板)に移植された作品もある。

米国でのATOMISWAVE 編集

2006年の『メタルスラッグ6』を最後に日本国内での展開は終了したが、米国では現在[いつ?]も対応タイトルが開発、リリースされ続けており、2008年に於いては『SEGA Clay Challenge』がリリースされている。これは米国の業務用ゲーム事情において、一度オペレーターが購入したゲーム機はインカムが極端に落ちない限り使えなくなるまで使い続ける風潮があり、現在もスーパーマーケットの一角にあるゲームコーナー等で未だにSNKのNEOGEO用タイトル (MVS) が稼働している風景を見る事からも窺える。

米国内でのATOMISWAVEの出荷数は『Sports Shooting USA』のヒットにより数千台規模になっていると推測され、現在もこの時に使われていた筐体を改造(メーカー公認によるコンバーションキットによる)し、新作タイトルに入れ替えて運用する事で生き続けている。なお、日本国内ではセガのハードウェアで展開されているネットワークシステムであるALL.Netも米国では現地出荷数の多さにより、現在はATOMISWAVEにより展開されている。対応タイトルはサミーが業務用ゲーム機活動時代に得意分野だったハンティングシリーズである『EXTREME HUNTING2 TOURNAMENT EDITION』。

その他トピックス 編集

米国に於いてはATOMISWAVEという名称は登録商標の問題により使用を取り止めており、対応タイトルのマニュアル(SEGA AMUSEMENT USAのホームページ上からダウンロードできる)内での表記は単純にMain PCB AWとなっているが、イラストや設定画面の類はATOMISWAVEそのものとなっている。

スペック 編集

 
Dreamcast用SH-4 HD6417091
 
Dreamcast用PowerVR2 315-6226
  • CPU : SH-4200MHz/360MIPS)
  • RAM : 16MB(NAOMIは32MB、ドリームキャストは16MB)
  • VRAM :16MB(NAOMIは16MB、ドリームキャストは8MB)
    • グラフィックスエンジン : Power VR2
    • ポリゴン描画能力 : 300万 - 500万/秒
    • 同時表示色数 : 1677万色同時表示(24ビット)
  • サウンドRAM : 8MB(NAOMIは8MB、ドリームキャストは2MB)
    • サウンドエンジン : YAMAHA スーパー・インテリジェント・サウンド・プロセッサ(32ビットRISC CPU内蔵)
    • サウンド機能 : ADPCM 64ch
  • ネットワーク機能 : AW-Net(56k モデム or ブロードバンド接続
  • ソフト供給媒体 : ROMカートリッジ(最大128MB)

基板の注意点 編集

ATOMISWAVEではROMカートリッジをマザーボードから外した時点でゲームのバックアップデータが初期化されてしまうので注意。

サードパーティー 編集

主なソフト 編集

発売されたタイトル 編集

※の付いたものは「AW-NET」対応タイトル。

作品名 開発 販売 稼働開始年 AW-NET 備考
ドルフィンブルー サミー 2003年8月5日   [4]
[5]
デモリッシュ・フィスト ディンプス サミー 2003年 [6]
三国戦紀 七星転生 IGS サミー 2003年
GUILTY GEAR ISUKA アークシステムワークス サミー 2003年12月17日 ATOMISWAVE初の対戦型格闘ゲームであると同時に、AW-NET対応タイトル第1弾 [7]
ネットセレクト サラリーマン金太郎 サミー 2004年7月 [7]
ザ・ランブルフィッシュ ディンプス サミー 2004年
ザ・キング・オブ・ファイターズNEO WAVE SNKプレイモア
(実開発はノイズファクトリー)
サミー 2004年7月27日 [4]
ネットセレクト競馬 ビクトリーハロン サミー 2005年 [8]
ザ・ランブルフィッシュ2 ディンプス サミー 2005年 『ザ・ランブルフィッシュ』の続編 [3]
ネオジオバトルコロシアム SNKプレイモア セガ 2005年
サムライスピリッツ 天下一剣客伝 SNKプレイモア
(実開発は悠紀エンタープライズ
セガ 2005年
ザ・キング・オブ・ファイターズXI SNKプレイモア セガ 2005年
北斗の拳 アークシステムワークス セガ 2005年
メタルスラッグ6 SNKプレイモア セガ 2006年   サミーのセガ側への使用基板の迎合に加え、最大のサードパーティーであったSNKプレイモアの実質上撤退(同社の各シリーズタイトルはタイトーTaito Type Xへ移行)により同作が日本における本基板の最終開発ソフトとなった。

日本国外でのみ発売されたタイトル 編集

作品名 開発 販売 稼働開始年 備考
Maximum Speed サミー
Sports Shooting USA サミー
EXTREME HUNTING サミー [1]
RANGER MISSION サミー [2]
FASTER THAN SPEED サミー [3]
DIRTY PIGSKIN FOOTBALL サミー
EXTREME HUNTING2 TOURNAMENT EDITION セガ 北米内ALL Net対応タイトル [4]
SEGA Clay Challenge セガ [5]
SEGA Bass Fishing Challenge セガ [6]

発売および開発中止となったタイトル 編集

作品名 開発 販売 備考
プレミアイレブン ディンプス サミー サッカーを題材としたゲームで、ATOMISWAVE対応ソフト第1弾として2002年12月に稼働する予定だった。
『アーケード未発売・未稼働ゲーム大全2』の著者ぜくうは、テーマ選定に問題はなかったとしたうえで、ロケテストのインカム、操作体系としてトラックボールを採用したことや、特殊な筐体が稼働見送りの原因になったのではないかと推測している。
[9]
とれとれ!寿司 サミー ATOMISWAVE初のパズルゲームになる予定だった。ぜくうはロケテストの回転率の悪さが原因ではないかと推測している。 [10]
FORCE FIVE サミー ATOMISWAVE初の対戦型格闘ゲームとして2004年春に稼働する予定だった。2006年にNAOMIプラットフォームでリリースされた『仁義ストーム The Arcade』は同作品のソースコードを流用したものとされている。 [7]
拳獣 〜KENJU〜 ドリームファクトリー サミー 2004年に行われたアミューズメントマシンショーにて出展されていた。 [11]
CHACE 1929 サミー  

脚注 編集

  1. ^ ぜくう 2022, p. 108-109, プレミアイレブン.
  2. ^ 弊社製品保守対応の終了についてセガ・インタラクティブ、セガ・ロジスティクスサービス 2016年11月
  3. ^ a b [プレイレポ]17年の時を経て蘇った通好みの対戦格闘ゲーム「ザ・ランブルフィッシュ2」,その魅力と追加要素をチェック”. 4Gamer.net. Aetas. 2023年3月19日閲覧。
  4. ^ a b ぜくう 2022, p. 118, サミーVS.カプコン.
  5. ^ ドルフィンブルー”. www.am-j.co.jp (2003年7月). 2023年3月19日閲覧。
  6. ^ デモリッシュフィスト”. www.am-j.co.jp (2003年7月). 2023年3月19日閲覧。
  7. ^ a b c ぜくう 2022, pp. 122–123, フォースファイブ.
  8. ^ ネットセレクト競馬 ビクトリーハロン”. www.am-j.co.jp (2005年4月). 2023年3月19日閲覧。
  9. ^ ぜくう 2022, pp. 108–109, プレミアイレブン.
  10. ^ ぜくう 2022, p. 119, とれとれ!寿司.
  11. ^ SBG:ATOMISWAVEにネオジオ新作!そのほかにも続々”. nlab.itmedia.co.jp (2004年9月2日). 2023年3月19日閲覧。

参考文献 編集

  • ぜくう『アーケード未発売・未稼働ゲーム大全2』三才ブックス〈ゲームラボ選書〉、2022年9月21日。ISBN 978-4866733326