JR西日本キハ189系気動車

西日本旅客鉄道の特急形気動車

キハ189系気動車(キハ189けいきどうしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の特急形気動車である。

JR西日本キハ189系気動車
キハ189系による「はまかぜ
(2010年11月7日)
基本情報
運用者 西日本旅客鉄道
製造所 新潟トランシス
製造年 2010年
製造数 7編成21両
運用開始 2010年11月7日
主要諸元
編成 3両編成
軌間 1,067 mm
最高運転速度 120 km/h(2両編成時)[1]
130 km/h[1]
起動加速度 2.0 km/h/s (0 - 60 km/h) 、1.0 km/h/s (0 - 120 km/h)(出典には「平均加速度」と記載されている)[1]
減速度(常用) 4.6 km/h/s[1]
減速度(非常) 5.2 km/h/s[1]
編成定員 156名
自重 47.5 - 49.5 t[1]
全長 21,300 mm[1][2]
車体長 20,800 mm(先頭車)
20,870 mm(中間車)[2]
全幅 2,914.3mm[2]
車体幅 2,900 mm[1][2]
全高 4,075 mm[2]
車体高 3,650 mm(先頭部は3,710 mm)[1]
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車ヨーダンパ・アンチローリング装置付)
WDT66
動力伝達方式 液体式
機関 SA6D140HE-2
機関出力 331 kW (450 PS) × 2基
変速機 液体変速機 DW21
変速段 変速1段・直結4段
編成出力 1,324 kW (1,800 PS) - 2両編成時
1,986 kW (2,700 PS) - 3両編成時
制動装置 機関ブレーキ排気ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 ATS-Sw, ATS-P
EB装置TE装置
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概要 編集

特急はまかぜ」で使用されていたキハ181系の置き換え用を目的として7編成21両が製造され、2010年(平成22年)11月7日より営業運転を開始した[3]

キハ181系で連結されていたグリーン車は設定されておらず、全て普通車のみで組成される。製造は全車新潟トランシスが担当した。

営業運転開始前の2010年9月18日に豊岡駅、同年9月19日に浜坂駅香住駅、同年10月17日に姫路駅・神戸駅の順に車両展示会が実施された[4][5][6]

なお、本系列の投入に伴い、山陰本線和田山駅 - 居組駅間と播但線寺前駅 - 和田山駅間のホームの嵩上げや、信号設備線形など、地上設備の改良も実施された[7]。改良の完了までは、エンジン出力を1基当たり198 PSに制限していたが[8]2012年3月17日のダイヤ改正からスピードアップと所要時間短縮が実施されている[9]

車両概説 編集

車体 編集

ステンレス製で、先頭部のみ製としている。外観デザインは、ステンレスの地色を主体に、茜色を車体側面の帯や前面のアクセントとして採用している。乗降姫路方に1,000 mmの引戸で1か所としており、半自動ボタンが設置されている[注 1]。なお、扉部分にはステップは設けられていない。

安全面では、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造の採用で車体構造が見直され、車両連結面には転落防止幌が設置されているが、先頭車前面は無し。先頭車前面はパノラミックウインドウや灯具の配置など、キハ82形キハ181系のデザインを踏襲していて、連結器は電気連結器付き密着連結器となる。デザインを踏襲したこともあり国鉄色の再現も候補にあったが、側面の窓回りだけ国鉄色をイメージする。

基本編成(3両)以上であれば、主に新快速で使用されている223系電車225系電車などと同等の最高速度130 km/hで走行が可能である[1][10]。中間車を抜いて2両編成で運用することも可能であるが、この場合最高速度は120 km/hに抑えられる[1]

側面の種別・行き先表示器は、キハ187系気動車と同様に LED 式を採用しており[10]キハ187系とは異なり、前面貫通扉部分に列車愛称表示器は設置されていない。

車内 編集

座席683系電車4000番台に準ずるリクライニングシートを横2+2列の4アブレストで配置するが、モケットは青色から赤色に変更されている。シートピッチはキハ181系の910 mmから970 mmに拡大し、車端部座席にモバイル機器コンセントが設置され[1]、キハ189形0番台にはバリアフリー設備として多目的室や車椅子での使用に対応した洋式トイレが設置されている[1]

客室内には LED 式の車内案内表示装置が設置されている[11]

主要機器 編集

 
台車 (WDT66)
台車左寄りには排障器が見える。

各車両にディーゼルエンジン2基、電源装置1台、空気圧縮機2台、燃料タンク (650 l) 2台、蓄電池が搭載されている[2]

エンジンは、排気をクリーンにするためにコモンレール燃料噴射装置を採用し、排出ガス中の窒素酸化物すすなどの排出量を低減させたコマツ製のSA6D140HE-2を各車両に2基ずつ搭載する[12]。エンジン1基の定格出力は331 kW (450 PS)、定格回転数は2,100 rpmで、過給機および吸気冷却装置を備える。このほか、キハ181系やキハ40・47形と同等の車両性能に変更できるよう、性能選択スイッチが搭載されている[12][10]

空気圧縮機 (C600) はベルト駆動式を採用し、毎分600 lの容量が備わっている[1]

空調装置などのサービス用電源装置として、エンジンの駆動力を利用した発電機が搭載されており、電源装置は用途に応じて、三相交流440 V・50 kVA交流100 V・10 kVA、直流100 V・5 kW、直流24 V・2 kWの4種を供給する[11]

台車は1軸駆動式で、223系で実績のある軸梁式のWDT66ボルスタレス台車を採用[12]。アンチローリング装置を設置し、急カーブの通過を考慮して先頭車両台車の先頭軸にはフランジ塗油装置を備えている。

ブレーキには、台車ごとの制御となる機関ブレーキ排気ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用する。基礎ブレーキ装置は踏面ユニットブレーキ(動軸)/ディスクブレーキと踏面ユニットブレーキの併用(従軸)となっている。

空調装置は、集約分散式の WAU707A が1両あたり2基屋根上に搭載される。冷房能力は1基あたり20,000 kcal/hで、1両あたり40,000 kcal/hとなっている[1]

編成・形式 編集

キハ189形
0番台
鳥取草津向きの制御車。前位寄りに運転台、後位寄りにトイレ・洗面所・車椅子対応設備・多目的室を備える。定員40名。
1000番台
姫路向きの制御車。前位寄りに運転台を備える。定員60名。
キハ188形
キハ189形にはさまれる中間車。前位寄りに車内販売準備室(業務用室)、後位寄りにトイレが設置されている。乗降扉のほか車内販売準備室部分に業務用扉を設ける。定員56名。
キハ189系編成表[12][13][1]
← 鳥取・草津
姫路 →
キハ189
(Mc1)
キハ188
(M1)
キハ189
(Mc2)

運用 編集

 
余部橋梁を渡るキハ189系(特急「はまかぜ」)

2016年4月1日現在、吹田総合車両所京都支所(旧:京都総合運転所)に3両編成(H編成)7本が配置されている[14]

特急「はまかぜ」として大阪駅 - 鳥取駅間(JR神戸線播但線山陰本線経由)で運用されるほか、2014年3月17日より、平日ダイヤでの運転日のみ「はまかぜ」6号の間合い運用として、通勤特急「らくラクびわこ」4号(大阪駅 → 草津駅)にも充当されている。いずれも3両編成を基本としているが、多客時には3両編成を2本連結した6両編成で運行される。

臨時列車としては、2011年1月8日からは、冬季臨時列車である「かにカニはまかぜ」(大阪駅 - 浜坂駅間)にも使用されているほか、2011年6月からは、播磨地区から奈良方面の修学旅行列車としても運用されている[15]

また、山陰デスティネーションキャンペーン開催に合わせ、2012年10月6日から11月25日までの土曜・休日に、臨時特急「スーパーまつかぜ96号・97号」(鳥取駅 - 出雲市駅)に、2018年7月1日から9月30日までの土曜・休日(一部を除く)で、臨時特急「大山1号・2号・4号」(鳥取駅 - 米子駅)に[16]それぞれ充当された。

このほか、TWILIGHT EXPRESS 瑞風運転開始前の試運転として山陽本線も走行している。

観光列車「はなあかり」 編集

2022年10月12日、JR西日本は地域の華(はな)を列車に集めて、お客様と地域の縁を結ぶ列車をコンセプトとして、キハ189系を改造した観光列車を2024年秋に導入予定であることを発表した。第1弾は、小浜線舞鶴線京都丹後鉄道線・山陰本線を経由して、敦賀から若狭・京都府北部を通り、城崎温泉までを結ぶルートを運行予定である。 第2弾以降も、季節ごとに線区を変えて運行予定。[17]

2023年10月25日、JR西日本は列車名が『はなあかり』に決定し、車両デザインを川西康之が担当していると発表した。[18]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ JRグループの特急形車両で旅客が操作する半自動ボタンが設置されているのは本系列のほかには同社285系電車・キハ187系・JR東海373系電車JR四国8600系電車がある。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『鉄道ファン』通巻590号、p.67
  2. ^ a b c d e f 『鉄道ファン』通巻591号、p.94-96
  3. ^ 7月定例社長会見』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2010年7月21日。 オリジナルの2010年12月5日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20101205020050/http://www.westjr.co.jp/news/newslist/article/1174899_799.html2010年7月21日閲覧 
  4. ^ 特急「はまかぜ」新型車両展示会の開催について』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2010年9月10日。 オリジナルの2011年7月3日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20110703011641/http://www.westjr.co.jp/news/newslist/article/1174965_799.html2010年9月11日閲覧 
  5. ^ キハ189系の車両展示会が行なわれる - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2010年9月18日
  6. ^ キハ189系,姫路駅と神戸駅で展示会 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2010年10月17日
  7. ^ 輸送改善事業に着工 JR山陰本線・播但線”. 日本海新聞. 新日本海新聞社 (2009年10月23日). 2010年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年3月28日閲覧。
  8. ^ 『Rolling stock & Machinery』第20巻第12号、p.55
  9. ^ 平成24年春ダイヤ改正について (PDF) - 西日本旅客鉄道福知山支社プレスリリース 2011年12月16日
  10. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻590号、p.69
  11. ^ a b 『鉄道ファン』通巻590号、p.68
  12. ^ a b c d 「はまかぜ」用キハ189系誕生。 - ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス』 編集長敬白 2010年4月3日(インターネットアーカイブ)
  13. ^ キハ189系が甲種輸送される - 交友社鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2010年3月19日
  14. ^ 「JR旅客各社の車両配置表」『鉄道ファン』2016年7月号 交友社
  15. ^ 奈良線でキハ189系6両を使用した団臨 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2011年6月13日
  16. ^ 2018年夏の臨時列車運転のご案内 (PDF) - 西日本旅客鉄道米子支社プレスリリース 2018年5月18日
  17. ^ 特別な旅を創る新たな観光列車 ~2024年秋 デビュー~ - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2022年10月12日
  18. ^ 元「特急はまかぜ」用車両、改造で「全車グリーン車以上」に とてつもなく豪華な観光列車に変身へ - 乗りものニュース 2023年10月26日

参考文献 編集

  • 鍋谷武司(JR西日本車両部車両設計室)「はまかぜ用特急形気動車キハ189系」『レイルマガジン』第321巻、ネコ・パブリッシング、2010年6月、48 - 53頁。 
  • 廣瀬智晴・山本聖明・谷浦聡也(JR西日本鳥取鉄道部西鳥取車両支部)「JR西日本キハ47における馬力設定確認の改善に関する一考察」『Rolling stock & Machinery』第20巻第12号、日本鉄道車両機械技術協会、2012年12月、55 - 57頁。 
  • 『データで見るJR西日本』 - 西日本旅客鉄道
  • 鍋谷武司(西日本旅客鉄道株式会社車両部 車両設計室)「“はまかぜ”用キハ181系を置き換え キハ189系特急形気動車」『鉄道ファン』第590号、交友社、2010年6月、66- 69頁。 
  • 編集部「2010/7 鉄道ファンVol.50 No.591付図」『鉄道ファン』第591号、交友社、2010年7月、94- 96頁。 

外部リンク 編集