MLI-84歩兵戦闘車

ルーマニアが開発した歩兵戦闘車

MLI-84は、ルーマニア歩兵戦闘車。現在ルーマニア陸軍に採用されている。ソビエト連邦製のBMP-1を基礎としており、より長い車体になり、兵員区画の上部に12.7mm口径DShK38重機関銃が搭載されている。

MLI-84
MLI-84M1(ルーマニア国家の日のブカレスト"Triumph Arch"でのパレード、2008年12月1日
種類 歩兵戦闘車
原開発国 ルーマニアの旗 ルーマニア
運用史
配備期間 1985年-現在[1]
配備先 ルーマニアの旗 ルーマニア社会主義共和国
開発史
開発期間 1982年-1985年[1]
製造期間 1985年-1991年(MLI-84)[2]
1995年-現在(MLI-84M)
製造数 178両
派生型 派生型を参照。
諸元 (MLI-84M[4])
重量 17.6トン
全長 7.335m
全幅 3.3m[3]
全高 2.942m[3]
要員数 3名(車長操縦士砲手)+8名[3]

装甲 12.7mm弾から防護可能。
主兵装 MLI-84:2A28 グロム英語版 73mm低圧砲x1
MLI-84M1:エリコン KBA 25mm機関砲x1
副兵装 MLI-84:9S415対戦車ミサイルランチャーx1[1]
DShK38 12.7mm重機関銃x1
MLI-84M1:9M14-2T マリュートカ-2T対戦車ミサイルx1あるいはスパイク対戦車ミサイルx1
エンジン MLI-84:8V-1240-DT-S
MLI-84M1:キャタピラー C9
出力重量比 23.4馬力/トン(16.8kW/トン)
懸架・駆動 第1・第6接地輪にそれぞれ油圧ショックアブソーバートーションバー
地上高 400mm[3]
燃料タンク容量 620リットル
行動距離 550-600km
速度 65km/h
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開発 編集

1982年ルーマニアは178両のBMP-1歩兵戦闘車生産ライセンスソ連から購入した。同時に、ルーマニアの工業に適合させるために製造の変更許可を受けた[1][5]。この際、ルーマニア仕様としてルーマニア国内で製造されたものがMLI-84となった。

1995年には改良の決定が行われた。ルーマニアとイスラエルの協力計画の結果、近代化されたMLI-84M1が製造された。以降、ルーマニア国防省英語版は、1億5,500万USドルを費やして99両を改良している。

概要 編集

 
MLI-84(基本型)
ブカレスト国立軍事博物館英語版

MLI-84における最も重要な改善は、ソ連製のUTD-20 ディーゼルエンジン[6]を、ルーマニア製の8V-1240-DT-S ディーゼルエンジン[7]に換装したことである。新しいエンジンは355馬力で開発されており、最大速度は70km/hに向上している[1][3]。しかし、従来のエンジンよりも重く大きかったためにエンジンコンパートメントは、このエンジンに合わせるために作り直された。燃料容量は600リットルに向上している。これらの変更によって車体の長さは60cm伸びて7.335mとなり、転輪の間隔に隙間を生じさせている。また、より広く高くなっており、幅が3.15m、高さが2.11mとなった。最低地上高は370mmから400mmに拡大した。

武装は変更されなかったが、12.7mm DShK38対空重機関銃が、左後部兵員区画のルーフハッチの上に取り付けられたターレットに搭載された。これは、兵員区画の左後方ドアの隣に座った兵士によって運用され、運用中は歩兵を乗降させることが不可能である[1][3]

前述の変更と近代化によって重量は16.6トンに増加しており、渡河に多少の準備が必要になっており、水陸両用能力は弱められた[1][3]

改良 編集

MLI-84の改良は、イスラエルラファエル社で開発されたOWS-25R無人砲塔(RWS)を搭載することで行われ、砲塔にはエリコン KBA 25mm機関砲と9S415対戦車ミサイルランチャーおよび2発のミサイル弾頭、4機の発煙弾発射機が装備されている。新型砲塔の搭載によって重量が17.6トンに増加しており、新型のより強力なエンジンが搭載されている。

新型エンジンは、キャタピラー製の396馬力C9 エンジンで、ルーマニア陸軍が最近獲得したモワク ピラーニャIIIと同一のエンジンである。しかし、重量増加によって簡易な準備での渡河能力を失い、特別な準備が必要となった。車体は幅3.3mに、高さ2.942mに若干拡大された。エンジンは、より強化されたが、新式装備の重量によって路上での速度は65km/hになった[1][3][8]

9S415対戦車ミサイルランチャーが搭載され、9M14 マリュートカ、発展型の9M14M マリュートカ-M、9M14P マリュートカ-Pなどが発射可能であったが、これは後にユーゴスラビア製の9M14-2T マリュートカ-2T対戦車ミサイル用のランチャー装備、イスラエル製のスパイク対戦車ミサイル用のランチャー装備などに変更された[8]

生産 編集

MLI-84の生産は1985年に始まり、1991年までに178両が生産されている。

派生型 編集

MLI-84
基本型。
MLI-84M1
改良型。
MLI-84M1 Punct de Comanda Batalion
MLI-84M1の大隊指揮車型。砲などの代わりに大型の上部構造となっている[8]
MLI-84M1 Tractor Pentru Evacuare Tehnică
MLI-84M1の装甲回収車型。砲塔は、外部から操作する大型3セクション油圧クレーンに置換され、ウインチフレームが車体後部上に取り付けられている。車体後部上の左に1つ、車体後部上の右に2つ収納庫が存在する[8]
MLI-84M1 Vehicul de Evacuare Medicală
MLI-84M1の装甲救急車[8]。大隊指揮車に見られるような大型の上部構造を装備している。
 
Md.89自走榴弾砲
Md.89自走榴弾砲
MLI-84を延長した車体に2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲の砲塔を搭載した自走榴弾砲。現在、全車が退役し倉庫に保管されている。

運用者 編集

ルーマニア陸軍は178両のMLI-84を運用しており、99両はMLI-84M1に改良されている。最初の改良車両は、2005年第282機械化旅団英語版に配備された[9]。当初、改良計画は全車両の改良を目標としていた[10]

画像 編集

脚注 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集