獣医学部

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獣医学部(じゅういがくぶ、: School of Veterinary Medicine)は、獣医学教育を施して獣医師を養成するための大学課程である。

学校教育法により、医学部歯学部薬学部と同様に獣医学部・獣医学科は6年制である。獣医師免許取得課程以外の4年制の学科を併設する大学もある。

国内での獣医系大学は現在、国立大学法人10・公立大学法人1・私立5の16大学である。

目次

獣医学部の概要編集

  • 1984年(昭和59年)に4年制から6年制移行が行われた。
  • 獣医学部・学科を有する全大学を通してわずか1000人未満しか募集がないため、入学試験は(国公立の難易度は高いが)大学間で難易度のばらつきが非常に少なく、国公立・私立を問わず全大学が一定して高いレベルに集まっているのが他の理系学部にない特徴である。

卒業後の進路編集

  • 卒業後は従来の畜産動物病院、公衆衛生に加え、獣医学研究、自然保護など活躍の場が広がったことに加え、少子化に伴って愛玩動物市場が拡大していることもあり、臨床獣医師を目指す入学希望者が増加傾向にある。
  • 人間の医師は9割以上が臨床に進むので、獣医師もそのようなイメージが強いが、実際には動物病院で働く小動物臨床獣医師の全国割合は4割弱である。小動物以外では畜産分野、畜養漁業分野、競走馬など産業動物の診療、動物園水族館での診療などが臨床獣医師の業務としてあげられる。
  • 主に大動物を扱う公務員の獣医師(行政獣医師)に進む獣医師は約2.5割。国家公務員地方公務員の別がある。狂犬病予防員、屠畜検査員などの業務があるほか、保健医療分野では所管業務(検査業務、食品・環境衛生業務、感染症予防業務など)を担当する。
  • 民間企業の獣医師(企業獣医師)に進む獣医師は約1割。食品会社や製薬会社からの求人が多く、研究・開発、品質管理、動物管理・実験などの業務に携わる。特に製薬会社では動物実験の業務の需要が高い。
  • 日本の場合、医師歯科医師薬剤師看護師を管轄しているのは厚生労働省であるが、獣医師の管轄は農林水産省である。
  • 渡米して専門医を目指す獣医師も、少数とはいえ近年増加傾向にある。ちなみに米国で放射線腫瘍学の専門医を取得した者は約90名(2015年現在)であるが、そのうち5人は日本の獣医大学を卒業した日本人獣医師である。

獣医学部(獣医学科)がある日本の大学編集

国立大学法人編集

北海道地方編集

道央編集
道東編集
  • 帯広畜産大学(畜産学部共同獣医学課程。2012年度から北海道大学との共同教育課程に改組):同40名

東北地方編集

北東北編集
  • 岩手大学(農学部共同獣医学科。獣医学科を2012年度から東京農工大学との共同学科に改組):同30名

関東地方編集

南関東編集
  • 東京大学(農学部獣医学課程):同30名
  • 東京農工大学(農学部共同獣医学科。獣医学科を2012年度から岩手大学との共同学科に改組):同35名

中部地方編集

東海編集
  • 岐阜大学(応用生物科学部獣医学課程。獣医学課程を2013年度から鳥取大学との共同学科に改組):同30名

中国地方編集

山陰編集
  • 鳥取大学(農学部獣医学科。獣医学科を2013年度から岐阜大学との共同学科に改組):同35名
山陽編集
  • 山口大学(共同獣医学部。農学部獣医学科を2012年度から鹿児島大学との共同学部に改組):同30名

九州地方編集

南九州編集
  • 宮崎大学(農学部獣医学科):同30名
  • 鹿児島大学(共同獣医学部。農学部獣医学科を2013年度から山口大学との共同学部に改組):同30名

公立大学法人編集

近畿地方編集

関西編集

私立大学編集

北海道地方編集

道央編集

関東地方編集

南関東編集

過去に獣医学部(獣医学科)があった日本の学校編集

  • 陸軍獣医学校(前身の陸軍馬医学会が1877年に発足し、1893年に陸軍獣医学校が設立され、1945年に廃止された。)
  • 宇都宮農林専門学校(1939年に宇都宮農林学校に獣医学科が設置された。1944年に宇都宮農林専門学校に改称され、1949年に宇都宮大学の発足に伴い包括された。農専の獣医畜産科の最後の卒業生が、1951年4月設置の獣医畜産専攻科 (修業年限1年) に進学し、1952年にこれが廃止された。)
  • 慶応義塾獣医畜産専門学校(1944年に創設され、1949年に廃校とされた。)

地域や進路の偏り編集

獣医師の資格を得ながら毎年2割の卒業生が獣医師以外の進路へ進む人がいるため研究獣医師が不足している。毎年約1000人いる獣医学系大学の卒業生の半数以上が犬、猫などのペットを診る小動物獣医師になる一方、家畜臨床や公衆衛生の教員などの獣医師資格者の不足の状態が続いている。1986年と比べて2008年の獣医師数は小動物が2.6倍に増えたが、地方公務員獣医師・小規模畜産農家・大型の産業動物を診る獣医師は減り続けている。特に高知県では2011年に県の公式ホームページで『獣医師が不足しています。(社会的使命への貢献)』との地方自治体で働く獣医師を求めるページを独自に作成して公開した。毎年約1000人の獣医学新卒者の地方自治体勤務の希望者は約1 ~2割で他は動物関連の病院や診療所、各大学、研究機関、民間企業、農業共済組合連合会、JA等関連団体に就職するため、平成22年度(2010年)の全国の地方自治体の300人以上の募集を例に需要と比較して100から200人近くも毎年足りていない現状を訴えている[1]

朝日新聞2010年6月に宮崎県で家畜伝染病・口蹄疫の被害が広がる中、地方自治体で自治体職員として家畜の防疫対策・食肉衛生検査に必要な公務員獣医師の不足が深刻化していて、口蹄疫の対処に39都道府県の公務員獣医師の支援を受けて漸く処理している窮状を報道した。一例として青森県では普段公務員獣医師55人で食肉処理場5カ所の毎年約99万4000頭の検査を担っているが、食の安全を守る最前線であり、本当は倍以上の公務員獣医師が欲しいとの現場の声を紹介した。多くの地方自治体は伝染病対策に遅れが出てはいけないとして獣医学部卒業生の確保を求めているが公務員獣医師希望者の定員割れが続いている調査結果を伝えた[2]。 2017年2月に日本農業新聞は日本政府が2011年に畜産農家の飼養衛生管理基準を変更して公務員獣医師に求められる防疫業務は大きく増大した。牛・豚・鶏の全農家を巡回・指導、家畜の診察・法定検査、畜舎への入り方から車両の消毒、家畜の飲み水の調達方法、適正な飼養密度、防鳥ネットの設置など20を超す項目を確認することになったことや、高知県のような地方自治体では慢性的な人手不足のために限られた獣医師で広大な県内をカバーするのは負担が大きいのが実情との声を伝えた。2014年の全国の獣医師数は約3万9000人だがペット関連の獣医師が39%と最多で家畜防疫や家畜改良などを担う公務員獣医師は9%と少数派である。統計によると畜産業盛んな地方ほど公務員獣医師1人当たりの畜産農家戸数が多く、負担感を増している。農林水産省によると、獣医系学部の大学生は首都圏など都会出身・自身の地元である都会で獣医師職に就く場合が多く、団塊世代の公務員獣医師の退職もあり、地方自治体で働く獣医師が恒常的な不足する状態に陥っている。そのため獣医学部卒業生の確保のために北海道や東北、中国、四国、九州の畜産農家の多い17道県は、学生に修学資金を貸与し、卒業後に獣医師として県内で就職すれば返還を免除する制度を導入している。北海道、青森県、高知県は県内出身の高校生に入学金などの資金も支援し、地元出身者の囲い込みをし始めている。2016年11月から発見された鳥インフルエンザの被害[3]は2017年2月末の冬に日本国内では7道県の10農場で発生した。約140万羽を殺処分の対応を主導するのも公務員獣医師のため青森県では2016年11から12月までに確認された2農場に対して総動員で殺処分や埋却、消毒、検査など封じ込めに奔走した。恒常的に人手不足だが鳥インフルエンザ発生で、地域の畜産を守るのは獣医師だと実感したという現場の誇りと限られた人手で日本の畜産の安全を守る最前線で働くことの大変さを報道した[4]

動物愛護団体は医師の資格(医学部卒)に比べて別の進路を選ぶ人が多いことで獣医師がいるべきところが他分野の卒業生が穴を埋めていることが問題となっているとしている。愛護団体は獣医学部のある大学による合格者数増加・新たな大学による獣医学部の設置など定員を増やすことに質の低下を招くとして反対する日本獣医師会は動物のためというより、獣医師資格と職域確保のための主張をしていると批判している。さらに四国には獣医学部・学科のある大学が0なので、四国に獣医療の拠点が無いこと・地方自治体で働く行政獣医師の不足を報告している[5]。このため折衷案として「広域的に獣医師系養成大学の存在しない地域に限り新設を可能とする」として現状に獣医学部の無かった四国地方に設置が決まった[6]。そして愛媛県今治市岡山理科大学が獣医学部の新設を計画しており、許認可等が順調に行けば2018年4月設置予定である[7]

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ 獣医師が不足しています。(社会的使命への貢献)”. 高知県公式サイト. 2017-05 -19閲覧。
  2. ^ 公務員獣医師が足りない 家畜よりペット、学生流れる”. 朝日新聞. 2017-05 -19閲覧。
  3. ^ コクチョウの鳥インフル確定”. 毎日新聞. 2017- -閲覧。
  4. ^ 獣医師不足 深刻 防疫業務 増すばかり 家畜伝染病を警戒”. 日本農業新聞. 2017-05 -19閲覧。
  5. ^ 獣医学教育改善の議論では、動物福祉が置き去り”. PEACE (Put an End to Animal Cruelty and Exploitation). 2017年5月18日閲覧。
  6. ^ 愛媛に50年ぶり獣医学部新設へ 設置大学公募も開始、内閣府”. 京都新聞}. 2017年5月18日閲覧。
  7. ^ 国家戦略特区事業主体決定にともなう記者発表について (PDF)”. 岡山理科大学. 2017年5月18日閲覧。

外部リンク編集