獣拳戦隊ゲキレンジャー

日本のテレビドラマ番組、メディアミックス作品、その主人公たる架空のヒーローグループの名前

スーパー戦隊シリーズ > 獣拳戦隊ゲキレンジャー
スーパー戦隊シリーズ
第30作 轟轟戦隊
ボウケンジャー
2006年2月
- 2007年2月
第31作 獣拳戦隊
ゲキレンジャー
2007年2月
- 2008年2月
第32作 炎神戦隊
ゴーオンジャー
2008年2月
- 2009年2月

獣拳戦隊ゲキレンジャー』(じゅうけんせんたいゲキレンジャー)は、2007年2月18日から2008年2月10日まで、テレビ朝日系列で毎週日曜7:30 - 8:00(JST)に全49話が放送された、東映制作の特撮テレビドラマ、および劇中で主人公たちが変身するヒーローの名称。キャッチコピーは、「高みを目指して、学び、変わる!」。ハイビジョン制作。

獣拳戦隊ゲキレンジャー
ジャンル 特撮テレビドラマ
原作 八手三郎
脚本 横手美智子
監督 中澤祥次郎
出演者 鈴木裕樹
福井未菜
高木万平
三浦力
聡太郎
荒木宏文
平田裕香
川野直輝
伊藤かずえ
声の出演 永井一郎
石田彰
水島裕
池田秀一
石丸博也
大友龍三郎
田中敦子
草尾毅
ナレーター ケイ・グラント
音楽 三宅一徳
オープニング獣拳戦隊ゲキレンジャー
歌:谷本貴義ヤング・フレッシュ
エンディング道(タオ)
歌:水木一郎、ヤング・フレッシュ
言語 日本語
製作
プロデューサー 八木征志(テレビ朝日)
塚田英明宇都宮孝明(東映)
矢田晃一(東映AG)
制作 テレビ朝日
放送
放送局 テレビ朝日系列
音声形式 ステレオ放送
放送国・地域 日本の旗 日本
放送期間 2007年2月18日 - 2008年2月10日
放送時間 日曜 7:30 - 8:00
放送枠 スーパーヒーロータイム
放送分 30分
回数 全49
公式サイト(テレビ朝日)

特記事項:
スーパー戦隊シリーズ」 第31作
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概要

本作品は、モチーフを中国武術動物に置く[1]。「獣拳」と呼ばれる架空の拳法を題材にし、過去に袂を分かった正邪2流派の相克の中で、両派の拳士が「学び成長」していく姿を描いている[2]。敵側に戦隊側と同格の比重を持たせ並列に描写することにより、大河ドラマ的なストーリー展開を目指した作品である[3][4]。スタート時は3人編成の戦隊であるが、中盤から追加メンバーが加わり5人戦隊となる。戦隊メンバーは正義の流派「激獣拳ビーストアーツ」が組織したスポーツメーカー「スクラッチ」に所属し、敵対する邪悪な流派「臨獣拳アクガタ」は悪の組織「臨獣殿」として暗躍する。物語はゲキレンジャーの活躍により、獣拳の流派が1つに戻るまでを描くため、戦隊の5人、敵側の3人が主人公格の登場人物となる。

「過去の因縁」を感じさせるストーリー展開や[5]、本作品ではトラックスーツ的なベルトのない戦隊スーツをシリーズで初めて採用する[6][注釈 1]など、随所にカンフー映画の影響が見られ、アクションは等身大の戦闘に加え、巨大戦においても肉弾戦を主にする格闘がメインとなる[7]。また巨大戦時には、登場人物によるプロレス中継的な実況が加わる演出が採用された。

玩具展開の主力となる巨大戦の戦隊ロボは、動物の姿を模したアニマルモチーフであり、スポーツ用品をデザインに取り入れている[8]。次々と新たな機体が合体を繰り返し合体数を増していく近年の作品と異なり、3体合体を基本とし、追加パーツ的な4体目を戦闘形態に合わせて選び付け替える「換装型」の合体形式をとる。

チーフプロデューサーの塚田英明を中心にした若手の多い制作陣による、「カンフー映画であり少年漫画」をコンセプトとした[5]、様々な実験的な試みが行われた作品だったが、視聴率および商業面は振るわず、特にバンダイの玩具売上は近年にない落ち込みを記録した[9]

作品テーマ

制作側が作品に込めたメッセージは2点ある。1つは「高みを目指して、学び、変わる!」というキャッチコピーにもあるとおり、「学ぶ」ことであり、そしてそれによって変化を恐れずに「変わる」ことの大切さである。そしてもう1つが「受け継ぎ、また渡していくこと」の重要性である。この2つはプロデューサーの塚田が「人生において大切」だと考えるテーマでもある[4]

全ての黒幕だったロンはドラゴンそのものであり、彼の獣拳「幻獣ドラゴン拳」は戯れにそう名乗っているだけで、修行で会得したものではなく、もともと自己の持つ能力だった。生まれつき完成された能力を持ったロンには「学び変わる」という要素がなく、それゆえに退屈な時間を紛らわすために世界を滅ぼすことを思いついたとされ、日々学び成長していった主人公たち獣拳使いとは対照的な「キャラクター設定」となっている[10]

また、作品中で主人公たちは師匠から修行を受け様々な技を学び受け継ぐ。最後の敵を倒す最終奥義もまた、敵側の師匠からの修行によって学び受け継いだものである。平和になった世界でジャンたちは、獣拳を学ぶ子供たちから「マスター」と呼ばれる存在へと成長している。次代の獣拳を担う子供たちへの指導を行うランやレツに見送られ、世界中の子供たちへ獣拳を伝え「慟哭丸」の封印を守る役目を託せる人材を探すためにジャンは旅立つ[11]。首に慟哭丸をぶら下げて旅するジャンは、異国の街の路地裏で幼少期の理央に似た少年と出会う。その少年に「おまえも獣拳――やるか?」とジャンが問いかけたところで、本作品は終了する。受け継いだものを次世代に渡していくという制作側のメッセージが込められた最終回となっている[4]

特徴

敵味方の構図
本作品では、従来以上に敵側にもドラマ性を持たせ、個対個の「正義の変身ヒーローVS悪の変身ヒーロー」という展開を前面に押し出す構成をとった。まずオープニング映像では、人間型の敵幹部(理央、メレ、ロン)が戦隊側のメンバーとほぼ同格扱いの映像・テロップ表示でキャスト紹介され[注釈 2]、各人がパーソナルカラー(黒、緑、金)を与えられている。また、戦隊側のメンバー3人がそれぞれ“心”“技”“体”を表すのに対し、敵である理央とメレは“強さ”と“愛”を司るなど、キャラクターの造形にはっきりとしたテーマ性がある[12]。これは東映プロデューサー塚田英明の、敵側の登場人物も主役としてしっかり描きたいというコンセプトに基づく[13]。その結果、正義のヒーロー側に3人、敵側である臨獣殿に2人、合わせて5人が主人公という珍しい配置でのスタートとなった[14]。敵側が「若くて格好いい」ことが本作品の特徴の一つと制作側が語ったとおり[15]、キャラクター人気は敵側が上回る結果となった[3]。年間を通した結末までの主要なストーリーの流れは、宿命の相手と設定された漢堂ジャン(レッド)と敵の首領である理央の2人の青年の対立を並列に描く形で展開される[16]
修行と成長
メインテーマは修行である。各話を示す単語にも「修行」が使われ、1話の中で1つ修行が入る基本構成となっている[17]
主人公たちは、敵と戦うが敗北もしくは決着がつかないなど各話ごとに壁に当たり、師匠より教えを受けて修行を行い、修行の成果により再戦で勝利する。こうした点から、シリーズで最も情操教育に良い作品であると制作側は語っている[15]。この形式は敵側にも共通しており、敵にも師匠が存在し同様に修行を行う[14]。戦隊側の修行は「心技体」の協調を基本としており、「暮らしの中に修行あり」をモットーに日常生活の中で学ぶほのぼのとしたものが多い。対する敵側はハードな修行が多く、そうした両派の修行の対比を見ることができる。
また、主人公の漢堂ジャン(レッド)を、樹海で虎に育てられた野生児であり、天真爛漫だが精神年齢が非常に幼い「歴代でも最も欠陥があるキャラクター」に設定し[18]、語彙が乏しいジャンが感情を表現するために話す「ニキニキ(興味津々の意)」「ウジャウジャ(不安の意)」といった独特の「ジャン語」を毎回登場させるなど、子供の目線で語る演出となっている[注釈 3][19]。本作品はジャンの成長物語という面も併せ持つ[16]
動物とカンフーアクション
敵味方がともに戦闘で使用するのが「獣拳」と名付けられた動物をモチーフとした拳法であり、これが世界観の要でもある。本作品で合体メカに相当するものは「ゲキビースト」と呼ばれ、動物の姿を模している。これは「」を形にする獣拳の技とされ、新たな師匠に学ぶことにより具現化可能なゲキビーストが増えていく。師匠たち(七拳聖)は半擬人化した動物の姿(着ぐるみ)であり、修行の成果により会得するゲキビーストは師匠と同じ種類の動物である。
アクション面では、カンフーアクション映画を意識し、例年以上に生身のアクションを重視した作りになっている。前述した修行によりアクションを会得するという流れであることから、キャスト側にも高いハードルが求められた。そのため、スーツアクターは2箇月、キャストは例年より1箇月早くアクションの練習に入っている[20]
アクション演出においても、カット割りを少なくした長回しでの連続したアクションの描写など、随所にカンフー映画を意識した観せ方が採用されている[20]。巨大戦についても可能な限りロボット[注釈 4]の着ぐるみで拳法アクションを行うことを目指し、素材から検討された動きやすい着ぐるみが使用された[21][22]。1号ロボットであるゲキトージャは初期装備として「」を持たず、2号ロボットであるゲキファイヤーは換装形態を除き装備武器や内蔵火器をいっさい持たない。
塚田は、動物モチーフとすることは最初から決まっており、スポーツ戦隊を検討していった結果カンフーに絞られたことを証言している[13]
ゲキレッドのスーツアクターを担当した福沢博文は「カンフーは大好きだったが、いざ自分でやってみると技の種類を知らなさすぎた」とコメントするなど、非常に悔いが残ったらしく、後年アクション監督に転じた際は本作品の時に得た教訓を活かす姿勢とのことである[23][24]。名乗りでもジャッキー・チェンの映画『ヤングマスター 師弟出馬』を意識し、自分の全身を拳で叩いて頑丈さをアピールするポーズを提案したが、塚田に却下されており、自身の演技力不足を反省点として挙げている[25][24]

造形・玩具

デザイン
例年同様に、玩具展開される戦隊側のデザイン(戦隊スーツ、変身アイテム、武器、巨大ロボなど)は、バンダイナムコグループの1つであり玩具デザインを専門に行う『プレックス』社が担当。チーフデザイナーは2作前の『魔法戦隊マジレンジャー』からその任についたプレックスの山田耕司が続投し、日本とアメリカの両方で売れることを目指してデザインされた[26][注釈 5]。戦隊スーツは、カンフー映画で馴染みの「トラックスーツ」を意識し、前作まで一貫して装備されてきたベルトを敢えてなくしている[7][注釈 6]。靴もブーツタイプではなくスポーツシューズ型、変身アイテムも近年主流の携帯電話型ではなく体術を意識したグローブ型など、戦隊チームがスポーツメーカーに所属している設定を生かしたデザインとなっている。物語中盤から登場するパワーアップ後のスーツにも、スポーツシューズやスポーツウェアのラインが取り入れられている[28]。ロボットデザインは、獣拳の技で生み出しているという設定から、メカニック的な要素が極力排除された。ヒーロー的なスタイルでデザインされ[29]、軽快さを出したゲキトージャ(1号ロボ)はスニーカー、パワー系のゲキファイヤー(2号ロボ)はエクストリームスポーツをモチーフとしている[注釈 7]。先の2体と異なりサイダイオー(3号ロボ)は、剣を用いて戦う定番型のデザインが採用されている[31]。なお巨大ロボットを除く敵側のキャラクターデザインは、篠原保が塚田プロデューサーの希望により、人型幹部の衣装や髪型を含め全てのテレビ作品のキャラクターを1人で担当している[32]
玩具戦略
アクションと成長に比重を置いたストーリーを受け、バンダイは本作品のテーマを「アクティブ」とし、開発のキーワードを「アクション」と「技」に置いた。玩具展開の2大柱の1つである「巨大ロボット」のギミックには、パワーレンジャーのスピンモーフィンフィギュアにヒントを得、「手足を使って暴れる」格闘技のアクションをイメージした電動回転を選択[8][注釈 8]。このギミックを受けて、ゲキトージャの必殺技に上半身と腕を横に回転させて連続パンチを繰り出す大頑頑拳だいがんがんけん、ゲキファイヤーの必殺技に両腕を縦に回転させて連続パンチを繰り出す頑頑ナックル落としがんがんナックルおとしなどが採用された。
もう一本の柱である「なりきりアイテム」(変身アイテム・武器)では、目玉商品である初期メンバー3人が変身に使用する「ゲキチェンジャー」に振動センサーを搭載し、遊び続けることにより新しい技が次々と使用可能になる成長要素を取り入れた。流通戦略では初期投入の商品を前作『轟轟戦隊ボウケンジャー』の25品から大幅に減らした10アイテムとし、目玉商品にターゲットを集中させる絞込み方式を採用した[34]

評価

スーパー戦隊キャラクター商品売上推移(単位:億円)
年度実績(上半期+下半期)[9]
2003年 アバレンジャー 130        75+55
2004年 デカレンジャー 116       63+53
2005年 マジレンジャー 108        63+45
2006年 ボウケンジャー 101          54+47
2007年 『ゲキレンジャー』 77        40+37
2008年 ゴーオンジャー 120         62+58
商業的評価
様々な実験的要素を投入したものの、平均視聴率は5.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)にとどまり、バンダイのキャラクター商品売上高も計画100億に対し77億円と、視聴率・商業面において失敗が目立つ結果となった。
特に玩具の売上不振は著しく、販売店・流通から動きが鈍いとの声が多く聞かれ[35]、2007年年末に開かれた商談会においてバンダイの上野和典社長は(好調だった同年放映の『仮面ライダー電王』と比し)「戦隊は07年は仮面ライダーに圧倒されてしまった」との感想を語った[36]。売上は最終的に2000年の『未来戦隊タイムレンジャー』(64億円)以降初めて100億円を割り込み、2015年時点で21世紀の作品では最も低い成績に終わった[9]。この売上不振についてバンダイは「『武術』や『体を動かす』といったテーマ」と合体ロボのパーツを付け替えて遊ぶ「合体換装の魅力」の2つを、上手に伝えきれなかったことが敗因だと語っている[35][注釈 9]
視聴率もスタート時から伸び悩み、修行というテーマが「説教くさい」のではないかという反省から、2人目の師匠となる拳聖をコミカルなキャラクターとして登場させたものの[16]、季ごとの平均視聴率は6.2%、6.0%、5.0%、4.4%、4.3%と緩やかに下降したまま上昇には至らなかった[37]
作品評価
一方、ストーリー展開においては、単純な「正義VS悪」という構図をとらない作風が注目され[3]、また集団ヒーローである戦隊作品においてジャンと理央の2人に焦点をあて「敢えて『個対個』をクローズアップした」構成も話題を呼んだ[38]。敵側にもドラマ性があったことから、敵側の理央とメレの2人のキャラクター人気が高まり、最終回前に2人が死亡した際にはファンの間からその死を惜しむ声も多く聞かれたという[16]。塚田は、敵側2人のキャラクター性に重点をおいたことはドラマとしては成功であったが、そのことがマーチャンダイジングにも影響を及ぼしたことを述懐している[13]
演者の(変身前の)素面のアクションも好評を博し、通称「素顔の戦士」と呼ばれる演者自らが出演するヒーローショーでのアクションは「近年のショーの中でも随一といえる充実度」だったとされる[39]
主役の一人である漢堂ジャン(ゲキレッド)を演じた鈴木裕樹は、最終巻のDVDにおいてクランクインの前から「過去最高の戦隊にする」という意気込みで取り組んできたと語り、「この作品はずっと色褪せない」と語ったプロデューサーの言葉を紹介した上で、本作品は「ずっとずっと残るもの」であり「誇りだと思っている」とし「僕は絶対に面白いと思う」と述べている。また三拳魔の長マクを演じた柴田秀勝は、レギュラーとして師匠役(七拳聖・三拳魔)にベテラン声優が多く出演した本作品の特徴について触れ、「今はアニメでもあんなメンバーが集まることはまずない」と豪華な競演者に喜ぶコメントを残している[40]

あらすじ

 
鷹取山磨崖仏
獣拳の聖地「獣源郷」として撮影された鷹取山公園。作中では磨崖仏の正面に聖地への封印がある。

獣拳は、の力を心に感じ、獣の力を手にする拳法である。古代中国で誕生したこの拳法は、ある時を境に正義の流派「激獣拳ビーストアーツ」と、邪悪な流派「臨獣拳アクガタ」に分かれた。そして現代、激獣拳は表向きはスポーツメーカー「スクラッチ」を組織し、裏では最新のスポーツ科学を使いその技を進化させていた。一方、臨獣拳は理央という青年に率いられ、悪の組織「臨獣殿」を再興していた。

樹海で虎に育てられた青年・漢堂ジャンは、スクラッチの女性重役・真咲美希と偶然出会い、その才能を見出され「ゲキレンジャー」の一員ゲキレッドとなる。ジャンは、宇崎ラン、深見レツといった若きゲキレンジャーの仲間たちとともに、マスター・シャーフーを始めとした「七拳聖」たちとの修行を通じて「心技体」を磨き、学び成長していく。対する臨獣殿の理央も強さを求め、腹心の部下である女性拳士メレとともに、かつての大乱により封印されていた「三拳魔」たちを蘇らせ、彼らとの修行などを通じ力を増していく。

両派の戦いが激化する中、新たに2人の仲間を加え、ゲキレンジャーは5人となる。臨獣殿では三拳魔が全員復活を果たし、彼らの技「秘伝リンギ慟哭丸(どうこくがん)」によって、七拳聖が封印されてしまう。ゲキレンジャーは、獣拳の聖地で新たに開花した力により拳魔たちを打ち破り、七拳聖を救い出す。一方、三拳魔亡き後の臨獣殿では、理央の前に謎の青年ロンが姿を現し、「幻獣拳」の存在を告げる。さらなる強さを求め、ロンの勧めを受け入れ、メレは幻獣拳の四幻将に、理央は幻獣王に姿を変える。新たに始まった幻獣拳との戦いの中で、ジャンの父親が、理央が過去に唯一倒せなかった「白虎の男」ことダンであることが判明する。ジャンの出自を知った理央は、ジャンを「宿命の相手」と見定め勝負を挑む。2人の戦いの決着がついた時、理央の体に異変が起こる。

全ての黒幕はロンであり、ロンの目的は、数千年に一人の逸材である理央を、世界を滅ぼす「真の幻獣王」すなわち「破壊神」にすることだったと明かされる。その企みの一環として、幼少時に理央の肉親を皆殺しにし、理央に「強さを求める」強迫観念を植え付け、理央の「執着」の源であるダンにまつわる者を消すために幼いジャンの村を滅ぼしていたことなど、それまで謎とされてきた出来事のからくりが次々とロンの口から告げられる。ジャンとの勝負の決着がついたことで、真の幻獣王への覚醒を阻害していた「宿命の相手ジャンへの執着」が消え、一度は破壊神へと成りかけた理央だったが、メレに対する想いが人間としての理性をつなぎ止める。幻獣拳を捨て再び臨獣拳士へと戻った理央とメレは、ゲキレンジャーと協力してロンを倒した…かに見えた。

だが、ロンの真の正体は「無間龍」と呼ばれる不死身の存在だった。真の姿を現したロンの攻撃からゲキレンジャーを庇い、メレ、そして理央もロンに捨て身の攻撃で死を遂げる。不死身のロンを相手に絶体絶命のジャン、ラン、レツの3人は、他の2人が時間を稼いでいる間に、理央が死の前に残した「リンギ全臨伝授」によって魂だけが幻の臨獣殿へと導かれ、そこで今は亡き三拳魔たちから修行を受ける。二つの流派は一つに還り「獣拳奥義・慟哭丸」が完成し、それによりロンは小さな球に封印された。戦いが終わった後、ゲキレンジャーの5人は別々の道を歩みだす。

作品詳細

登場人物

頑健な「体」を誇る野生児だが、幼少の頃から樹海で虎に育てられたため「心」の面は幼い漢堂ジャン(ゲキレッド)。根性が口癖の努力家で強き正義の「心」の持ち主だが、「技」が未熟な女性拳士宇崎ラン(ゲキイエロー)。そして格闘技に精通する理論派であり優れた「技」の持ち主だが、「体」の面に難がある深見レツ(ゲキブルー)。この3人が初期のゲキレンジャーを構成する。彼らの苗字の頭文字を合わせると「カンフー」(かん・ふ・う)となり、3人は心技体のトライアングルで敵と戦う。

中盤からの追加メンバーとして、亡くなったと思われていたレツの兄であり、強い「意志」を持つ深見ゴウ(ゲキバイオレット)、そして遊び人風ながら天賦の「才能」を秘め、獣拳の創始者と同じ拳を使える久津ケン(ゲキチョッパー)の2人が合流する。当初は互いが互いを補い学び合うことで成長することから、リーダーは不在だったが、中盤(修行その23)でラン(イエロー)がキャプテンに任ぜられる[注釈 10]。彼ら戦隊チームを、マスター・シャーフーを始めとした七拳聖と、スクラッチ社特別開発室の室長真咲美希が補佐する。七拳聖は、かつての戦いで禁断の技を使用したため、半擬人化した動物の姿をしている。なおマスター・シャーフー以外の拳聖については、カンフー映画で活躍する俳優の名をもじった命名となっている[16][41][注釈 11]

敵陣営では、誰よりも「強さ」を求める臨獣殿の現当主理央、そして理央への無償の「愛」を捧げる若く妖艶な女性の姿をした幹部メレの2人が、主役格として登場する。彼らに道を示す三拳魔は、序盤は封印されており、物語の進捗とともに1人ずつ封印が解かれていく。さらに物語中盤から敵の追加メンバーとして、謎めいた金髪の青年ロンが加わり、後に幻獣拳の四幻将であることが明かされる。

設定

獣拳

古代中国で誕生した4000年の歴史を誇る拳法とされ、本作品の世界観の要である。

獣拳の創始者であるブルーサ・イーには10人の弟子がいたが、そのうちの3人が裏切りブルーサ・イーを殺害したことを契機に、2つの流派に分裂した。ブルーサ・イーの遺志を継いだ7人の弟子(七拳聖)が興した流派が、獣拳の力で世界の平和を守る正義の流派激獣拳ビーストアーツである。一方、裏切った3人の弟子(三拳魔)が興した流派が、獣拳の力で世界の支配を目論む邪悪な流派臨獣拳アクガタである。この2つの流派の対立により、物語がスタートする遥か昔に起こった大戦は激臨の大乱と呼ばれ、最終的に七拳聖により三拳魔が封印されて幕を降ろしている。

激獣拳ビーストアーツ
 
(有明フロンティアビル)
激獣拳の本拠地であるスクラッチの本社(外観)として撮影された。

獣拳の正統流派を現代に受け継ぐ集団。表向きはスポーツ用品メーカースクラッチ (scrtc) として運営されるが、現代のスポーツ科学を導入し獣拳を科学的に進化させることを真の目的とするために作られた部署。

スクラッチ本社内の特別開発室がゲキレンジャー側のパーマネントセットとなっており、現代的なビルの一室として表現している[42]
獣拳戦隊ゲキレンジャー
激獣拳の戦士、すなわち主人公たち戦隊メンバー。初期メンバーは、ゲキレッド、ゲキイエロー、ゲキブルーの3人、後に追加メンバーとしてゲキバイオレット、ゲキチョッパーが加入する。イエローのみ女性、残りの4人は男性である。全員が「スクラッチ社特別開発室所属アスリート」(スクラッチ社社員)という表向きの肩書きを持つ。彼らは七拳聖の要であるマスター・シャーフーの下、スクラッチ本社内にある道場で鍛錬に励み、心技体を磨いていく。
序盤は、属性(心技体)が同じ3人の拳聖に各々弟子入りし、長所を伸ばす修行を行う。物語の中盤からは残る3人の拳聖から各々が不得意とする属性を学び克服するという、二段構成の修行となっている。
激獣拳の基本は激気げきと呼ばれる気であるが、この激気の上に過激気かげきという究極の気が存在する。初期メンバー3人は、物語中盤でこの過激気を習得し、スーパーゲキレンジャーへの変身が可能となる。追加メンバーの2人はそうした3人とは一線を画している。ゲキバイオレットは「紫激気(しげき)」という本人のみが持つ独自の気を身に纏う。また、ゲキチョッパーはブルーサ・イーと同じ最古の獣拳を用いて戦う。
臨獣拳アクガタ / 臨獣殿
 
(国指定史跡「上総国分尼寺跡」)
人間が近寄れない秘境の断崖絶壁にあると設定された臨獣山に築かれた臨獣殿の本殿・「臨獣殿」として撮影された。

獣拳より離反した3人の獣拳使い・三拳魔により設立された獣拳のもう一つの流派。獣拳を邪悪な力に利用し、激獣拳と対立する。

激臨の大乱により三拳魔が封印され、一度は絶えたかに思われたが、マスター・シャーフーの弟子だった理央が裏切り復興させた。臨獣拳の使い手となった理央は、かつての使い手たちを秘術により甦らせ、邪悪な獣拳を操る集団「臨獣殿」の当主となった。
秘術により甦らせられた使い手たちは、下級拳士が「リンシー」、上級拳士は「リンリンシー」と呼ばれる。理央の片腕はリンリンシーの一人である女性拳士メレである。この理央とメレの2人が臨獣殿の幹部であり、敵側ながら主人公の一翼を担う。2人は三拳魔の魂を封じた「拳魔の腕輪」に導かれ、封じられた三拳魔を蘇らせる。
激獣拳の基本が「激気」であるのに対し、臨獣拳の基本は臨気りんきである。さらにその上に怒臨気どりんきと呼ばれるものがあり、理央とメレの2人は拳魔との修行やゲキレンジャーとの戦いを経てこれを会得する。こうした流れは主人公側と平行して描かれる。
紋章は激獣拳同様、三角形のモチーフとなったが、整然と纏まっていたため、一つの玉を取り合っている三匹の龍にすることで、アクのドロドロした雰囲気を出している[43]。マークは、漢字が使えなかったため、「臨」の字を崩して図案化している[43]
臨獣殿の中核部分が臨獣拳側のパーマネントセットとなっており、ロケセットに合わせて中華風と日本風を折衷した設計で色調もあからさまな中華風ではなくシックにまとめられている[42]
幻獣拳
激獣拳や臨獣拳を超える「極みの拳」とされる獣拳で、物語中盤から登場する。臨獣拳を極めた者のうち「獣の力を超えた」者の中で、「この世に13体存在する神秘と幽幻の獣・幻獣」に学んだ者により構成される。13の流派が存在し、幻獣王を筆頭に補佐の四幻将、その配下に2人の双幻士が流派の筆頭として存在する。
幻獣拳の基本は幻気げんきである。幻獣拳使いとなるには、幻気と対象者の臨気を融合させる「血盟の儀式」が必要である。敵側の追加メンバーとして中盤から登場する金髪の青年ロンがこの儀式を執り行え、この儀式により理央とメレは、物語中盤から幻獣拳の使い手となる。
幻獣拳の拳は、その名が示すとおり全て空想上の動物で構成される。幻獣王以外は、十二支に似た幻獣が当てはめられ、四幻将は加えて中国の四神の配置に倣ったモチーフが使われている[44]。幻獣拳士については、そのモチーフや構成なども含め、キャラクターデザインの篠原のアイデアが多く取り入れられている[45]

獣拳の装備と技

獣拳の技は、激獣拳は「ゲキワザ(激技)」、臨獣拳は「リンギ(臨技)」、幻獣拳は「ゲンギ(幻技)」と名づけられており、それぞれの流派の「気」を力の源として技を発する。「変身アイテム」を使っての戦隊スーツへの変身、敵との戦いで使用する「武具」や「必殺技」、そして巨大化した敵と戦闘する際に使用する「巨大ロボ」など、シリーズ恒例の一連の基本フォーマットは、全てこの獣拳を用いて発動する。

装備

中国武術がモチーフの本作品では、装備も格闘武器的なものが中心となる。初期メンバーが序盤から使用する武具は、レッドが「ゲキヌンチャク」、ブルーは「ゲキトンファー」、イエローはゲキトンファーを変形させ2本繋ぎ合わせた棍棒型の「ゲキトンファー・ロングバトン」となる[注釈 12]。物語が進み、3人の拳聖に弟子入りすることで、レッドは柳葉刀に似た「ゲキセイバー」、イエローは鎖鉄球型武具の「ゲキハンマー」、ブルーは鉄扇型武具の「ゲキファン」をそれぞれ習得する。追加メンバーの2人は、バイオレットは格闘専門で武具を用いず、チョッパーは獣拳の秘宝とされる短剣「操獣刀」を所持する[注釈 13]。飛び道具的な武具は、初期メンバー3人が協力して発射する必殺武器「獣拳大砲ゲキバズーカ」のみである。

変身アイテムも格闘的な要素が色濃い。初期メンバー3人はグローブ型の「ゲキチェンジャー」、パワーアップ時には爪のついたグリップ型の「スーパーゲキクロー」を用いる。バイオレットはムエタイ風の戦闘スタイルを生かした「ゴングチェンジャー」、チョッパーは変身アイテムと武具を兼ねる手刀の形をした「サイブレード[注釈 14]」を用いる。

ゲキレンジャーが用いるゲキワザは、レッドが使用する咆咆弾ほうほうだんのように、同じ漢字2文字が先に並び、最後に「弾」「斬」「蹴」「拳」といった攻撃手法を現す漢字が使われる形が一般的である。各キャラクターには、それぞれの特性を生かした様々な専用のゲキワザがあり、戦闘形態に合わせて使用される。必殺技は、ゲキバズーカに3人の激気をチャージし、その気を弾丸として放つ激激砲げきげきほうなどがある。

また、臨獣拳では、リンリンシーがリンギで獣人化する。獣人体は胸部にモデルとなった動物の頭部がついている。この獣人化した敵がいわゆる「ゲスト怪人」の位置づけであり、毎回の倒すべき相手となる。彼らはピンチになるとリンギ(またはゲンギ)で巨大化する。

巨大化技(巨大ロボ)

本作品の合体形態は、ゲキビースト3体による合体を基本としている。レッドが呼び出すゲキビーストが上半身、他が呼び出すゲキビーストが、それぞれ1体ずつ片足を構成する。これを「獣拳合体」と呼称する。合体後の操縦はモーショントレース方式によっており、コクピットに相当する部分にいるゲキレンジャーの動きに同調して動く。

ゲキビースト
初期メンバー(レッド、イエロー、ブルー)が序盤から具現化できるのは、3体の猫科の猛獣(タイガー、チーター、ジャガー)を模したゲキビーストである。マスターシャーフーとの修行の末に、この3体を用いて1号ロボ(ゲキトージャ)への「獣拳合体」を行えるようになる。
初期メンバー3人が、修行により次に会得するゲキビースト(鮫、象、蝙蝠)は、いわゆる追加パーツの扱いとなる。これらは増強パーツとして、どれか1体が戦闘形態に合わせ追加合体する。これを作品内では、合体ではなく「獣拳武装」と呼びわけている。さらに初期メンバー3人は、過激気習得の修行においても新たなゲキビースト(ゴリラ、ペンギン、ガゼル)を得、それらが「獣拳合体」し2号ロボ(ゲキファイヤー)となる。なお、この2号ロボも前述の追加パーツを同様に使用できる。また、追加メンバーであるゲキバイオレットが用いるゲキビースト(狼)は、1号ロボの右足を付け替える換装型(ゲキトージャウルフ)の合体を行う。これら計10体が本作品で登場するゲキビーストである。なお、最後の追加メンバーであるゲキチョッパーが呼び出す「サイダイン」は、ゲキビーストではない。これについては後述する。
リンビースト
臨獣殿側のゲキビーストに相当するのがリンビーストである。黒獅子リオがつくるリンビーストが「リンライオン」、獣人メレがつくるのが「リンカメレオン」である。主に『電影版』で活躍し、テレビシリーズでも終盤になって登場する。主な合体形態は、1号ロボとリンビースト2体が「呉越同舟獣拳合体」したゲキリントージャである。
巨人体
ゲキトージャ(1号ロボ)は、スーパー戦隊シリーズの1号ロボとしては初めて「格闘」による必殺技を使用する。武器はゲキセツコンと呼ばれる三節棍型の武器で、長いの形にもなる。それ故にシリーズの1号ロボでは唯一、剣を使用しない。ゲキファイヤー(2号ロボ)は、ゲキトージャを上回るパワーとスピードを持ち、スーパーゲキレンジャー時の3人が主に使用する。ゲキトージャウルフ(1号ロボの換装型)は、主にゲキバイオレットが使用し、ゲキビースト3体を1人で具現化して獣拳合体することで単身戦闘を行う。これらの巨人に獣拳武装のゲキビーストが加わることにより、「ゲキエレファントージャ」「ゲキシャークファイヤー」「ゲキバットージャウルフ」のような様々なバリエーションの巨人が登場する。
獣拳神サイダイン(3号ロボ)は、獣拳の聖地にあった石像に、獣拳の創始者ブルーサ・イーの魂が宿って生まれた獣拳の神である。操獣刀を持つ者が操ることができ、ゲキチョッパーがその使い手となる。サイの形を模しているがゲキビーストには該当せず、1体のみで巨人体である「獣拳巨神サイダイオー」となる「獣拳変形」を行える。このサイダイオーは、サイダインの角に相当する剣を装備し、これを主体とした攻撃を行う。またサイダインと他の巨人が合体する「獣拳合体」も行われる。合体形態は「サイダイゲキトージャ」「サイダイゲキファイヤー」「サイダイゲキリントージャ」の3種類となる。

キャスト

師匠としてゲキレンジャーを導いていく七拳聖の要マスター・シャーフーの声優にはベテラン永井一郎を起用。他の「拳聖」の声には、名前の由来となったアクション俳優の吹き替え声優[注釈 15]が起用されている[46]

変身後の戦士を演じるスーツアクターは、2001年の『百獣戦隊ガオレンジャー』以降多くのレッドを演じてきた福沢博文が、前作『轟轟戦隊ボウケンジャー』に引き続きレッドを担当。紅一点のイエローには若手の人見早苗が抜擢され、バイオレット役の清家、チョッパー役の渡辺とともに、戦隊役のレギュラースーツアクターの5人中3人が初の戦隊担当という目新しい顔ぶれとなった[47]。また中国武術指導を努める喜多川務も、七拳聖の一人として出演している[38]

レギュラー・準レギュラー

声の出演

ゲスト

括弧内の数字は登場話数を示す。各話のゲスト怪人を担当する声優は「放映リスト節」を参照。