田中 貢太郎(たなか こうたろう、1880年(明治13年)3月2日 - 1941年(昭和16年)2月1日)は、日本作家。号は桃葉、虹蛇楼[1]。著作は伝記物、紀行随想集、情話物、怪談奇談など多岐に渡る。

田中 貢太郎
誕生 田中 貢太郎
(1880-03-02) 1880年3月2日
高知県長岡郡三里村
死没 (1941-02-01) 1941年2月1日(60歳没)
高知県高知市種崎
職業 代用教員新聞記者随筆家小説家ジャーナリスト
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
ジャンル 伝記紀行怪談随筆
主な受賞歴 第3回菊池寛賞
ウィキポータル 文学
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略歴 編集

高知県長岡郡三里村(現:高知市仁井田)に生まれる。生家はかつて土佐藩御用達の船問屋だった。漢学塾に学び、代用教員、高知実業新聞社の記者を経て上京し、郷里の先輩大町桂月に1903年(明治36年)から終生師事した。他に田山花袋田岡嶺雲に師事、その著述活動を補佐した。同郷の幸徳秋水とも交流があった。

1909年(明治42年)に、嶺雲最晩年の作品『明治叛臣伝』の大半を代筆、秋水が大逆事件で刑死した後に「秋水先生の印象」を記した。後に回想で「一歩間違えると自分も巻き込まれていただろう (大意)」と述べている。処女出版は『四季と人生』で1911年(明治44年)刊。

滝田樗陰に認められ、大正期から『中央公論』の「説苑(ぜいえん)」欄に情話物、怪談話などを掲載した。共に連載していた村松梢風とは終生の友人だった。1914年「田岡嶺雲・幸徳秋水・奥宮健之追懐録」を発表して注目を浴びる[1]

晩年の1934年(昭和9年)の8月より、同人誌『博浪沙 月刊随筆』を主宰、多くの作家たちを育てた。弟子や友人に井伏鱒二尾崎士郎田岡典夫富田常雄榊山潤らがいる(後期は田岡典夫が編集担当で1943年10月まで45号が発行された。なお1981年に4分冊で復刻された)。

多数の郷土史や、幕末明治維新期の資料編纂にも当たった。浜口雄幸(土佐出身)や、西園寺公望の伝記も執筆している。また土佐出身の言論人らしく「いごっそう気質」があり、「老臣田中光顕翁」(『中央公論』、1932年11月号に発表)で、田中光顕 『維新風雲回顧録』(土佐脱藩志士で元宮内大臣、口述筆記で1928年に公刊)を、「己を大きく見せるため粉飾した (大意)」と酷評。時には維新の顕官であっても直言・批判している。

1939年(昭和14年)に『林有造伝』を、取材執筆のため土佐に戻ったが、翌40年2月に宿泊先の安芸市の旅館で倒れ病が発覚、一時は持ち直し伝記は完成させたが、秋頃から再び病状が悪化、翌41年初頭に郷里(現在の高知市種崎で生家の近所)にて没した。生家跡に「田中貢太郎先生誕生地」の記念碑、近所の桂浜には「桃葉先生之碑」が建つ。高知県立図書館には、貢太郎の遺品・資料等が多数保存されている。

死去後の1941年、第3回菊池寛賞を受賞[1]

著名作に、回顧記・紀行などの文集『貢太郎見聞録』、1929年から総計530回にわたり新聞連載された大作『旋風時代』、翻案物である『日本怪談全集』、『支那怪談全集』がある。ほかに論語大学・中庸などの経書に関する作品も著すなど、生前に五十数冊を刊行した。

とりわけ怪談物は蒐集と再著作に努め、総数は約五百編に及んでおり、今日まで度々再刊されている。中国古典小説では 、各時代の〈伝奇小説集〉や『紅楼夢』、『聊斎志異』、『剪灯新話』などを愛読し、特に短編集である後者2作品は一部自由訳を行っている。

また俳句も桂月に学び、句集に「田中貢太郎俳句集」がある[1]

著書 編集

※昭和後期以後の刊行でまとまった著作のみ
  • 『日本怪談全集』 桃源社(Ⅰ・Ⅱ), 1970年、カバー版・全4冊, 1974-75年
  • 『支那怪談全集』 桃源社, 1970年、カバー版・全2冊, 1975年
  • 『日本怪談実話』 桃源社, 1971年、カバー版, 1974年
  • 『情鬼・朱唇』 桃源社, 1971年
  • 『日本逸話全集』 桃源社, 1972年、カバー版, 1978年
  • 『田中貢太郎・正木不如丘 大衆文学大系10講談社, 1972年。「旋風時代」収録
  • 『林有造伝』 土佐史談会, 1979年。復刻版
  • 『貢太郎見聞録』 中公文庫, 1982年。解説尾崎秀樹、回想記・紀行・随想を収録
  • 『日本の怪談 Ⅰ・Ⅱ』 河出文庫, 1985-86年
  • 『中国の怪談 Ⅰ・Ⅱ』 河出文庫, 1987年
  • 『日本怪談大全 田中貢太郎』 国書刊行会(全5巻), 1995年 
    「女怪の館」、「幽霊の館」、「禽獣の館」、「犯罪の館」、「奇談の館」
  • 『田中貢太郎 旋風時代 高知県昭和期小説名作集 第1・2・3巻高知新聞社, 1995年
  • 蒲松齢 聊斎志異明徳出版社, 1997年。35篇を編訳、巻末に原文+公田連太郎の注
  • 『大衆「奇」文学館 1 村の怪談』 勉誠出版, 1998年。解説志村有弘
  • 『怪奇・伝奇時代小説選集 3 新怪談集』 春陽堂書店〈春陽文庫〉, 1999年。怪奇譚27篇を所収
  • 『伝奇ノ匣 6 田中貢太郎 日本怪談事典』 学研M文庫, 2003年。東雅夫編、全100篇
  • 『日本怪談実話(全)河出書房新社, 2017年/河出文庫, 2023年。全234篇
  • 『戦前の怪談』 河出書房新社, 2018年。全24話
  • 『霊能者列伝』 河出書房新社, 2018年
編著(1篇~4篇所収)

脚注 編集

  1. ^ a b c d 日外アソシエーツ現代人物情報[要文献特定詳細情報]

外部リンク 編集