白癬
白癬(はくせん)とは、皮膚糸状菌によって生じる皮膚感染症の一つである。原因菌は主にトリコフィトン属(白癬菌属)に属する種いわゆる白癬菌と呼ばれる一群の真菌によって生じる。
菌の種類 編集
Trichophyton rubrum・Trichophyton mentagrophytes・Trichophyton tonsurans・Microsporum canis・Microsporum gypseum・Trichophyton verrucosum などがある。
- Trichophyton rubrum・Trichophyton mentagrophytes が、一般的な白癬菌感染症の原因菌である。
- Trichophyton tonsurans トリコフィトン・トンズランスは、10代の柔道・レスリング選手を中心に流行している原因菌である。試合や練習で皮膚が接触することにより感染が広まっている。
- Microsporum canis は、猫に寄生しているため、小児・猫飼育者による感染報告が多い。
- Microsporum gypseum は、土壌に寄生しているため、土いじりを好む小児に感染しやすい。
- Trichophyton verrucosum は、牛に寄生しているため、酪農業を営む人に感染しやすい。
病型 編集
- 体部白癬(たむし)
- 被髪頭部・手・足・股以外に生じる白癬菌感染症。Trichophyton rubrum が最も原因菌として多い。次にTrichophyton mentagrophytes が多い。
- 股部白癬(いんきん)
- 股に生じる白癬菌感染症。Trichophyton rubrum が最も原因菌として多い。次にTrichophyton mentagrophytes が多い。頑固な白癬菌という意味で「頑癬」とも呼ばれる。
- 足白癬(水虫)
- 水虫は、皮膚の表面にある真菌のグループである皮膚糸状菌によって引き起こされる。兆候には、激しいかゆみが含まれます。特につま先の間の皮膚のひび割れ、水疱、または剥離領域; 足の裏の赤みとスケーリング。皮膚糸状菌は、プール、シャワー、人々が素足で歩くロッカールームなどの暖かく湿った環境で繁殖する。汗をかいた靴下や靴の暖かく湿った環境は、皮膚糸状菌の成長を促す[1]。
- 足底・足の指の間に生じる白癬菌感染症。Trichophyton rubrum が最も原因菌として多い。次にTrichophyton mentagrophytes が多い。Trichophyton rubrum の場合は、角化型の白癬でかゆみが少なく、高齢者に多い特徴がある。一方、Trichophyton mentagrophytes の場合は、小水疱を主とする病変で小水疱型白癬とも呼ばれる。この場合、かゆみが強く比較的若年者に多いという違いがある。また水疱型白癬とよく似た症状でかゆみの伴わない掌蹠膿疱症がある、こちらは無菌性で白癬とは関係がない。
- 爪白癬(爪水虫)
- 手の爪・足の爪を侵す白癬菌感染症。一般的に「爪水虫」と呼ばれる。ほとんどがTrichophyton rubrum が原因であり、Trichophyton mentagrophytes によるものは少ない。
- 頭部白癬(しらくも)・ケルズス禿瘡
- 頭部に生じる白癬菌感染症。毛嚢を破壊し難治性の脱毛症を生じるものはケルズス禿瘡と呼ばれる。Microsporum canis・Trichophyton verrucosum が原因の比率が高いため、猫飼育者・酪農家は注意が必要。そのほか、Trichophyton rubrum・Trichophyton mentagrophytes・Trichophyton tonsurans がある。
検査 編集
病院にて、皮膚の表面をこすり、落屑を顕微鏡で見る皮膚真菌検査で確定診断する。実際は、落屑を苛性カリ溶液を加えて皮膚を溶かし、溶けずに残る白癬菌を確認する。
治療 編集
まず、市販の抗真菌軟膏、クリーム、または粉末(クロトリマゾール(ロトリミンAF、ミセレックス、ジェネリック)、テルビナフィン(ラミシルAT、シルカ)、ミコナゾール(ロトリミンAFスプレー、ミカチンなど)を試すこと。感染が改善するまでに数週間かかることがあり、再発が一般的である。数週間経っても症状が改善しない場合は、抗真菌薬を処方すること[1]。
治療には、白癬菌を殺菌する抗真菌薬を使用する。抗真菌薬の外用剤は薬局のほか、ドラッグストアでも販売されている[2] 。爪白癬や広範囲の真菌感染症の場合は内服薬となり、医師による診断と処方箋が必要となる。
記事がある病型については、詳細は各記事を参照のこと。
漢方 編集
体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、白癬(水虫)には十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)が用いられる[3]。
ハチミツ 編集
蜂蜜には殺菌作用がある。頭部白癬や癜風の紅斑、落屑、かゆみの症状に対し28日間使われた、蜂蜜(アカシア)およびプロポリス抽出物でそれぞれ、ミコナゾール(抗真菌薬)と同等の効果であったというランダム化比較試験がある[4]。偽薬は、ワセリンであり症状に対する変化は最も少なかった[4]。
脚注 編集
- ^ a b Solan, Matthew (2021年12月1日). “Skin in the game: Two common skin problems and solutions for men” (英語). Harvard Health. 2021年12月1日閲覧。
- ^ 華陀雪華晶|イスクラ産業
- ^ 伸和製薬|十味敗毒湯
- ^ a b Ngatu, Nlandu Roger; Saruta, Takao; Hirota, Ryoji; Eitoku, Masamitsu; Muzembo, Basilua Andre; Matsui, Tomomi; Nangana, Luzitu Severin; Mbenza, Muaka Anselme et al. (2011). “Antifungal efficacy of Brazilian green propolis extracts and honey on Tinea capitis and Tinea versicolor”. European Journal of Integrative Medicine 3 (4): e281–e287. doi:10.1016/j.eujim.2011.10.001.