硫化カリウム(りゅうかカリウム potassium sulfide)は化学式K2Sで表される無機化合物結晶構造は逆蛍石型で、小さなカリウムイオンK+による立方体の内部に、大きな硫化物イオンS2−が入り込む構造となっている[2]。その格子定数はa = 7.39Åである[3]

硫化カリウム
Potassium sulfide
識別情報
CAS登録番号 1312-73-8
RTECS番号 TT6000000
特性
化学式 K2S
モル質量 110.262 g/mol
外観 白色の結晶。吸湿したものは赤色または茶色。
密度 1.805 g/cm3(14℃)
融点

840 ℃

沸点

分解

への溶解度 硫化水素カリウム、水酸化カリウムに分解。
その他の溶剤への溶解度 エタノールグリセリンに可溶
構造
結晶構造 蛍石
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −380.7 kJ mol−1[1]
標準モルエントロピー So 105 J mol−1K−1
危険性
主な危険性 腐食性(C)
環境への危険性 (N)
Rフレーズ R31, R34, R50
Sフレーズ (S1/2), S26, S45, S61
関連する物質
関連物質 硫化ナトリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

硫化物イオンは電荷密度の高い陰イオンであり、加水分解により水酸化カリウム硫化水素カリウムに分解される。このため水溶液は強アルカリ性を示す。

カリウム硫黄との直接反応により合成され、実験室レベルでは、通常は無水液体アンモニア中で反応を行う。

用途 編集

花火の火薬として直接使用されてはいないものの燃焼中に生成し、花火の発色に効果を表す[4]。ほかのアルカリ金属の硫化物と同様、硫化物イオンの供給源として用いられ[2]医薬品の中間原料や分析試薬としても使用される。

安全性 編集

引火性があり、空気との接触により自然発火することがある。燃焼により硫化水素硫黄酸化物を含む有毒ガスが生じる。摩擦や衝撃により、爆発的に分解する場合がある。との接触により分解し、硫化水素が発生する。酸化剤との接触では二酸化硫黄が生じる。空気中の酸素二酸化炭素と反応し、徐々に硫化水素を放つ。吸入により、肺水腫を引き起こすことがある[5][6]

脚注 編集

  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  2. ^ a b Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
  3. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  4. ^ Shimizu, Takeo. "Fireworks: the Art, Science, and Technique." Pyrotechnica Publications: Austin, 1981. ISBN 0-929388-05-4.
  5. ^ 国際化学物質安全性カード
  6. ^ 製品安全データシート(安全衛生情報センター)