東京大学宇宙線研究所

東京大学の附置研究所

東京大学宇宙線研究所(とうきょうだいがくうちゅうせんけんきゅうしょ、英称:Institute for Cosmic Ray Research, University of Tokyo、略称:ICRR)は東京大学の附置研究所で、宇宙線の観測を行い、高エネルギー宇宙を解明するとともに素粒子物理学を開拓することを目的としている[3]日本初の全国共同利用研究機関であり、国際共同利用・共同研究拠点に指定されている[4]

東京大学宇宙線研究所
東京大学宇宙線研究所(千葉県柏市
正式名称 東京大学宇宙線研究所
英語名称 Institute for Cosmic Ray Research, University of Tokyo
略称 ICRR
組織形態 大学附置研究所
共同利用・共同研究拠点
所在地 日本の旗 日本
277-8582
千葉県柏市柏の葉五丁目1番地5
東京大学柏キャンパス
北緯35度54分9.3秒 東経139度56分19.1秒 / 北緯35.902583度 東経139.938639度 / 35.902583; 139.938639
予算 22.93億円(2017年度)[1]
人数 職員数 135人
*教員 56人
*技術職員 20人
*研究員 12人
*事務職員 47人
(以上 2017年5月1日時点[1]
所長 中畑雅行(2022年4月1日[1] -
設立年月日 1976年5月25日[2]
前身 1950年-1953年8月1日
乗鞍岳の朝日小屋[2]
1953年8月1日-1976年5月25日
東京大学宇宙線観測所[2]
上位組織 東京大学
拠点 #附属施設を参照
保有施設 スーパーカミオカンデ
特記事項 2002年 - カミオカンデによる研究で小柴昌俊ノーベル物理学賞を受賞。
2015年 - スーパーカミオカンデによるニュートリノ振動の研究で梶田隆章ノーベル物理学賞を受賞。
公式サイト ICRR: 東京大学宇宙線研究所
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概要 編集

東京大学宇宙線観測所が1976年1956年から同じような研究をしていた東京大学原子核研究所宇宙線部の3部門を吸収し、東京大学宇宙線研究所となる(6部門1施設)。

国内に4か所の観測施設を保有している。

また、海外に4か所の観測拠点を有している。チベットのヤンパーチンの高原(4,300メートル)、アメリカ合衆国ユタ州砂漠大西洋上のスペインカナリア諸島ラ・パルマ(カナリア高エネルギー宇宙物理観測研究施設)、南米大陸にあるボリビアチャカルタヤ山である。

沿革 編集

 
東京大学柏キャンパス

組織 編集

研究部門 編集

  • 宇宙ニュートリノ研究部門:カミオカンデ設置後設立された研究部門。1987Aの観測以降、正式な組織となる。
  • 高エネルギー宇宙線研究部門:明野観測所や乗鞍観測所に設置された観測装置を用いて、観測を行う研究部門。
  • 宇宙基礎物理研究部門:宇宙由来の放射線の理論的研究を行う研究部門。

附属施設 編集

 
乗鞍観測所
冬場など、許可を受けた自動車が乗り入れのできないときに、観測所員が交代する場所として活用している。最寄りのバス停の名称は「コロナ連絡所前」と名付けられている。
  • 神岡宇宙素粒子研究施設(岐阜県飛騨市
    • スーパーカミオカンデ - ニュートリノ観測装置ならびに大統一理論に基づく、陽子崩壊を検出するための実験装置。K2K実験に用いられ、高エネルギーニュートリノ振動の検出を行った。今後はJ2K実験によって、低エネルギーニュートリノ振動を捉える実験に用いられる予定[注釈 1]
    • 重力波・地殻ひずみ測定装置「CLIO」「LCGT」 - (一般相対論に関する研究)一般相対性理論の予測する時空の振動・重力波の直接検出を目指す研究。(地球物理学的研究)地球中心にあると考えられている、液体外核固体内核の挙動によって生じる可能性のある微弱な重力波などを検出するための実験装置。
    • XMASS - 神岡坑道内、地下約1000mに設置された、暗黒物質観測実験装置。液体キセノンを用いることで、ニュートリノ並の微弱な相互作用を持つと考えられている暗黒物質を観測する装置。2010年10月より実験開始。改修を経て、2013年11月より実験再開。
  • 明野観測所(山梨県北杜市(旧:明野村))
    • 宇宙線望遠鏡「AGASA」(Akeno Giant Air Shower Array:明野広域空気シャワー観測装置)- 1990年から2004年に掛けて運用された、数平方キロメートルの敷地内に、空に向けた多数の光電子増倍管によって宇宙線が大気との間で放つチェレンコフ光を観測する空気シャワーアレイ[5]
    • MITSuME望遠鏡 - 岡山天体物理観測所に設置された50cm新技術望遠鏡の兄弟機。東京工業大学のチームとの共同研究。
  • オーストラリア観測所(オーストラリア連邦クィーンズランド州
    • オーストラリアの砂漠に設置した宇宙線望遠鏡。
  • ユタ観測所(アメリカ合衆国ユタ州) - 国際共同運用観測所
    • ユタ州の砂漠に設置した宇宙線望遠鏡。AGASAでの技術と経験を生かして設置、2008年より運用を開始。
  • 宇宙ニュートリノ観測情報融合センター(RCCN)

大学院教育 編集

  • 宇宙線研究所は研究所としての研究活動だけでなく、東京大学大学院および理学部の教育も担当しており、主として理学系研究科物理学専攻・理学部物理学科から大学院生および学部生を受け入れている。

他大学・研究機関との協力 編集

スーパーカミオカンデでの運営・活用で、富山大学と協力する覚書を結んでいる[6]。大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおける教育及び研究協力などを柱とする学術連携に関する協定を東京都市大学と結んでいる[7]。国際連携事業として、各国の宇宙線物理学者との共同利用も進めている。

所在地 編集

宇宙線研究所の本部および主な施設は、東京大学柏キャンパスに設置されている。

一般公開 編集

  • 東京大学柏キャンパス祭時に、研究室公開や各種イベントを実施。
  • その他の観測施設については、国内施設のみ公開。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ K2KおよびJ2K実験の目的は、ニュートリノ全体に質量が存在するのか?はたまた、一部だけなのかを確認することを目的とした実験計画のこと。

出典 編集

  1. ^ a b ICRR ANNUAL REPORT 2017 (PDF) 2019-04-28 閲覧
  2. ^ a b c d 東京大学宇宙線研究所 沿革- 東京大学宇宙線研究所ウェブサイト 2010-04-26 閲覧[リンク切れ]
  3. ^ 東京大学宇宙線研究所: 研究所紹介: 所長挨拶
  4. ^ 国立大学における国際共同利用・共同研究拠点の認定について (PDF)
  5. ^ AKENO OBSERVATORY”. 東京大学宇宙線研究所 (2015年1月13日). 2016年3月1日閲覧。
  6. ^ 重力波研究推進のための覚書を締結 富山大学と宇宙線研究所 東京大学宇宙線研究所プレスリリース(2020年4月7日)2020年6月18日閲覧
  7. ^ 東京大学宇宙線研究所と東京都市大学 学術連携協定を締結 東京大学宇宙線研究所トピックス(2020年10月28日)2021年4月4日閲覧

関連項目 編集

研究教育機関 編集

主要施設 編集

主要研究課題 編集

近隣地区・交通機関 編集

外部リンク 編集