神酒
神酒(みき、しんしゅ)とは、日本の神道において神に供える酒。

概要編集
「みき」という言葉は「酒」に「御」(み)をつけたもので、酒の美称である。通常はさらに「御」をつけて「おみき」という。『古事記』には「くし」の語があり、沖縄県には「ウグス」の語がある。これらは「奇(くし)」に繋がるもので、酒の効能が奇瑞とされたことによるものである。
神饌には欠かせないもので、祭礼において、神酒(日本酒が使われる事が多い)を神前に供え、祭礼の終了後直会で神酒を戴く。神に供えられ霊が宿った酒を頂く、また他の神饌と同様の神と同じものを飲食するという意味がある。また、2年参りで礼拝をしたあとに、神酒を振る舞われる神社もある[1]。
種類と醸造方法編集
白酒(しろき)、黒酒(くろき)、清酒(すみざけ)、濁酒(にごりざけ)などの種類があり、醸造法も多様である。白酒と黒酒の「き」は酒の古名で、「白貴」「黒貴」とも書く。黒酒は黒御酒(くろみき)とも。
『延喜式』によれば、白酒は神田で採れた米で醸造した酒をそのまま濾したもの、黒酒は白酒に常山木の根の焼灰を加えて黒く着色した酒(灰持酒)であると記載されている。後にこれに倣って醴を、ゴマの肝臓機能強化を知ってか悪酔い止めにと黒ゴマ粉で濁したものが室町時代に用いられた。
今日では、清酒と濁酒(どぶろく)の組を白酒・黒酒の代用とすることも多い。かつて、神酒は神社もしくは氏子が自家醸造していたが、現在は酒税法の規制があるため、伊勢神宮のように清酒の醸造免許や、税務署からのどぶろくの醸造許可を得ている神社も存在する。神酒の醸造目的などについてはどぶろくの項を参照。
日本酒以外の神酒編集
福岡県太宰府市の太宰府天満宮では「飛梅」伝説にちなみ、梅酒(ニッカ門司工場製造)がお神酒に使われている。
ブドウ栽培が盛んな地域では、山梨県笛吹市の一宮浅間神社でワインがお神酒として奉納されたり[2]、大阪府羽曳野市の誉田八幡宮で赤ワインがお神酒として正月三が日に振舞われたりしている。
その他編集
なお江戸時代に雛祭りで供えられる白酒の風習が生み出されたのは、白酒を供える風習が変化したものという説もある。
神酒を神棚に供える「御神酒徳利」は通常二本一組であることから、夫婦などが円満の譬えとされ、落語の演目にもある。御神酒徳利に挿す、竹を割くなどして作った飾り物を神酒口(みきぐち)と言う[3]。
旧琉球国に属する沖縄県と鹿児島県の奄美地方には「みき」と呼ばれる米を原料とした独特の飲料が伝えられており、清涼飲料としても市販されている。これは砕いた米に砂糖を加えて自然発酵させたものである。
海外編集
海外における宗教にまつわる神聖な酒については、古代ギリシア神話は「ネクタール」、ゾロアスター教は「ハオマ」、インド神話は「ソーマ」を参照。
脚注編集
- ^ 神酒を振る舞われる場合に、ドライバーの方は飲酒運転になる可能性も当然あるので、気を付けること。当然、飲酒運転は法律により禁止である。
- ^ “山梨県立博物館企画展に浅間神社の奉納ワイン棚が登場します!”. asama-jinja.blogspot.jp. 2018年5月26日閲覧。
- ^ 神酒口つがる工芸店(2018年1月22日閲覧)
関連項目編集
外部リンク編集
- 山口県楠町商工会 岡崎八幡宮:全国でも珍しい白酒(しろき)の神社 - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分)