空飛ぶ円盤
空飛ぶ円盤(そらとぶえんばん)は、円盤状や皿状などの形体をした不思議な飛行物体のことで[1][2]、そのような形体の未確認飛行物体 (UFO) を指すのが通例[1][3]。英語では "flying saucer[4][5][6]" というほか、"flying disc[4]" ともいう。英語の前者は日本語音写形が一応は外来語「フライングソーサー」として通用する[注 1]。

20世紀半ば以降の地球人が、自分達の常識に照らして自分達(※同じ時代の地球人)が造ったとは考えられない形体や動きを示す飛行物体に対して、研究者や専門的関連者による定義に捉われることなく一般的に用いる呼称である。また、それ以前の時代に目撃された同種と思われるものも、同種と見做してその名で呼ぶことがある。
物理学的・科学的常識から外れた不思議さゆえに異星からの宇宙船ではないかと考えられる人が少なくない[2]。本気で信じるか信じないかにかかわらず、一般社会に大きな反響を呼んだのは確かで、作品や番組企画などにも盛んに取り上げられている[2]。
UFOとの違い編集
関連する学界は、"flying saucer" を公式な用語として認めていない[2]。一般的には "flying saucer" と "UFO" が同じ意味で用いられることが多いものの、本来、"UFO(未確認飛行物体)" とはアメリカ空軍およびアメリカ海軍で用いられる公用語で、日常語として普及してきた flying saucer とは全く異なる概念が背景にある。
仮の話として、特定の空飛ぶ円盤が「宇宙人の乗り物」であると確認されたとすれば、その時点をもって当該物体は "UFO(未確認飛行物体)" ではなく "IFO(確認飛行物体)" に変わる。
特撮映画など宇宙人の乗り物・宇宙船というイメージが強いが、本来はそういう意味に限らない。
形状編集
歴史編集
1947年6月24日、アメリカ人実業家ケネス・アーノルドは、アメリカ合衆国西海岸ワシントン州のレーニア山付近上空を自家用機で飛行中、当時としては信じられないほどの高速で編隊飛行を行う9つの三日月形の物体を目撃したという[7]。アーノルドは新聞記者の取材を受けた際、水面を "saucer(ソーサー、受け皿)" が跳ねながら飛んでゆくような独特の飛び方をしていたと語ったことから、"flying saucer" という名称が生まれた[7]。アーノルドが saucer に譬えたのはあくまで飛び方であって形体ではなかったが、この言葉をきっかけに皿形・円盤形の謎の飛行物体というイメージが定着することになった。
もっとも、空飛ぶ円盤が異星人の宇宙船であるという説は、アーノルドの事件で語られ始めたわけではない[8]。アメリカ人航空ジャーナリストD・E・キーホー (D.E. Keyhoe) が1949年に唱えたのが公的には最初であり[8]、これが瞬く間に人々の関心事となり、「空飛ぶ円盤、すなわち、異星の宇宙船」という概念が普及し始めた[8]。
「空飛ぶ円盤」は "flying saucer" の日本語訳である[8]とされている。ただし、日本では第二次世界大戦中から独自の目撃例があり、その際にこの名称が発案されたと主張する研究者もいる[8]。
関連作品編集
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『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す(原題:Earth vs. the Flying Saucers )』は1956年製のアメリカ映画でSF映画。空飛ぶ円盤が「空飛ぶ円盤」の名で登場し、空飛ぶ円盤を巡る物語が展開する。
日本の創作作品では「円盤」と略語で呼ばれている例が多い。『スペクトルマン』の宇宙猿人ゴリや『マグマ大使』の悪役ゴアは「円盤」に乗って襲来する。UFOロボ グレンダイザーは、かつてマジンガーZを操縦していた兜甲児を始めとする地球人が正体を知っているのだから、その名に反して実際は "IFO(確認飛行物体)ロボ" であり、作品群の中に『宇宙円盤大戦争』があるように「UFO」よりは「空飛ぶ円盤」のほうがまだ近い。
関連商品編集
菓子編集
英語で「フライングソーサー (Flying saucer)」という呼ばれる、特にイギリスで人気の菓子がある。ベルギーのアントワープで1950年代に登場して普及した円盤形の菓子で、発祥地域ではフラマン語で "Zure ouwels" という。登場した年代と形状にネーミングなどからして空飛ぶ円盤と無関係ではないと考えられている。各メーカーの商品名やパッケージデザインも空飛ぶ円盤を意識したものが多い、"UFO" を用いるものまでがあるので、発祥のきっかけは不詳ながら、その後の市場では間違いなく関連付けされている。
玩具編集
空飛ぶ円盤は昔から子供に人気があったため、多くの玩具メーカーがこれをモチーフにした商品を販売してきた。円盤形はスムーズに可動させられる形体で、ラジコン玩具にも適している。
日本の老舗玩具メーカーである増田屋コーポレーションは、空飛ぶ円盤をモチーフとしたラジコン玩具を数多く発売していることで知られる。形体は空飛ぶ円盤ではあるが、乗組員は宇宙人ではなく、地球人の宇宙飛行士らしき者(■右の画像を参照)や宇宙飛行士以外には見えない者を基本として、ミッキーマウスや鉄腕アトム、ウルトラマン、仮面ライダーなどその時代時代の人気キャラクターであることも多い[9]。
フライングディスクは、形体と名称、そして空を飛ぶという特徴も共通していることから、商品展開としてではあるが、空飛ぶ円盤と関連付けされたこともある。
展示模型編集
地球製航空円盤編集
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宇宙人が乗っているかもしれない「空飛ぶ円盤」とは別に、地球人が開発した実在する航空機として円盤翼をもつ機体や円盤形状の機体があり、これらはあえて「空飛ぶ円盤」と呼ばれることがある。具体的機体としては、XF5Uやアブロカーなどがある。
機密解除編集
米国国立公文書館は2012年に空飛ぶ円盤の機密を解除し、空飛ぶ円盤は米国空軍の極秘プロジェクトであった旨を明らかにした[11][12][13]。空飛ぶ円盤の構造などは、米国特許2953320号などで公表されている[14]。
脚注編集
注釈編集
- ^ 日常語として使われているわけではなく、使用例は商品名やブランド名など。
出典編集
- ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “空飛ぶ円盤”. コトバンク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e 横尾広光(cf. researchmap [1])、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “空飛ぶ円盤”. コトバンク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ 三省堂『大辞林』第3版. “空飛ぶ円盤”. コトバンク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ a b “flying saucer”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ “空飛ぶ円盤”. Weblio英和辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年4月30日閲覧。
- ^ “flying saucer”. Weblio英和辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年4月30日閲覧。
- ^ a b 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “UFO”. コトバンク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版【UFO】. “空飛ぶ円盤”. コトバンク. 2020年4月30日閲覧。
- ^ キーワード検索[ 増田屋 銀河円盤 ][ 増田屋 銀河円盤 X-7 ]
- ^ 宇宙船オシロン現る!「パークプレイス大分)」
- ^ Archives, US National (2012年9月20日). “How to Build a FLYING SAUCER” (英語). The NDC Blog. 2023年1月22日閲覧。
- ^ Hornyak, Tim. “Declassified: Air Force plans for a flying saucer” (英語). CNET. 2023年1月22日閲覧。
- ^ Plackett, Benjamin. “Declassified at Last: Air Force's Supersonic Flying Saucer Schematics” (英語). Wired. ISSN 1059-1028 2023年1月22日閲覧。
- ^ 小池誠 (2022). “空飛ぶ円盤のファクトチェック”. 情報処理学会研究報告 2022-EIP-97 (1): 1-10.