窓ぎわのトットちゃん
『窓ぎわのトットちゃん』(まどぎわのトットちゃん)は、女優・タレントの黒柳徹子による日本の自伝的物語。1981年に講談社から出版された。第5回路傍の石文学賞受賞作品[1]。
窓ぎわのトットちゃん | ||
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著者 | 黒柳徹子 | |
イラスト | いわさきちひろ | |
発行日 | 1981年3月6日 | |
発行元 | 講談社 | |
ジャンル |
自叙伝 ノンフィクション | |
国 |
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言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 284 | |
公式サイト | 講談社BOOK倶楽部 | |
コード |
ISBN 4-06-145840-X ISBN 4-06-183252-2(講談社文庫) | |
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内容 編集
東京都目黒区自由が丘にかつて存在し[注 1]、著者の黒柳が通学したトモエ学園を舞台に、黒柳自身の小学生時代についてはもちろんのこと、トモエ学園におけるユニークな教育方法(リトミック、廃車になった電車を利用した教室など)や、校長である小林宗作の人柄が描かれ、また、黒柳の級友も全員実名で登場し、その中でも初恋の相手に物理学者の山内泰二も登場する、完全なノンフィクション作品である。
作中で黒柳自身は、「トットちゃん」と三人称で語られている。これは、当時の本人が舌足らずで名前の「徹子(てつこ)」を「トット」と発音していたことや、「ちゃん」も自分の名前と思っていた事にちなむ。また、「窓ぎわ」とは、出版当時はリストラ予備軍のサラリーマンのことを「窓際族」と呼び出した時期であったためと、著者自身がトモエ学園に移る前に登校していた区立小学校で、チンドン屋を呼び込むために、授業中に窓の傍に立っていたことなどから付けられたものである。
出版・翻案 編集
日本国内での累計発行部数は800万部を突破し[2]、日本国内において「戦後最大のベストセラー」と称される。芸能人やスポーツ選手、政治家等の著書は「ゴーストライターがまとめたもの」が多いとされるが、本作は全て黒柳による自筆で執筆している。初版部数は2万部であったが、瞬く間に版を重ねていった。
オリジナルの日本語版としては、講談社よりハードカバーおよび文庫(講談社文庫)、新書(青い鳥文庫)が刊行(文庫版以降は「あとがき」が加筆)されているが、表紙絵および挿絵は、一貫していわさきちひろの作品である。本作品の児童文学的な面を持つ世界観と、いわさきちひろの画風が調和していたことも、本作品のヒットの一要素であるとも言える。
世界35ヶ国で翻訳され[3]、1985年に、ポーランドの文学賞「ヤヌシュ・コルチャック賞」を受賞。中華人民共和国では、2017年5月に累計発行部数が1000万部を突破している[2]。2023年10月時点で全世界累計発行部数は2500万部を突破している[4]。1981年、この本の印税全額を黒柳が寄付し、「社会福祉法人トット基金」を設立した。
本作がもたらした影響 編集
本作の大ヒットにより、黒柳の人気もさらに上昇した(「トットちゃんブーム」)。
作品の一編が小学校の教科書や試験問題などにも採用された一方で、1980年代に管理教育を標榜していた愛知県では、教職員やPTA関係者らが「タレントが執筆した本を図書室に置くとは言語道断だ」と、学校図書館から同書を締め出したことがあった。
1980年、『第31回NHK紅白歌合戦』で、1958年の『第9回NHK紅白歌合戦』以来22年ぶりに紅組司会を務めた黒柳は、本作の大ヒットにより翌1981年の『第32回NHK紅白歌合戦』でも紅組司会を続投した。以後、1983年の『第34回NHK紅白歌合戦』まで連続して紅組司会を務めた。黒柳が最後に紅組司会を務めた第34回では、黒柳の紅組司会に対し、白組司会は『気くばりのすすめ』の著者・鈴木健二(当時NHKアナウンサー)であり、ベストセラー作家同士の両組司会として話題になった[注 2]。
書籍情報 編集
- 講談社(1981年1月、ISBN 4-06-145840-X)
- 講談社文庫(1984年1月、ISBN 4-06-183252-2)
- 講談社・青い鳥文庫(1991年6月、ISBN 4-06-147351-4)
- 講談社インターナショナル 英語版(ドロシー・ブリトン訳、1984年、ISBN 4-7700-1195-4)
- 講談社英語文庫(ドロシー・ブリトン訳、2000年、ISBN 4-06-186002-X)
- (フランス語訳)プレス・ド・ラ・ルネサンス社「フランス語: Totto-chan - la petite fille a la fenêtre」(オリヴィエ・マニャニ訳、2006年、ISBN 2750902177)
- ベスト・オブ窓ぎわのトットちゃん 講談社バイリンガル・ブックス(ドロシー・ブリトン訳、1996年8月、ISBN 4-7700-2127-5)
- 『窓ぎわのトットちゃん 新組版』(2015年8月12日、ISBN 978-4-06-293212-7)
メディアミックス 編集
出版直後からテレビドラマ・映画など映像化のオファーが数多くあったが、黒柳によれば「校長先生を演じられる人はいない」という理由で、映像化の話は全て断っていた[5]。しかし、1982年には、黒柳の朗読とオーケストラによる音楽物語『窓ぎわのトットちゃん』が初演された(作・構成:黒柳徹子・飯沢匡、作曲:小森昭宏演奏:小林研一郎指揮新星日本交響楽団)。
日本コロムビアから1982年4月21日にレコード発売、後にオンデマンドCD(受注生産型CD)として販売。
テレビドラマ 編集
2017年10月から12月まで放送された。抜粋の形ながら、初めて映像化されることとなった。
劇場アニメ 編集
この節には公開前の映画に関する記述があります。 |
窓ぎわのトットちゃん | |
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監督 | 八鍬新之介 |
脚本 |
八鍬新之介 鈴木洋介 |
原作 | 黒柳徹子 |
製作 | 黒柳徹子 |
出演者 |
大野りりあな 小栗旬 杏 滝沢カレン 役所広司 |
音楽 | 野見祐二 |
主題歌 | あいみょん「あのね」 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 | 2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2023年12月8日(予定) |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
2023年3月20日、劇場アニメ化されることが発表された[6]。アニメーション制作をシンエイ動画、監督を八鍬新之介、キャラクターデザインを金子志津枝、トットちゃん役の声優を大野りりあなが務める。2023年12月8日にテレビ朝日開局65周年記念作品として公開予定[7][8]。
キャスト 編集
- トットちゃん - 大野りりあな[8]
- 小林先生(小林宗作) - 役所広司[9]
- トットちゃんのパパ(黒柳守綱) - 小栗旬[9]
- トットちゃんのママ(黒柳朝) - 杏[9]
- 大石先生 - 滝沢カレン[9]
スタッフ 編集
- 原作・製作 - 黒柳徹子[8]
- 監督・脚本 - 八鍬新之介[8]
- 共同脚本 - 鈴木洋介
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 金子志津枝[8]
- イメージボード - 大杉宜弘、西村貴世
- 車両設定 - 和田たくや
- 美術設定 - 矢内京子
- 美術監督 - 串田達也
- 色彩設計 - 松谷早苗
- 撮影監督 - 峰岸健太郎
- 編集 - 小島俊彦
- 音響監督 - 清水洋史
- 音響効果 - 倉橋静男、西佐知子
- 音楽 - 野見祐二[10]
- 主題歌 - あいみょん「あのね」(unBORDE / Warner Music Japan)[4]
- アニメーション制作 - シンエイ動画[8]
- 製作 - 2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会[10]
- 配給 - 東宝[10]
『続 窓ぎわのトットちゃん』 編集
本書の続編となる『続 窓ぎわのトットちゃん』が2023年10月3日に刊行された。内容は主人公・トットが東京大空襲後、青森に疎開し、女学校、音楽学校を経てNHKの専属女優として活動、ニューヨークに留学するまでが書かれている[11][12]。前述の通り主人公の三人称からは「ちゃん」が外れ、それまで実質的な続編という扱いだった「トットチャンネル」同様に「トット」と呼称されている。作者黒柳による「まえがき」「あとがき」の文章は、本作の「敬体」から変わり、「常体」で書かれている。
- 黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社)2023年10月3日発売[13]、ISBN 978-4-06-529671-4
脚注 編集
注釈 編集
- ^ 現地には記念碑が卒業生達によって建立された。
- ^ 詳細は『第31回NHK紅白歌合戦』・『第34回NHK紅白歌合戦』の項を参照。
出典 編集
- ^ “黒柳徹子「窓ぎわのトットちゃん」アニメ映画化、23年冬公開 八鍬新之介×金子志津枝×シンエイ動画が制作”. アニメハック. エイガ・ドット・コム (2023年3月20日). 2023年10月13日閲覧。
- ^ a b 塩原賢 (2017年5月12日). “「窓ぎわのトットちゃん」、中国で1千万部突破”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社. 2017年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月13日閲覧。
- ^ 「街プレーバック 黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』@自由が丘」『朝日新聞』2013年8月30日付夕刊、8頁(朝日新聞東京本社)。
- ^ a b “あいみょん 『窓ぎわのトットちゃん』主題歌に新曲提供 原作・黒柳徹子が紅白舞台裏で「よろしくお願いしますね」”. ORICON NEWS. oricon ME (2023年10月13日). 2023年10月13日閲覧。
- ^ “黒柳徹子:「トットちゃん」映像化断る「校長先生演じられる人いない」”. まんたんウェブ. MANTAN (2014年5月22日). 2014年5月23日閲覧。
- ^ 山崎伸子 (2023年3月20日). “黒柳徹子の伝説的自伝「窓ぎわのトットちゃん」が初のアニメ映画化!”. MOVIE WALKER PRESS. ムービーウォーカー. 2023年3月20日閲覧。
- ^ “黒柳徹子「窓ぎわのトットちゃん」が劇場アニメ化、2023年冬に公開予定”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年3月20日). 2023年3月20日閲覧。
- ^ a b c d e f “劇場アニメ「窓ぎわのトットちゃん」トットちゃん役発表 特報&ティザービジュアル公開”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年7月11日) 2023年8月3日閲覧。
- ^ a b c d “窓ぎわのトットちゃん:劇場版アニメ 役所広司が小林先生に 両親は小栗旬&杏 担任の大石先生に滝沢カレン”. MANTANWEB(まんたんウェブ). MANTAN (2023年9月27日). 2023年9月27日閲覧。
- ^ a b c “映画『窓ぎわのトットちゃん』公式サイト”. 2023年8月3日閲覧。
- ^ 「国民的ベストセラー、42年ぶりの続編! 黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』が10月3日刊行決定!」『PR TIMES』、講談社、2023年9月4日 。2023年9月20日閲覧。
- ^ “国民的ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』 42年ぶりの続編が刊行!”. コクリコ. 講談社 (2023年9月7日). 2023年9月7日閲覧。
- ^ “『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳 徹子)”. 講談社BOOK倶楽部. 講談社. 2023年10月13日閲覧。
関連項目 編集
外部リンク 編集
- 講談社
- 窓ぎわのトットちゃん - 原著
- 窓ぎわのトットちゃん - 講談社文庫
- 窓ぎわのトットちゃん - 青い鳥文庫
- 窓ぎわのトットちゃん 新組版 - 講談社文庫
- アニメ映画関連
- 映画『窓ぎわのトットちゃん』公式サイト
- 映画『窓ぎわのトットちゃん』公式アカウント (@tottochan_movie) - Twitter
- 映画『窓ぎわのトットちゃん』公式アカウント (@tottochan_movie) - Instagram
- 窓ぎわのトットちゃん (tottochan.movie) - Facebook
- 関連
- 英語版 窓ぎわのトットちゃん 国会図書館ページ
- 徹子の気まぐれTV(YouTube)
- 備考
- 【永久保存版】 音楽物語 「窓ぎわのトットちゃん」 全編を公開します!(徹子の気まぐれTV(チャンネル)(内)(YouTube))