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第三者所有物没収事件(だいさんしゃしょゆうぶつぼっしゅうじけん)とは日本の判例[1][2]

最高裁判所判例
事件名  関税法違反
事件番号 昭和30(あ)2961
1962年(昭和37年)11月28日
判例集 刑集第16巻11号1593頁
裁判要旨

一 関税法第一一八条第一項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第三一条、第二九条に違反する。

二 前項の場合、没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、これを違憲であるとして上告することができる。
大法廷
裁判長 横田喜三郎
陪席裁判官 河村又介入江俊郎池田克垂水克己河村大助下飯坂潤夫奥野健一高木常七石坂修一山田作之助五鬼上堅磐横田正俊藤田八郎
意見
多数意見 横田喜三郎、河村又介、入江俊郎、池田克、垂水克己、河村大助、奧野健一、五鬼上堅磐、横田正俊
反対意見 下飯坂潤夫、高木常七、石坂修一、山田作之助、藤田八郎
参照法条
関税法118条,憲法29条,憲法31条,刑訴法405条1号
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概要編集

1954年10月頃に、XとYは大韓民国に向けて密輸出する目的で、機帆船(17.5トン、30馬力)に貨物を積載して出港し、博多沖合相の島付近付近の海上で大韓民国向けの漁船に貨物を積み替えようとしたが、途中下関六連島沖海上にて時化に遭い、積み替えできなかった。その後、門司港方面に航行中に水上警察により発見され、2人は逮捕された。

1955年4月25日福岡地方裁判所小倉支部は、2人に関税法違反(密輸出未遂罪)で有罪とし、Xに懲役6月執行猶予3年、Yに懲役4月執行猶予3年、その上で機帆船と積載貨物の没収を言い渡した。没収については犯罪の用に供された第三者の所有物については犯罪の行われることについてあらかじめこれを知らなかった場合即ち善意であった場合を除いて没収できる関税法第118条の規定が適用された。

2人は控訴するも、1955年9月21日福岡高等裁判所は控訴を棄却した。2人は上告した。

1962年11月28日最高裁判所は「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知・弁解・防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、適正な法手続きによらないで、(日本国憲法第29条が規定する)財産権を侵害する制裁を科することに外ならない」「かかる没収の言渡をうけた被告人はたとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である。被告人としても没収に係る物の占有権をはく奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権が剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである」として破棄し、Xに懲役6月執行猶予3年、Yに懲役4月執行猶予3年と維持した上で、機帆船のみの没収を言い渡した。

なお、下飯坂潤夫石坂修一は「告知・弁解・防禦の機会を与えられず、その所有物を没収された第三者は自らの所有者が憲法31条に反して違法に没収されたと主張する限り、刑事訴訟法第497条第1項のいわゆる権利を有する者に該当するし、またその所有物は没収物の返還を求める行政訴訟を国を相手に提起できると解している」とする反対意見を、高木常七は第三者には別に救済を受ける権利があるとする少数意見を、山田作之助藤田八郎は被告人に第三者の権利侵害を理由に、違憲の主張をすることは許されないとする少数意見をそれぞれ述べた。

最高裁判決を受けて、1963年7月に国会で刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法が成立した。

過去の判例編集

かつては旧関税法第83条では善意・悪意を問わず没収する規定となっていたが、1957年11月27日に最高裁が「所有者たる第三者が犯罪の行われることにつき、あらかじめこれを知らなかった場合即ち善意であった場合においても、その第三者の所有に属する貨物または船舶を没収するがごときは憲法第29条違反たるを免れない」と判決を出し、第三者所有物没収を悪意の場合に限定する関税法第118条となった。

脚注編集

  1. ^ 高橋和之・長谷部恭男・石川健治「憲法判例百選Ⅱ 第5版」(有斐閣)250頁
  2. ^ 高橋和之・長谷部恭男・石川健治「憲法判例百選Ⅱ 第5版」(有斐閣)430頁

関連項目編集