絶滅の島」(ぜつめつのしま)は、藤子・F・不二雄(発表時は藤子不二雄名義)の読切漫画作品。1980年スターログ』初出。サイレント映画を模した初出版では台詞が無く、宇宙人の言語による字幕があり、最後に字幕の日本語訳が掲載されていた。1985年に『別冊コロコロコミック』に掲載されたリメイクバージョンは、地球人側の視点で描かれ、地球人の台詞が追加されている。宇宙人の言語については同様に最後に日本語訳を掲載。後年、OVA化・テレビアニメ化された。

概要編集

OVAの「藤子・F・不二雄 Sukoshi Fushigi 短編シアター」第4巻で、藤本自身がこの作品を「みどりの守り神とまったく同じテーマを裏返しにした一つの実験作品」だと語っている。

宇宙人の地球侵略を通して、様々な生き物を絶滅させて来た人類に対する皮肉が込められた作品であり、藤子・F・不二雄のSF短編の中でも残酷な描写が多い作品である。

元々は1978年に発表される予定だったが、掲載雑誌が諸般の事情で中止になったため、1980年まで先送りされた[1]

あらすじ編集

アンデス山中に姿を現した宇宙人はあっという間に五大州を制圧。地球人は絶滅に近い状態に追いやられてしまった。シンイチとカオリら27人は秘島ツアーで離島に来ていたことで難を逃れた数少ない生き残りだった。しかしそれから2年後、その島にも宇宙人が来襲し、人間狩りが始まった。

シンイチはカオリを森の中に隠れるよう諭して様子を見に行くが、その隙にカオリを連れ去られてしまう。唯一、殺戮から逃れてきた仲間の中年男性の手引きの元、シンイチはカオリを救出することを決意する。

その日の夜。体力を休めるため砂浜で焚火を囲っていたシンイチに、男性は語る。かつて、この島にミツユビムカシヤモリという貴重なヤモリが生息していたものの、その黒焼きが難病に聞くという迷信を信じた人間による乱獲で絶滅してしまったこと。そして、それのみならず世界中の動物を欲望のままに狩ってきた人間たちが狩られる立場に立たされても、文句は言えないのではないかと。

夜の闇に紛れてカオリの救出に向かった4人は、砂浜の離れた場所に宇宙人が停泊しているのを見つけ接近するが、そこで殺害された人間たちが串刺しにされ、焚火に燻されている凄惨な現場を目撃する。ショックを受けつつカオリの生死を確かめるべく近づくと、カオリは生きたまま近くの木に宙づりにされていた。男性が縄を切ってカオリを助け出した直後、宇宙船内部から異変に気付いてきた宇宙人が大挙して襲い掛かり、中年男性は2人に生き延びろと言い残して宇宙人に突撃した末に惨殺されてしまう。

ついに追い詰められた2人を救ったのは、意外にも、襲い掛かってきた宇宙人と同じ宇宙人だった。襲い掛かってきた宇宙人は密猟者であり、彼らを止めた宇宙人は密猟監視官だった。シンイチたちには理解できない言葉で語られたのは、宇宙人が行ってきた人間狩りが、ミツユビムカシヤモリを絶滅させた人間のように根拠のない迷信を信じて行われていたというあまりにも皮肉すぎる真実だった。

シンイチたちを丁重に保護した監視官は、2度と密猟者に手出しをさせないから安心して暮らすようにと伝え、人類と宇宙人はみな友達だといい残して去っていくのだった。

登場人物編集

真一
一去年の夏から生き残りと共に隠れている。本当なら高校生になっている年齢である。カオリの事をカオリさんと呼んでいる。
カオリ
真一の事をシンイチさんと呼んでいる。本当なら高校生になっている年齢であった。
人類が滅ぼした「ミツユビムカシヤモリ」について主人公に語ってくれる。このヤモリは肺病に効くという迷信から人間に捕りつくされ絶滅した(実在はしない)。
宇宙人
毛深い姿をしており、地球人を(宇宙人の言葉で)「チキューケナシザル」と呼ぶ。チキューケナシザルの黒焼きが円形脱毛症に効果があるという迷信があるため、地球人を捕らえては串刺しにして黒焼きにしている。

OVA編集

「藤子・F・不二雄 Sukoshi Fushigi 短編シアター」第4巻収録。

キャスト編集

ナレーションのみで、その他の人物は声優を割り振られていない。

スタッフ編集

  • 監督:出崎哲
  • 脚本:今泉俊昭
  • プロデューサー:浅見勇(小学館)、清松信夫(東宝)、松崎義之(マジックバス
  • キャラクターデザイン:清水恵蔵
  • 作画監督:清水恵蔵
  • 絵コンテ:冨永恒雄
  • 演出:冨永恒雄
  • 原画:玉腰昌樹、伊藤卓、坂本修司、小泉孝司、長森佳容
  • 美術監督:石垣努
  • 美術:(株)石垣プロダクション、光元博行、中近東
  • 動画チェック:中原清隆、岩倉和憲
  • 動画:福井明博、澄川智深、遠田哲也、川村孝之、熊坂径子、石井久志、水畑健二、小野澤雅子、佐藤房枝、韓一動画
  • 色彩設定:吉森良子
  • 色指定補佐:永山利香
  • 仕上げ検査:ジャスト、伊藤弘子、市村勇
  • 仕上げ:後藤忠章、坂野加奈、小松原智子、小関裕子、後藤恵子、井上純一、高田みほ、松藤宣江、黒岩智子、高見沢佐知子、田崎美行、韓一動画
  • 特 殊効果:熊井芳貴、太田直
  • 撮影監督:岡崎英夫
  • 撮影:IMG、中村昌樹、渡辺奈緒子、古山実、Qプロ、柳田久次郎、升沢達也
  • 音響監督:明田川進
  • 音楽:都留教博
  • 録音:安藤邦夫
  • 効果:倉橋静男
  • 音響担当:三間雅文
  • 録音スタジオ:アオイスタジオ
  • 音響制作:マジックカプセル
  • 編集:西川洋二、国吉伸幸、マリア・えみこ・マクガワ、渡瀬祐子(井上編集室)
  • 現像:東京現像所
  • タイトル:マキ・プロ、牧正宏、安食光弘、馬場秀雄、小畠公和
  • 制作担当:大植千曲
  • 協力:藤子プロコロコロコミック編集部、学習雑誌編集部、少年サンデー編集部
  • 制作協力:綿引勝美、メモリーバンク
  • アニメーション制作:マジックバス
  • 制作:小学館、東宝
  • 発売元:小学館
  • 販売元:東宝

主題歌編集

テレビアニメ編集

2000年1月27日日本テレビ系列の「週刊ストーリーランド」の枠内で放送。ただし内容については残酷な描写がカットされ、エンディングも人類がみな生還するなど大幅な改変が加えられている。

キャスト編集

スタッフ編集

脚注編集

  1. ^ 藤子・F・不二雄大全集 少年SF短編第3巻446頁