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線型性(せんけいせい、英語: linearity)あるいは線型線形線状リニア(せんけい、英語: linearラテン語: linearis)とは、直線そのもの、または直線のようにまっすぐな図形やそれに似た性質をもつ対象および、そのような性質を保つ変換などを指して用いられている術語である[1]。対義語は非線型性英語: Non-Linearity)である。

英語の数学用語の linear に当てる日本語訳としては、線が本来の表記であると指摘されることもある[2]が、他にも線、線などといった表記もしばしば用いられている。また一次という表記・表現もしばしば用いられている。というのは linear は、(多変数の)斉一次函数を指していると考えて間違っていない場合も多いためである[3]

線型写像編集

数学において、写像 f線型であるとは、f について以下の2つの性質

  • 加法性:任意の x, y に対して f(x + y) = f(x) + f(y)
  • 斉次性(作用との可換性): 任意の x, α に対して f (αx) = αf(x)

が満たされることである。ここで x, y実数複素数、あるいはベクトルなど一般に上の加群の元、α はその環の元を表す。たとえば、一次関数はそのグラフ原点を通るとき、またそのときに限り線型性を持つ。

線型代数学はこのような線型の変換とそれによって保たれる空間の性質について研究する学問であり、ベクトル、ベクトル空間および行列によって表される線型写像線型方程式系を扱う。また関数を関数に写す写像である作用素の線型性は関数解析学で扱われる。関数の微分を作用素と見なすことで得られる微分作用素(たとえばラプラス作用素)の概念は線型作用素の重要な例である。

線型性をもつことで、物理学や工学においては初期値を与えてやればその後の挙動の予測が単純化できるという利点がある[4]

微分方程式編集

微分方程式線型である場合は線型代数学の範疇で解を探すことができる。一方で、線型でない(非線型の)場合には、たとえばカオスのような問題が現れ、解くことが飛躍的に難しくなる。しかし、それゆえに、またパンルヴェ方程式のようにある種の対称性をもち、幾何学的に多様な性質を内包するものが存在するなどの理由により、数学者物理学者などにとって興味深い対象が数多く存在するのも非線型微分方程式である。書籍雑誌資料 [5][6][7][8][9][10]

重線型編集

多変数の写像の線型性として重線型性(多重線型性)がある。2変数の場合は

双線型性
  1. f(x + y, z) = f(x, z) + f(y, z),
  2. f(x, y + z) = f(x, y) + f(x, z),
  3. f(cx, y ) = f(x, cy) = cf (x, y)

である。双線型な汎関数(双線型形式)の例としては内積外積が挙げられる。さらに多変数の場合に

多重線型性
  1.  
  2.  

を考えることができる。例えば、行列式は列または行ベクトルに注目すれば多重線型形式である。

脚注編集

  1. ^ ただし厳密には、線のようにまっすぐな図形が全て線型性を有すると考えるのは正しくない。
  2. ^ 岩波国語辞典 第五版
  3. ^ 「一次」も、必ずしも「線型」を意味しない。例えば一般の一次関数 (linear function) の「一次」および linear は本項にいう意味では線型でない(アフィンである)。「線形代数」「線型代数」を「一次代数」とは云わない。
  4. ^ ただし実際には、初期値以外の条件によって挙動に分岐が生じたり、計測限界以下の初期値のばらつきがその後に無視できないほど大きな挙動の差となって現れたりすることも多い。これらを線形性のモデルを修正しても予測不可能な場合を「非線形性である」といい、統計的方法や数値解析シミュレーションで補うなどの方法も試みられている。
  5. ^ 長島 隆廣『常微分方程式80余例と求積法による解法』2018年12月 researchmap で公開、全編PDF: https://researchmap.jp/T_Nagashima または, https://researchmap.jp/muoht9dml-2225716/#_2225716
  6. ^ 長島 隆廣『常微分方程式80余例とその厳密解』近代文藝社、2005年、ISBN 4-7733-7282-6、国立国会図書館蔵書、請求記号:MA117-H55(東京 本館書庫)。
  7. ^ 長島 隆廣[常微分方程式134例とその解]丸善出版サービスセンター、1982年5月発行、国立国会図書館(東京本館)・請求記号 MA117-111、全国書誌番号 82049441。
  8. ^ 長島 隆廣『数学セミナー』[NOTE欄]「求積法で解ける常微分方程式の例と応用」第25巻、第5号、通巻294号、1986年5月,日本評論社、pp.94--95。
  9. ^ 長島 隆廣『数学セミナー』[NOTE欄]「求積法で解ける非線型常微分方程式の例」第26巻、第7号、通巻308号、1987年7月,日本評論社、p.91。
  10. ^ 長島 隆廣『数学セミナー』[NOTE欄]「求積法で解ける常微分方程式」第27巻,第3号、通巻316号、1988年3月、日本評論社、p.98。

関連項目編集