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LHシステムによるもの - 岐阜県(名神高速道路)
Hシステムによるもの - 北海道
路肩に設置されている事例 - 北海道(道央自動車道)
オービスIII後面- 茨城県(国道4号)
設置箇所の直前にある事前警告標識 - 岐阜県
設置箇所の直前にある事前警告標識(英語併記の例) - 沖縄県
設置箇所の直前にある事前警告標識(色違いの例) - 北海道

速度違反自動取締装置(そくどいはんじどうとりしまりそうち)は、道路を走行する車両の速度違反を、自動的に記録・取り締まるスピード測定器である。通称のオービス(ORBIS)はラテン語で「眼」を意味する言葉からとったボーイング社の商標である。そのため厳密な意味ではボーイング社(もしくはライセンスを受けた東京航空計器)以外の「取締装置」をオービスと呼ぶのは誤りであるものの、他社の製品を含めての取締装置全般の通称として使われることが多い。 商標の普通名称化も参照。

警察の隠語から「ネズミ捕り機」などと俗称されることもある。以下、本文中では単に「取締装置」という。

目次

概要編集

主要な幹線道路や、高速道路、事故多発区間、速度超過違反が多発している道路などに設置されており、制限速度を超過して走行している車両を検知すると、当該車両の速度を記録し、ナンバープレートおよび運転手の撮影を行う。作動速度は道路状況によるが、固定式取締装置は主に速度超過違反が多発している道路に設置されているため、重大な違反に重点を置いており[1]、基本的には一発で免停となる赤切符の違反のみを取締対象とし、一般道路では30 km/h以上、高速道路では40 km/h以上の速度超過で撮影される。可搬式取締装置は、この限りではないため15 km/h以上の速度超過で撮影される。ただし、各都道府県によってはしきい値を変動させている場合もある。

日本国内の場合は、撮影の瞬間に、多くは赤色(白色のものもある)のストロボ(フラッシュ)が発光する。自動取締装置によって撮影されると、数日から遅くとも30日以内に警察から当該車両の所有者に出頭通知が送付される。レンタカーや事業者や個人間賃借の場合は、運転手特定のために、更に数週間から数か月を要する場合もある。


固定式取締装置を設置している道路には、設置していることを警告する標識が設置箇所の約1 - 3 km前に少なくとも2箇所設置してある(例・「速度自動取締装置設置路線」)が、例外もある。

この看板は法令で設置しなければならないと定められたものではなく、助手席など同乗者の顔も写ってしまうことに対する配慮[2]や、走行速度を低下させることを目的として制限速度を守れという交通指導のために設置されており[3]、過去の裁判の判例[4]によれば、必ずしも設置しなければならないものではない。

可搬式および半可搬式取締装置の場合には事前の警告看板の設置は行わない[5]。これは、導入の際にウェブサイトや報道で周知しているため、予告看板は必要ないからだという[6]。ただし、都道府県警によっては取り締まりの際に独自に警告看板を設置しているところもある[7]

例えば、愛知県警などは可搬式取締装置での取締りにおいて予告看板を設置せず行なっており、その旨をウェブサイト上で公開している[8]。可搬式取締装置の運用開始1か月以後は予告看板を設置せず取締りを行うことについて愛知県警と検察庁で協議し、検察庁から承諾を得ているとのこと[9]

標識の色は基本的に青色だが、都道府県により異なる場合がある。また、在日米軍関係車両の通行が多い沖縄県では、SPEED CHECK または SPEED CHECKED と併記されている。

Hシステムなどは、取締装置の手前に別に速度検知器と速度警告板を設置してある場合がある。これは5 km/h以上の速度超過で「速度落とせ」のランプが点灯するもので、さらに片側2車線以上の道路では当該車両が走行している車線を示す矢印も点灯する。


取締装置は非常に高価な機器であり、維持管理費を除いた設置時の初期費用は、1台で約5千万円以上かかるため、フィルム式の古い機器の更新や故障への対応が、遅々として進まないことが問題となっている[10]

アメリカ合衆国では、交通違反の取締に反発する人々から、で撃ち壊される事件が多発したが、現在では各州で自動速度取締装置設置に必要な対策がなされ、多くの道路に設置されている。

日本の取締装置も、破壊攻撃を受けることを前提に設計されている。以前に、取締装置に穴をあけてガソリンを流し込んだ上、放火される事件があったが、映像を記録する部分は無傷であった。他にも神戸市長田区国道2号に設置してあった撮影部(カメラ部分)を何者かに持ち去られる事件もあった。

歴史編集

オランダのラリードライバーであるモーリス・ガッツォニデスが、コーナリング技術の向上のために「ガッツォ」というカメラを開発したのがスピードカメラの起源であり、取締装置も同じ技術を利用して作られている。

日本における取締装置は、1976年アメリカから "ORBIS III" を株式会社アポロインターナショナルが警視庁に持ち込んだのが始まりで[1]、その後東京航空計器[11]の他、協和電業、松下通信工業(現パナソニック モバイルコミュニケーションズ)(VT-1510)、三菱電機 (RS-701) などで生産されていたが、装置製造から撤退している。

現在、日本国内ではオービスやLHシステムなどを製造してきた東京航空計器だけが製造販売している。なお、「オービス」はこの分野に限り[脚注 1]東京航空計器株式会社の登録商標(日本第1442534号・第1476539号)である。

なお、スウェーデンのSensys社も国内でレーダー測定の固定式および可搬式取締装置を販売しており、東京航空計器の独占状態ではない[12][13]。また、定置式速度取り締まりに利用される可搬式スピード測定器については日本無線も製造しているが、これには撮影機能は無い。

種類と特徴編集

ループコイル式オービス
速度の測定にループコイルを使用するオービス。道路下5 cmの所に6.9 mの間隔を空けて3個のループコイルが埋め込まれている。車両は金属製であるため、車両がループコイルに接近するとループコイルのインダクタンスが変化する。これを利用して車両の通過時間と距離 (6.9 m) から速度を計算する。誤検挙を避けるためループコイル3つで2回の測定を行い、その結果に大きな差がある場合は「異常」として撮影は行われない。撮影装置はレーダー式オービスと同様であり、撮影地点には白線や路面の切り欠き溝、あるいは逆三角の金属プレートがはめ込まれていることが多い。防犯上、撮影装置は金網で囲まれているのがほとんどである。
  • 受動的な速度測定方式のためレーダー式探知機には発見されない。ただし位置情報サービスを利用する探知機の場合、その限りではない。
  • 積雪によりコイルと車両とが離れることでインダクタンスの変化が少なくなり車両の通過を検出できなくなる短所があるため、豪雪地域ではあまり見られない。
  • 車両の動荷重によって舗装が撓みループコイルが折損するため、定期的な交換が必要になる。
  • 最近は首都高速道路を中心にデジタルカメラ化された装置が設置され、写真フィルム切れがなくなった(ASSURAのレーダー探知機では首都高のデジタル化オービスはLHシステムと区別される)。
デジタルカメラ化された新型の装置はLHシステムと並び現在の主流になっている。
レーダー式オービス
ドップラー・レーダーを利用して車両の速度を測定するオービス。ループコイルによる速度測定は精度が高かったが、交通量が多い場所などでは埋め込み工事が難しく、そもそも路面にループコイルの埋め込みが困難な場所もあり、そのような場所ではレーダー式を採用した[1]自動車に対してマイクロ波を照射し、反射した電波周波数から速度を計算する。電波法令上の無線標定陸上局であり、操作またはその監督に無線従事者を要する[脚注 2]。中央分離帯、または路肩に撮影装置が、その10 mほど前方の道路上にレーダーのアンテナが設置されている。
  • この撮影装置内に交換式の写真フィルムが装填されているが、所定の枚数を撮影し終わってもなお写真フィルムが交換されない場合、違反の事実がフィルムに収めらず、違反通知が来ないケースがある。
  • 2000年代以降、警察予算の都合のためデジタルカメラ化の更新が遅れ、故障していても交換部品が無いため修理を行えず、測定装置が放置されたまま、速度測定や記録がされていない筐体もある[10]
  • 雨天時や車間距離が詰まっている場合など、反射波の受信が困難となり、まれに誤測定をするとの指摘があること、常に電波を発射しているためレーダー探知機に検知され、容易に発見されてしまうことが欠点とされる。しかし、これは走行速度を低下させるために取締装置の手前に警告看板を設置していることを考えると、利点とも言える。
Hシステム
最も多く設置されていた取締装置で、正式名称は「高速走行抑止システム」。「高速=High speed」の頭文字や阪神高速道路に多く設置されたことから、阪神高速の頭文字 (HANSHIN EXPRESSWAY) を取ってHシステムと呼ばれる。主に三菱電機が製造し、レーダー測定のため、ループコイルの埋め込みが不要。「電子画像撮影・伝送方式」と呼ばれ、撮影装置内部に写真フィルムを装填するものではなく、デジタルカメラで撮影したデジタルデータを、直ちに有線通信回線を通じて管理センターに伝送する。そのため従来型の欠点であった写真フィルム切れは無くなった。事前に警告を行う電光掲示板が設置されており、速度違反車両を検知すると「速度落とせ」等の警告を行う[14]
1992年に登場した2代目(高速走行抑止システム)は、CCDカメラ、赤外線ストロボ、通称「はんぺん」と呼ばれる、白くて四角いレドームが備えられている。2017年(平成29年)から、各地で撤去されるケースが多くなった[14]
LHシステム
1994年から登場したもので、「ループコイル式高速走行抑止システム」という[15]。Hシステムが速度計測にレーダーを使うのに対し、LHシステムは地中に埋められたループコイルを利用する。ループコイル式オービス同様、撮影地点に白線が引かれていることが多い。カメラ筐体部の仕様はHシステムとほぼ同じだが、レーダーを備えていないため、NシステムTシステムと判別がつきにくく、トンネル内に設置されている場所もある。名称の「L」はループコイルの頭文字(LOOP COIL)から。
光電管式
ループコイルの代わりに光源と光電管を設置し(または光源と光電管を隣り合わせて設置、対向に反射板を設置し)、車両が通過する時間で速度を測定する方式。レンズの汚れに光学センサーが弱いことと、複数車線での取締が困難であることから、常設型の道路設置での普及はしなかったが、臨時に速度違反を実施する持ち運び可能な、可搬移動式スピード測定器および移動式取締装置では活躍している。光電管は電波を発射せず、しかも場所が固定されていないため、事前の探知は不能である。
移動式
警察車両(ワゴン車が多い)に積載・搬送し、ジャッキアップして車両を固定し、車体のブレを無くした上で測定する。パトロールカー覆面パトカーも含まれる)に搭載しているものもあり、これは測定後そのまま追跡して停車させ反則告知を行うことも可能となっている。取締には2人以上の警察官が乗っており、大半はレーダー式だが、警察車両に積載・搬送して設置するタイプに、光電管式のものが増えつつある。
海外では、走行しながら前方及び反対車線の車両に対して、速度計測・撮影をするものも出始めている。
なおこれとは別に簡易に設置・撤去できるものを移動式と呼ぶことがある。
Sensys SWSS (Speed Warning Safety System)
複数の車両を同時に追跡できるマルチトラッキングレーダーを搭載したSensys SSS(Speed Safety System)に警告機能を追加した固定式速度違反自動取締装置で、小型のため、取締りスペースの確保が困難な生活道路にも設置が可能。レーダー式のため、道路にループコイルの埋め込みが不要となっている。警告機能があり、速度違反の車両をレーダーで感知すると、正面及び下部LEDによる発光で運転手と周囲の歩行者などに警告を行い[16][17]、撮影地点で速度を超過していた場合に撮影を行う。スピーカーの音声による警告も可能。事前の警告看板は1枚のみ設置されている[5]
可搬式や半可搬式取締装置と同様に生活道路での取り締まりを目的として登場したことから「新型固定式」と呼ばれることもある。生活道路での取り締まりを目的として導入されたが、レーダー測定式のためループコイルの埋め込みが不要で、一台で複数車線に対応する高性能レーダーを搭載しているため、ループコイルの埋め込みが困難な場所でHシステムの代替として幹線道路の設置にも適しており、埼玉県では生活道路ではなく片側2車線の幹線道路に設置されている。
可搬式
2016年(平成28年)4月からは「可搬式速度違反自動取り締まり装置」の運用が始まり、今まで設置が難しかった生活道路や路地など、狭い道路に小型化した取締装置を設置したり[18]、三脚の上に速度測定装置とデジタルカメラを設置して、速度違反車両を記録し、後日運転手を呼び出すタイプが導入されている[19]
Sensys製のレーダー式と東京航空計器製のレーザースキャン式[20]がある。
半可搬式
可搬式取締装置に固定用の台座を取り付けたもので、バッテリー駆動で一定期間取り締まりを行う。固定式と同様の機能を持つが、トラック等で定期的に移動させることができる[13]。人員の配置が不要だが、設置後も定期的に充電済みのバッテリーへと交換する必要がある。

問題点編集

人権との関係編集

  • たとえ速度違反者といえども、警察による容貌の無断撮影はプライバシー権肖像権)の侵害である可能性がある。
  • 助手席に同乗している者の写真も撮影されるため、違反行為とは全く無関係な第三者のプライバシー権も侵害される可能性がある。
  • 取締装置が反応した現場に警察官はいない。違反者は後日呼び出しはがきの送達を受け、警察署に出頭したときに初めて弁明の機会が与えられることになるため、その場に警察官がいる取締方法に比べ、被疑者の防禦権が著しく制限される。

なお、「(違反者、同乗者の)プライバシー権の侵害である」という問題については、1969年(昭和44年)12月24日の最高裁判所大法廷判決[21]を踏まえ、「犯罪が現に行われ」「証拠を確保する必要性および緊急性があり」「方法が合理的である」という「三条件を満たすような場合」に、本人の同意なく警察官による容貌の撮影が許容されるとされており、取締装置による撮影も同様に許容される。

そのため、速度違反自動取締装置による取り締まりは、最高速度超過という「犯罪が現に行われており[脚注 3]」、直ちに撮影しなければ現場を走り去ってしまうため、「証拠保全の必要性および緊急性があり」、「合理的な方法」による撮影であるから、これら「三条件」を満たしており、1986年(昭和61年)2月14日最高裁判所第二小法廷判決[22]以後、一貫して取締装置による写真撮影は、日本国憲法に合憲で、プライバシー権の侵害を認定した判例はない。

速度違反自動取締装置での取締り件数の減少編集

速度違反自動取締装置での交通違反の取締り件数が、2013年現在での過去5年間で20パーセント以上減少していることが、産経新聞の指摘により判明した。フィルムを使用した旧式のまま更新が行われていないケースや、高額な修理予算が捻出できずに故障したまま放置されているケースが散見されているとされる。また、速度取締装置の設置場所を知らせるカーナビアプリの普及もあり、速度取締装置が事実上役に立たなくなってきているとの指摘もある[10]。また、2009年に制限速度の基準が改定され、道路の制限速度が引き上げられたことで速度違反自体が減少しているという要因もある。

事後捜査の負担編集

自動取締装置による取り締まりは受傷事故の危険性が低く、少ない人員で取り締まりが可能なので、夜間等、勤務体制から警察官の確保が難しい状況でも取り締まりが可能である一方、その場で違反の告知ができないため、事後の追跡捜査の負担が問題になる[23]

特に日本では、写真撮影による取り締まりの場合には違反者をすべて出頭させており、軽微な違反の場合で、違反を認め反則金での処理に同意している場合にも出頭しなければならず、実際に全ての違反者を出頭させた場合、処理が膨大になる可能性がある。

日本国外では大抵の場合郵送で手続きを行えることが多く、例えばイギリスの場合、自動車の所有者に通知が送られ、28日以内に通知を返送して誰が自動車を運転していたかを警察に知らせなければならない。通知を返送すると、罰金通知が送付され、クレジットカード等での支払いが可能になる[24]オーストラリアニューサウスウェールズ州の場合には法的宣言で他の運転者を指名しない限り自動車の所有者の違反として処理され、通知が届いた段階でクレジットカード等で反則金の支払いが可能になる。ニュージーランドの場合も自動車の所有者に通知が送られ、通知を受け取るとクレジットカード等での反則金の支払いが可能となり、違反について争う場合などは取締装置の写真の開示等を要求することができる[25][26]

世界各国の速度違反自動取締装置編集

アメリカ編集

アメリカ合衆国では速度取締装置の他にバス専用レーン監視機、信号無視監視機、一時不停止取締装置が利用されている。

イギリス編集

 
イギリスの速度違反自動取締装置の警告看板

イギリスでは通常の取締装置の他に、SPECSと呼ばれる平均速度監視装置(Average speed check)が多数設置されている。この装置は日本の旅行時間測定システム(Tシステム)と同じ方式で、2台のナンバープレート読み取り装置を利用し、車両の2点間の移動時間と距離から速度を測定する。SPECSは200 メートルから10 キロメートル間の平均速度を監視することができ、多くの場合、測定距離は数百メートルであるという。複数の監視装置が連続して設置されていることが多く、どの装置が測定の組み合わせになっているか判別することは不可能である[27]

平均速度監視装置は、取締装置付近で減速し、すぐに加速されてしまう従来の速度取締装置よりも長期にわたって制限速度を遵守させるという点で優れているとの主張がある[28]

有名な平均速度監視装置の例として、スコットランドのA77道路に32 マイル (51.5 km)に渡って連続して設置されており、速度違反車両の割合は大幅に減少した。[29]

2017年にはスコットランドで初めて市街地で平均速度監視装置が運用された。2013年から2015年までの3年間に6件の人身事故が発生していたが、設置後の1年間では人身事故は1件も発生しなかった。取締装置設置前は5台のうち3台が速度違反をしているような状態であったが、設置後は毎日15,000台の交通量がある中で1日あたり2台まで減少した。[30][31]

スイス編集

スイス国内の自動速度取締装置は、警察官の手によってスイス名物(チーズ柄、時計アーミーナイフ)の柄や形状にデコレーションされたものが数多く設置されている。

スイスでは、自動速度取締装置の位置を知らせる装置は固く禁じられている[32]。ナビゲーション機器のソフトウェアに固定速度取締装置の位置が含まれていると、機器が押収され破壊される可能性がある。これは、携帯電話や携帯機器のアプリケーションにも適用される。

ドイツ編集

ドイツにも日本とほぼ同じ自動速度取締装置が多数設置されているが、信号無視を検知する「自動信号無視取締機」が都市部を中心に設置が進められている。赤信号にもかかわらず交差点に進入すると、取締装置が信号標示と車両の前部・後部を自動的に撮影する仕組である。二輪車の違反にも対応している。

フランス編集

 
フランスの事前警告標識

プライバシー権など、多くの人権問題を惹起しかねない取締方法である自動速度取締装置(radar automatique)に対し、当初フランス国民の反発が非常に高いものであったため、設置はほとんどなかった。

しかし2000年以後、警察が交通違反に対する取締を相当強化したことにも伴い(今でもフランスは交通事故多発国としてヨーロッパ圏内では悪評高く、啓蒙のためフランスでは、日々のテレビニュース番組で「今週の交通事故死亡者数」が定期的に報じられる)、パトカーや白バイ隊による追跡、検挙のみならず取締装置設置数は急増した。

フランスでは様々な取締装置が運用されており、固定式、可搬式、半可搬式、移動式、平均速度監視装置、信号無視監視機、踏切しゃ断踏切立入り違反取締装置が運用されている[33]

フランスでは走行中及び停車中に前走車及び対向車を目に見えない赤外線ストロボで撮影することができる移動式取締装置が使用されている[34][35]。この移動式自動取締装置を大規模に導入したのはフランスが初めてであり、この取締装置は秘匿性が高く、双方向に対応し、自動車を運転するだけで場所を変えることができるため機動性が高く、そして「走行中の取り締まり」によって全国各地のあらゆる危険な道路での取り締まりを可能であり、最も高い効果があることを証明した[36]。この装置はマルチメディアによる広報により大々的に宣伝され、速度違反の抑制に大きな効果を上げている。

半可搬式取締装置は、固定式や可搬式取締装置が設置されるような主要道路での取り締まりの強化に使われている他、道路工事現場に設置することで、道路工事に従事する人員の安全性を確保するという、特徴的な運用をしている[37]

事前警告標識が必ず存在し、その標識には Pour votre securité...contrôles automatiques(あなたの安全のため―自動取締中)の文字、およびレーダーが発信される様子が描かれたピクトグラムが表示されている。レーダー探知機は、作動させていた場合はもちろん、所持だけでも検挙の対象となり、厳罰に処されるため、欧州連合から車両を持ち込む際などは特に注意を要する。

黄色いベスト運動により、2018年から2019年にかけてフランス全土の取締装置の75%が何らかの被害を受けたが、政府は破壊に強いMesta Fusion 2と呼ばれる装置の導入を進めている[38]

この装置は最大8車線に対応し、200メートル先から計測することができ、乗用車と大型貨物車の異なる制限速度にも対応する。現時点では速度違反だけを対象にしているが、他にも追い越しでの違反、車間距離不保持の他、シートベルト非着用や運転中の通話の検知も可能である。 取締装置1つにつきダミーとして4つの格納キャビネットがあり、運転手が知らない間に取締装置本体を別のキャビネットへ移動することができるようになっている。

オーストラリア編集

 
オーストラリアの移動式速度違反自動取締装置Gatso

オーストラリアでは通常の取締装置の他に、フランスで使用されているような車両前面にレーダー、ダッシュボードにカメラを設置した移動式取締装置を導入している。この装置も停車中及び走行中に前走車及び対向車の撮影が可能で、現在の装置は赤外線ストロボとカメラを利用したフラッシュレス撮影を行えるため、対向車などを幻惑させずに撮影が可能となっている。

速度違反自動取締装置と信号無視監視機の両方の機能を持つ取締装置も利用されている。

韓国編集

韓国における自動速度取締装置は一般に「속도기(=速度機)」や単に「감시 카메라(=監視カメラ)」と呼ばれている。一般道路高速国道問わず相当多数の取締装置が設置されているが、そのうち、実際は稼働していないただの取締装置の模型も、速度抑止の目的から設置されている(ただし、減少している模様)。また、この「監視カメラ」は速度違反検知だけでなく、違反駐車検知、信号無視検知などを行うものも、ソウルの主要道路を中心に設置が始まっている。

取締装置の前にはオレンジ地に黒文字で「속도단속(=速度團束、つまり速度取締)Police enforcement」との文字と、カメラアイコンがかかれた警告標識があり、この様式はほぼ統一されている(「○メートル先」の補助標識があるものも存在する)。

日本や、他の欧米諸国の取締装置は、かなり離れたところからもその存在が確認できるほどの大きさがあるが、韓国の取締装置は家庭用ビデオカメラ程度の大きさしかなく、また普通の案内標識の間に隠されているものもあるので、事前警告標識に気を付けなければ見落としてしまう可能性が非常に大きい。また韓国のカーナビは、その道路の規制速度と取締装置の設置場所、機種によっては車速を表示する機能を備えたものが多い[脚注 4]。 韓国の高速道路などでは、先行するドライバーが取締装置に接近するとハザードランプを点灯させ、後続車に取締装置に対する注意を促す慣習がある。

速度違反に対する反則金は、20 km/h以下と20 km/h超過40 km/h以下と40 km/h超過60 km/h以下、60 km/h超過に区分されており、最大で13万ウォン(乗合自動車)である(大韓民国道路交通法第15条第3項及び第113条参照)。

脚注編集

  1. ^ オービス」は別分野で複数の企業が商標登録している。
  2. ^ a b 電波法施行規則第33条第6号(5)に基づく平成2年郵政省告示第240号第1項第4号および第5号により、警察用の無線標定陸上局と無線標定移動局の操作は、無線従事者を必要としない「簡易な操作」ではないため。
  3. ^ 交通違反のうち、赤切符が交付される非反則行為は、道路交通法違反行為として刑事罰を受ける犯罪行為であり、比較的軽微な違反であり、青切符が交付される反則行為についても、本来犯罪を構成する行為であり、したがってその成否も刑事手続において審判されるべきものであるが、交通反則通告制度を利用し、反則金による処理を選んだときは、刑事手続によらず処理することができるようにしたものと考えられている。 最高裁判所第一小法廷判決 昭和57年7月15日 民集 第36巻6号1169頁、昭和55(行ツ)137、『行政処分取消』。
  4. ^ いわゆるレーダー探知機も、主にプロのドライバーに普及している。

出典編集

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  2. ^ “移動オービスで狭い道にも速度監視の目 死亡事故多発、導入広がる”. 西日本新聞Web. (2018年10月8日). https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/455915/ 2018年10月8日閲覧. "”同乗者のプライバシーへの配慮などから予告看板で取り締まり区間を知らせている。”との記述有り" 
  3. ^ “自動速度違反取締装置“オービス”の最新事情 神出鬼没の移動式が増加傾向”. くるまのニュース. (2018年11月12日). https://kuruma-news.jp/post/113058 2019年2月16日閲覧。 
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  8. ^ 可搬式速度違反自動取締装置の運用を開始します!(PDF:1,231KB)
  9. ^ 月刊交通 (2018年7月号). 41頁. 東京法令出版. 
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  32. ^ Radarwarner: Bundesgericht kennt keine Gnade”. 20min.ch. 2012年5月24日閲覧。
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  38. ^ “Plus de 400 radars nouvelle génération plus puissants et plus solides vont être installés dès cette année en France”. franceinfo. (2019年4月2日). https://www.francetvinfo.fr/societe/securite-routiere/limitation-de-la-vitesse-a-80-km-h/400-radars-nouvelle-generation-plus-puissants-et-plus-solides-vont-etre-installes-des-cette-annee-en-france_3260773.html 

関連項目編集

外部リンク編集