住宅

人の居住を用途とする建築物
自宅から転送)

住宅(じゅうたく)は、人の居住を用途とする建築物。「住居」とも言う。生活範囲となる環境を含める場合もある。

日本の一般的な住宅
有機的なデザインのThe Turtle House
Iford Manorの裏庭はHarold Petoによる設計。

ひとつの敷地に一世帯が居住する「一戸建(て)」(戸建(て)、個人住宅とも言う。建築基準法においては専用住宅)と、複数世帯が居住する「集合住宅」(建築基準法においては共同住宅)とに大別される。また、自己が所有し居住する持ち家と、他人が所有する住宅を借りて居住する貸家貸間)・賃貸住宅に分けることもできる。いずれの形態でも自身の住む住宅を指して自宅と称することができる。

住宅の形には、社会の変化に応じて流行もあり、和風住宅、洋風、欧風住宅といった呼び名があり、また、高齢者在宅ケアなどのための同居する人が増えるようになり、二世帯、三世帯住宅や、高齢者住宅、バリアフリー住宅といった呼称も出てきた。

歴史編集

遙かな古代には人類は採集のために移動生活を行ってきたが、ごく初期には洞窟など居住に適した地形を見つけ暮らしていたものが、やがてキャンプ地で手に入るものを寄せ集めて風雨をしのぐための仮の建築物をつくるようになった[1]。これが住宅の起こりである。この時期の住居は移動をする関係上テントや掘立小屋程度のものだったが、やがて定住を行うようになるとともに、固定し容易に移動できない形でのを営むようになった。

人類は定住するに当たり、まずはその近辺に豊富にある材料を寄せ集めて住宅を作った。こうして近隣で豊富に取れる材料を使って住宅を建設することは近代までは一般的であり、このため世界各地でその風土に合わせた様々な材料の住宅が存在するようになった[2]。土や粘土は主要な建築材料のひとつであり[3]、中東などの乾燥地においては、水に弱いものの簡単につくれ断熱性に優れる日干し煉瓦が古代より主要な建築材料となっていた。一方高温多湿な熱帯モンスーン地帯においては、軽量で風通しがよく雨に強い木材を使用することが一般的だった。高温湿潤地域においては、も主要な建築材料だった[4]湿地帯においては外装材にが多用された[5]石材はどの文明でも使用されたものの、煉瓦や木材が使用できる地域においてはそちらが主となることが多かった。特殊な建材としては、北極圏イヌイットは冬季の住居にのブロックを用い、イグルーを建造していた[6]

また、移動の多い遊牧民などは動物の毛や皮などを使ったテントを宿営地に建てたが、これも住居の一種である。また地上に家屋を構えるのではなく、乾燥地においては地面を掘り下げ、地下に穴を掘って住居を建設することも近代までは行われていた。黄土高原における窯洞カッパドキアカイマクルの地下都市[7]チュニジアの旧マトマタなどがよく知られた例である。

住宅建設の技術が進むにつれて、その形状もその土地に合うように変化を遂げていった。寒冷な地域においては囲炉裏などといった暖を取るための設備が重視され、多湿地域においては湿気を避けるためにしばしば建物は高床式となった。また乾燥地域では降雨に対応する必要がないため屋根は平らなものとなる一方、多雨地域では雨を流すよう屋根に角度がつけられていることがほとんどである[8]。他者の襲撃が絶えなかった地域においては住居は防御力を重視して建造され、西アフリカの環状住居[9]や中国南部の土楼[10]のようにいくつもの住居をつないだ小要塞を建造したり、またニューギニア島の一部民族のように樹上住居を建設した民族も存在する[11]

こうしたさまざまな素材・様式の住居は居住者の行動を規定し、生活様式に大きな影響を与えた。近代以降になると、コンクリートなどの新しい建築材料が登場するようになった。また産業革命以後、都市への急速な人口集中によってスラムなど不良住宅問題が発生し、いくつかの対策が検討されるようになった。こうした対策の一つとして、1898年にはエベネザー・ハワード明日-真の改革にいたる平和な道によって自然と共存し自立した都市近郊の小都市論、いわゆる田園都市構想を提唱した[12]。また衛生面における住宅改善の必要性は、ル・コルビュジエらに影響を与えた[13]。貧困のため満足な設備のない住居に居住する人口は現代においても非常に多く、特に途上国では大規模な不法居住地区にスラムが広がっている都市も多い[14]

機能編集

住宅にはさまざまな機能が存在するが、最も重要なものは外部の危険から居住者を守る機能である。この危険は、寒さや暑さなどといった日常的なものから、台風などの突発的な自然災害に至るまで多岐にわたる。これと同様に、居住者が快適に生活を営むことのできる機能も重要である。居住者は住宅内部において睡眠を取り、食事をし、家庭を持っている場合は育児や団らん、介護などの家庭生活を行い、また趣味や休息などを含む日常生活の大きな部分を住宅内において過ごす[15]

住宅は人の生活の拠点であり、居住者は住宅内部で長い時間を過ごすため、住宅の質は人の健康に大きな影響を与える。住宅建設の際、日照や採光、通風などを考慮し、湿度や空気のよどみなどを避けることが健康的な生活につながる[16]。階段や段差といった障害で転倒するなど、住宅内での事故も多く[17]、この対策として障害を減らし高齢者でも安全に暮らせるバリアフリー住宅の建設も増加傾向にある。

住宅の分類編集

国勢調査における「住宅」編集

国勢調査では、完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営む事が出来るように建築又は改造されたものを住宅としている。住宅の建て方には、「一戸建」、「長屋」、「共同住宅」および「その他」に分かれる。「その他」には、工場や事務所などの一部に住宅がある場合や住宅以外の建物の場合を指す。住宅ではないものとして会社や学校の寮・寄宿舎、病院・療養所、ホテル、下宿屋、旅館・宿泊所、臨時応急的に建てられた建物などが挙げられる。学校の寄宿舎病院・療養所、社会施設、自衛隊営舎、矯正施設などは施設として扱われる。

伝統的住宅編集

一戸建編集

集合住宅編集

付加された機能による分類編集

住宅対策事業編集

国土交通省(旧建設省所管)の市街地のまちづくり活性事業において、住宅対策事業はつぎの施策を行っている。市街地住宅の供給施策(住宅局住宅建設課市街地住宅整備室所管)は、以下のものがある。

  • 市街地住宅密集地区再生事業
  • 特定住宅市街地総合整備促進事業
  • 都市居住更新事業
  • 都市住宅整備事業
  • 優良住宅地段階整備誘導計画制度:三大都市近郊鉄道周辺で公共施設整備に併せ住宅建設、地区施設整備の誘導
  • 大都市地域住宅供給促進計画策定事業

ほか、住宅市街地開発事業では、新住宅市街地開発事業, 住宅街区整備事業がある。

著名な住宅編集

歴史的住宅編集

日本編集

  • 箱木家住宅(室町時代~江戸時代 兵庫県神戸市北区) - 「箱木千年家」と呼ばれる日本最古の住宅。国の重要文化財
  • 古井家住宅(室町時代後期 兵庫県姫路市) - 国の重要文化財。上記箱木家と並ぶ日本最古級の民家。
  • 栗山家住宅(1607年 奈良県五條市) - 国の重要文化財。建築年代が判明するものとしては日本最古の民家。
  • 今西家住宅(1650年 奈良県橿原市) - 国の重要文化財。「八ツ棟造」として著名な民家。
  • 旧グラバー住宅(1863年 長崎県長崎市) - 日本最古の洋風建築の住宅。国の重要文化財。

ドイツ編集

  • フッガーライ(1514年-1521年 ドイツ・アウクスブルク) - 最初期の計画的集合住宅。

アメリカ合衆国編集

  • モンティチェロ(1769年-1809年 アメリカ合衆国バージニア州シャーロッツビル)

モダニズム建築編集

集合住宅編集

個人住宅編集

構成要素編集

屋外編集

※なお、園芸用の農地は、建物の基礎部分に接して農地等を設けるべきではない。害虫などが家屋に侵入して様々な悪影響を及ぼしたり、雑草を焼却しようとして根から基礎に火が回り建物火災になることすらある。これらの点や防犯上、建物の基礎部分周囲には砂利を敷き詰めることが望ましい。

屋内編集

下記に関連して、給排水、電気等の付帯設備もある。

住宅用庭園編集

家庭用の家庭菜園も含め、住宅の庭は、最も一般的な庭の形態であり、「前庭」や「後庭」など住居の側にあり、前庭はフォーマルかつ半公共の場である可能性もあるため、条約や現地の法律の制約を受ける。通常屋外空間のヤードは住宅の庭を上に設けることができる屋根庭園、吹き抜け中庭バルコニーwindowboxesまたは上のパティオなどがある。住宅用庭園は、ほとんどの場合個人用に設計されているため、一般的に人間規模で設計されているが、素晴らしい家や広い敷地の庭は、公共の公園よりも大規模な場合もある。

住宅用庭園は、ある特定種類の植物を展示するための特殊な庭園であっても、またはロッカリーであってもまたは水の特徴などの特殊な特徴を備えていても、かまわないがそれらはまたハーブ野菜栽培にも使用されているため、持続可能性においては重要な要素である。

裏庭編集

裏庭は本邸が周囲の庭園を2つに分けると発生している。これは特にイギリスの都市や町の高密度住宅で起こり、20世紀のイギリス郊外の典型的な半戸建て住宅には道路に面してアクセスできる正面庭園があり、そのような場合の裏庭はより隔離され、アクセスは一般的に住居を経由するか、側方を通る道で行われる。各国のフロントガーデンは半公共のスペースであるため、条約や法律の制約を受けているが、裏庭はよりプライベートでカジュアルなものであり[18]、そのためより多くの目的に使用される。

11月5日の焚き火の夜、の焚き火など、一部の使用法は伝統的なものがあるが、天気の制約のため、夏は冬よりも夏のほうが庭を使用するのが一般的。同様に、日中の使用は夜間よりも一般的である。

 
カンタベリー大司教の裏庭にはエラスムスによって植えられたと言われているが含まれている。

機能的には、以下の用途に使用できる。

脚注編集

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  1. ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p61 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
  2. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p8 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  3. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p24 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  4. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p34 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  5. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p36 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  6. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p122-123 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  7. ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p63 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
  8. ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p62-63 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
  9. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p110-111 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  10. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p92-93 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  11. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p160-161 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  12. ^ 「日用品の文化誌」p5 柏木博 岩波書店 1999年6月21日第1刷
  13. ^ 「日用品の文化誌」p6-7 柏木博 岩波書店 1999年6月21日第1刷
  14. ^ 「ビジュアル版 世界の居住文化百科 さまざまな民族の伝統的住まい」p172-173 ジョン・メイ著 藤井明日本語版監修 本間健太郎訳 柊風舎 2013年6月20日第1刷
  15. ^ 「住居学」p74 後藤久・沖田富美子編著 朝倉書店 2003年6月1日初版第1刷
  16. ^ 「居住福祉」p66-67 早川和男 岩波新書 1997年10月20日第1刷発行
  17. ^ 「居住福祉」p61-63 早川和男 岩波新書 1997年10月20日第1刷発行
  18. ^ Richard Webster. Feng Shui in the Garden. Llewellyn Worldwide. p. 47. ISBN 1-56718-793-5. https://books.google.com/books?id=nM_dmNdgCWMC. "The back garden is usually more private and casual" 
  19. ^ Jules N. Pretty. The Earth Only Endures: On Reconnecting With Nature and Our Place in It. Earthscan. pp. 36. ISBN 1-84407-432-3. https://books.google.com/books?id=LTDpl_bgh8wC 
  20. ^ Alison Ravetz, Richard Turkington (1995), “Gardens and External Space”, The Place of Home: English domestic environments, 1914-2000, Taylor & Francis, pp. 176–199, ISBN 978-0-419-17980-1 

関連項目編集