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スマトラ島沖地震 (2004年)の津波で破壊されたスマトラ島西部の街
2014年8月20日の広島県豪雨災害

自然災害(しぜんさいがい、: natural disaster)とは、危機的な自然現象(natural hazard, 例えば気象火山噴火地震地すべりなど)によって、人命や人間の社会的活動に被害が生じる現象を言う。

日本の法令上では「自然災害」は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されている(被災者生活再建支援法2条1号)。

単なる自然現象が、人的被害を伴う「自然災害」に発展したり、災害が拡大したりするには、現地の社会条件が大きな影響を及ぼす[1]

目次

ディザスターとハザード編集

自然災害がなぜ起こるかについては、次の公式に帰結している。

Disasters occur when hazards meet vulnerability.[2]
災害は、危機が脆弱性と出会うことで起こる

社会の持つ脆弱性(災害に対する弱さ)は、防災計画が無かったり、適切な危機管理がなされなかったりすることでさらに大きくなり、人的被害、経済的被害、環境に対する被害を大きくする。最終的な被害の大きさは、被害者を支援し災害拡大を抑えるための人員の数や、災害からの回復力の大きさに依存する [3]

disaster」(「災害」)と 「hazard」(「危機」、「現象」)は意味が異なる。ユネスコの地球科学プログラム[1]では、「ナチュラル・ハザード」(Natural Hazard、自然現象)と「ナチュラル・ディザスター」(Natural Disaster, 自然災害)を次のように定義している[4]

ナチュラル・ハザード」とは、大気・地質学水文学的原因で、太陽系規模・地球規模・地域規模・国家規模あるいは地方規模の範囲を、急速または緩慢に襲う事象により引き起こされる、自然に発生する物理的現象である。地震、火山噴火、地すべり、津波、洪水、干ばつが含まれる。
ナチュラル・ディザスター」(自然災害)とは、ナチュラル・ハザードの結果または影響である。社会の持続可能性の崩壊と、経済的・社会的発展の混乱を意味する。

もし天変地異などの「自然現象」(ナチュラル・ハザード)が起こったとしても、その場所に脆弱性が無ければ(例えば異変の起こった一帯にだれも住んでいない場合)、「自然災害」(ナチュラル・ディザスター)が起こることはない。その環境に人間活動も社会も無ければ、自然現象は単なる現象であり、誰も被害を受ける可能性はないため「危機」にも「災害」にもならない。このため、「自然災害」の「自然」(natural)という部分に対する異議も一部にある[5]

自然災害は、人為的な原因による災害(「人災」)に対して、天災とも呼ばれる。しかし実際に「天災」と呼ばれているものは、社会の脆弱性など人為的な原因により人的被害が拡大されている側面が大きいため、「天災」という呼び方は適切なものではない。地震は自然現象だが、脆い建物が崩れたり救援の手が届かなかったりすることによって地震災害は拡大する。自然現象である大雨は、森林の乱伐などによって土砂災害の危険性を拡大させたり、低地への居住などによって浸水による被害を拡大させたりする。大雨とは逆の自然現象である干ばつは、社会の不平等や政府の失策により、都市や軍隊には食物が確保される一方で農村の貧しい人々に食物が行き届かなくなることで、飢饉という災害へと拡大する。干ばつのため食糧不足にさらされる人達に食物や雇用を供給する政策が、民主主義のインセンティブによって実行に移されきちんと機能する場合、飢饉という災害は発生しないが、貧しい人々の声を聴く必要の無い権威主義的体制や無政府状態では、干ばつは容易に飢饉へと拡大する[6]

自然現象編集

「ナチュラル・ハザード」(自然現象による危機)は、人間社会や環境に対して否定的な影響を持つ現象が起こる脅威を指す。ナチュラル・ハザードの多くは連続的に起こる。例えば、地震は津波を起こし、干ばつは飢餓や疾病を起こす。

1995年1月17日に起こった「兵庫県南部地震」は「ナチュラル・ハザード」(自然現象)であるが、その結果引き起こされ、数年にわたり大規模な人的被害や経済的被害などが続いた「阪神・淡路大震災」は「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)である。

また「ナチュラル・ハザード」という言葉は将来起きる可能性のある脅威(例えば発生が予想される地震や、大雨が降った場合の洪水)を指す場合に使われるが、「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)は過去に起こった、あるいは現時点で起こっている社会的出来事に関連付けて使われる。

自然災害の例編集

 
ハワイで家を襲う溶岩流。
 
雪崩
 
竜巻で破壊された家と樹木、2010年アメリカ・ミシシッピ州。
 
隕石の衝撃波で壁と屋根の一部が破壊された亜鉛工場。 2013年、ロシア・チェリャビンスク州
 
太陽フレアによる磁気嵐が地球を襲う想像図。電子機器やコンピュータシステムが障害を起こし社会に損害を与えることが懸念される。
地質
気象
生物
天文現象

災害時の事象編集

多くの災害時に発生する事象として、インフラストラクチャーライフラインの寸断・故障が挙げられる。物理的に破壊されることにより寸断される他、制御系統の不具合や停電による停止などが起こる。また、災害時には供給の確保や重要用途優先を理由として、意図的に制限が行われることがある。

予測と警報編集

重大な自然災害の発生が予測される場合、いくつかの国では政府が警報を発表し警戒を促す。日本ではこの業務は気象庁が担当しており、警戒水準によって注意報警報特別警報の3段階が存在する。かつては注意報と警報のみであったが、2013年8月30日から特に重大な災害の発生が予測される場合には特別警報が発表されることとなった。また、霜害に注意を呼びかける霜注意報のように、注意報のみで警報の存在しないものもある[7]。また、地震の予測は原則として不可能であるが、地震発生時のP波(初期微動)とS波(主要動)の到達速度、それに各地の地震計から発せられる電波のタイムラグを利用して日本では緊急地震速報のシステムが整備され、主要動が到達するよりわずかに(数秒から数十秒[8])早く人々に警報を発することができるようになった[9]

この他、自然災害によって予測される被害とその範囲を地図化したハザードマップも、地震や洪水、土砂崩れなどの各種災害に対応したものが作成されている[10]

自然災害による被害編集

ドイツのミュンヘン再保険社の年次報告によれば、2010年の自然災害による死者は約29万5千人(うちハイチ大地震による死者は22万人)、経済的損失額は1,300億ドルとの推計を行なっている。これは1980年以降5-6番目に悪い数字であるという[11]

1900年から2006年までの統計では、死者1000人以上の巨大自然災害は地震が127件、気象災害が82件、火山災害が15件、地すべりが14件、雪害が2件、風害3件となっている[12]。自然災害による死者数は様々な防災対策の施行によって減少傾向にある一方で、人口増加や移動によって居住不適地への居住者が増加し、被災者数のそのものの増加を招いている[13]

自然災害が起きた場合、先進国においては事前の防災対策によって被害が少なく済み、その復旧の過程で災害時に発覚した新たな問題点に対応する形で新たな防災対策が行われるといった動きが起きるために自然災害への対応力は上昇し続け被害が減少する傾向があるのに対し、発展途上国で災害が起きた場合防災対策が不十分なため被害が拡大し、被害の大きさと復旧の遅れによって新たな防災対策も不十分なものとなり、そして新たに災害が起きて被害がさらに拡大するといった負の動きが起きる傾向がある[14]。こうしたことから、自然災害の死者数は発展途上国の方が圧倒的に多い[15]

自然災害と国際法編集

自然災害時の支援に関して、ジュネーブ条約による国際赤十字・赤新月合運動があり、さらに障害者権利条約第11条は、「締結国は国際人道法国際人権法も含めた国際法の義務に従い、武力紛争人道的緊急事態並びに自然災害発生の際も含めた災害時の障害者の救出と保護のためにあらゆる必要な措置を講じる」ことを定めている。さらに国際連合総会決議によって国際連合人道問題調整事務所(OCHA)が設置された。

関連項目編集

脚注編集

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  1. ^ 社会格差と自然災害による人的被害 -インド洋大津波によるタイにおける被害を中心に- ,中須 正, 防災科学技術研究所研究報告 第69号 2006年8月
  2. ^ B. Wisner, P. Blaikie, T. Cannon, and I. Davis (2004). At Risk - Natural hazards, people's vulnerability and disasters. Wiltshire: Routledge. ISBN 0-415-25216-4. 
  3. ^ G. Bankoff, G. Frerks, D. Hilhorst (eds.) (2003). Mapping Vulnerability: Disasters, Development and People. ISBN 1-85383-964-7. 
  4. ^ http://www.unesco.org/science/disaster/about_disaster.shtml より引用
  5. ^ D. Alexander (2002). Principles of Emergency planning and Management. Harpended: Terra publishing. ISBN 1-903544-10-6. 
  6. ^ アマルティア・セン『貧困の克服』 pp.112-114 集英社、2002年
  7. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p152-153 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  8. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p96 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  9. ^ 「せまりくる「天災」とどう向き合うか」p84-85 鎌田浩毅監修・著 ミネルヴァ書房 2015年12月15日初版第1刷
  10. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p30 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  11. ^ 2010年の大災害死者、世界で29万人超(共同通信2011年1月4日)
  12. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p17 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  13. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p11 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  14. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p18-19 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行
  15. ^ 「世界と日本の激甚災害事典 住民から見た100事例と東日本大震災」p14 北嶋秀明 丸善出版 平成27年月30日発行

外部リンク編集

自然災害を担当する機関
自然災害の解説・記録・速報