船井幸雄
船井 幸雄(舩井 幸雄、ふない ゆきお、1933年1月10日 - 2014年1月19日[1])は、1960年代から活躍した日本を代表する経営コンサルタント、起業家、企業経営者。コンサルティング会社・コンサルティング業界で世界初の株式上場を果たした株式会社船井総合研究所(現 ㈱船井総研ホールディングス)の創業者であり、グループ9社・グループ従業員数1,209名[2]・中堅中小企業1万社の経営支援を行う船井総研グループ(時価総額1,300億-2020年12月現在)の創始者である。退任後には株式会社船井本社、株式会社本物研究所のトップも務めた。
名字編集
息子の舩井勝仁によると、戸籍上は「舩井幸雄」であるが、本人は1998年までそれを知らなかったという[3]。戸籍の名字を知った船井幸雄が船井と舩井の違いを調べたところ、舩井は認められた高貴な人しか使えない名前だと分かったため、使命をきちんと果たすために舩井姓を使うようになったという[3]。[信頼性要検証]
経歴編集
舩井幸雄は1933年1月10日大阪府松原市にて出生。大阪府立河南高等学校を経て、1956年、京都大学農学部農林経済学科卒業後、日本マネジメント協会を経て、1970年3月6日に㈱船井総合研究所の前身となる㈱日本マーケティングセンターを創業し、1988年には経営コンサルティング業界初と言われる株式上場を果たした(現㈱船井総研ホールディングス)[4]。
これは「経営コンサルティング業のようないかがわしい業界の上場は絶対に無理だ」と言われていた当時の金融・証券界の常識をくつがえす出来事でもあった。[5]世界に先駆けた上場により、業界全体の認知度の向上と果たす役割の啓蒙に寄与し、今では「コンサルティング業界」は就職人気業界としての地位を確立、日本の経済・産業界全体へ多くの経営人財を輩出する業界となった。
また当時より属人的で仕組み化・スケール化が難しい業界にあって、「一人のカリスマコンサルタント」だけの力による脆弱な経営で後継者なきまま一代で浮き沈みする会社が多い中、いち早く新卒を多数採用し即戦力化を図ることで、多種多様な業界をリードする経営コンサルタントを多数輩出するに至った[6]。これらの事業戦略と人財戦略をとった結果、船井総研グループは2020年に創業50周年を迎え、次の50年に向けても持続的に成長し続ける経営体制を築いている[7]。
社業の基礎をつくり事業と業界を発展させる一方、個人としても精力的な講演活動・著作活動を続け、経営から人の生き方まで、独自の視点を世に説いててきた。生涯にわたり出版された著書は400冊を越え[8]、逝去したのちの今でも数多くの企業経営者やファンに支持され続けている。
思想編集
スピリチュアル・オカルト編集
徹底したプラス思考(ポジティブ・シンキング)、自己改革、「エゴからエヴァ(一体化)へ」、現世は悪いカルマを清算する場である、人や物から波動が発せられている、「アセンション(次元上昇)」、オカルト・スピリチュアル系の思想を繰り返し著作で主張し、混迷する不況の時代に大きな支持を受けた[9][10]。成功哲学は、特に中小企業の社長やビジネスマンから熱く支持されており、大企業の経営者や有名人にも支持者がいる[10]。
宗教学者の大田俊寛は、「意識革命を達成した人間、霊的に進化した人間が、ビジネスや政治や文化において先導者になるべきだ」というのが、船井の根本的な人間観であると述べおり[9]、朝日新聞ジャーナリスト学校主任研究員の磯村健太郎は、船井の自己啓発書・ビジネス書には「カルマの法則」「宇宙エネルギー」などのニューエイジ的な思想が多く含まれていると述べている[11]。現世利益を求める成功哲学と「真実に気付いて世界の変革を起こそう」といったスピリチュアルな啓蒙思想が同居しており、ビジネス系の成功哲学でもスピリチュアル思想が隠さず唱えられている[10]。
人間の本質は肉体ではなく魂にあり、魂は不死で肉体は乗り物であり、人間は死ぬと転生し、人生の目的は魂の成長(霊的進化)であると考えた[12]。創造主・「サムシンググレート」というような存在があるようだと述べており[13]、創造主は効率的な「世の中」を創っており、この世に無駄なものはなく、良心・知性、理性、感性を持つ人間は特に重要な使命と役割を与えられて創られたと考えた[14]。
世の中はすべて「波動」と考えることができ、波動の性質は
- 同じものは引き合う
- 違うものは反発し合う
- 自分が出した波動は自分に返ってくる
- 優位の波動は劣位の波動をコントロールする
この4つだけであるとしている[13]。創造主に近い思いほど優位・上位であり、優位の波動を出せばどんなこともコントロール可能なはずとしている[13]。創造主の波動に近づき、自らの中の創造主と一体することで、カルマが解消され、地球をより良くすることに貢献できるようになるという[12]。
キリスト教の異端的潮流ニューソートの思想家・自己啓発作家ジェームズ・アレンを高く評価し、デール・カーネギー、ナポレオン・ヒルなど自己啓発・成功哲学の教祖的人物のほとんど全てに影響を与え、現代日本人には多かれ少なかれ彼の影響があると述べている[15]。アレンが言うように、思ったことは実現するのだから人はいいことだけ思えばよく、イメージし確信を持つことでより実現しやすくなるとしている[13]。
2012年に霊的に進化した人々が「アセンション(次元上昇)」し物質に囚われた人々は淘汰されるという2012年終末論を支持し[9]、エマヌエル・スウェーデンボルグ、ヘレナ・P・ブラヴァツキー、出口なお、出口王仁三郎、エドガー・ケイシー、モーリス・バーバネル、バーバラー・マシニアックなどのオカルティスト・霊能者・新宗教の開祖・霊媒も同様に説いていると述べた[14]。
一部の進んだ人間に意識変革が起こると、地球全体の精神レベルを上げることができると説いた(百匹目の猿)[9]。
船井は、スウェーデンボルグ、ケイシー、出口王仁三郎、山崎弁栄、岡潔を、真理を語った超人とみなしている[16]。加えてイアン・スティーヴンソン、ブライディ・マーフィー(退行催眠をかけられた女性の前世とされた架空の人物)、政木和三、マイケル・ドロズニンの『聖書の暗号』、岡本天明の『日月神示』を高く評価し、「信用できる」と評している[17]。
『聖書の暗号』を根拠に、「闇の勢力」「闇の権力」と呼ばれる人類の支配者が存在するようだと述べており、最も論理的に検証されている人類史は、爬虫類人類による陰謀論を唱えた太田龍によるもので、『聖書の暗号』とも一致すると述べている[18]。
自身については、誤解されているがオカルトやスピリチュアルとは無関係な人間であり、どんなことも現実的に客観的に判断すると語っている[17]。亡くなる直前の2014年1月6日に自身サイトで、「スピリチュアル否定」ともとれる発言をしている[19]。
近年流行している「引き寄せの法則」「100%自己原因説」(ポジティブ・シンキング)との間接的な関係、ブラック企業での自己啓発書・自己啓発セミナー的な思想を利用した過重労働、オカルト的な「成功のための情報」を商材とするネットワークビジネスへの間接的な影響を指摘する声もある[10]。
地域一番店戦略編集
経営コンサルティングの手法としては『地域一番店戦略』が有名。これは、1970年代に渥美俊一が唱えた『チェーンストア理論』の対局を為す小売戦略として、多くの地域小売業者に支持された[要出典]。当時は小売業のコンサルタントとして、「東の渥美・西の船井」と云われていた。
丸井会長の青井忠雄、伊勢丹出身で松屋と東武百貨店を再建した山中鏆、そごう元会長水島廣雄と昵懇で、会合を定期的に開いていた。[20]東武百貨店が東洋一の百貨店を池袋にリニューアルオープンした際の戦略も、地域一番店戦略がベースとなっている。そごうも影響を受けた。
著書編集
著書は400冊を超える。
- 『船井幸雄の人間の研究』PHP研究所 1990年10月 ISBN 978-4569528991
- 『包みこみの発想』ビジネス社 1992年8月 ISBN 978-4828404790
- 『「百匹目の猿現象」は右脳から―ここまでわかった成人のための右脳開発法 』(七田眞と共著)ベストセラーズ 1996年8月 ISBN 9784584182581
- 『OPEN WORLD』(山崎拓巳と共著)サンクチュアリ・パブリッシング 2002年9月 ISBN 9784921132569
- 『イヤシロチ―万物が蘇生する場所がある』評言社 2004年2月 ISBN 978-4828202945
- 『波動で上手に生きる 世の中のしくみ、人生の知恵』サンマーク出版 2004年10月 ISBN 9784763181923
- 『日本壊死』(副島隆彦と共著)ビジネス社 2005年2月 ISBN 9784828411750
- 『世の中、大激変 いま一番知って欲しい大切なこと』徳間書店 2005年4月 ISBN 9784198620028
- 『昭和史からの警告 戦争への道を阻め』(副島隆彦と共著)ビジネス社 2006年6月 ISBN 9784828412818
- 『いま二人が一番伝えたい大切なこと アセンション・フォトンベルト・多次元世界・プラズマ宇宙論-これからこうなる。こうしよう。』(中丸薫と共著)徳間書店 2007年3月 ISBN 9784198623036
- 『日本人が知らない「人類支配者」の正体』(太田竜と対談)ビジネス社 2007年 ISBN 9784828413808
- 『2012年の変化はすでに起きている』(櫻庭雅文と共著)徳間書店 2009年12月 ISBN 9784198628819
- 『予測はしないほうがよいのだが 44年間、何万件も当てた男の今後の予測』学研パブリッシング 2011年9月 ISBN 9784054050396
- 『【4つの超常現象対談】飛鳥昭雄×船井幸雄 日ユ同祖論とミロクの世の真実』(飛鳥昭雄と共著)学研パブリッシング 2012年5月 ISBN 9784054053106
- 『未来への言霊:この世の答えはすでにある!』徳間書店 2014年1月14日 ISBN 978-4198637378 ※本作が直筆としては遺作となった。
- 『すべては「必要、必然、最善」』ビジネス社 2014年8月9日 ISBN 978-4828417660 ※著者が生前に残した最後の原稿を書籍化した。
- 『舩井幸雄が最後に伝えたかった真実-船井流〝経営と生き方〟のコツ』ビジネス社 2015年1月22日 ISBN 978-4828417974 ※未発表原稿を書籍化、最終著書。
脚注編集
- ^ 船井総研創業者の船井幸雄氏が死去 財経新聞 2014年1月22日
- ^ “船井総研ホールディングス 会社概要”. 船井総研ホールディングス. 2020年12月20日閲覧。
- ^ a b 舩井幸雄のいま知らせたいこと2013年12月16日付
- ^ “船井総研ホールディングス 沿革・創業からの業績推移 ”. 船井総研ホールディングス. 2020年11月30日閲覧。
- ^ “一般社団法人船井財団 舩井幸雄とは”. 一般社団法人船井財団. 2020年12月20日閲覧。
- ^ “「船井総研ホールディングス アニュアルレポート」会社概要・ガバナンス ”. 船井総研ホールディングス. 2020年11月30日閲覧。
- ^ “船井総研ホールディングス 中期経営計画2020-2022”. 船井総研ホールディングス. 2020年12月25日閲覧。
- ^ “一般社団法人船井財団 舩井幸雄とは”. 一般社団法人船井財団. 2020年12月20日閲覧。
- ^ a b c d 本多カツヒロ なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?『現代オカルトの根源』の著者、大田俊寛氏に聞く 東洋経済 2013年08月23日
- ^ a b c d 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。「吉田
」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ^ 磯村健太郎『<スピリチュアル>はなぜ流行るのか(PHP新書)』2007年、PHP研究所
- ^ a b 船井幸雄 『人は生まれ変わる 体外離脱が教えてくれた本当の生き方』 2005年、ダイヤモンド社
- ^ a b c d 船井幸雄 『船井幸雄の「成功塾」―仕事と人生がうまくいく、わずか6つの成功原則』 ダイヤモンド社 、2004年
- ^ a b アセンション近し 船井幸雄のいま知らせたいこと 2005年9月16日
- ^ 船井幸雄『人間のあり方 われわれの本質は宇宙意志と一体、希望を持って生きよう』 1998年、PHP研究所
- ^ 真理を語った5人のことを知ろう 船井幸雄のいま知らせたいこと 2009年7月27日
- ^ a b 良い経営者になってほしいために息子たちに言いたいこと 船井幸雄のいま知らせたいこと 2010年7月12日
- ^ 人類支配者の正体 船井幸雄のいま知らせたいこと 2011年5月2日
- ^ 舩井幸雄.com - 2014年1月6日「いま一番知らせたいこと、言いたいこと」
- ^ 青井 忠雄[丸井社長]−こだわり捨て成長神話に幕 反骨精神で挑む新店舗開発(日経ビジネス1992/08/17号, 70〜73ページ掲載)
- ^ 小山政彦著『9割の会社は社長で決まる』(中経出版、2011年)
関連項目編集
外部リンク編集
- 舩井幸雄.com
- 船井総合研究所
- 船井総研ITソリューションズ - 2014年7月社名変更(旧:船井情報システムズ)
- (公財)舩井幸雄記念館「桐の家」