色 (仏教)

仏教における色(しき)

仏教における(しき)はパーリ語ルーパ: रूप rūpa)に由来し、(1)一般に言う物質的存在のこと(五蘊の一要素)で、色法と同じ意味、(2)視覚の対象(十二処十八界の一要素)、を表す言葉。

仏教用語
色, ルーパ
パーリ語 रूप (rūpa)
サンスクリット語 रूप (rūpa)
チベット語 གཟུགས (gzugs)
中国語
(拼音)
日本語
(ローマ字: shiki)
韓国語
(RR: saek)
英語 form, material object
シンハラ語 රෑප (rūpa)
タイ語 รูป
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パーリ仏典においては、色は重要な枠組みとして3つの文脈で登場する[1]

  • 色蘊(rūpa-khandha) - 物質的存在として。世界すべての現象を分類することができる五蘊のひとつ。
  • 色処(rūpa-āyatana) - 目から入ってくる情報。世界を認知する十二処六境のひとつ。
  • 名色(nāma-rūpa)- 「名前と形」もしくは「心と肉体」。十二因縁のひとつ。

物質的存在としての「色」(五蘊の一要素)編集

五蘊(パンチャッカンダ)
パーリ仏典による
 
 
色(ルーパ)
物質的存在
  四大(マハーブータ)
元素
 
 
 
 
 
 
触 (パッサ)
接触
     
 
識(ヴィンニャーナ)
認識作用
 
 
 
 
 
 


 
 
 
  心所(チェータシカ)
精神的要素
 
 
受(ヴェーダナー)
感受作用
 
 
 
想(サンニャー)
概念
 
 
 
行(サンカーラ)
志向作用
 
 
 
 
 出典: MN 109 (Thanissaro, 2001)[信頼性要検証]

いろ、形あるもの[2]。認識の対象となる物質的存在の総称[2]。一定の空間を占めて他の存在と相容れないが、絶えず変化し、やがて消滅するもの[2]。 仏教ではすべてが修行である、禅定を前提に考えられるため、存在はすべて物質的現象と見なされる。物質的現象であるから、諸行無常諸法無我であり、縁起であるからこのような現象が生じている。

」の五蘊(ごうん)の一要素。漢訳で「色」と訳されたサンスクリット語のルーパ(rūpa)は、「色彩」とともに「形」という意味も含んでいるため、「いろ」「かたち」で表現される物質的存在という意味が、すべて「色」という漢語の中に集約されている[3]。最初は我々の肉体だけを指していたが、「変化して壊れゆくもの」「他物と同一空間を共有できないもの」「現象として顕現しているもの」などの意味をもち、現代の「物質」に近い概念となった[4]。なお、四大種によって造られた色のことを所造色という[5]

般若心経』においては、「色即是 空即是色(色はこれ即ち空である。空はこれ即ち色である)」等の箇所に用いられている。

視覚の対象としての「色」(十二処、十八界の一要素)編集

視覚(眼、眼識)の対象のこと。この のほか、声(聴覚)・香(嗅覚)・味(味覚)・触(触覚)・法(心によって考察される存在全般)を合わせて六境とし、それぞれを知覚する器官である眼・耳・鼻・舌・身・意の六根と合わせて十二処と呼ぶ。また、六根・六境の諸要素が複合的に作用し合って現象が成り立つ場としての眼識界・耳識界・鼻識界・舌識界・身識界・意識界の六識と合わせて十八界と呼ぶ[6]

五蘊・十二処・十八界のそれぞれは、世界の構成要素の軸としてのカテゴリー(範疇)の区分の方法である(五蘊、十二処、十八界を合わせて三科と呼ぶ)。五蘊の「色」は、十二処・十八界の「眼、耳、鼻、舌、身、色、声、香、味、触」に対応する[7]

般若心経』においては、「無色声香味触法(色・声・香・味・触・法は無である)」等の箇所に用いられている。

また、顕色(けんじき。「いろ」の意)と形色(ぎょうしき。「かたち」の意)の2種に分たれ、さらに以下の20種に分たれる[8][9]

顕色 形色
1 青
2 黄
3 赤
4 白
5 長
6 短
7 方
8 円
9 高(凸形)
10 下(凹形)
11 正(規則的な形)
12 不正(不規則な形)
13 雲
14 煙
15 塵
16 霧
17 影
18 光
19 明
20 闇

出典編集

  1. ^ E.g., see Hamilton (2001), p. 3 and passim.
  2. ^ a b c 岩波仏教辞典 1989, p. 342.
  3. ^ 頼富・今井・那須 2003, p. 68.
  4. ^ 横山 1976, p. 98.
  5. ^ 櫻部 1981, p. 70.
  6. ^ 頼富・今井・那須 2003, p. 94~97.
  7. ^ 頼富・今井・那須 2003, p. 97.
  8. ^ 櫻部 1981, p. 64.
  9. ^ 精選版 日本国語大辞典『形色』 - コトバンク

参考文献編集

  • 中村元他『岩波仏教辞典』岩波書店、1989年。ISBN 4-00-080072-8
  • 頼富本宏 ; 今井浄圓 ; 那須真裕美『図解雑学 般若心経』ナツメ社、2003年。ISBN 4-8163-3544-7
  • 横山紘一『唯識思想入門』第三文明社、1976年。ISBN 978-4-476-01066-4
  • 櫻部建『倶舎論』大蔵出版、1981年。ISBN 978-4-8043-5441-5
  • Hamilton, Sue (2001). Identity and Experience: The Constitution of the Human Being according to Early Buddhism. Oxford: Luzac Oriental. 1-898942-23-4.

関連項目編集