花の曲(はなのきょく、Blumenstucke)作品19は、ロベルト・シューマンが作曲したピアノ曲1839年に作曲、出版された。題名はジャン・パウルの小説『ジーベンケース』("Blumen-, Frucht und Dornenstücke") から取られたと考えられている[1]。文学と音楽の融合に力を入れた作者ならではの情緒的・感傷的な[2]作品で、妻クララは『アラベスク』とともにアンコールピースとして繰り返し演奏したとされる[3]

シューマンのビーダーマイヤー的な側面を象徴する作品とされ[4]、同じくウィーンで作曲され、優美で繊細なテクスチュアを持つ[5]『アラベスク』とは密接に関連した存在である[6]。シューマンは2曲を並べて言及して[5]冗談交じりに[7]「か弱い、婦人向けの」作品と呼び、どちらも友人の陸軍少佐夫人フリードリケ・ゼーレ (Friederike Serre) に献呈している[1]

楽曲 編集

Leise bewegt変ニ長調。4分の2拍子。演奏時間は7分ほど[2]。右手は高音部の伸びやかな旋律、左手は緩い伴奏であるが、弱拍に右手中声部が打音することで曲に活気をつけている(譜例)。初めの部分には変イ長調 ("II") の楽想が続き、後半には Lebhaft変ホ短調の部分 ("V") も現れる[2]

冒頭

 


全体構成は "I" から "V" まで番号が付けられた部分が交代して現れる計9部からなり[4]、なかでも "II" 部分(譜例)は繰り返し現れて作品を統一し、一種のロンド形式を構成する[2]。各部はほとんどが三部形式で構成され、変奏の手法によって結び付けられている[6]属調の変イ長調で提示される "II" 部分は、最後に主調の変ニ長調で現れて締めくくられる[2]

 

出典 編集

  1. ^ a b Draheim, Joachim (2012). Schumann: Complete Piano Works, Vol. 4 (CD booklet) (PDF) (Media notes). Florian Uhlig. Hänssler. pp. 14–17. HA8650。
  2. ^ a b c d e 芹沢尚子「花の曲 変ニ長調 op.19」『作曲家別名曲解説ライブラリー23 シューマン』音楽之友社、1995年、185-187頁。 
  3. ^ 藤田晴子「花の曲 変ニ長調」『名曲ガイド・シリーズ10 器楽曲 上』音楽之友社、1984年、166頁。 
  4. ^ a b Donat, Misha (2017). Schumann: Davidsbündlertänze, Humoreske & Blumenstück (CD booklet) (PDF) (Media notes). Luca Buratto. Hyperion. p. 8.
  5. ^ a b Herttrich, Ernst (2004). “Preface”. Schumann: Blumenstück Des-dur. G. Henle Verlag. pp. III. https://www.henle.de/media/foreword/0090.pdf 
  6. ^ a b 西原稔『シューマン: 全ピアノ作品の研究 下』音楽之友社、2013年、115-122頁。 
  7. ^ 藤本一子『作曲家・人と作品 シューマン』音楽之友社、2008年、60頁。 

外部リンク 編集