苦礬柘榴石(くばんざくろいし、pyrope、パイロープ[2])はネソケイ酸塩柘榴石群に属する鉱物の一種である。

苦礬柘榴石(パイロープ)
pyrope
分類 ケイ酸塩鉱物
化学式 Mg3Al2(SiO4)3
結晶系 等軸晶系
へき開 なし
モース硬度 7.5
光沢 ガラス光沢
赤色
条痕 白色
比重 3.7
文献 [1]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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パイロープの名称はギリシャ語の炎のように燃えるを意味し、ろうそくの明かりにかざしたときの色に由来する。

産出地 編集

かつて18世紀から19世紀にかけてチェコボヘミア産のパイロープはこの地方の名品であり、かんらん岩風化した土砂の中から産出するものであった。現在ではほとんど採れなくなったが、この地方のボヘミアンガラス工芸は、このボヘミアンガーネットを再現することから始まったとされる[3]

イタリアからは十二面体の自形結晶のものを産する。ノルウェーアルメニンゲンからはエクロジャイト中に含まれるものを産する。

日本では愛媛県四国中央市土居町産出のエクロジャイト中に産するが、鉄礬柘榴石成分を多く含む。

性質・特徴 編集

組成式は Mg3Al2(SiO4)3 で表され、純粋なものは無色であるが普通は鉄礬柘榴石成分を固溶体として含み赤色を呈する。屈折率は1.74程度であるが、密度と共に固溶する鉄礬柘榴石成分の比率により変動する。

苦礬柘榴石は地球マントルもしくは、かんらん岩玄武岩など苦鉄質岩の高圧による変成作用により生成し、鉄礬柘榴石よりもさらに高圧条件で生成しやすいとされる[4]キンバリー岩あるいはエクロジャイト中にも産し、コーサイトと共存する場合もあり、ダイヤモンド結晶中に内包されることもある。熱力学的には常圧下では不安定であり高圧下で安定となるため人工合成は困難を伴い、30000気圧、900℃が合成の最適条件とされる[5]

鉄礬柘榴石よりも明瞭な結晶となることは少なく、塊状で産出することが多い。偏光顕微鏡下でも薄いピンクがかった紫色に見え、着色する傾向が強くある程度は区別可能である。しかし固溶体を形成する鉄礬柘榴石と明確に区別するには化学分析によるしかない。

脚注 編集

  1. ^ 国立天文台編『理科年表 平成20年丸善、2007年、643頁。ISBN 978-4-621-07902-7https://web.archive.org/web/20060703125140/http://www.rikanenpyo.jp/ 
  2. ^ 文部省編『学術用語集 地学編日本学術振興会、1984年。ISBN 4-8181-8401-2http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 
  3. ^ 堀秀道 『楽しい鉱物図鑑』 草思社、1992年
  4. ^ 松井義人、一国雅巳 訳 『メイスン 一般地球化学』 岩波書店、1970年
  5. ^ 吉木文平 『鉱物工学』 技報堂、1959年

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

  • Pyrope (英語), MinDat.org, 2011年7月19日閲覧 (英語)
  • Pyrope (英語), WebMineral.com, 2011年7月19日閲覧 (英語)
  • 福岡正人. “Garnet〔柘榴石〕グループ”. 地球資源論研究室. 広島大学大学院総合科学研究科. 2011年7月19日閲覧。