茶湯一会集』(ちゃのゆいちえしゅう)は、江戸時代末期の彦根藩井伊直弼(茶号:宗観)の著による茶書である。茶道における「一期一会」の理念を広めており、茶の湯における主客の深い心構えを提唱している。

概説 編集

23箇条にわたる本文の冒頭に「一期一会」の思想を、『本日の出会いは、再び同じ出会いではないと考え、主人は全てのことに、気を配り、客も亭主の趣向を何一つおろそかにせず、心に留めて、双方が誠意をもって交わるべきである』と主張している。激動の幕末にあって、静寂の極致のような茶室での心を、時の為政者である直弼が残していることは興味深く、後世における本書の魅力となっている[1]

成立 編集

成立は、本文中の記述から安政5年(1858年)と考えられ、井伊直弼の大老就任前後、桜田門外の変で非業の死を遂げる2年前と見られる。

原典 編集

原本は彦根市の井伊家に、草稿と清書本の2本が伝来している。以下は校訂本。

  • 『入門記・茶湯一会集・茶湯をりをり草』井伊正弘・倉沢行洋校訂解題
    灯影撰書.7:灯影舎、1988年
  • 『茶湯一会集・閑夜茶話』 戸田勝久注解、岩波文庫、2010年10月
  • 『日本の茶書 2』に所収、林屋辰三郎・横井清・楢林忠男編注
    平凡社東洋文庫、初版1972年、2007年にワイド版。

出典 編集

  1. ^ 矢部誠一郎編 「茶湯一会集」『古典の辞典 精髄を読む・第十四巻(江戸)』 監修・暉峻康隆他、河出書房新社、1987年。