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蛇紋岩

蛇紋岩(じゃもんがん、serpentinite)は、主に蛇紋石(serpentine)からなる岩石である。変成岩ないし火成岩中の超塩基性岩のどちらかに分類される。岩石の表面にのような紋様が見られることから、蛇紋岩と命名された。2016年5月10日日本地質学会によって「岩手県の岩石」に選定された[1]

概要編集

蛇紋岩は蛇紋石 Mg3Si2O5(OH)4を主要構成鉱物とする超塩基性岩でかんらん岩などが水と反応し、蛇紋岩化作用(もしくは蛇紋石化作用)を受けることで生成する。蛇紋石化作用は主に超塩基性岩類中のカンラン石で起こり、カンラン石と水から蛇紋石と磁鉄鉱が生成される反応で表される。蛇紋岩化作用の程度は岩体により様々で、作用の弱いものは原岩を構成する鉱物が多く残り、作用の強いものはそのほとんどが蛇紋石化している。

蛇紋石化作用の一例[2]
 
 

特性編集

 
至仏山頂に露出する蛇紋岩

蛇紋岩は地質的に脆弱な地質構造線や断層構造に沿って広く分布する。含水鉱物であるため風化作用を受けやすく、もろくて崩れやすい性質がある。そのため、蛇紋岩で形成された地域は地すべり地帯となり[3]、土木工事の際には難工事となる[4]。特に、蛇紋岩の地層を貫くトンネルの掘削作業には特段の配慮を要する[5]。岩石の表面は、モンモリロナイトスメクタイトなどの粘土鉱物を含み平滑状となっていることが多く、断層などの滑り面には強いのような光沢鏡面反射)が形成されることもある。登山においては滑落事故が起こりやすい(例えば越後山脈谷川岳至仏山)。

利用編集

クロム石綿ニッケルなど鉱物資源を内包していることが多い。このためセメントの材料や石材に使われ、鉱業開発が進められる場合もある。日本では2017年4月、庭石として蛇紋岩を長年加工してきた造園業者が石綿を吸入したことが原因とみられる肺癌労働災害を認定された[6]

農業編集

蛇紋岩自体も苦土肥料の原料として用いられる[7]

生育障害編集

作物によっては生育障害を起こす事がある。

ブランド米編集

蛇紋岩質土砂や蛇紋岩に由来する粘土を多く含む地域ではマグネシウムカリウムに恵まれた土壌が形成される。例えば、兵庫県養父市では八木川が蛇紋岩を削るため、八鹿町八木地区などでは一部において蛇紋岩質土壌の上で育てた米を「蛇紋岩米」として地域ブランド化している[10]

参考文献編集

脚注編集

  1. ^ 日本地質学会公式サイト 岩手県の「県の石」
  2. ^ 横田公忠, 矢田部龍一, 八木則男、「蛇紋岩地すべりに対する鉱物学的一考察」 『地すべり』 1998年 35巻 3号 p.15-23_1, doi:10.3313/jls1964.35.3_15
  3. ^ 山岸宏光, 伊藤陽司、「海道における地すべり地形の分布からみた地質分帯」 『地すべり』 1993年 30巻 2号 p.1-9_1, doi:10.3313/jls1964.30.2_1
  4. ^ 横田公忠, 矢田部龍一, 八木則男、「蛇紋岩の風化粘性土の強度特性」 『土木学会論文集』 1995年 1995巻 529号 p.155-163, doi:10.2208/jscej.1995.529_155
  5. ^ 蛇紋岩地帯におけるトンネル支保構造の検討について (PDF)
  6. ^ 造園業者石綿労災「蛇紋岩、知っていれば対策も」 『毎日新聞』朝刊 2017年12月26日
  7. ^ 小菅勝典, 浜田善久, 大塚良平、蛇紋岩の水熱処理によるカオリナイトの合成 『Journal of the Ceramic Society of Japan(日本セラミックス協会学術論文誌)』 1991年 99巻 1148号 p.282-285, doi:10.2109/jcersj.99.282
  8. ^ 高岸秀次郎、東野正三、飯塚隆治、蛇紋岩質土壌に生育する桑の異常障害に関する研究 第1報 異常症状および症状発生桑園土壌の化学性と桑の無機組成 『日本蚕糸学雑誌』 1973年 42巻 2号 p.135-143, doi:10.11416/kontyushigen1930.42.135
  9. ^ 大塚恭司, 高橋幸雄、「蛇紋岩地帯における温州ミカンの生育障害について(第2報) : ミカンのモリブデン欠乏」 『日本土壌肥料学雑誌』 1962年 33巻 11号 p.509-512, doi:10.20710/dojo.33.11_509
  10. ^ 石高真二、地域資源を活用した地域内活性化-地域金融機関の組織人としてすべきことは (PDF)

関連項目編集

外部リンク編集

  • 蛇紋岩(地質標本館)
  • 蛇紋岩 岐阜大学教育学部理科教育講座(地学) 理科教材データベース