西尾 実(にしお みのる、1889年5月14日 - 1979年4月16日)は、日本国文学者国語教育学者・国語学者

西尾 実
人物情報
生誕 (1889-05-14) 1889年5月14日
日本の旗 日本長野県下伊那郡豊村和合(現阿南町
死没 (1979-04-16) 1979年4月16日(89歳没)
日本の旗 日本
国籍 日本の旗 日本
学問
時代 大正昭和
研究分野 日本語学
日本文学
国語教育
研究機関 東京女子大学
法政大学
国立国語研究所
国語審議会
主な指導学生 岡本敏子
尾崎左永子
学位 文学博士
特筆すべき概念 言語生活主義
主な業績 国語教育の発展
主要な作品 #主な著書
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経歴

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出生から修学期

1889年、長野県下伊那郡豊村和合(現・阿南町)に生まれた。1910年に長野師範学校(現・信州大学教育学部)を卒業後、長野県内の尋常高等小学校で教師を務めた。その後東京帝国大学国文科選科を修了。

国語研究者として

修了後は、東京女子大学教授、法政大学教授を務めた。戦後は文部官僚釘本久春と協力して国語改革の主導者となり、1949年に国立国語研究所の初代所長に就任した[1]。1960年、学位論文『日本文芸史における中世的なものとその展開』を法政大学に提出して文学博士号を取得[2]

1979年に死去。

委員・役員ほか

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研究内容・業績

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中世文学の研究

専門は日本の中世文学で、世阿弥能楽のほか、『徒然草』や『正法眼蔵』などに多くの業績を残した[3]。また、雑誌『文学』の編集や「日本古典文学大系」の監修などにも貢献した[3]

国語教育について

師範学校出身の元教師ということもあり、西尾は国語教育も重視した。その教育観を一口に言えば、「優れた文学の鑑賞による人間の形成」である[4]。西尾は「作者の情意的感動の種子が主題となり、その主題が自律的に展開するのが構想である」と考え、「文学作品研究の対象は、叙述から掴める形象にあるので、鑑賞は直観によって作品全体を捉えることから始め、この創作過程に沿って、解釈から批評へと深められるべきだ」とした[4]戦後は「鑑賞そのものの価値は、読み手の主体的真実にある」とし、「個人的であっても、主観的であっても、そこに文学鑑賞の意義を見出すことが、新しい文学教育の方向性だ」と主張した[4]

この国語教育における西尾の考えは、日本語の捉え方にも関係している。西尾は、文芸などの文化とその基盤というべき生産母体としての言語生活を国語教育の領域に位置づけ、その言語生活を質的に高いものへと高めていく構造を提起した[4]。日常における談話生活のための教育を地盤領域に話し言葉を置き、言語生活それ自体を文化的に高めていくことを目指す「言語生活主義」である[5]。西尾は国語教育の「国語」を「国語学が対象とするようなものではなく、現実態として捉えたものでなければならない」と考え、国語教育は「国語の現実態に立脚した生活、または文化の平和的革命だ」と主張した[5]言語を「人と人とを繋ぐもの」として捉え、「人が人らしくなるためには、生きた言葉によって我々の心を拓き、命を向上させなくてはならない」と説くなど、言語による「通じ合い」を重視していたのである[5]

指導学生

著作

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著書
著作集
  • 『西尾実国語教育全集」(全10巻・別巻2) 教育出版 1974年-1978年
編著・注解
  • 徒然草岩波文庫 1950年
  • 言葉と生活』(西尾実 編)毎日新聞社〈毎日ライブラリー〉、1955年https://dl.ndl.go.jp/pid/2481395 
  • 国語指導の実際』(西尾実 編)筑摩書房、1957年https://dl.ndl.go.jp/pid/9543013 
  • 『国語教育辞典』(西尾実 等編)朝倉書店、1957年。 
  • 風姿花伝』岩波文庫 1958年
  • 文学教育』(西尾実 編)有信堂〈College Books〉、1969年https://dl.ndl.go.jp/pid/12160723 
  • 岩波国語辞典』(水谷静夫岩淵悦太郎共編、第2版)岩波書店、1971年。 
  • 『岩波国語辞典』(水谷静夫・岩淵悦太郎 共編、第3版)岩波書店、1979年。 
  • 『岩波国語辞典』(水谷静夫・岩淵悦太郎 共編、第3版)岩波書店、1982年。 
  • 『岩波国語辞典』(水谷静夫・岩淵悦太郎 共編、第4版)岩波書店、1986年。 
  • 『岩波国語辞典』(水谷静夫・岩淵悦太郎 共編、第5版)岩波書店、1994年。 
  • 『岩波国語辞典』(水谷静夫・岩淵悦太郎 共編、第6版)岩波書店、2000年。ISBN 4000800434 

監修

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参考文献

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図書
論文

脚注

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  1. ^ 岩波書店編集部 編『近代日本総合年表 第四版』岩波書店、2001年11月26日、369頁。ISBN 4-00-022512-X 
  2. ^ CiNii(学位論文)
  3. ^ a b 幸田国広 (2020), p. 30.
  4. ^ a b c d 幸田国広 (2020), p. 32.
  5. ^ a b c 幸田国広 (2020), p. 33.
  6. ^ 岡本敏子 (1999), p. 34.
  7. ^ 尾崎左永子 (2018), p. 860.
先代
-
国立国語研究所所長
初代:1949年 - 1960年
次代
岩淵悦太郎