言語入力キー
言語入力キー(げんごにゅうりょくキー)は、日本語や朝鮮 (韓国) 語のキーボードに見られる、インプットメソッドで文字を変換するために使用するキーである。これらのキーのないキーボードでIMEを使用するときはショートカットキーを使用するが、常に言語入力キーと同じ働きをするとは限らない。
日本語キーボードのキー
編集Microsoft Windowsで標準となっているOADGの109キーボード配列には、「半角/全角キー」・「無変換キー」・「変換キー」・「ひらがなキー」・「英数キー」の5つの言語入力キーがある[1]。
MacやiPad用に設計されたJISキーボード(Apple Keyboard)には、「英数キー」と「かなキー」がある[2]。
1980年代から1990年代にかけて日本で最も優勢であった日本電気 (NEC)のPC-9800シリーズのキーボードには、「カナキー」、「NFERキー」(no transferの略。無変換キーと同じ[3])、「XFERキー」(transferの略。変換キーと同じ[3])の3つの言語入力キーがあった[4]。
半角/全角キー
編集半角/全角キー(半角/全角)は、WindowsにおいてIMEのオン/オフを切り換えるキーとして使用されている[5]。この機能はもともと漢字キーのもので、Microsoft IME 98において機能が変更された[6]ため、キーの表記と実際の機能に相違がある。それ以前のWindowsやDOS/Vでは半角/全角キーは刻印通り、英数モードやカナモードの全角と半角を切り換えるキーであった[7]。
半角/全角キーはIBM 5550用の5556キーボードでは文字キーの左側のエリアに置かれ[8]、PS/55向けの5576-002キーボードでタイピングエリアの左上端に移動した[9]。OADG109/109Aキーボードでの刻印は下記のように規定されている[10]が、「漢字」の刻印が省略されたものもある。
半角/ 漢字 |
Windows VistaのMicrosoft IME(Microsoft Office IME 2007を含む)では既定で直接入力モード(IMEオフ状態)が無効になり、その状態では半角英数モードが直接入力モードと同じ挙動(半角英数モードでの入力は変換できない)になった[11]。そのためIMEのオン/オフも、半角英数モードとそれ以外で直近に使用したモードとの切り替えとなる。直接入力モードを有効化すれば、従来と同じく直接入力モード(IMEオフ)とそれ以外(IMEオンで直近に使用したモードで、半角英数モードを含む)との切り替えとなる。
なお、Microsoft IMEでは半角英数モードと全角英数モードの切り替えは⇧ Shift+無変換で可能であり、半角カタカナと全角ひらがな/カタカナは入力後に無変換で相互に変換できる。また、以下のキーを押下することで入力文字の全角・半角への変換ができる[5]。
漢字キー
編集漢字キー(漢字)は、DOS/Vでは漢字モードに入るためのキーで[7]、Microsoft IMEではIMEのオン/オフを切り換えるキー[6]だった。しかしMicrosoft IME 98以降では半角/全角キー単独でIMEのオン/オフを切り換えられる[6]ため、今日では独立した機能を持たない。IBM5556キーボードでは独立したキーとして文字キーの左側のエリアに置かれ[8]、5576-002では⇧ Shift+カタカナ(カタカナキーは無変換キーの左隣)に割り当てられ[9]、5576-A01以降の106/109キーボード配列では⎇ Alt+半角/全角に割り当てられている[10]。
変換キー
編集変換キー(変換)は、かな漢字変換において仮名を漢字に変換し、また次の変換候補にフォーカスするキーである。⇧ Shift+変換で前の変換候補にフォーカスする。ただしこれらの機能は、Microsoft IMEなど多くの日本語IMEのデフォルト設定でスペースキーでも同じ動きをするようになっている(スペースキー#他の用途を参照)。変換キーは106/109キーボード配列ではスペースキーの右隣にある[10]。PC-9800シリーズのキーボードでは同じ位置でXFERと刻印されていた。
OADG 109キーボードではこのキーは下記のように刻印される。
前変換 全候補 |
これは、DOS/Vでは変換候補はインラインで1つずつ表示されるのが基本であり、変換キーで変換した後再度変換で次の変換候補が、⇧ Shift+変換で前の変換候補が表示され、⎇ Alt+変換で最下段に変換候補が一度に表示される[12]という挙動だったためである。Windowsでは何度か変換キーを押せば変換候補が複数表示されるようになり、OADG 109Aキーボードでは単に「変換」の刻印に変更された[10]。
無変換キー
編集無変換キー(無変換)は、元々はかな漢字変換を行わずに(入力モードに応じてひらがなまたはカタカナのまま)確定するキーだったが、Microsoft IMEでは入力中のひらがな、全角カタカナ、半角カタカナを相互に変換するキーである[5]。106/109キーボード配列ではスペースキーの左隣にある[10]。PC-9800シリーズのキーボードでは同じ位置でNFERと刻印されていた。
ひらがなキー
編集ひらがなキー(ひらがな)は、ひらがなモードに入るキーである[5]。106/109キーボードでは変換キーの右隣にある[10]。⇧ Shift+ひらがなでカタカナキー、⎇ Alt+ひらがなでローマ字キーとして機能し[5]、下記のように刻印される。
カタカナ ローマ字 |
Appleのキーボードでは、かなキー(かな)がスペースキーの右隣(106/109キーボードにおける変換キーの位置)にあり、MacやiPadで106/109キーボードを使用する際は変換キーがかなキーとして動作する。このキーは元々は英数字入力モードとひらがな入力モードを切り替えるキーであったが、Apple Keyboard II JIS(1990年)以降はひらがな入力モードに入るキーである[2]。
カタカナキー
編集カタカナキー(カタカナ)は、カタカナモードに入るキーである。カタカナキーはIBM 5556キーボードで「A」キーの左隣に[8]、5576-002では無変換キーの左隣に独立して存在した[9]が、5576-A01以降の106/109キーボードでは⇧ Shift+ひらがなに割り当てられている[5]。カタカナモードになっている状態を「カナロック」と言い[13]、Windowsでは言語バーの"KANA"が反転して表示される。
PC-9800シリーズではカナキーが独立して存在した[4]。またAppleのキーボードでは⇧ Shift+かなでカタカナモードに入る[14]。
ローマ字キー
編集ローマ字キー(ローマ字)はかな入力とローマ字入力を切り替えるキーである。IBM 5556キーボードから106/109キーボードでは⎇ Alt+ひらがなに割り当てられている[8][5]。
英数キー
編集英数キー(英数)は、DOS/Vでは英数モードへ入るキーで、Microsoft IMEではひらがなモードと英数モードを切り替えるキーである[5]。IBM 5556キーボードでは無変換キーの右隣に[8]、5576-002以降の106/109キーボードではAの左隣(101/104キーボードのCapsLockキーの位置)にある[9]。CapsLockキーは日本語入力において多用されず、⇧ Shift+英数に割り当てられている。
OADG 109キーボードでは英数キーの前面に「漢字番号」と刻印されていた。これはDOS/Vにおいて⎇ Alt+英数が漢字の番号入力(IBM漢字番号またはJIS句点を使い漢字を入力する機能)に割り当てられていた[15]ためで、この機能はWindowsには存在せず、OADG 109Aキーボードでは刻印が削除された。
Appleのキーボードでは、英数キーはスペースキーの左隣(106/109キーボードにおける無変換キーの位置)にあり、MacやiPadで106/109キーボードを使用する際は無変換キーが英数キーとして動作する。このキーは英字入力モードに入るキーで、Apple Keyboard II JIS(1990年)において導入された[2]。
ImeOnキー・ImeOffキー
編集ImeOnキー([あ])は日本語入力モードに入るキー、ImeOffキー([A])は半角英数字モードに入るキーである[5]。Windows 10 May 2020 Updateで導入された新しいキーで[5]、ImeOnキーは従来の変換キーとひらがなキーを置き換えスペースキーの右隣に、ImeOffキーは従来の無変換キーを置き換えスペースキーの左隣にある[16]。
従来の半角/全角キーは日本語入力モードと半角英数字モードをトグルするため、意図するモードと異なるモードで文字を書き出してしまう問題があり[16]、これへの対処として導入された。なおImeOnキー・ImeOffキーを搭載していない従来のキーボードでも、Microsoft IMEの設定で変換キーおよび無変換キーに同様の機能を持たせることが可能である[17]。
なおImeOnキー・ImeOffキーの機能および位置は、Appleのキーボードにあるかなキー・英数キーのそれと同一である。
韓国語キーボードのキー
編集韓国のPC/AT互換機の標準的なキーボードには、한/영(ハングル/英数)キーと한자(漢字)キーの2つの言語入力キーがある。いくつかのキーボードでは、独立のキーになっていない場合もある。
한/영キー
編集韓国語(ハングル)入力モードと英語(ISO基本ラテンアルファベット)入力モードを切り換えるのに使用する。「한」はハングル(한글)、「영」は英語(영어)の意味である。
多くのコンピュータシステムでは、한/영キーを使わなくても、同じ動作をする別のキーかキーシーケンスが用意されている。韓国で使われている多くのポータブルコンピュータでは한/영キーがなく、代わりに右の⎇ Altキーを使用する。そのようなキーボードでは右Altキーに「한/영」とだけ書かれているか、「한/영」と「Alt」が書かれている。
한자キー
編集ハングルを漢字やその他の記号に変換するのに使用する。「한자」は朝鮮語で「漢字」の意味である。
多くのコンピュータシステムでは、한자キーを使わなくても、同じ動作をする別のキーかキーシーケンスが用意されている。韓国で使われている多くのポータブルコンピュータでは한자キーがなく、代わりに右のCtrlキーを使用する。そのようなキーボードでは右Ctrlキーに「한자」とだけ書かれているか、「한자」と「Ctrl」が書かれている。
関連項目
編集出典
編集- ^ “OADG 109Aキーボード JISによる参照キーボードに!”. 24 July 2012閲覧。
- ^ a b c 松尾公也 (2016年3月11日). “MacからiOSまで、Apple日本語環境の知られざる歴史が明らかに”. ITmedia. 2024年2月10日閲覧。
- ^ a b 「お答えします : XFERキーの意味は何?」『日経パソコン』、日経BP、1993年4月26日、207頁、ISSN 0287-9506。
- ^ a b “Keyboard Collection”. 24 July 2012閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “Microsoft 日本語 IME”. Microsoft サポート. 2024年2月10日閲覧。
- ^ a b c “マイクロソフト、WordとIMEの次期バージョンを3月に発売”. ASCII.jp (1998年1月6日). 2024年2月10日閲覧。
- ^ a b 『PC DOS J7.0/V ユーザーズ・ガイド』(1版)日本IBM、1995年8月 。2024年2月10日閲覧。
- ^ a b c d e “IBM Japan 5556 1型 ?”. 2024年2月10日閲覧。
- ^ a b c d “5576-002”. KEYBOARD RESEARCH. 2024年2月10日閲覧。
- ^ a b c d e f OADGテクニカル・リファレンス(ハードウェア). PCオープン・アーキテクチャー推進協議会. (2000). オリジナルの2014-10-18時点におけるアーカイブ。
- ^ “Microsoft IMEの入力モードについて”. 初心者のためのOffice講座 (2017年11月8日). 2024年2月10日閲覧。
- ^ 『PC DOS J7.0/V ユーザーズ・ガイド』(1版)日本IBM、1995年8月、20-17 - 20-19頁 。2024年2月10日閲覧。
- ^ “041395 ローマ字入力をしていると、勝手にカナ入力に切り替わってしまう”. ジャストシステム. 2016年4月7日閲覧。
- ^ “Macで日本語入力ソースに切り替える”. Apple サポート. 2024年2月10日閲覧。
- ^ 『PC DOS J7.0/V ユーザーズ・ガイド』(1版)日本IBM、1995年8月、20-27頁 。2024年2月10日閲覧。
- ^ a b “Windows 10 における日本語入力の改善の取り組み”. Windows Blogs (2021年5月10日). 2024年2月10日閲覧。
- ^ 山田 祥平 (2020年7月4日). “今こそすべての日本国民に問うIMEのオンとオフ”. PC Watch. 2024年2月10日閲覧。
外部リンク
編集- Japanese keyboards
- Korean keyboards
- 5576 Keyboard Series - ウェイバックマシン(2003年10月3日アーカイブ分)