記号学

記号論から転送されました)

記号学(きごうがく、: semiology)または記号論(きごうろん、英: semiotics)とは、記号に関連する学問分野である。

記号学(セミオロジー)は、フェルディナン・ド・ソシュールの記号の二区分(表現面(シニフィアン)、内容面(シニフィエ)に基づき、記号が他者にどのような影響を与えるかについて体系的に述べる分野を言う[1]

記号論(セミオティクス)は、チャールズ・サンダース・パースが提唱した[2]。こちらはパースによる記号の三区分(表現、内容、指示対象)に基づいており、記号学とは区別される。ウンベルト・エーコなどが代表的な論者である。

ソシュールは記号学(semiology)と呼び、パースは記号論(semiotics)と呼んだ。それぞれの流れにあるものを区別したい場合など、使い分ける場合も多いが、総論的な文脈では(たとえば、この記事において記事名を「記号学」としているように)どちらかに片寄せする場合も多い。

歴史編集

記号学の成立

1907年からのフェルディナン・ド・ソシュールによるジュネーブ大学における「一般言語学」の講義は[3]、彼の死後の1916年に彼の弟子たち、言語学的文体論を開拓したシャルル・バイイと統辞論に関心を向けたアルベール・セシュエ[4]、によってまとめられ『一般言語学講義』の題で刊行されたが、バイイとセシュエの編纂方針は、ソシュールの講義の意図を汲み取った上で、講義全体を新たな文章で書き下ろすという大胆なものであった。そのような編纂方法であったことから、主張内容が必ずしもソシュールによるものではないという批判があるものの、その講義録の中で提唱された意味の一般学が記号学(la sémiologie)である。

記号論の成立

アメリカの哲学者チャールズ・サンダース・パース

記号学/論の現在

フランスの構造主義哲学者・文学者ロラン・バルトは、『エクリチュールの零度』『モードの体系』でソシュール記号学を援用し、中世ヨーロッパ文化史研究者で文学者のウンベルト・エーコは『記号論Ⅰ・Ⅱ』を著した。

日本では、浅田彰『構造と力 記号論を超えて』の大ヒットと共にニュー・アカデミズムと呼ばれる思潮が起こり、記号論もにわかに注目を集めた。この時代の日本人による著作としては、池上嘉彦の『記号論への招待』や『詩学と文化記号論』、山口昌男の『文化と両義性』などがある。

概要編集

記号学/論の基礎理論

記号はシニフィアン(意味作用)とシニフィエ(意味内容)に分けられる。


シミュラークルとは、後期ジャン・ボードリヤールの概念であり、「実在しないものの記号」である。シミュレーション。


文化記号論

記号学/論を利用した文化の理論のこと。例としてウンベルト・エーコの中世文化史などが挙げられる。

批判的記号論

脚注編集

  1. ^ 記号学でいう「記号」は semiosisで、専門用語などで「記号」と訳されることが多いいわゆるシンボルなどより広い。
  2. ^ パースの記号論において、記号は物理的指示作用と図像的表示能力をもつとし、さらにこの二つの作用の総合として象徴作用という第三の意味作用が生じると考える。パースは記号のこのような三つの意味の差異を<インデックス><アイコン><シンボル>と呼び分ける。記号とは常に低次の意味作用から高次のものへと発展する、記号は時間の中にある、と考える。
  3. ^ ジュネーブ大学において1906年12月8日の大学当局の決定で「一般言語学」の講義を前任者から渋々引き継ぐことになったフェルディナン・ド・ソシュールが、前任者の退職にともなって閉じられていた講義を再開したのは1907年1月16日であり、ソシュールが講義のために準備できた時間はひと月もなかった。また、対象となる学生も、言語学専攻の学生ではなかった。
    • フェルディナン・ド・ソシュール『ソシュール講義録注解』前田 英樹(訳・注)、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、1991年。 p.vii
  4. ^ H. A. スリュサレーヴァ『現代言語学とソシュール理論』谷口 勇(訳)、而立書房、1979年。 p.35

参考文献編集

  • U.エーコ『記号論I』池上嘉彦(訳)、岩波書店、1996年。
  • 池上嘉彦『文化記号論』講談社学術文庫。
  • 宇波彰『記号論の思想』講談社学術文庫。
  • 米盛裕二『パースの記号学』勁草書房、1996年。

関連項目編集

外部リンク編集