たづたづし

松本清張の短編小説

たづたづし』は、松本清張短編小説。『小説新潮1963年5月号に掲載され、同年10月に短編集『眼の気流』収録の一編として、新潮社より刊行された。「たづたづし」は、万葉集の「夕闇は 道たづたづし 月待ちて 行ませ我が背子 その間にも見む」からで、「はっきりしなくて不安である」の意。『愛のきずな』のタイトルで1969年東宝で映画化、また3度テレビドラマ化されている。

たづたづし
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出小説新潮1963年5月
出版元 新潮社
刊本情報
収録 『眼の気流』
出版元 新潮社
出版年月日 1963年10月25日
装幀 上口睦人
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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あらすじ 編集

最近課長に昇進したばかりの32歳のわたしは、電車の中で24歳の平井良子という女性と知り合い関係を持つ。3ヶ月後、良子はふいに、自分には夫がいて、恐喝傷害で刑務所に入っており、あと1週間で出所することを告白する。自分の社会的立場の崩壊を恐れたわたしは、良子を長野県富士見駅近くの山林に連れ出し、首を絞めた。

しかしその後、数日経っても新聞に良子の死体発見の記事が出ない。徐々に不安になってきたわたしは、長野県の地方紙を調べ始めたが、驚くべき記事がわたしの目に入った。

エピソード 編集

  • 著者は本作について「『たづたづし』は書いたときは少しイヤ味な題だと思ったが、いまはそれなりに落ちついている。この小説に使った場所は、わたしが以前に住んでいた練馬区の上石神井[1]のあたりである。いまから十七、八年前は、上石神井も武蔵野の名残りがあって、雑木林の小径がいたるところで見られたものだ。暗い木立の下を抜けると月光の路に出、また闇の林の中に入るといった風情であった。いまは雑木林がとり払われ、団地や建売住宅地になっている。「諏訪の本屋」というのは、上諏訪にいて、先年物故した考古学者の藤森栄一氏が経営した本屋のことである」と記している[2]

映画 編集

愛のきずな
監督 坪島孝
脚本 小川英
坪島孝
製作 渡辺晋
五明忠人
出演者 藤田まこと
園まり
音楽 広瀬健次郎
撮影 内海正治
編集 武田うめ
配給 東宝
公開   1969年2月15日
上映時間 98分
製作国   日本
言語 日本語
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映画タイトル『愛のきずな』。1969年2月15日公開。製作は渡辺プロダクション東宝、配給は東宝。現在はDVD化されている。原作と異なる結末を設定している。

ストーリー 編集

旅行会社の総務課長代理・鈴木良平は、専務の娘と結婚していた。だが、何かと父の権威を笠に着る妻との生活は冷たいものであった。ある雨の夕方、良平は線は細いが可憐な女性・平井雪子と知り合う。乾いた家庭生活の代償に、良平は雪子に誠心誠意を尽くし、雪子も良平を深く愛するようになる。ところが、雪子には暴力的で目下服役中の夫がいた。これを知った良平は大きな衝撃を受け、夫と離婚し自分との再婚を望む雪子をなだめようとするが、雪子の決意は固かった。現在の生活の崩壊を怖れる良平は、悩んだ末、雪子を信州に連れ出し、ついに彼女の首を絞める。しかし、安心も束の間、雪子そっくりの記憶喪失の女性の存在を知り、良平は新たな恐怖に苛まれるようになる。

キャスト 編集

スタッフ 編集

同時上映

テレビドラマ 編集

1978年版 編集

松本清張おんなシリーズ
記憶
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『たづたづし』
脚本 服部佳
監督 山本和夫
出演者 十朱幸代
児玉清
製作
プロデューサー 石井ふく子
制作 TBS
放送
放送国・地域  日本
放送期間1978年10月15日
放送時間21:00 - 21:55
放送枠日曜劇場
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松本清張おんなシリーズ・記憶」。1978年10月15日TBS系列の「東芝日曜劇場」枠(21:00-21:55)にて放映。視聴率19.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)[3]

キャスト
スタッフ
TBS系列 東芝日曜劇場
前番組 番組名 次番組
松本清張おんなシリーズ5
記憶
(1978.10.15)
緑の炎
(原作:石沢英太郎
(1978.10.22)

1992年版 編集

松本清張 作家活動40年記念
ドラマスペシャル
たづたづし
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『たづたづし』
脚本 宮川一郎
演出 嶋村正敏
出演者 古谷一行
吉川十和子
エンディング 真璃子「あなたの海になりたい」
製作
プロデューサー 嶋村正敏(日本テレビ)
松村あゆみ(日本テレビ)
森敏樹
坂梨港
制作 日本テレビ
放送
放送国・地域  日本
放送期間1992年1月7日
放送時間21:03 - 22:52
放送枠火曜サスペンス劇場
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松本清張 作家活動40年記念 ドラマスペシャル・たづたづし」。1992年1月7日日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠(21:03-22:52)にて放映。視聴率17.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)[3]

キャスト
スタッフ
日本テレビ系列 火曜サスペンス劇場
前番組 番組名 次番組
松本清張 作家活動40年記念
ドラマスペシャル
たづたづし
(1992.1.7)

2002年版 編集

松本清張没後10年特別企画
たづたづし
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『たづたづし』
脚本 市川森一
監督 松原信吾
出演者 中村雅俊
牧瀬里穂
エンディング 川村結花「エチュード」
製作
プロデューサー 佐々木彰(テレビ東京)ほか
制作 テレビ東京
BSジャパン
放送
放送国・地域  日本
放送期間2002年11月24日BSジャパン
2002年11月27日テレビ東京
放送時間21:00-23:24
(地上波では20:54 - 23:18)
放送枠女と愛とミステリー
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松本清張没後10年特別企画・たづたづし」。2002年11月24日BSジャパンの「BSミステリー」枠(21:00-23:24)にて放映。地上波では、同年11月27日テレビ東京系列の「女と愛とミステリー」枠(20:54-23:18)にて放映。夏樹静子の翻案による作品。

キャスト
スタッフ
テレビ東京系列 女と愛とミステリー
前番組 番組名 次番組
松本清張没後10年特別企画
たづたづし
(2002.11.27)
パートタイム探偵
(2002.12.11)

脚注 編集

  1. ^ 現在の住居表示では同区の関町東
  2. ^ 『松本清張全集 第38巻』(1974年、文藝春秋)巻末の著者による「あとがき」参照。
  3. ^ a b 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)参照。

外部リンク 編集