許されざる者 (1960年の映画)
『許されざる者』(ゆるされざるもの、原題: The Unforgiven )は、1960年公開のアメリカ映画。バート・ランカスターとオードリー・ヘプバーンを主演に、ジョン・ヒューストンが監督した西部劇映画である。
許されざる者 | |
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The Unforgiven | |
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監督 | ジョン・ヒューストン |
脚本 | ベン・マドー |
製作 | ジェームズ・ヒル |
出演者 |
バート・ランカスター オードリー・ヘプバーン |
音楽 | ディミトリ・ティオムキン |
撮影 | フランツ・プラナー |
編集 | ヒュー・ラッセル・ロイド |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
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上映時間 | 125分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $5,000,000 |
配給収入 |
1億3330万円[1] ![]() |
ストーリー編集
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
テキサスの平原に牧場を営むザカリー家は長男のベンを筆頭に、母親のマティルダ、次男のキャッシュ、三男のアンディ、養女レイチェルの5人暮らし。インディアンに殺された亡き父の跡を継いだベンは、思慮深く、周囲からの信望厚く、牧場経営も順調に軌道に乗っていた。
そんなベンを近隣の牧場主ゼブ・ローリンズは信頼し、一家を厚遇。ゼブは、美しく成長したレイチェルを長男チャーリーの嫁に、キャッシュの嫁に長女を、と考える。しかしその一方で、レイチェルは秘かにベンを愛していた。
順風満帆に思えた矢先、エイブ・ケルシーという怪しい老人が近辺をうろつき、「レイチェルにはインディアンの血が流れている」との噂を吹聴する。一家は人々の疑惑の中でひっそりと日々を送る。
やがて、カイオワ族インディアンの首領ロスト・バードがザカリー家を訪ね、幼き日に別れた妹を返せと迫る。妹は白人だ、と要求を拒絶するベン。だがある夜、レイチェルとの婚約のため一家を訪ねたチャーリーが、帰途待伏せたカイオワ族に惨殺されてしまう。ゼフの妻はレイチェルを罵り、一家は窮地に立たされる。
ベンは仲間とともに、災厄の源であるケルシーを捕らえる。処刑場に引きずり出すと、ケルシーは恐ろしい過去を明かす。
かつて、ケルシーはベン達の父ウィルのパートナーだった。十数年前、ウィルはインディアンに襲われた移民の赤ん坊を助けたと偽り、カイオワ族の赤ん坊を盗んだのだ。後にカイオワ族がケルシーの息子を捕らえた時、ケルシーはレイチェルを返して息子をとり戻すようウィルに頼んだ。しかし、ウィルはそれを拒み、ケルシーの息子は殺害される。ケルシーはザカリー家を呪い、一家を追って復讐を願い続けて来たのだ。
ケルシーは絞首刑に処され、ゼブはザカリー家と絶縁。一家は孤立無援となる。
事の真相を知った兄弟達はレイチェルの処遇を巡り分裂。キャッシュは家を出ていく。一方レイチェルは、家族のためにその身をカイオワ族に投じようとする。そこへベンが温くレイチェルを抱きしめる。ベンの愛の深さを知ったレイチェルは一家と共に戦うことを決意。
その夜、カイオワ族の襲撃を受ける一家。味方もなく、夜が明ける頃には銃弾は底をつき、マティルダも負傷し息を引き取った。絶体絶命の中、ベンは捨て身の作戦に打って出る。そこへキャッシュも戻り合流。カイオワ族を退けることに成功する。だが、レイチェルの元にロスト・バードが迫るーー。その時、レイチェルは夢中で銃の引き金を引いた。妹、と叫んで彼は倒れる。
厭まわしい過去と縁を切ったザカリー家は再び団結を得るのだった。
キャスト編集
※括弧内は日本語吹替(初回放送1968年10月6日 NET『日曜洋画劇場』[注釈 1])
- ベン・ザカリー - バート・ランカスター(久松保夫)
- レイチェル・ザカリー - オードリー・ヘプバーン(池田昌子)
- キャッシュ・ザカリー - オーディ・マーフィ(愛川欽也)
- ジョニー・ポーチュガル - ジョン・サクソン(野田圭一)
- ゼブ・ローリンズ - チャールズ・ピックフォード(早野寿郎)
- チャールズ・ローリンズ - アルバート・サルミ
- マティルダ・ザカリー - リリアン・ギッシュ
- エイブ・ケルシー - ジョセフ・ワイズマン
- ジョージア・ローリング - キップ・ハミルトン
- ジュード・ローリンズ - アーノルド・メリット
- ヘイガー・ローリンズ - ジェーン・ウォーカー
- ロスト・バード - カルロス・リヴァス
- アンディ・ザカリー - ダグ・マクルーア(関根信昭)
スタッフ編集
- 製作:ジェームズ・ヒル
- 監督:ジョン・ヒューストン
- 脚本:ベン・マドウ
- 原作:アラン・ルメイ『許されざる者』[2]
- 撮影:フランツ・プラナー
- 美術:スティーブン・グライムズ
- 編集:ヒュー・ラッセル・ロイド
- 音楽:ディミトリ・ティオムキン
- 録音:ベイジル・フェントン・スミス
- 衣装:ドロシー・ジーキンス
- 特殊効果:デイヴ・ケーラー
エピソード編集
- オードリー・ヘプバーンは撮影中の1959年1月28日に落馬して[3]脊椎を骨折し、緊急輸送機で運ばれて入院した[4]。映画の撮影にコルセットを着けながら復帰できたのは3月10日だった[3]。さらに当時妊娠していたヘプバーンは撮影中は大丈夫だと医者に言われていたものの、撮影終了後の5月末に[5]二度目の流産をしてしまう[4][3]。
- オードリー・ヘプバーンが落馬して入院していた間、専任介護に当たったのは『尼僧物語』でヘプバーンが演じたシスター・ルークのモデルとなったマリー=ルイーズ・アベだった[4][3][5]。
- 監督のジョン・ヒューストンがこの仕事を引き受けたのは、キャストが気に入ったのと、休暇を過ごしていた家族の場所に近かったことであった[4]。ヒューストンによると、「私は人種的不寛容の物語に、共同社会のモラリティの実態に対する批評にしたかった。しかし彼ら(ユナイテッド・アーティスツとバート・ランカスター)が望んでいたのは大活劇映画だった」ということで[3]、脚本に満足していたわけではなかった[4]。後年自伝では「自分の作品で嫌いなのは『許されざる者』だけだ。全体のトーンが大袈裟で肥大しすぎている。登場人物がみな実物大以上だ」と述べている[3][6]。
- しかし日本では評価が高く、大ヒットして1960年度の配給収入第5位に入っている[7]。雑誌『スクリーン』で “ぼくの採点表”というコーナーを持っていた映画評論家双葉十三郎の採点では☆☆☆★★(70点)と点数自体はすば抜けて高くはないが[8]、双葉は1960年度の第10位にこの作品を推している。
- オードリー・ヘプバーンはこの作品の次にアルフレッド・ヒッチコック監督のヘンリー・セシル原作『判事に保釈なし』に出演予定であったが、レイプシーンがあったので断っている[3][4][5][6]。相手役はローレンス・ハーヴェイ、父の判事役は『麗しのサブリナ』でも父親の役で共演したジョン・ウィリアムズと決まっていた[5][3]。ヘプバーンの最後のパートナーだったロバート・ウォルダーズは「オードリーはヒッチコックの映画が好きではなかった。あまりにもシニカルだと思っていた。一度『判事に保釈なし』について質問したところ、そんな映画を作る話があったことさえ覚えてなかった。」と話している[3]。
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)171頁
- ^ アラン・ルメイ『許されざる者』蕗沢忠枝訳、新潮社、1960年7月20日初版発行。
- ^ a b c d e f g h i バリー・パリス (1998年5月4日初版発行). 『オードリー・ヘプバーン』上巻. 集英社
- ^ a b c d e f チャールズ・ハイアム (1986年3月15日初版発行). 『オードリー・ヘプバーン 映画に燃えた華麗な人生』. 近代映画社
- ^ a b c d アレグザンダー・ウォーカー (2003年1月20日). 『オードリー リアル・ストーリー』. アルファベータ
- ^ a b イアン・ウッドワード (1993年12月25日). 『オードリーの愛と真実』. 日本文芸社
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』p171. キネマ旬報社. (2012)
- ^ 双葉十三郎 (1988年6月30日初版発行). 『ぼくの採点表II 1960年代』p649. 株式会社トパーズプレス
関連項目編集
外部リンク編集
- 許されざる者 - allcinema
- 許されざる者 - KINENOTE
- The Unforgiven - オールムービー(英語)
- The Unforgiven - IMDb(英語)