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訳経史区分(やっきょうしくぶん)とは、中国における仏典の訳経史(サンスクリット等で書かれた原典の漢訳の歴史)における時代区分のことである。

旧訳と新訳編集

玄奘以後の訳経を新訳(しんやく)と呼び、それ以前の訳経を旧訳(くやく)と呼ぶ。これは、玄奘自身が新訳と旧訳の区別を強調し、「旧訳は訛謬(かびゅう)なり」と断じたからである。訳例を以下に示す。

訳例
サンスクリット 旧訳 新訳
samaadhi 三昧(さんまい) 三摩地(さんまじ)
yojana 由旬(ゆじゅん) 踰闍那(ゆじゃな)
sattva 衆生(しゅじょう) 有情(うじょう)

確かに玄奘の新訳語の方がサンスクリット語の発音や原意に忠実であるように見える。
しかし、旧訳を誤りであるとか不完全であるとして排斥するのは早計である。初期の漢訳経典の多くはプラークリット(俗語)や西域の諸語から訳出されたものであり、サンスクリットからの直接の漢訳ではなかったからである。 しかも漢字の音も南北朝までの古い音は、唐代とは大きく異なっていた。

旧訳を代表するのは、後秦鳩摩羅什(くまら じゅう)と真諦(しんだい)である。とくに、鳩摩羅什の訳語・文体はそれ以前の訳とはっきり区別できるすぐれた特色をもっている。『維摩経』、『妙法蓮華経』、『金剛般若経』などには、いくつかの訳があるが、鳩摩羅什訳がもっとも名訳とされることが一般的であり、訳文は漢文としても名文の誉れが高い。また、真諦訳の『倶舎論』(大正新脩大蔵経No.1559)は玄奘訳(大正No.1558)よりも原典に忠実である。

古訳編集

訳経史上では、鳩摩羅什以前の訳を古訳(こやく)と言って旧訳から区別することがある。僧祐が『出三蔵記集』の中で、西晋以前の訳語と鳩摩羅什以後の訳語の相違に注目しており、それにほぼ対応する。例えば bodhisattva (菩薩)の古訳語は「扶薩(ふさつ)」または「開士(かいじ)」であり、格義仏教で用いられた経典とほぼ一致している。

古訳時代の代表的訳者は

である。

関連項目編集